その2・能力決めました
その2・能力決めました
(※時間経過)
「…………どうですか? あれから48時間ぐらいすぎましたけど」
「……もうそんなに? しっかし面倒くさい反動やペナルティなしには使えない能力ばっかりですねえ」
「この辺一帯の時空を管理している神様のようなアレは、お気楽スタンダードが超お嫌いですから」
「神様じゃないんだ」
「当たり前です、意思疎通が出来て、ああしろこうしろとかいうコンタクトを取ったり管理しようとしたりする存在は神じゃなくて『それに似た圧倒的な力を誇る知的存在』以外の何物でもありません」
「いま全方位で宗教に喧嘩売りませんでした?」
「まあ流してください……で、どうですか? 見つかりました?」
「あの、ここの最後のページに小さく小さく書いてある『※運命オプション使用時は除く』ってなんですか?」
「あらやだ、本当に全部読んでましたか? 普通そこ、気付く人滅多にいないんですよ」
「……あの、最初っから騙すつもり満々でした?」
「いえ、異世界転生で適当に楽しようというアホはひどい目に遭えばいいと」
「……で、どういうのなんです、『運命オプション』って」
「ああ、早い話が最初に自分がうける難関とか苦難を先に設定した上で、能力を得るという、いわば等価交換ですね」
「……あんたホントに天使のほう?」
「天使のほうですよ? 天使そのものじゃあないです」
「…昔そういう押し売りがあったって…」
「そういう詐欺は『そのものじゃないです』とか言いません」
「むしろ悪魔……」
「まあ、よく考えないで決断する人はそう罵るもんです。迷惑ですけれどもね……で、どうします?」
「えーっと『運命オプション』の種類は?」
「はい、こちらになります(三十センチぐらいの分厚い、大きな本を出す)」
「うわ、えげつなー!」
「どうします?」
「読みます読みます」
「じゃあ、明後日ぐらいにまた様子を見に来ますね……」
(※時間経過)
「どうですか?」
「……あ、これください! これ! それとこれとこれとこれとこれと……」
「いやちょっと待って下さいメモ起動しますから」
「え? タブレット?」
「まあこういう世界は管理が大事なんで……えーっと? 『裸一貫』『ヒャッハー地区に出生』『冷たい幼なじみ』『変人扱い』に『周囲とのレベル差特大』『望まぬ結婚』『重傷』『裏切り』『栄光からの追放』エトセトラエトセトラ…………ずいぶん酷いのを重ねてとりましたねえ」
「それでどれくらいの能力が貰えます?」
「このオプションを使う場合、『永遠無双』『ハーレム』以外、心底あなたが必要だと思う能力が降ってきます。その代わり死ぬほど願わないとだめですし、努力も必要ですよ?」
「オーケイです! 確認しますけれど、これと、このペナルティ! これ確実に来ますよね!」
「え……?」
「き・ま・す・よ・ね?」
「ええまあ、はい……」
「オーケイ、オーライ、これでいきます! れつごー!」
「……ホントにいいんですか?」
「いいんです! グッド! さあ行きましょう今行きましょう、冒険の旅にしゅっぱーつ!」
「……じゃあ、まあこれであなたの初期設定は終了、と……せめてものサービスです、ここでの記憶は消しておきます。知らぬ喜びというのもあるんで」
「え!」
「じゃ、どうぞ第二の人生、お幸せに」
「えー!」
(※転生の閃光)
「……いっちゃった。私、いい仕事したなー。さて本日の残り業務は、と……」
「アー君、君。今運命オプション、使った?」
「あ、はい上司様」
「そっかー。なんか君、後始末しなきゃいかんよ?」
「は?」
「20代以上の転生者の場合、運命オプションで背負わせていいのは三つまでになったの、それ以上はその世界に悪影響が出るから」
「運命オプションに上限なんかないじゃないですか! 研修でも……」
「いや、しこたま運命オプションを使ったバグ技を使った転生者が出て大騒ぎになったでしょ、この前。だから駄目になったの」
「えー!」
「2時間前に会議で決まったんだよ、あれ? 通達メール来てない?」
「あ……来てます」
「でしょ?」
「うう……」
「しかし、随分と運命オプションとったよねえ、彼。なんでまたこんなに……ああ、こういうことか」
「なんですか?」
「彼の死因と遠因、それと今回の運命オプションの複合ペナルティ」
「ああ……『褐色、筋肉質の女性と、戦士系な女性、および未亡人にしかモテない』……これが目的か! 目的なのか! なんという邪悪! 凄い!」
「あと君、このオプションも見逃してる」
「……『女装の似合う美少年化(筋力アップなし)』?! しまったこれペナルティじゃないんですか?」
「普通の人間ならね。普通じゃないから多分、ご褒美」
「おのれー!」
「ミスったねえ、君。残業につけておいてあげるから、今の人のフォローよろしくね」
「うう……」