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その28:カッコウの雛(前)


▼その28:カッコウの雛(前)


「まあまあ。それぐらい貴重な人生を生きたんですから、ここでのお父さんと上手くやってくださいな。人には許すだけでなく『(ゆる)す』というという()()も必要ですし」

「なんかいい話にして誤魔化されてる気がする……」

「どうしたんだねAよ。また『お友達』が何か言っているのかい?」

「あ、いえ何でもないですパパ」

「ママが生きていたら、どれだけ喜んだだろうなあ……お前が一人前の大人になったどころか、大人さえ出来ないことをやり遂げたと聞いたら……ううう」

「泣かないで、パパ。僕もっと頑張りますから!」

「ありがとうよー、自慢の息子だよぁおお(※オイオイ泣く)」

「……おじさんは相変わらずAには甘いんだから」

「ああ、Bちゃん、ありがとう、ありがとう! 君のお陰でAはこんな偉業を成し遂げられたよ!」

「あ、いえ……まだどうなるかは判らないんで油断は禁物です」

「大丈夫だよ、Gちゃん……いや、G様は」

「え? 今うちのパパ様、G様をちゃんづけで呼んだけど?」

「ああ、話をしてなかったかな? パパとママはG様とは昔なじみでなあ……どうしてもついGちゃんとか呼んでしまう。いかんいかん」

「へえ……」

「ああ、資料によると昔はGさん、あなたのお父さん、お母さんともうひとりは幼なじみ同士で、永らく4人ひと組のチームだったみたいですね『暁を裂くもの(ドーン・スラッシャー)』という通り名だったようです。今から16年前にあなたのお母さんとお父さんが結婚し、その1年後にGさんは盗賊王位争奪戦に敗れて1位の先代盗賊王と結婚……どうやら先代からの熱烈な求婚劇があったようですな……で、さらに2年後、あなたが1歳の時に先代盗賊王が病で急死……Gさんが盗賊王の王位を継いだ後、あなたのお父さんとお母さんが盗賊ギルドの評議会の委員に推挙されて……あなた、この世界ではイイトコのボンボンってことらしいです」

「あー、そこも前のうちとは大違い……というか、どうりでこのセマーリンやら、組み立て途中のレマットリボルバーなにやらが個人で作れたわけだ」

「まあ、このナーロッパ的世界でも、それなりの資産がない限りそんな物作り道楽って出来ませんからねえ……ちなみにお父さんは盗賊ギルドの技術関係の顧問もしているので、工作道具や機械類はそのためのようです」

「あ、そうか……記憶を辿ったら、僕の作った道具のいくつかは父さんからすっごく喜ばれたんだっけ。ただのスイスアーミーナイフと、缶切りなんだけど」

「スイスアーミーも缶切りも、実はかなり大きな発明ですよ? ちなみにあなたのいた世界では缶詰が先で、缶切りは大分後に発明されてます」

「なるほど、そりゃ喜ばれるか……あ、あとゴム製聴診器も作ってる」

「まあ魔法で高熱と超低温を作り出すことが出来るので鋳鉄技術や鋼の製造技術はかなり高くすることも可能ですからね」

「することも可能?」

「魔法にはコストがかかるんです。あなたが元いた世界でも、クロムモリブデンやハイスピードスチールの製造量産が可能になるまで100年かかったんですから。アルミニウムにいたっては錬金術で作られる魔法の銀だ、という時代もあったぐらいです」

「あー……なるほど。そういえば錬金術のことをアルケミーって……」

「ああ、錬金術の語源についてはアラビア語のアル・ケミヤに由来するそうですが、アルがアラビア語の定冠詞である以外、ケミヤの意味に関しては色々諸説あるようです。アルミニウムの名前の由来は化合物の中にミョウバン……英語でアルム、が含まれるからだとか」

「へー」

「Wikipediaにも載ってます」

「へー。いやもうネットとは無縁ですから……もっと調べておけば良かったかなあ」

「まあ、あなたのいた世界じゃネットは第二の脳でしたからねえ」

「裏技で何とかなりません?」

「そのための私なんですが?」

「あ、そうでした」

「息子よ、すまないが『お友達』との話はそれぐらいにしてくれんか? 明日にはもうこの街を出て行ってしまうのだろう?」

「あ、そ、そうですね。お父さん、じゃないパパ」

「……」

(ぎゅううっ)

「あいや、き、きついですパパ」

「こんなに小さいのにナア。ママのように華奢なのになあ……(しみじみ)」

「……」

「おや、涙ぐんでますね」

「前世じゃ色々あったもんで……嬉しいです」

「……そうですね。今日はそちらが呼ぶまで出てきませんので、親孝行をして下さい(微笑)それじゃ、また」

(※A、黙って頷く)


(※場面転換)


(※Aの家。BやBの父母もいる)


「さあ、今夜はパパの腕によりをかけた料理だよー!!」

「あ、ありがとうパパ!」

「先輩、自分たちまで、ありがとうございます!」

(※Bの父と母、90度のお辞儀)

「いーんだいーんだよ、Bちゃんにはこれから内の息子が世話になるわけだし、もう20年来の付き合いじゃないか、Bの父さんにBの母さん」

「本当にありがとうござまッス!」

「(あー、そうか……Bのお父さんとお母さんは僕のパパの訓練学校の後輩なんだよなあ……昔のパパはかなりダーティでハードで、それでBのお父さんとお母さんは憶えてるけど、死線をくぐったこともある上に、Bのお父さんが仕事中の大怪我で引退したときは僕のママとふたりしてこの盗賊都市で交易商人が出来る様にギルドに掛け合ったりしたのか……)」

「……」

「あ、B……」

(※B、黙って出て行く)

「B!」

「A! どこへいくんだい!」

「ちょっとまってて、パパ! すぐ戻るから! ご飯、楽しみにしてる!」

「……わかった、いっておいで!」


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