異世界での初めて戦闘
さぁ!冒険だ!と意気込んでフローリアの世界に到着はしたが・・・
「はわわわぁぁぁ!」
「赤色、青色、黄色、緑色・・・、信号機みたいだな。」
「金、銀、パール・・・」
「プレゼント?」
お~い!美冬さ~ん!
見た目15歳くらいにしか見えませんが、何故そんなネタを知っているんですかぁ?
本当の年齢を知りたい・・・
今の俺たちの状況はというと・・・
無数のドラゴンに囲まれている。
異世界転生の物語の中でも、転生して異世界に到着したらすぐにモンスターに襲われるシーンはテンプレだけど、いきなり大量のドラゴンはちょっと斬新かな?
それよりも、フローリア!俺を殺ル気?
「はわわわ!蒼太さん・・・」
「春菜さん、どうした?」
「このドラゴン達ですが、どのドラゴンもフローリア様の製造ロットNoが付いていないんですよ。」
「どうも、誰かが持ち込んだみたいです。」
「そんな事を出来るのは神レベルでないと出来ません。」
婿入り候補戦の誰かの仕業に違いないか・・・
「それにしても、モンスターに製造ロットがあるなんて初耳だな。何で?」
「どれもではないですけど、ドラゴンみたいに戦術級のモンスターともなると、他の神々の争いでも被害が尋常ではなくなってしまうので厳しく管理されているんです。」
「それにしても、これだけのドラゴンを揃えられるのは相当の力のある神だと思われます。」
参ったなぁ・・・
自分1人ならどうなっても構わないが、フローリアから預ったこの4人に何かあってはフローリアに申し訳が立たない・・・
「みんな・・・、どうやって逃げよう・・・」
「蒼太さん、別に逃げる事はありませんよ。この数のドラゴンくらい全く問題ないです。」
大きな胸を反らしながら春菜さんがドヤ顔をしていた。
「鍛錬にもならんな。」
「雄ドラゴンは皆殺し・・・」
「ドラゴンの肉、美味。」
みなさん、とても頼もしいです。
さすが最強クラスの4人だな。
俺もステータスの強さがどれだけのものか知りたいし、覚悟を決めるか・・・
何せ表記が「最強です!」しか書かれていないからねぇ・・・
「よし!みんな殺るか!」
「「「「おぉぉぉ~~~!」」」」
「まず俺が先陣をきってドラゴンの群れを分断するから、後は各々で各個撃破で良いかな?」
「「「「大丈夫!(です!)」」」」
「それじゃ・・・、行くぜ!」
俺はドラゴンに向かって駆け出し、一番先頭のドラゴンの頭に向かって飛び上がり拳を振り下ろした。
・・・
拳を振り下ろすつもりだった・・・
軽く飛び上がっただけだったのに、ドラゴンの遙か上までジャンプしてしまい、眼下に豆粒ほどの大きさにしか見えないドラゴンの群れが見えた。
飛び過ぎや・・・
そのまま自由落下で落ちて、ドラゴンの上に着地した。
さすがのドラゴンも落下の衝撃に耐えられなかったみたいで絶命していた。
そのまま隣のドラゴンに殴りかかったが、胴体に大穴を開けて進路上のドラゴンをなぎ倒していった。
ちょっと強すぎ!
力加減が難しいぞ・・・
自分の力に驚いていたところに遠くから春菜さんの声が聞こえた。
「ギガ・フレア!」
目の前に閃光が走り、俺の周りの大量のドラゴンが爆発の衝撃で粉々になっていく。
一瞬の爆発の後、俺を中心にクレーターが出来ていた。
もちろん、俺は煤で真っ黒だ・・・
「は、る、な、さ~ん・・・」
「何で、俺が春菜さんの魔法に巻き込まれてるんでしょうか?」
「はわわぁぁ!すみません!緊張すると周りが見えなくなって・・・」
「気を付けて下さいよ。」
この化け物のようなステータスのおかげで俺はピンピンしていた。
フローリアに感謝。
春菜さんにドラゴンが近づいて来ていたので、牽制しにドラゴンに向かって行く。
「アイス・ランス!」
ドラゴンが無数の氷の槍に串刺しになっていく。
「痛!」
何故か俺の尻にも氷の槍が刺さった。
「す、す、すみませ~~~~~ん!」と春菜さんが俺に謝った。
別方向からもドラゴンが迫ってくる。
すかさずそのドラゴンに向き直り迎撃態勢を整える。
「フレア・ボム!」
無数の火球がドラゴンを消し炭にしていった。
「熱!」
尻に火球がぶつかった。
何故、俺の尻ばかり・・・
「本当~に!すみませ~~~~~ん!」」
春菜さんが俺に向かって土下座をしていた・・・
気を取り直して・・・
他のメンバーは?
