模擬戦④
気絶したミドリを美冬に預ける。
「美冬、ミドリを頼んだぞ。」
「うん。」
美冬が膝枕でミドリを休ませ、頭を優しく撫でている。
「それにしても・・・、ミドリ、色々言ってたね。多分、覚えてないと思うけど・・・」
「覚えていない方が幸せだろうな。かなりヤバい発言も多かったし・・・」
「ソータ、ミドリの事どうするの?」
「あぁ・・・、あそこまで俺に対する想いが強いとは思わなかった。嬉しいよりも、ちょっと怖くなったぞ。まるで誰かさんみたいだよ。」
フローリアとアイリスが盛大にくしゃみをした。
「ここまで俺を想ってくれているんだ。みんなも応援しているし断る訳がないだろう。クローディアと同じでアイリスが成人してから一緒に結婚だな。美冬、また嫁さんが増えてしまうけど、ゴメンな・・・」
「大丈夫だよ。みんなミドリの事が好きだから問題ないよ。それに、私のソータが好きな気持ちは変わらないから。そして、ソータにもっと好きになってもらうように頑張るね。」
「美冬、ありがとう・・・」
「ソータ・・・、好き・・・」
「はいはいはいはいは~い!お2人さん、イチャつくのは家に帰ってからね。パパ、その甘い空気を私にも頂戴ね。必ずだよ。」
アイリスが腰に手を当てて仁王立ちになっている。
「お父さん、お母さんに美冬母さんと内緒でイチャついてたって言いつけるわよ。」
サクラがニヤニヤした顔で見ていた。
「蒼太・・・、子供達の前なんだから、少しは自粛しろ。」
凍牙が呆れた顔で見ていた。
「わ、悪い・・・」
流石に恥ずかしい・・・、美冬も真っ赤になっていた。
「パパ!次は私が行く!」
アイリスが元気よく手を上げる。
「アイリス・・・、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ、パパ。私も行くって決めたから、絶対に足手まといにならない!見ていてね。」
「分かった。でも、あんまり無理すんなよ。」
「は~い!」
そう言って、アイリスは闘技場の中央まで走っていったが心配だ。クローディアをKOするくらいに強いのは分かるが、まだ8歳だからなぁ・・・
「蒼太、次のヤツが出てきたぞ。あの感じだと女魔法使いだな。魔力もかなり高い。アイリスの実力だとヤバいかもしれん・・・」
何だと!凍牙の相手の力量を見る目はかなりのモノだ。凍牙が実力者と言うとなると間違いない。
仕方ない・・・、アイリスは棄権させるか・・・
「アイリス!お前では勝てない相手だ!戻ってこい!」
しかし、アイリスはニコッと俺に微笑んで念話で返事が返ってきた。
【パパ、大丈夫。確かに今までの私だったら勝てなかったかもしれない。でも、今は違うの。パパと一緒に行くと決めた時に新しい力に目覚めたの。だから安心して。】
【分かったよ。お前は1度言い出したら聞かないからなぁ・・・、誰に似たのやら・・・】
【でもな、絶対に無理をするなよ!】
【私は大大大大大~~~~~~好きなパパの子だよ。パパに似てるに決まってるじゃない。安心してパパ。今の私は絶対に負けないからね。】
「凍牙、俺って頑固か?」
「蒼太、急に何を言い出すんだ?まぁ、お前は我が家1番の頑固者だな。それは間違いないよ。その次はアイリスかフローリアだな。それがどうした?」
「いや、何でもない・・・」
「アイリスが戦うと言っている。絶対に負けないとな。凍牙、黙って見守ろう・・・」
「分かった。お前が言うならアイリスが勝つだろうな。あの強敵相手にどう勝つか楽しみにしているよ。」
アイリスが距離を取って相手と対峙している。
相手は真っ赤なローブを纏っている。フードを深く被っているので顔は口元だけしか見えない。
「あら、可愛いお嬢ちゃんね。お姉さんが可愛がってあげるから、色々とね・・・、でも、あなたの力じゃ、この私に勝てないわ。子供をいたぶるのは趣味でないけど、私は逆らえない命令を受けているの。戦いになったらいたぶるようにね。本当は嫌なんだけど仕方ないわ。」
