その27:カッコウの親
▼その27:カッコウの雛(前)
「さて、話し合いはついた。A、Bよ。妾は明日出直す、それまでに御家族に別れを告げよ! 長き旅になるぞ!」
「え? やっぱり確定事項なの? 特殊部隊に僕らが入る話?」
「そりゃ誰も否定してませんからね」
「どう? ふたりとも拒否する? それでもいいのよ」
「あ、あたしは大丈夫ですっ! お任せくださいっ!」
「ああ……G様に井上喜久子さんみたいな声で言われると……」
「あんた弱点だらけですな」
「ほっといて……はい、頑張ります!」
「あ、はい……」
「では、また明日の朝にまいる! 7時にはここにおれよ!」
「は、はいっ!」
「はいっ!」
(E王女、去って行く)
「……しかし、本当に剛胆な王女様ね。強力な魔剣『ニュートン・キログラム』を持っているとはいえ、単身でこの盗賊都市にくるなんて」
「本当ですね」
「なにをいうの、その剛胆で剛毅な王女様の心を動かしたのはあなたでしょう? 一体何をしたの? やっぱり御大事を使ったの?」
「え?」
「あー、この人もやっぱり盗賊都市の人なんですなー」
「息子よー! Aよー!」
「あ、A、おじさんが来たわよ!」
「え?」
「息子よーっ!」
「わ、ぱ、パパ? え? あそうか、僕お父さんのことはパパって呼んでたんだっけ?」
「ですねえ。まあ厳つくってゴツくって髭面なのにまた声が立木文彦さんばりに激渋だこと」
「よくぞよくぞ大役を見事に果たしたー!」
(※がっしーん!)
「ぱ、パパっ、ぐ、苦しいぃ……」
「いやあ、パパは嬉しいぞ、お前が見事に初仕事をこなしてくれて! 天国のママもきっと微笑んでくれる、いや、いっそ大地母神の神殿へ行って『口寄せ』の魔法を……」
「あーだめだめ! ぱ、パパはいつもそれで大金使っちゃうからうちの家計は火の車……なんだよね?」
「ええ、そうです。まあ、インチキ霊媒と違ってこの世界においては人の思念は残留しますから、強い人なら30年ぐらいはそれ……霊体が残ってお話が出来ます」
「へー」
「ただAIみたいなもんで、本人の人格シミュレーターですから、予想通りの受け答えをする程度ではあるんですけれどもね。新しい記憶は芽生えませんし」
「じゃあ、死んで以後の事は毎回新しい話になるの?」
「まあ、ボケ老人と一緒ですな。ただ、個人個人の持つ霊子の形状や形質は独自なんで、霊体はちゃんと成長した子供や老いた夫や兄弟を見分けることは出来るそうです」
「便利といえば便利だけど寂しい話だなぁ……あ、殺人事件の捜査とか楽そう」
「あー、殺人だと大抵霊体が混乱してて、長期残らないみたいですね。運良く寿命を終えるか、死を認識しながら亡くなるかしないと霊体にはなれません」
「つまり天寿を全うするか、病死するか?」
「あと死刑になるってのも入りますね」
「わ……じゃあ、それ以外の場合はフツーにナビさんのところへ送りこまれて再利用?」
「される場合もありますしそのまま……へ」
「え? どこへ?」
「すみません、そこは生きている人には秘密なんです」
「僕一度死んだのに……」
「なに? 死んだ? 誰がだ?」
「あ、いや違うよパパ。あの……えーと、死にそうな目にもあったけど大丈夫だったよ、心配しないで」
「そうか、そうか……よかった……」
「いやあの、泣かないでパパ……ぐす」
「おやどうしました?」
「いやあの、僕のほうはその(小声)前のほうでは父とあんまり上手くいってたなかったんで、今、こっちのお父さんとの記憶が……一緒に遊びに行ったり、僕が変な機械を作ろうとしても喜んで協力してくれたり、話に頷いてくれたり。間違ったことをしそうになったら懇々と諭してくれたり……いいお父さんなんだなあ、って」
「あれ? そんなにあなた前世ではお父さんとトラブってましたか?」
「ええ、知ってるんでしょ? 僕はかなり両親とは……アレで…………その」
「いやー。あまりにも死因が面白すぎて他の項目の記憶が……ああ! だからあんな面白最後を!」
「またその話ー!(涙目)」




