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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
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フェンリル族の里⑤

「ミドリ、頼む!」


「はい!ご主人様!」

ミドリが本来のドラゴンの姿に戻る。

しかし、不思議だ。ミドリが普段着ている服は一体どうなっているのだ?人の姿に戻った時は何事も無いように元のメイド服姿になっている。

春菜が作った特製のメイド服と聞いており、春菜に聞いてみた時もあったが、「それは乙女の秘密です。うふふ・・・」と言われてしまったよなぁ・・・


雪がミドリの姿を見てガクガクしている。

「こ、これがドラゴン・・・」

「でもキレイ・・・、怖いけど目が離せない。聞いていたドラゴンと違う。こんなにも美しいドラゴンがいるなんて・・・」


美冬が雪に話しかける。

「ミドリはね、私達の訓練を必死に乗り越えて、自分で輝く事が出来るようになったのよ。雪も頑張ってね。」


「うん!凍牙さんと一緒に戦えるように頑張るよ。絶対に強くなる!」


何だ?ミドリがブルブルしているぞ。

「ミドリ、どうした?」


「ご、ご主人様・・・、訓練の話でちょっと思い出してしまって・・・、あの地獄は忘れようにも忘れられません。何度も殺され生き返らされたか。昔、虐められていた時に、殺されそうになってご主人様に助けられた時よりも恐怖でした。」

本当にアイツらは容赦ないな。蘇生の魔法があるからとはいえ、死ぬ恐怖はそんなに克服できないぞ。俺もかなり容赦なしでやられたし、ミドリの気持ちはよく分かる。

雪はやる気みたいだが、始まったら恐怖のどん底に落ちるからな。

合掌・・・

そして、本当にミドリを助けた事は覚えてない。後で聞く事にして、今は目の前の魔獣達を倒す事に専念しよう。

「ミドリ、悪いが俺はお前を助けた覚えは無いんだけど・・・、詳しい話はコレが終わってから聞いて良いか?」


「分かりました。」


ミドリの背に全員が乗る。さすがに雪は初のドラゴンの騎乗なのでガチガチになったけど我慢してくれ。


上空に出るとすぐに相手の反応があった。

高速でこちらの方に向かっている群れがある。数は100体ちょいのワイバーンの群れか。

それなら、サテライト・リンク起動!


『ピー!』『ただ今、アップデート中で使用出来ません。使用可能時間は未定です。』


脳内にアナウンスが流れる。


しまった!忘れてた・・・

あのガマガエル戦でサテライト・キャノンの火力不足を痛感したので、レーザーを1点に収束出来るようにアップデートしていたんだ。

まだ使えないか・・・

ワイバーンの群れが肉眼でもハッキリ分かるくらいに接近してきた。


「ミドリ!ワイバーンの群れが近づいている。大丈夫か?」


「ご主人様、お任せを。」

ミドリがそう返事をすると、大きく息を吸い込む。

その瞬間、ミドリが炎を吐き出した。目の前一面が炎で埋め尽くされる。ほとんどのワイバーンがミドリのブレスの一撃で消し炭になった。

数匹生き残っていたが、ミドリが再び口を開けると、今度はレーザーのような炎を出し、1体ずつ確実に打ち落としていった。

「ご主人様、迎撃完了です。」

強い、ミドリがここまで強いとは思わなかった。100体以上のワイバーンを瞬殺してしまうとは・・・


その瞬間、かつての龍神戦の時の記憶が甦った。

1体のグリーンドラゴンが10体以上のドラゴンに襲われていて、瀕死になっていた光景を・・・

あの時は、春菜達が無双していて、ドラゴン達がパニックになって同士討ちをしてしまっていたのかと思っていたが、もしかして・・・

「ミドリ・・・、こんな時に話す事じゃないけど、あの龍神と俺達が戦っていた時に、ドラゴン達がパニックになって同士討ちだと思って助けたグリーンドラゴンなのか?あの後ヒールをかけて俺は龍神のところに行ってしまったが・・・」


ミドリが驚いた感じで俺の前に顔を近づけた。ドラゴンだから表情が分からないんだよな・・・

それに、近い!普段の可愛い顔じゃなくてドラゴンの顔だから怖いよ!

