フローリアの想い②
長い戦乱が続いたが候補者はとうとう2人に絞られた。
1人は『常勝のレオ』と呼ばれたレオ様。
総勢5万以上の軍隊を率いて、その一番先頭に立っていた。
そして、レオ様の視線の先にただ1人立っている人物がいる。
『孤狼のブルー』と言われたブルー様だった。
何故、この2人が戦わなくてならない・・・、この場にいるのも辛かった・・・
「ブルー、久しぶりだな。やはり最後まで残ると思ってたぜ。」
「それにしても、たった1人で敵陣に飛び込んであっという間に大将首を落とす技能、さすが俺と同じ師匠に鍛えられただけあるな。お前を見ていると俺の血も騒ぐわ。」
やはり2人は知り合いだったのですね。
「ところで・・・、お前は創造紳になったらどうするつもりだ?」
「俺は誰も悲しまないみんなが笑いあえる世界にしたい。」
その言葉を聞いたレオ様が思いっきり大声で笑う。
「これは面白い!まさか俺と同じ想いだったとはな。もし俺が負けても、俺の意志はちゃんと受け継がれるのか。やはり俺が見込んだ男だな。」
「これで心置きなく戦える!」
レオ様が「フローリア、どうした?何か顔色が悪いぞ?何でアイツを見ている?」
「はぁ~!そういえば前に誰かに助けられたよな?」
「そうか・・・、お前は分かりやすいよ。これで負けられない理由が増えたな。」
レオ様がとても優しい目で私を見つめてくれた。
「フローリア。お前は孤児だが、俺はお前を実の娘と同じように思っている。娘の相手がどんな奴か見極めるのが父親の役目だ。」
「レ、レオ様!」
「この俺がお前にふさわしい相手か見極めてやるさ。いつの時代も娘の恋路に茶々を入れるのは父親の悲しい性だよ・・・」
「おい!お前たちは絶対に手を出すなよ。これは俺とアイツとの意地をかけた戦いだしな。」
「万が一俺が負けて死んだら、アイツの元で頑張ってくれ。異論は許さん!」
「ブルー~~~!行くぞ!」
「ああぁ・・・」
そして2人の戦いが始まった。
その戦いは私の想像を超える凄まじいものだった。
剣を打ち合えば衝撃が飛び、剣圧で地面が割れる。けん制レベルの魔法でも我々の最上級呪文に匹敵する威力だった。
次元が違う。例えこの5万の軍勢が加勢しても、あの2人の戦いに入れないだろう。
ブルー様の素早い剣がレオ様の頬を裂き、レオ様の魔法がブルー様の脇腹を抉る。
どれだけ剣を交えたのだろう。
互角の戦いなのか、もうお互いに満身創痍の状態だった。
「様子見は飽きたな。次で勝負をかけるか?」
「望むところ。」
「じゃぁ、行くぜ!」
これで勝負が決まる気がした。
レオ様が並列起動で無数のマジック・ランスを放つ。
数は尋常ではない。
全方向視界を埋め尽くすほどの魔法だ。
間髪を入れずに同様に最上級魔法のギガ・フレアを放ち前後左右上と逃げ場がないよう放つ。
レオ様の尋常でない魔力量でないと出来ない技だ。
例えマジック・ランスを防いだり避けたとしても、直後のギガ・フレアが襲い掛かる。
普通なら絶対に防御出来ない。
しかも、万が一魔法の嵐から逃げられたとして、同時に魔法と一緒に飛び出したレオ様の剣撃が待っている。
この技を切り抜けた人は誰も見た事がない。
もしかしてブルー様なら・・・と思いもしたが、やはり倒される未来を想像してしまい、思わず一瞬目を閉じてしまった。
しかし一瞬のうちにブルー様はマジック・ランスを剣の一振りで散らし、ギガ・フレアを反射魔法で弾いてしまう。
私が一瞬目を閉じたのその時が2人の勝負の分かれ目になってしまった。
目を閉じた為に反射された魔法が私の方に向かっていたのに気付くのが遅れた。
防御魔法をかけようとしたが間に合わない!