「だから棄権しなさい。この私には勝てないのだから。」
アイリスがニコッと相手に微笑んだ。
「ありがとう、お姉さん。悪い人ではないみたいだね。残念ながら、私は戦うよ。でもね、私を子供と思って舐めてたら、思いっきり恥をかくよ。その事を私が教えてあげる。」
相手の魔力が膨れ上がった。
「このガキが・・・、大人しくしていれば調子に乗りやがって・・・」
アイリスはまだニコニコしている。
「調子に乗ってないよ。見せてあげるね。私の真の力をね。」
そして真剣な表情になり叫んだ。
「装着!バトル・ドレス!我の呼びかけに応えよ!神器、霞ぃいいいいい!」
アイリスの全身が光った。光が収まると、そこにはフローリアや春菜と同じデザインの純白のドレス・アーマーを纏い、霞を構えた姿のアイリスがいた。
「アイリス・・・、その姿・・・、お前、まさか・・・」
「うん、パパ・・・、私、目覚めたんだ、女神にね。この前、パパから一緒にフェンリルの里に行ったらダメだと怒られた時に・・・」
「いつも私はパパやママ達みんなに守られていた。でも、私もパパを守りたい、パパを傷つけるヤツから守りたい、パパと一緒に戦いたい。そう強く願ったの・・・」
「そう願っていたら、私の中から声が聞こえたの。『もう間違えないでね。私の力を正しく守る為に・・・』って・・・」
「だからパパ・・・、私はもう守られるだけではないの。これでパパと一緒に戦える。みんなを守る事が出来るんだ。私の中のもう1人の私の願いと一緒にね。」
「分かった。アイリス、もう止めないぞ。お前の好きに戦え。そして、必ず勝てよ。」
「うん!」
アイリスが飛びっきりの笑顔で返事をしてくれた。
ガーネット・・・、ありがとう・・・
これが、お前が最後のあの時に望んでいた未来だったのか・・・
相手はかなり動揺している。
「う、嘘でしょ・・・、あの姿・・・、何であんな子供が女神の力を持っているの?それに、手に持っているのは創造神様の神器じゃない。ただの神族の私が勝てる訳がない・・・」
アイリスが霞を正眼に構える。
「行くよ、お姉ちゃん・・・」
「清流剣!」
アイリスが目にも止まらぬ速さで相手の脇をすり抜け、後ろで見事な残身の姿で佇んでいた。
「な、何!私、何をされたの?」
女が慌てて自分の体を確認している。
「何ともない・・・、お嬢ちゃん、ただ私の横をすり抜けただけ?そんなこけおどしを・・・」
アイリスがくるっと女に向き直り、ニヤリと笑う。
「お姉さん、舐めたら恥をかくって、私、言ってたよね?だから・・・」
そして、指をパチンと鳴らした。
女の服のあちこちに少しずつ切れ込みが入っていく。
「な、な、何~!私の服に何をしたの!」
そして、服が一気に弾け飛んだ。
凍牙が鼻血を噴き出した。
陰険メガネ軍団、観客席の方からも「おぉおおおおおお!」と声が上がる。
女は一糸まとわぬ姿で立っていた。
可愛い!そして、見事なスタイル!アイリス、ありがとう・・・
女は一瞬、自分の状況に気付かなかったが、すぐに裸にされた事に気付き、慌てて腕で大きな胸を隠し座り込んでしまった。
「きゃぁああああああああああああ!」
「いやぁああああああああああああ!」
「見ないでぇええええええええええええええ!」
アイリスが黒い笑みでニヤニヤしている。
「お姉ちゃん・・・、だから言ったでしょう。恥をかくってね。」
「凍牙!大丈夫か?」
凍牙が鼻血をダラダラ流しながら、フラフラの状態で立っている。
「あぁ・・・、何とか・・・」
「アイリス・・・、見事だ。俺にも大ダメージを与えるなんて・・・」
いや、凍牙、それは違うと思うぞ。
アイリスが右腕を上に掲げている。
「お姉ちゃん、悪い人ではないけど、勝負はきっちり着けさせてもらうね。」
「滅びよ!ドラゴニア・プロミネンス!全てを焼き尽くせ!」
アイリスの頭上に、巨大な炎の竜が出現した。
あの凶悪な魔法も使えるようになったのか!