「ご主人様・・・、思い出してくれたのですか?」

ミドリの瞳から涙が一滴溢れた。その涙が宝石になり、俺の前に落ちる。

これは・・・、何てキレイな宝石だ。虹色に輝いて、見れば見るほど引き込まれそうになっていく。


「あぁあああああああ!これは『竜の涙』!伝説の宝石ですよぉおおお!」

雪が俺の後ろで騒いでいた。無視だ!


「ミドリ、今夜、じっくり話そうな。でも、今は戦闘に集中しよう。」


「はい!ご主人様!」


「アイリス、サクラ、お前達で地上の魔獣の殲滅を頼む。サテライトで数を減らしてからと思ったけど、今は使えないからな。」

「ただし、あまりやり過ぎるなよ。」


「パパ、分かった。フェニックスやドラゴニアだと森が焼け野原になっちゃうから、別の魔法を使うね。サクラと一緒に考えてみた魔法があるんだ。」

アイリスがにこやかに返事をする。しかし、アイリスの笑顔に何か嫌な予感がするのだが・・・


「サクラ!合体魔法だよ!」「うん!」

アイリスとサクラが手を繋ぐ。2人から膨大な魔力が溢れだした。


これはヤバイ!確実に危険だ!俺の本能がそう訴えているぞ!


「「メテオ・レイン!」」


遥か上空に巨大な魔法陣が現れる。魔法陣が輝いた瞬間、魔法陣の中から大量の巨大な隕石が現れ、魔獣の群れに降り注いだ。

言葉通り、隕石の雨だ。

隕石が次々と地面に落ち、衝撃でクレーターが大量に出来ていた。上空からでも魔獣の悲鳴があちらこちらから聞こえる。魔獣は衝撃波で吹き飛ばされ、粉々になっている。逃げ惑う姿も見えるが、ほぼ全方向から衝撃波が襲っているので逃げ場も無く、次々と粉々になって吹き飛ばされていた。

あっという間にマップから全ての敵の生命反応が消えた。

目の前には大量のクレーターが出来てしまい、荒涼とした大地になっている。まさに死の光景だよ。


お前達、やり過ぎどころではない・・・


「アイリス・・・、サクラ・・・、どうするんだ?完全に環境破壊だぞ。」


「お父さん、大丈夫。お母さんから習った魔法があるからね。私1人じゃ大変だから、アイリスにも手伝ってもらうよ。」

サクラが爽やかな表情でアイリスに合図を送る。


「「再生!」」


クレーターだらけの大地が光り輝いた。光りが収まると、元の森林の姿になっている。

本当に何でもアリになったな・・・

お父さん、もうお前達を抑える自信が無いよ・・・

後ろを見ると、雪が唖然とした顔で2人を見ているし・・・


「でもね、お父さん、お母さんとフローリア母さんは、1人でこの魔法を使えるんだよね。私はアイリスと2人がかりでやっとだし・・・、まだまだ未熟だからもっと頑張るね。」


サクラ・・・、7歳でこのレベルなら十分過ぎると思うぞ。それ以上強くなると凍牙が可哀想だよ。


気を強く持とう。


「ミドリ、このまま里に向かうぞ。」


「分かりました。」


しばらく飛んでいるとフェンリルの里が見えてきた。

「ミドリ、ここで降りて、後は徒歩で移動だ。多分、あちらさんもミドリの姿に気付いているだろうな。これ以上は警戒させないようにしないと・・・」

「雪、後はお前にかかっている。俺達が怪しい者でないと、ちゃんと説明してくれよ。」


「が、頑張ります・・・」

雪が自信なさげに返事をする。何か不安だな・・・



ミドリから降りてしばらく歩くと里の入り口が見えた。

里の入り口にはフェンリル族の男達が集まっている。まぁ、あのメテオの魔法だ。あれだけの爆発があれば、森に異常があると思うのは当たり前だよな。

美冬が俺の隣に来る。

「ソータ、雪はさっきの魔法でビビッてしまってるから、私が先頭に出て交渉を行うよ。私はフェンリル族だから、私が先頭にいると、いきなり攻撃してくる事は無いと思うからね。」


