その20:担いで逃げて惚れられて(7)
その20:担いで走って惚れられて(7)
(※AにE王女がキスするので戸惑うBを遙かな彼方、木の枝の上、Cが遠眼鏡で観察している)
「何者ナノダ、アノAトイウヤツ……ヒトカ?? 200人以上ヲ、タッタヒトリデ? シカモ、ソレヲ見テ魔王ノ軍勢マデ協力? ワケガワカラヌ!」
(C、身体には全裸の上に迷彩柄のマントを巻き付けている、それを翻して木から下りる)
「オマケニ、王女カラきすダト?」
(※首を捻りながらC、疾走開始)
「コレハ、我ガ手ニ余ル……オヤカタ様ニ、オ知ラセ セネバナラヌ!」
(※見る見る間に闇に消える)
(※破顔するF)
「へえ! こりゃ驚いた000王国の王女様が!」
「妾と妾の家臣の命を救ってくれたのだ、たった一人でな、それに報いるには妾の全てを与える。それが筋というものであろ?」
「…………(B、呆然)」
「そうか、それも理屈だな、よっしゃ、オレも」
(※FもAにキス、舌を入れる)
「ん…………」
「んちゅ…………ちゅぬっ」
「おおぅ、戦エルフの口づけとはなんと淫靡な」
「あ…………ん……」
「魔王様に雇われちゃいるが、オレの心と体はコイツに100年ほどくれてやる! なあに、エルフの寿命からすりゃ、ほんの一瞬!」
「…………ふふっ、お前つくづく面白い奴」
「あんたもな、お姫さま…………じゃあな、あばよ!」
「…………(※なおも呆然としているB)」
「立つが良い、B…………(小声で)正妻の地位はそなたにやる」
「え?」
「さあ、次の盗賊王たるAとともに、盗賊都市へまいるぞ!」
「え? え? え? え? え? え? え?」
「B、お主も胸を張れ! 妾を誘拐ではなく、堂々と盗賊都市へ、来賓として招き入れる大成功を収めたのだからな!」
(※遥か上空)
【……ふはははは! ははははは!】
(※古龍ヘクトパスカル、空を舞いながら哄笑している)
【……なんと面白い! 何と面白い! 余所の世界で人間の人生とはこうも娯楽とドタバタに満ちるものとなっているのか! それにしてもあいつ! なんという面白い死に方を! わはははははははは!】
(※雲を突き抜け、二つの満月を背景にローリング)
【わはははは、こりゃいい、うん、なんと面白い! 今度あったら是非、Aからその時の話をきいてやろう……いや、その前に我が友たる他の古龍たちにも話してやろうぞ!】
(※恐ろしい勢い遠ざかっていくヘクトパスカルの姿)
【わははははははは! なんとも愉快だ!……また会おうぞ、A! 我が途轍もなき、面白フレンズ!】




