その33・サメがいるなら出るもので
▼その33・サメがいるなら出るもので
「少年、あなたは誤解があるようだからいっておくけど、私はエルフ、身持ちの堅い砂漠エルフ……故に美少年は愛でるだけ。そう、やむを得ない事情で一糸まとわず香油を塗りたくったヌラヌラテラテラ光るこの豊満な胸に埋もれさせ、時に先端をついばむことは許しても本番はダメ、絶対……私の名H……そうやってあなたのヱタ・セクスアリスとなって永遠にトラウマのように刻まれる・女……」
「なんかこの人、意外に面倒くさそうですね」
「なんかこー、今までにこの異世界で出会った女性の中でトップクラスの残念さんのよーな気がする」
「少年、名前はAと言ったかしら……真実を告げるときはお気を着けなさい、それは人の心臓に突き刺さるとき、あなたの胸にも突き刺さるわ……いろんなものが」
「あ、自覚はあるんだ」
「(※無言でボルトアクションライフルを片手で構え、Aの額に向ける)」
「!」
「すみません、ナビゲーターとしては失格ですがこの人のライフル、どこから出てきたのかさっぱりわかりませんでした。魔法じゃないのは確かです。ちなみにもう装填されて安全装置は外れてます」
「知ってるかしら? ……ライフルで額を撃ち抜かれると、顔は綺麗に残るのよ」
「しししししってます、銃は射入孔より射出孔のほうが大きいですから」
「そう、ここであなたがむさ苦しい胸毛や脇毛やひげが生えすね毛が伸びるようになる前に、永遠に美しいままで砂漠の砂の一粒に買えてしまうのも一興……かもね」
「あー、そこは大丈夫です、あなたの身体はずーっとそのまま。頭の中身は年相応に老けますが」
「なにそのエルフみたいな設定!」
「(あなた自身が選んだペナルティの結果、なんですがねえ)……さあ、そこは私にも」
「……? F、この子ひょっとして……」
「まあ、ちょっと虚空に向けて喋り続ける悪癖はあるが、オレの部隊とE王女の部隊総勢400人、オーガーまで含めた全員を救い出したとんでもない英雄だ」
「……そう。じゃあ砂漠の塵は勘弁してあげる」
「なんか改めて言われるとちょっと照れる……」
「なに紅くなってるのよ! もうさっきからだらしない!」
「……で、どうだい、助けてくれないか?」
「いいけど、その少年には香油を塗りたくった私といちゃいちゃしてもわらねばならないわ」
「な、なんでよ! さっきからこっちが黙ってたら変態なことばっかり!」
「必要なのよ」
「どこをどう間違えたらAとあんたが香油を塗りたくった身体でイチャイチャしなきゃ……」
(※叫ぶBの眼前、Hの後方数百メートル先の砂が山のように盛り上がる)
「え?」
「ああ、もう遅いわ……少年、覚悟して。あと、そこのむさ苦しいヒト属の男たち。諦めて」
「へ?」
(砂の山の盛り上がりが破裂するように散って、中から三つの頭を持つ巨大な鮫が現れる)
「話に聞いたことはあるでしょう? トリプルヘッドサンドシャーク」
「聞いたことない!」
「サンドシャークじゃないの!?」
「あれはサンドシャークの中のサンドシャーク、トリプルヘッドにまで進化した驚異の鮫。言うなれば砂漠鮫の王。常に飢え、常に怒り常に眠る……」
「ああ、三つの頭がかわりばんこにそうしてるという意味?」
「で、いまは三つ同時に飢えているわ」
「何冷静に解説してるのよ?!」
「奴らは砂漠エルフは食わない。私たちは常に身体に香油を塗り込んでいるから。あと普通の女は襲わない。奴らは男専門。でも美少年なら香油を過剰に全裸に塗りたくった砂漠エルフと服が油まみれになって視覚触角嗅覚の興奮の極みと本番なしの性の悦楽に入り込んでしまえば大丈夫」
「あの……俺達は」「俺達もそうして下さると……」
「すね毛と髭が生えた男は死ね。あとエルフでのど仏が出た奴も同じ」
「うわー、冷酷非情」
「私はH……砂漠エルフ………美少年以外には、冷酷非情になりきれる女」
「というか、どんどん砂の中に潜っちゃジャンプして近づいてきますけどあのトリプルヘッドジョーズ!」
「えーと今検索したんですが、困った事に……そのHさんの言うとおりです、砂漠エルフ独自の製法で作る香油と砂漠エルフ自身とイチャイチャしておかないとあのトリプルヘッドシャーク、砂漠エルフの男以外は襲ってくるそうです……」
「やな異世界だなあ……」
「生態系は不思議なもんですから文句言われても仕方ないですな、現実へ対応しましょう」
「トホホ」




