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その31:日本語難シイ

今回はちと急展開です。これも行き当たりばったり作品の醍醐味と言うことでひとつ……


▼その31:日本語難シイ

「遠くなっていくなあ……」

「やっぱり記憶だけとはいえ、15年間を過ごした故郷を後にするってのはそれなりに感慨が湧きますか?」

「……というか、なんで盗賊都市どころか大地がドンドン遠くなってるんでしょう? つか、ヘリの音がうるさいんですけれども?」

「まあ、早い話、盗賊都市を出て20分もしないうちに魔王の軍隊に襲われて、E王女様は行方不明、あなたたちは捕らえられてヘリの中、ってことですな」


「……もうちょっとこう……ゆっくりした展開であって欲しいんですけれど。僕まだ転生して三日も経ってませんけれども……」

「いやー、さすがに我々もイベント管理は出来ませんからねえ。いわばランダム発生っちゅーやつで」

「B、大丈夫?」

「……まだ頭がクラクラする、目がチカチカする」

閃光手榴弾(スタングレネード)五発も放り込まれたんだものねえ……僕もまだ目がチカチカする」

「なにそれ?」

「室内じゃなくて良かったよ。多分それなら耳もやられてた」

「ああもうったく……王女様たちはどうしたかなあ」

「わからない。とにかくスタングレネードでワケがわからなくなったらそのままここに手足縛られてここに放り込み……だもん」

「B、ナイフかなにかない? あと前回みたいなスクロールとか」

「だめ、全部取られた」

「拉致慣れしてる人たちですな……」

「そりゃこんな軍用ヘリコプター使うような人たちですから、そうでしょうけど……あのナビさん、どういう人たちか見えます? 操縦席に」

「えーと、モンゴロイド系ですね。胸の名札は『T中』『Y田』ってありますから、多分あなたの以前いた世界で言う所の日本人でしょうな」

「僕の言葉って今日本語ですか?」

「あなたの意識下では日本語になってますが、ちゃんと異世界語喋ってますよ?」

「じゃあ今の僕で日本語、ってどう喋ればいいんでしょう?」

「えーと、ちょっと待って下さいね……多分、あなたの今回の事情を考えて、対応策としてあったはず……あったあった。簡単ですね、英語喋って下さい」

「は?」

「あなたの脳と言語関係は入力と出力を全部日本語に置き換えて認識してます。ここの異世界のあらゆる言語をあなたは日本語として聞き、読み書きできますが、相手にはみんなそれに対応した言語になってます」

「なんですそれ、地味に凄いじゃないですか!」

「いやあなたがペナルティで選んだ中にあるんですけれどもね……まあいいです。とにかくその変わり『あなたもよく知らない言語』として英語を逆に配置したんですよ」

「つまり僕があいきゃすぴーくいんぐりっしゅ!って叫べば」

「おい、今の小僧、僕、日本語が喋れますって言わなかったか?」

「聞き間違いだろ。通訳機使え」

「あ……ホントだ。つかイングリッシュがなんでジャパニーズにかわるのかよくわからないんですけれども」

「……まあ、とにかく、そーいうことです、でもナニするつもりなんですか?」

「いえあの……まあ、ちょっと説得をしようかと、ヘイパイローット、あいきゃんすぴーくイングリッシュトゥルー!」

「……おい、なんだ後ろの小僧」

「アイアム・ジャパニーズ、マイネームイズA! アイワントトゥーフレーンズ! プリーズパージオブじすロープ!」

「自分が日本人で友だちが欲しい? だから縄を解いてくれだ?」

「何考えてるんだこいつ?」

「プリーズヘルプミー、あいむのっとえねみー」

「助けてくれ、敵じゃない?」

「……まったく、知恵の回る奴だ、猿轡(さるぐつわ)してこい。俺達は隊長の下にコイツらを連れて行くのが任務だ」

「隊長……は、えーとチーフか……ヘイ、ユーせい・チーフなう! そーりー、ゆーあージャパニーズディフェンスフォース?」

「いま隊長っていったということは、申し訳ないけど自衛隊か……っておい!」

「こいつ、まさかロシアか中国のスパイか? アメリカか?」

「子供のスパイなんてやるからに中東か、ロシアか……」

「あいむのっとすぱーい!」

「スパイがスパイです、なんていうか! コイツだけ変な拳銃持ってるしおかしいと思ったんだ! 念入りに縛り直せ、袋被せろ、グアンタナモの囚人並みにしとけ」

「了解!」

「ぷりーず・どんと・う゛ぁいおれーんす! あいあむあボーイ、しーいずはがーる! ……って、あ、たしかに顔見たら迷彩塗料でペイントしてるけど、この人たち日本人だ! 商事会社って英語でなんて言いましたっけ?」