私は死を覚悟したが、魔法が届く前に何故か防御魔法が展開された。
その瞬間ブルー様と目が合った。
迫り来るレオ様の斬撃を無視して私に防御魔法をかけてくれたのだった。
何故かブルー様は笑っていた。
その直後、ブルー様は切られた。
レオ様に袈裟切りされた瞬間はひどくゆっくり見えた。
そして私は走り出した。
「ブルーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
血だまりの中に倒れているブルー様を抱き上げたが、一目でもう助からない状態だと分かった・・・
「何で!何で私なんかに!」
涙が止めどなく溢れてくる。
「何で・・・、だろうな・・・」
「思わ・・・、ず・・・、体が・・・、動いち・・・、まった・・・」
「お・・・、前を・・・、失・・・、いた・・・、くな・・・、かった・・・」
「神・・・、界一の・・・、美・・・、人に・・・、看取られ・・・、るなんて・・・、俺・・・、は・・・、幸せ・・・、もの・・・、だ・・・、よ・・・、な・・・」
「ブルーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「本・・・、当は・・・、お前の・・・、事が・・・、好きだっ・・・」
「た・・・」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう声にならず、ひたすら泣け叫んだ・・・
そして、レオ様が創造紳となった・・・
神界も平和になり私は女神となる。
創造紳様の尽力により、戦乱で荒れた神界も復興し平和となった。
神殿のバルコニーで神界の風景を眺める。
「これがブルー様の望んだ未来なんですよね。皆が笑いあい楽しい世の中になりました。」
「・・・、でも・・・」
涙がこぼれる。
「私は心から笑う事が出来ません・・・、あの時からずっと心に穴が空いている気がします・・・」
「フローリア様。創造紳様がお呼びです。」
「フローリアです。何用でしょうか?」
「おお、来たか。お前に婚姻の話を持ってきたぞ。」
「ワシが選んだ間違いない神だから、必ずお前を幸せにしてくれるはずだぞ。お前の幸せがワシの望みだからな。」
「いえ、何度も言うようですが、その話はお断りさせていただきます。」
「やはり忘れられんか?」
「・・・」
「私はブルー様に一生を捧げると心に誓いを立てました。未来永劫、他の方とは結婚する事はありません。」
「そうか・・・、仕事で疲れたから、ワシは今から昼寝をするぞ。」
「はぁ!」
「ただ、時折寝言が出る事があるので、聞き流しておくれよ。」
「ぐ~ぐ~・・・、むにゃむにゃ・・・」
「ブルーの魂は実は滅んでおらん。今は地球の神のところの輪廻の輪に入っているみたいだな。」
「今は間に合わんが、転生した人間が死んだらその魂を輪廻の輪から外せるかも?」
「1人くらいなら地球の神も気付かんかもな。ぐ~ぐ~・・・」
「創造紳様・・・」
私は大急ぎで地球という星に向かった。
「ふふふ・・・、さっきまで死んだ様な目をしていたが、いきなり目が輝きだしたな。」
「フローリア・・・、幸せになるんだぞ・・・」
「でもなぁ・・・、あ奴は思い込みが激しいし、独占欲も強いからなぁ・・・」
「ブルーの転生体も大変じゃぞ。同情するわ。」
確かにブルー様の魂の波動を感じる・・・
心に空いた穴が埋っていくのが分かる・・・
そしてブルー様の転生体を見つけた。
母親に抱かれた赤ちゃんだった。
ニコニコ笑っている。
その笑顔はブルー様の笑顔と同じだった。
そして、その子の成長を見守った。
戦争に駆り出され大変な目に遭ったり、サラリーマンで上司にペコペコ頭を下げたり・・・
そして結婚・・・
この女狐めぇ~~~~~
見守り続けた蒼太様の人生の中で私が一番忘れられない場面があった。
蒼太様と奥さんが並んで座っている。
その周りに子供や孫、ひ孫に囲まれてみんなニコニコしていた。
この光景こそがブルー様の一番望んだ世界だったのだろう。
そして・・・
いつか私も蒼太様の隣に座り、多くの子供達に囲まれニコニコ笑いあえる幸せな家庭というものを作りたい。
待ち望んだ蒼太様の私の世界での転生の願いが叶った。
それにしても・・・
ブルー様も蒼太様もうっかりみたいな感じで死んでしまうなんて・・・
やはり同じ魂なんでしょうね。
「ふふふ・・・」
「蒼太様・・・」
「今度こそ私たちは幸せになりましょうね。」
次回から平常運転になります。