模擬戦⑦
思った以上に話が長くなってしまったので、サブタイトルを変更しました。
目の前に人の形をした巨大な炎の魔神が立っている。
「ふはははははぁあああ!どうだ!このハーレム男めがぁあああ!こいつは物理攻撃は全く通用しない!、魔法耐性も尋常ではないぞ!」
「手も足も出まい。お前が地獄を見るのだぁあああああああ!」
口元が思わずにやける。
楽しい?
そうか・・・
久しぶりだな、この緊張感は。彼女達に迫られる緊張感とは違う、戦いの緊張感だ。
俺も思いっきり解放出来るのだな。
コイツ相手なら・・・
メガネが興奮している。
「貴様!何をにやけている!ふふふ・・・、魔神と戦っても無駄と分かって、頭がおかしくなったのか?」
「だが、俺はお前が苦しむところを見たくて堪らない。」
「炎の魔神よ!ヤツを焼き尽くせ!すぐに燃やさず、ジワジワとな・・・」
「そうかい。じゃあ、俺も遠慮はしない!行くぞ!」
「トォオオオールゥウウ!・ハンマァアアアアアーーー!」
目の前に青白く放電している巨大なハンマーが出現した。
「ハンマァアアアアアーーー!、コネクトォオオオオオッーーー!!」
ハンマーの柄を掴み魔力を流すと金色に輝き始めた。
ハンマーを見た奴の顔が口を開けて唖然としていた。あまりの大口に顎が地面に刺さっている。
「う、嘘だぁあああああ!トール・ハンマーだと!あのオリジナル魔法は失われたはずだぁあああああ!」
「我が父がかつての大戦で、あまりの破壊力にトラウマになった魔法だ。それを何故、お前が使えるのだ!」
チラッと貴賓席を見てみると・・・
ガマガエルが口から泡を噴いていた。
「あの魔法は『破壊神』が使っていたモノだ。破壊神は死んだはず・・・、一体、何故なんだぁあああ!」
「何故かは、このデカブツを掃除してから教えてやるよ。じっくりとな・・・」
「はぁあああああああ!」
一気に炎の魔神の頭上まで跳躍し、ハンマーを振り下ろす。
「うおぉおおおおおっ!」
黄金のハンマーが魔神の頭部から徐々に光の粒子へと変わり始めた。
「光になぁれぇえええええええええええ!!」
炎の魔神は光の粒子となって消え去った。
「バ、バカな・・・、炎の魔神がこんな簡単にやられるなんて・・・、お前は一体何者だ・・・」
「俺か?俺はお前が言っている単なるハーレム男だよ。かつては『破壊神』と呼ばれていたけどな。」
メガネの顔から余裕の表情が無くなり、冷や汗をかき始めた。
「嘘だ!生きているはずがない!そうでないと、今の創造神様が存在しない事になる。」
「さすが、メガネだ。見た目通り陰険ガリ勉風だからか色々知っているな。」
「俺は確かに死んだ。そして非公式だが転生し生まれ変わった。転生の影響でかつての力や記憶の半分以上は無くなったが、それでも、お前がハーレムと呼ぶ妻達の力で、俺は当時以上に強くなれたのさ。お前の考えているハーレムは、俺が妻達とイチャイチャしているだけだと思っているのだろう?だが、違う!」
「俺の結婚生活を教えてあげるよ。」
「そして、お前みたいなクズ野郎相手には、俺も破壊神として残酷になれる・・・」
「霞!頼む!」
目の前に神器形態の霞が出現し正眼に構える。
「有り得ない!小娘以外にお前までも創造神様の神器に認めらているだと!神器は身内だろうと絶対に贔屓しない。強者以外には興味がないからだ。お前はそこまで強いのかぁあああ!」
「さぁ、俺がどこまで強いのか、それはお前が体験してくれ。そして、俺の妻達の強さもな。」
一気に奴の懐に飛び込み剣を振る。
「ジーグランド流剣術、秘技!ブラッディー・ローズ!」
一瞬で奴の四肢を同時に根元から切り落とし、眉間、喉、心臓へ同時に突きを出す。
「ぐぎゃぁあああああ!」
大量の血を撒き散らしながら絶命した。
「リザレクション!」
奴の体が元に戻り生き返る。
「は、わ、私は・・・、切られて、突かれて、そして死んだはずだ・・・、切り刻まれる痛みと恐怖は現実に残っている・・・」
俺はニヤリと笑い、奴を見つめる。奴は青い顔で俺を見ていた。
「メガネ、残念だったな。簡単に死ねないぞ。俺もリザレクションが使えるからな。」
「ちなみに、今の技は夏子の剣技だ。コレを覚えるまで何度殺されたか・・・、夏子と一緒になりたかったら、この恐怖を克服しないとな。」
「どうだ?耐えられるか?」
メガネがプルプルと首を振っている。軟弱者めぇえええええ!