「トレーディング・カンパニーだったかと」

「ユーアー・トレーディングカンパニーメン?」

「商事会社の人間? やっぱりこいつ危険だ」

「わわわ、袋被せようとしてる!」

「こまりましたねえ、あなたの視界を遮られると私あなたが何処にいるか判らなくなるんですよ。あなたの視界とリンクする形であなたの脳内に投影されてるもんで」

「そういう重要な設定は早く言ってください! というか全然ダメー、この人たちの情報何かないんですか!」

「検索してますが、そもともションジー・ガー・イシャーなる魔王組織自体が何処の誰かモヤがかかってるんで……」

「なんかパイポスプレーガン持ってる!」

「ソレは多分麻酔薬ですね、暫く眠らせるつもりのようです」

「B!」

「このっ! (どかっ!)」

「しまったこっちが囮か」

「とりゃあ! じすいず・おくとぱーす! (げし)」

「くそ……自分の腕に注射……ぐう」

「おい、Y田、どうした?」

「よし、たおれた!」

「ナイフないの?」

「ある、えっとここに……よし取れた!」

「滑らせて!」

「わかった!」

(ヘリの床をナイフが滑っていくのを後ろ手に縛られたまま転がって、手で受け止めるB)

「くそ、メイデー、メイデー! 捕虜が拘束を解いた、緊急着陸して対処する」

「ほらじっとしてて!」

「ありがとB!」

「どうするのこれから……きゃあああ!」

「うわああっ急旋回っ!」

「きゃああ!」

「そうれそうれ、シェイクされろー!」

「うわああ! 曲芸飛行ーっ!」

「多分あなたたちの目を回して、着陸したらもう一回注射とかして大人しくさせるつもりでしょう」

「のわーっ、わーっ ドア開いた、落ちる、おちるうううううう!」

(※無茶苦茶な挙動をするヘリコプター)

「A!」

(※ドアの外に放り出されそうになるB)

「B!」

(※ふたりの手が握られる。A、ヘリの中の支柱のひとつを握る)

(再び逆方向に動くヘリ、機内に戻るB、A,抱きしめるようにして自分の支柱を握らせる)

「パラシュートか何かない?」

「飛行機じゃないんでせいぜいがライフジャケットぐらいですね」

「ヘリの操縦の仕方教えて!」

「あ、ちょ、ちょっと! トム・クルーズじゃないんですから!」

「セマーリンと予備弾倉見つけた! てやっ!」

「A、何考えてるの!」

「このヘリをぶんどる!」

「ばかなことを……きゃあ!」

「柱から離れないで! それっ!」

「な! 銃なんか持ってナニするつもりだ!」

「どんすぴーくつー無線機? ウォーキートーキー? だったけか?」

「この! 舐めるなガキ!」

(※パイロット拳銃を抜いて肩越しにAを撃とうとする)

「わ!」

(ずどん!)

「ヘリってあんまり中で銃撃っちゃマズイですよね?」

「ええ、でも今のは偶然大丈夫だった……いえ」

(※エンジンの音にノイズが交じり小さなスパーク音)

「電気系統……」

「この、はなせ糞ガキ!」

(※パイロット、シートベルトを外して席から立ち上がろうとするが、ヘリが揺れる)

「うわっ!」

(※コックピットのドアにうちつけられるが、そのまま銃をAに向ける)

「!」

(※銃声)

「ぐ……」

(パイロット、銃を取り落とす。跳ねて、開いたままのドアからそのまま機外へ消える銃)

「か、肩に当たったぁ、よかったぁ……」

「なに安堵してるんですか、あなたお腹に穴開いてますよ!」

「え? あ……なんじゃこりゃ?」

「定番ですな……いえ、それどころじゃない、まず傷口を縛ってください、ベルトを外して!

「あ、はい」

「腹圧で内臓が出ないように、それから、えーとえーと……」

「へ、ヘリの操縦を教えてください」

「Aさん!」

「このままじゃヘリごと墜落しておしまいでしょ? 助けないと」

「……わかりました。ベルトと布で傷口を押さえたら、とりあえずシートベルトに座ってください。あなたの出血量から考えると10分以内に着陸しないと……」

(※ヘリ全体ががん、と揺れる)

「大丈夫か、A、B!」

「あ……Fさん……」

「お前のことが心配で懲罰房から出てきた!……ったく、もう少し早ければ」

「どうやってここに……」

「跳躍魔法だ。魔王軍は非常事態に備えて、緊急の魔法陣をどのヘリにも描いてある。だが、天井に描いてある奴は被弾してもう使えないな……」

「さすが……ファンタジー……」

「気を失うな」

(F、スクロールを取り出して広げ、Aの腹部に当てる)

「おお、治癒魔法スクロール!」

「あ、傷口が塞がった……」

「A!」

「大丈夫、なんとか死なないで済んだ……」

「で、傷が治ったな?」

「はい、ありがとうございますEさん」

「じゃあ、この機械操縦できるか?」

「え?」

「オレ、操縦は出来ないんだ」

「えー!」

兵士ふたりの名前がちょっと生々しすぎるのでY田T中に変更しました

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