マズイ!アレは今使っていいようなモノじゃない!
「凍牙!」
「分かってる!」
アイリスが腕を女に向けて振り下ろす。
「炎の竜よ、行けぇええええええ!」
巨大な炎の竜が女に迫る。
「いやぁああああああああああああ!」
「し、死にたくないぃいいいいいいいいいい!」
「乱れ雪花月ぁあああああ!」
女の目の前で炎の竜が消え去った。
「ふぅ・・・、間に合った・・・」
俺は女の目の前に立って、斬撃で炎の竜を消し去った。
「凍牙、サンキュー!」
刀が白く光り、元の凍牙の姿に戻る。
「悪かったな。怖い思いをさせて・・・」
上着を女の肩にかけてあげた。
女は不思議そうな顔で俺を見ている。
「何で、私を助けるの?敵なのに・・・」
「お前は悪い奴じゃないみたいだしな。アイリスも言っているんだ。あいつはあれでも人を見る目は確かだ。」
「それに、逆らえない命令を受けていると言ってたよな?お前みたいな可愛い子が無理やり戦わされるのは見ていられないよ。」
女の顔が赤くなった。
「わ、私が可愛い・・・」
少し俺を見つめて「ありがとう・・・」、そう言って顔を背けた。
アイリスが驚愕した顔で俺を見ている。
「パパ・・・、何で・・・」
「アイリス、この魔法は言葉通り全てを一瞬にして焼き尽くしてしまう。魂さえもな。そうなると、いくらサクラでも蘇生は出来ない。俺の言っている事が分かるな?」
アイリスの目から涙が溢れてきた。
「パパ・・・、わ、私、そんなつもりで・・・」
「し、知らなかった・・・、この魔法の力を・・・」
アイリスの前まで歩き、優しく抱きしめてあげる。
「アイリス、お前はまだ目覚めたばかりだからな、仕方ないさ。力の使い方をこれから教えてあげるよ。みんなで・・・、お前が望む守る為の力をな。」
「パ、パパ・・・、ごめんなさい・・・」
「う、う、うわぁああああああん!」
「泣くな、アイリス。可愛い顔が台無しだぞ。落ち着くまで抱っこしてあげるからな。」
アイリスが強くしがみつき、胸に顔を埋めた。
「ありがとう、パパ・・・、大好き・・・」
「凍牙、戻るぞ。次はサクラだな。あいつの強さは別格だから、奴等の驚く顔が楽しみだよ。」
「そうだな。」
凍牙がニヤリと笑った。
陰険メガネが大量の冷や汗をかいている。
「し、信じられん・・・、私の自慢の魔法師団が、何も出来ずにやられてしまうなんて・・・」
「あのフェンリル族のガキは何なのだ?剣に変化出来るなんて・・・、アレは始祖のフェンリルの能力だぞ。今のフェンリル族には無い能力のはずだ。一体、アイツは何者だ?」
「そして、あの炎の竜の魔法・・・、あれは闇堕ちしたあの女神のオリジナル魔法だ・・・、あいつ以外に誰も使えないはず。それをあんな小娘が使うとは一体・・・」
「あのエメラルド・ドラゴンの娘といい、あいつの周りの戦力は一体どうなっている。異常だぞ!私は喧嘩を売る相手を間違えてしまったのか・・・」
「いや!まだ私とNo.1が残っている。必ず勝てるはずだ。絶対に・・・」
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