その32・砂漠の未亡人
▼その32・砂漠の未亡人
「なんとかエンジンが壊れる前に着陸……でも、修理道具も無いから二度とヘリは使えそうにないね…………僕らを振り落とすときに緊急修理用の道具箱まで外に放り出されてるんだもんなあ」
「いやあ、私のナビゲートのおかげですな」
「死ぬかと思った……なんでヘリコプターの操縦って二本も操縦桿使うんですか! ふつう、前にある奴だけ引っ張ったり倒したりしたら飛ぶのに!」
「そりゃヘリコプター開発した人に言ってください、色々理由があるでしょうから」
「あー怖かったー」
「あ、ああたしだって怖かったわよ! まったく! 何度山の上を掠めれば気が済むのよあんたは!」
「そうか? 以外と上手いとオレは思ったんだが……」
「仕方ないでしょ? スピード落としてホバリングするやりかた、なかなか上手く行かないんだもの……」
「まあ、ゲームコントローラーでやるのと違って、現実の操作は本物の風相手ですからねえ」
「あー、死ぬかと思った」
「まあ、無事だから良かったよかった、ってことで。な?」
「うーFさんが言うなら……」
「まぁ必死になったおかげで、特殊能力が発動したんでよございました。なせばなる、ナセルはどっかの部品の名前、ということで」
「ナビさん、何か楽しんでますね?」
「いえいえ、そんなそんな」
「A、ここどこなのよ?」
「オレの見たとこ、盗賊都市から400キロは離れてるぞ」
「さすがFさんですね。ここは襲撃地点から390キロ北西に向かったところです。ニアピンですな」
「ねえB、盗賊都市から北西390キロってどのあたりだっけ?」
「見ての通りよ。大砂漠…………それも質の悪い、ジャイアントリザードやら、流砂の中に住む、砂漠サメやらでいっぱい!」
「この辺には、確か知り合いの砂漠エルフがいるはずだ。まだ連絡の香木は持っていたかな…(がさごそ)」
「俺達をどーするつもりだー!」
「さっさと答えろ裏切り者にロシアのスパイ!」
「あの人たちも問題なんだよなあ」
「Y田さんにT中さん……我々の管理していない世界からきているのは間違いないですね」
「つまり、僕が以前いた世界じゃなくって?」
「ええ。困った事ですが、彼らの資料は私のほうにさっぱりない、というのはそういうことだと思います」
「パラレルワールドって面倒くさい」
「仕方ないですな。可能性は無限ですから。常に」
「良くも悪くも可能性、ってことか……」
「問題なのはここは半径100キロに及ぶ砂漠のど真ん中、ってことですな」
「お、あったぞ……よかった……だが、あいつのことだからもう来てる気もするが」
「どうしてですか? Fさん」
「お前が多分、奴のエサだ」
「は?」
「人聞きが悪いわよ、F」
「わ! いつの間に凄い巨乳でアンニュイな雰囲気の褐色のエルフさんが! しかもシースルー多用の中東っぽいスリットの入ったドレス着けて背後に!」
「よう、久しぶり」
「ええ、久しぶりねF」
「あ、ど、どうもこんにちはAといいます」
「Bです」
「ふふふ、私の名はH……砂漠の未亡人。時の流れを旅する女、性春の幻影……そして美少年が大好き❤︎」
「なんか凄い罰当たりなことをいってる気が」
「松本12時先生はおっかないですからねえ……」
「あれ? ちょっと待って下さい? 未亡人?!」
「あ、また悪い癖が……」
「F……あなたにはこの前死ぬほどの目に遭わされたから、今度会ったら速攻でクビを跳ねてやろうと思っていましたが、このような美少年を携えてくるとは私のツボを心得た真の友として迎え、助けてあげましょう……その代わり、この少年を頂きます」
「ああ、いただいてくだ……」
「ばかー!(ドカ!)」
「なんかこの物語のパターンがようやく32話目にして判ってきた気がしますよ(溜息)」