夏子さんは華麗な剣捌きでドラゴンを切り刻んでいる。
一撃で死なないように、ジワジワいたぶっているような感じだ。
心なしか夏子さんの鼻息が荒いような・・・
「はぁ、はぁ、堪らん!」
あぁ、アレはSな人だったのね・・・
傍から見てもすごく興奮している夏子さんの様子が変わってきた。
青い髪が段々と赤色に変わって、ポニーテールに結んでいた髪がほどけてストレートの髪になった。
表情が段々と妖艶になっている。
「脱!」
夏子さんそう叫ぶとドレス・アーマーが弾け飛び、中から現れたのはボンテージ姿の夏子さんだった。
は!女王様?
「お~っほほほぉぉぉ~~~~!私を女王様とお呼びぃ~~~!」
本当にアノ女王様になっていた。
すると、俺のすぐ後ろから
「「「「「夏子様~~~~~~~~!」」」」」
「「「「「我々にもご褒美を~~~~!」」」」」
と野太い声が聞こえる。
恐る恐る振り返ってみると・・・
ガチムチの男どもがいた!
いつの間に・・・
冷静に美冬さんが
「アレは夏子の親衛隊。または下僕とも言う。夏子があの状態になると何処から現れてご褒美をねだってくる変態ども。」
解説してくれた。
普段は一番まともそうに思っていたけど、夏子さんのキャラが濃すぎる・・・
いつの間にか武器を剣から鞭に持ち替え、ドラゴンを調教していた。
ドラゴンも鞭を入れられる度に苦悶の声を上げているが、心なしか嬉しそうに聞こえるのは気のせい?
多分、墜ちるな。
千秋さんの方はどうかな?
一瞬にしてドラゴンの背に乗り、華麗に首を刎ねていく。
当事者にとって何が何だか分からないうちに首を刈られていくんだな。
さすが暗殺者のスキル持ちだ。
ドラゴンを次々に瞬殺なんて本当はすごい事なんだろうが、前者が濃すぎたから意外と普通に見えてしまう。
段々と感覚がマヒしているのかも?
このメンバーに毒されないよう、普通の感覚を忘れないよう心がけないと・・・
千秋さんがドラゴンの首をを次々と刈っていたが、「雌いたぁ~!」と叫んだ途端にそのドラゴンの尻尾を掴み、岩場の陰に引き摺り込んで姿が見えなくなった。
何かドラゴンの艶めかしい声が聞こえてきたのは気のせいか・・・
その後、ツヤツヤな表情をした千秋さんが出てきて、涎をだらしなく口から垂らしながらぐったりしているドラゴンが目に入ったが・・・
見なかった事にしよう・・・
美冬さんはと・・・
黙々とドラゴンを殴り倒している。
普通だ・・・
しかし、このメンバーだから絶対に何かあると俺の頭の中の警報が鳴っていた。
ほとんどのドラゴンが死屍累々と横たわっていた。
本当にこの4人戦闘力は尋常で無い。
俺は最初以外はほとんど何もしていない気が・・・
そう思っていると、突然この空間全体を揺るがすかの様な声が響いた。
「よくも我のドラゴン軍団を・・・」
「たかが人間だと思って舐めてたわ。」
「こうなれば我が直々に引導を渡してやる。」
今までのドラゴンなど比較にならない大きさの黒いドラゴンが空から舞い降りてきた。
「ふははははぁぁぁぁぁ!」
「我は龍神、全ての龍の頂点に立つ神の1人よ!」
「女神に求婚している他の雑魚神と一緒にするなよ。」
「我こそが女神の伴侶となるにふさわしいのだ!」
このドラゴン達はやはり他の神からの干渉だったか。
「ふふふ、これを見よ!」
何と!フローリアが龍神の手に握られていた。
フローリアは悲壮な表情をしていた。
「旦那様・・・」
た、助けなくては!