「そして・・・、凍牙!吹雪!」「はいよ!」「OK!父ちゃん!」
両手に逆手に握られた刀状態の凍牙と吹雪が出現する。
「バカな!あの白いガキだけでなく、金髪のガキも始祖のフェンリルの能力を受け継いでいるだと!あの能力は始祖とその次の2、3代限りしか無かったはず。あの里は頑なに純血を守って始祖の力を守り蘇らせようとしているが、何でお前がそんな力を持つヤツを手に入れている?有り得ない!」
「この2人は俺の親友と息子だ。始祖の力は血だけではない。俺の妻達が教えてくれたよ。」
「さぁ、覚悟は出来たかな?」
「く、来るなぁあああああ!」
奴に向かって駆け出し、手前でジャンプして頭上を飛び越え、奴の背面に音もなく着地する。
「ぐほぉおおお!」
奴の胸から凍牙が生えて、口から大量の血を吐き出している。
「き、貴様・・・、目の前から消えたと思ったら・・・、い、いつの間に・・・、後ろに・・・」
「コレは千秋の技だよ。技というよりも技術かな?独特の歩き方と体術で相手の認識をズラして、目の前から消えたように見せる。そして背後に立ち心臓に刃を立てるのさ。今回は一瞬で殺さないように、心臓を外してあるよ。」
吹雪を横薙ぎに振る。奴の首が飛ぶ。
「そして、首を撥ね、トドメを刺す。」
「リザレクション!」
「はあ、はあ、はあ・・・、これは悪夢か・・・、私が子供扱いだと・・・」
「残念ながら現実だ、そして、まだまだ続くぞ。しっかり気を持ってろよ!」
瞬歩で一瞬にして奴の目の前に移動する。
「金剛神掌ぉおおおおお!」
諸手の掌底突きを鳩尾にブチ込んだ。俺の掌底が手首まで奴の腹に食い込んだ。
「へぎゃぁあああ!」
奴の口、鼻、目、耳などから血が流れ出している。
「これは、美冬が得意としている『白狼神掌拳』の奥義だ。これを美冬が独自に発展させたのがマグナムとファントムだ。」
「本当は同時に行うのだが、今はお前にレクチャーしてるからな。この状態で魔力とは違う『気』を流し込むとこうなる。」「ふんっ!」
その瞬間、奴の背中に波紋が広がり、背中が弾け大量の血と内臓が飛び出した。
「ひでぶぅ!」
「リザレクション!」
腰を抜かしてガクガクしているダーナの前に立ち、右手を手刀の形にして上げ振り下ろす。
「ちなみに、これは凍牙が得意な『白狼斬魔拳』だ。」
少しづつ奴の体が縦にずれ始める。
「い、いやだ、か、体がずれるぅううう・・・、ひゃはぁああああ!」
「リザレクション!」
生き返ったダーナだが、俺の顔を見た瞬間に土下座をした。
「ゆ、許して下さい!私が思い上がってました。もう2度とあなた様には近づきません!ど、どうかぁああああああ!お願いします!」
「まぁ、俺達にちょっかいさえ出さなければ、お前達の事なんかどうでもいいんだけどな。」
「や、約束します。もう2度と・・・」
「そうかい・・・」
そう言って、振り向きみんなのところに戻り始めた。
「バカめぇえええええええ!どんな手を使っても、最後に勝てばいいんだぁああああああ!」
「死ねぇええええええええええ!」
奴から大量の魔法が飛び出し、俺に向かってくる。
「やっぱりな・・・」
「シールド・ビット・・・」
三角形のシールドが奴の魔法を全て防ぎ、再び奴に対峙する。
「う、う、嘘だぁ・・・、お前までが春菜様のオリジナル魔法を・・・」
俺はニヤリと笑う。
「そうだ・・・、この魔法は本当に覚えるのは地獄だった。あまりにも難し過ぎて何度も頭がパンクしそうになったよ。でもな、これはスゴイ。オートで防いでくれるからな。」
「俺もフローリアや春菜ほどではないが、100以上の多重起動も出来るぞ。見てな。」
俺の周囲が魔法陣で埋め尽くされた。