「美冬、頼む。」


雪が慌てて美冬のところに来た。

「美冬!わ、私も頑張るから!だから、一緒に行こう。」


「分かった。雪も頑張ってね。」


里の入り口に着いたが、男のフェンリル族が10数人、剣や槍を手にして警戒している。

その内の1人が雪に気付き声をかけた。

「雪か、大丈夫だったか?しかし、何だこの服は?いきなり中央に毒されたのか?」

男が雪のメイド服を見て呆れているが、美冬にも気付いたようだ。

「そのフェンリル族の女は・・・、まさか美冬か?出て行った時と全く変わっていないぞ!」


「ゴメンね。あれからほとんど成長しなくて。雪が羨ましいわ。」

「私達は族長に話があって来たの。通してもらえないかな?」


「その必要は無い!ワシが案内しよう!善なる者達よ!」


男達が左右に分かれ、中央に1人の男が立っていた。他の男のフェンリル族と比べて年上だ。壮年から老年に入り始めている感じの銀髪の男だった。しかし、他の男よりも眼光が遥かに鋭い。一瞬でも油断すれば俺の首が飛ぶくらいに相手の隙が無い。間違いなく、この中では一番強いな。

俺の記憶が確かなら・・・


「「「族長ジジイ!」」」

雪、美冬、凍牙が叫んだ。


男が3人の声を受けて、鋭かった眼光が優しくなった。

そして、俺達を懐かしむような目で見てきた。


「久しいな美冬・・・、元気でやっていたか?」


「はい、元気ですよ。お久しぶりです。族長。」

美冬が恭しく挨拶をする。


やはり族長だったか。

俺の記憶とほとんど変わっていない。フェンリル族は本当に長寿な種族だよ。さすが神獣と言われているだけあるな。


美冬が不思議そうな顔で族長に尋ねた。

「族長、どうして私達が善なる者だと思ったの?私や雪がいるからといって、そんな簡単に認めるなんて不思議よ。」


族長が優しく美冬の頭を撫でる。美冬が嬉しそうな顔だ。

「こうやってお前を撫でていたが、昔と変わらんな。やはり美冬で間違いない。」

「何故かと言うとな、先ほど、エメラルド・ドラゴン様が里に近づいているのを確認しておった。卒然消えたと思ったらお前達が来たのだ。ドラゴンが近づいていたのに、お前達は平然とした顔で来たからな。お前達はエメラルド・ドラゴン様と関係があると思ったのだよ。」


「エメラルド・ドラゴン様って?」美冬が再び尋ねた。


「エメラルド・ドラゴン様は正しい心を持つ者にしか心を開かない。そして、始祖様の友人の1人だったと、我々族長には伝えられている。ワシも実際にエメラルド・ドラゴン様を見たのは始めてだが、あの緑色に煌びやかに輝く様は間違いない。」

「そして雪も無事に帰って来たのだ。美冬、お前を連れてな。お前達の仲間は間違いなく正しい心の持ち主だろうな。」

「エメラルド・ドラゴン様が来られる前には、我々も魔物の襲来を確認していたのだ。しかし、大きな轟音と地響きの後は魔物の気配が全く無い。その後にすぐお姿が見えたのだよ。エメラルド・ドラゴン様が殲滅したものと思っている。」


ミドリ・・・、お前が神格化されているよ。

里に入るまで色々と考えていたが、お前1人で全てがカタが付くみたいだ。どうやって警戒されずにと考えていた事が無駄か・・・、ちょっと悲しい・・・


「それにな、とても懐かしい気配を持つ者が2人もいるからな。」

族長がそう話すと、視線を俺に向けてきた。しかし、美冬に対する温かい視線とは違い、俺に対する視線は鋭い。まるで、俺を値踏みするような視線だ。


「ワシが分からないと思うか?ブルーに凍牙よ!」

「ワシの事を『ジジイ』と呼ぶのは1人だけしかいないからな。お前だけはすぐに分かったぞ、凍牙!」

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