「これだけのドラゴンの群れを倒すお前達は確かに強い。しかし、これがどんな意味か分かっているな。もし、一歩でも動けば女神の事はどうなるか分からんぞ!」
卑怯な!
「お待ち下さい。蒼太様。」
春菜さんが冷静に話す。
「フローリア様は龍神ごときに捕まるような柔な神ではありません。多分ですが、フローリア様は『邪悪な竜にさらわれ、勇者に助けられる姫』を演じていると思われます。」
「でも、あの龍神は今までしつこくフローラ様に求婚をしていましたので、本気で蒼太様を亡き者にする気ですよ。」
「まぁ、蒼太様なら龍神でも瞬殺でしょうが・・・」
ニッコリと春菜さんが微笑む。
「春菜さん。お得意の誤爆でフローリアも巻き込んでヤツを消し炭にしたらどう?」
「蒼太様、さり気なく私の事をディスっていませんか?」
「確かに龍神は消し炭に出来ますけど、フローリア様は全くの無傷でしょうね。」
「それだと、またあの方はとんでもない事を考えそうで・・・」
「やはり、蒼太様が活躍するのが一番だと私は思いますね。」
仕方ない。フローリアのシナリオに付き合ってあげよう。
それに・・・
「転移!」
一瞬でフローリアの隣に移動し、竜神の手首を手刀で切り落とす。
解放されたフローリアを抱きかかえた。
「は、初めてのお姫様抱っこ・・・」
「旦那様・・・、フローリアは願いが一つ叶って、もう胸がいっぱいです・・・」
「フローリア・・・、良かったな。」
「はい・・・」
地面に降り立ち、抱きかかえていたフローリアを隣に立たせる。
「悪いけど、ちょっと危ないから下がってくれないか。」
「お、お、おのれぇ~~~~~~~!」
「我に傷を!人間の分際で神に楯突くとはぁぁぁ~~~~!」
「もう、ゆるさん!塵も残さず細切れにしてくれるわ!」
「怒っているのはお前だけでないぞ!」
「フローリアは確かに残念で、思い込みが激しくて、独占欲も強い!強いんじゃなく強すぎ!しかも、人の話を聞かないし、妄想癖もあるし、何でこんな性格で女神になれたか不思議だよ。」
「旦那様、何を・・・」
「しかしな!そんなフローリアを何処の誰か分からんヤツに好き勝手にされるのを見てたら、どうしようもなく腹が立つ!正直、俺はフローリアを誰にも渡したくない!」
「やっと、自分の気持ちに素直になれた。」
そしてフローリアに向かって
「フローリア・・・、お前が好きだ・・・」
「だ、だ、旦那様ぁぁぁ・・・」
「龍神!汚い手でフローリアに触れた落とし前をつけさせてもらうぞ!」
俺は右手を挙げ意思を集中した。
無意識の行動だったが、何故か何が起きるか分かったような気がした。
広げた掌に光が集中する。
集まった光が細長い何かの形になった。
光が消えた後、俺の手に刀が握られていた。
「日本刀?」
フローリアが驚いた表情で刀を見つめていた。
「まさか・・・、あれはブルー様の愛刀・・・」
「あの時にいつの間にか消えていたのに・・・」
鞘から刀を抜く。
今までに見たどんな刀よりも美しい。
そして、刀から何かが流れ込んできた。
「分かる。この体、刀の使い方。」
そして、「龍神!覚悟しろ・・・」
「だ、だ、だまれぇぇぇ~~~~~~~~!!!!!」
一瞬だった。
幾億もの剣閃が龍神を塵に変えていた。
龍神がいた場所に青い水晶のような物が落ちていた。
「これがクリスタルです。」
手に取るとクリスタルが光り、その光りが俺の体の中に入っていった。
「まずは1つ目ですね。」
「この調子で本当の夫婦になれるよう頑張りましょうね。」
フローリアが微笑みながら俺を見つめている。
その瞳から一滴の涙が流れた。
「また泣いてしまいました・・・、恥ずかしいです・・・」
「そんな事はないさ。」
「嬉し涙は我慢するものでないからな。」
しばし見つめ合い・・・
「フローリア・・・」
「旦那様・・・」
お互い静かに抱き合い、そして唇を重ねた。
俺とフローリアの心が確かに繋がった。