「クズはどこまでもクズだな。後ろからの不意打ちは予想してたよ。」
「そして、サクラの地獄の拷問を真似をさせてもらうよ。」
「ダーク・スフィア!」
漆黒の玉が奴の周りにまとわりつき飲み込まれ消えた。
「リザレクション!」
「サテライト・リンク起動!サテライト・キャノン発射!」
無数のレーザーに貫かれ、悲鳴を上げる間もなくハチの巣にされる。
「リザレクション!」
「衛星の中には、機械神族最強の武器を積んだヤツもあるんだよ!」
「次元衛星砲!発射ぁあああ!」
上空から超極太のレーザーが降り注ぎ、奴を一瞬にして飲む込み闘技場も消え去った。闘技場があった場所は、底が見えない穴が開いてしまった。
「義父さん、スミマセン・・・、やり過ぎました・・・」
義父さんはカラカラ笑っている。
「良い良い、面白いモノを見させてもらったから満足だ。それにな、息子よ、おかげでこのアホ一族も終わったぞ。奴の屋敷から大量の首輪が見つかったからな。」
「さて、ワシもコイツをどう料理しようか・・・」
義父さんに黒い笑みが浮かんでいる。ガマガエルが拘束されていた。終わったな・・・
「息子よ、まだ終わっていないんだろう?ほれ!」
闘技場が一瞬で元に戻った。
「最後の仕上げを、ワシはここで見させてもらうぞ。」
「分かりました。」
「リザレクション!」
闘技場の上でダーナが生き返った。
俺の顔を見た瞬間、悲鳴を上げて後ずさる。
「ひっ!ひぃいいい!く、来るなぁああああああ!」
「どうだ?女に溺れたハーレム男の力は?お前の言う通り大した事なかっただろう?」
メガネがプルプルと首を振って「許して下さい!」と言って懇願している。
「お前は見栄や快楽の為にハーレムを作ろうと考えていたのだろう?そんな考えだから、俺が女に囲まれて良い目を見ていると思っているんだろうな。俺はそんな事は1つも考えていない。俺はみんなを幸せにしたい。それならいくらでも苦労するし、強くなる。だから、強くなる為に妻達にも協力してもらっている。守る力にする為にな。」
「そして、妻達も守られるだけではなく、みんなを守る為に努力をしている。だから、俺達はどこまでも強くなれる。自分が偉いと思ってふんぞり返り、自分を磨こうとしない連中には絶対に負けない。」
メガネを睨みつける。
「これが俺達家族の有り方だ。」
「だから、俺達の絆に土足で入り込むような奴は絶対に許さない!」
「出でよ!神器、クローディア!我の呼びかけに応えよ!」
目の前の地面が裂ける。その割れ目から黄金の輝きが発せられた。割れ目の中から黄金に輝く巨大な剣がゆっくりと浮上し、俺の前で浮かんでいる。それを握り数度振り、奴に向かって構えた。
奴の目がこれでもか!と言えるくらいに見開いて、口がパクパクしている。
「こ、これは!フローリア様の神器!神器の中で一番気難しく、気に入らなければマスターでさえ殺してしまうと言われている・・・、それを何でお前が・・・」
クローディアが輝き人の姿になって、俺の隣に降り立つ。
会場の男全てを虜にするような微笑を浮かべ俺に寄り添った。
「マスター、どうだった?私の演出?カッコ良かったでしょう?フローリアからマスターの趣味を色々と教えてもらったのよ。」
「最後のボスキャラを倒す時の必殺技の演出みたいだったよ。とても良かったぞ。さすが、クローディア、俺の趣味を分かってくれているな。」
「ふふふ・・・、マスターに喜んでもらって嬉しい・・・」
クローディアがニコニコと微笑みながら、俺の腕に抱きついてきた。
メガネをチラッと見ると・・・
余程ショックだったのか、石となっていた。
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