その23・盗賊王G
その23・盗賊王G
がすっ!
「これB! 主殿になにを!」
「黙っててくださいお姫さまっ! A! 返事がないから催促に行くわよ、ほらこい!」
「いたたた! 襟元掴んで引きずらないでよー!」
「いーから来る!」
(※ずるずるとAを引きずってB、門番の所まで)
「……まったく、焼き餅ならもう少し素直に焼けば良いものを(苦笑)」
「Bですけれど! いったい評議にいつまでかかってるんですか! 高貴な身分のお方を、わざわざここまで連れてきたんですよっ!」
「まあまて、お嬢ちゃん。こっちも下っ端だ。上が『よし』と言わなきゃ、これまで目の敵にされてきた000王国のお姫さまに正式に都市の門をあけるわけにもいかんのだよ」
「ここ盗賊都市でしょ! 門番のあなたがそんなヤワでいいの? 独断で門を開けて、正しい事をなさいよ! 歴史に名前を刻みなさいっての!」
「ヤワだから出世コースから落ちぶれて今門番やってるんだよ、お嬢ちゃん(ニヤリ)」
「……プライドない人は嫌い!」
「ははは、まあプライドじゃあ食えないからねえ」
「……?」
「どうしたのよA? 変な顔して?」
「いやあの……この門番さん、初めて見る人のような気がして」
「あら、いいところに気がつきましたね、Aさん。私の資料にもこんな人は門番にいません」
「?」
「ほお?」
「12年間、ずーっとこの門をくぐって外に出たり戻ったりしてたけど、この人は今日初めて見る。でも鎧は古くって、紋章なんかすり切れてるぐらい……いや、そうじゃなくって、この盗賊都市は紋章なんか持たないはずだし……でも、その目はどっかで見たことがある」
「坊主、若いのに言い記憶力と観察眼もってるなあ。さすがあいつらの息子だなぁ」
「え?」
(※門番、鎧兜ごと衣装を引き抜く)
「……え!」
(※AとBの前に現れたのは黒髪の美女)
「うふふふ、こんにちは。Aの坊や。A父とA母の息子、そしてB。B父とB母の娘……訓練学校にあなたたちが入るとき以来だから、6年ぶりになるかしら?」
「盗賊王、Gさま!(※B、片膝ついて平伏)」
「あわわわ、Gさまどうも(※Bの真似をするA)」
「意外にも、Aのほうが先に私に気付くなんてねえ❤︎ てっきりB、あなたが先に気付くと思ったんだけど」
「あ、いえあのその……も、申し訳ありません。偉大なる盗賊王、Gさまを……」
「というより、まだまだ私も棄てたものではない、ということかしらね?(※ウィンク)」
「うわぁ……記憶だとツンとすました美人なのに……」
「記録によると、彼女は正式な盗賊王というわけではなく、先代の盗賊王たる夫と、盗賊王の地位を巡って争ったこともあったので、夫の死後、そのまま繰り上げで王座を継いだそうです。そのころまではかなり尖った人だったそうですから、あなたの記憶はその頃の肖像画によるものが大きいでしょうね。滅多に人前には出てきませんし」
「なるほど……え? 美しき未亡人ってこと?!」
「こらばかA!」
「あら、それがA君名物の『独り言』なのね?」
「す、すみませんG様。あのいえこのバカはとにかくその普段からぼーっとしてて変なものをこさえてはこの世がどーのこーのというピクシー野郎なので(※真っ赤)」
「えらい言われようだ、抗議するー」
「ホントの事でしょう!」
「まあまあ。でもあなたのおかげでE王女をここまでご案内した、ということよね?」
「でも誘拐しろというご命令には背きました、申し訳ありません(ペコリ)」
「いいのよ。むしろ大手柄……基本的に彼女を殺したり傷つけたりするのは本意ではなかったから」
「あ、ありがとうございます!」
「うわ、B真っ赤&緊張してる」
「ばか、頭が高いっ!」
「(あ、そうか…G様ってBの憧れの人なんだよな。300年続く盗賊都市初の女盗賊王……今思い出した)」
「では、E王女のところまで、ふたりに案内と紹介を頼みましょうか」
「は、はいっ!」
「はい……」




