その17・担いで逃げて惚れられて(4)
その17・担いで逃げて惚れられて(4)
【……】
「あれ? もういいんですか?」
【ふむ…………ふむ、これはすごいな】
「あの…………どうでしょう?」
【45分間、待ってやろう】
「え?」
【45分間だ。人の生涯で得られる知識など、我の時間にとっては1分にも能わぬ。がお主はあの賢者Zよりも凄いな】
「そうなんですか、ありがとうございます」
【賢者Zの全ての知識を動員してもこの場合15分だろうが……うむ、この知識や記憶は我の記憶にはないものである……お前はさらに、我の友と認めよう。今知ったお主の言葉で言えば……マブダチ? ダチん子?】
「あ、なんか既に語尾が半疑問系になってる……」
「さすが古龍、対応が早いですね」
【特に娯楽の知識が素晴らしい。我も9000年以上生きてきているが、これほどの娯楽の質と量の無茶苦茶さはしらなんだ。漫画、映画、ドラマ、テレビにゲームにアプリ、そう特にボード……ゲーム! 素晴らしいな、人類! そうか、世界が変われば……否、人間どもが平和に2千年も過ごせば、こういうありようもあったのか……】
「え、えーと、とりあえずか、感謝します」
【うむ、45分だ…………お前はマブダチだからこっそり教えてやるが、実を言うとあの光球を留められるギリギリがその時間でな。こうなった以上、怒りは忘れて出来れば彼方にでも放り投げてしまいたい……が、既にこの土地を焼き尽くすべく方向を定めて呪文を構築固定してしまったのでな……】
「なんか謝られてますよ?」
「あ、いえ、ありがとうございます、頑張って何とかします……45分!」
「正確には残り44分30秒」
「カウントしなくていいですから! えーとどうすりゃいいんだ? あのヘクトパスカルさん、手伝っては……」
【我が身じろぎすると途端にドカンといく、そう設定しちゃったんだ、悪い】
「ですよねえ……えーとえーと……もうとにかく担いで行くしかないか!」
「効果範囲は2キロですよ? ちょっとした小型戦術核ですな」
「まずはB! よっこいしょ!」
「大丈夫ですか?」
「やるしかないんです! おりゃーっ!」
「あ、そこに炊事用の大型荷車が転がってますから、そこに積めば一度に運べる人の数が増えます」
「ありがとうございます! く…………っと!」
(どさ)
「次が王女様……っと! Fさん……っと!」
(どさどさ)
「あとモブのひとと……えーと……」
「これぐらいが一回で運べる量の限界ですね」
「よし、じゃあ…………ぬう…………うーんっ!」
(ゴトゴトト)
「よしいける! おりゃああああああ!」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「うんせ、うんせ、うんせ!」
「あら、ちゃんと全員並べて寝かせるんですか、紳士ですねえ」
「よし! まず第一陣!」
「え? ひょっとして全員助けるつもりですか?」
「当たり前でしょ? うおっりゃー!」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「魔王側のゴーレムはこの際無視します! 無機物ですから!」
「それでも王女側も魔王側も合わせて400人ぐらいいますよ?」
「せいの、せいの、せいの」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「うおっりゃー!」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「せいの、せいの、せいの」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「うおっりゃー!」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「せいの、せいの、せいの」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「うおっりゃー!」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「せいの、せいの、せいの」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「うおっりゃー!」
(ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト!)
「……」
(※往復するA。並べられていく敵味方の数が森の外れにある平原に増えていく)




