クローディア④
しばらくすると、みんながリビングに集まってきた。
子供達は義母さんとフローリアのところに行き、ガーネットを見て喜んでいた。
昨年生まれたルルで慣れているみたいで、ガーネットを嬉しそうに順番で抱いている。
その子供達を夏子達が微笑んで見ていた。
クローディアが俺の隣に来たが、何故か申し訳なさそうな顔で見つめている。
「マスター、お願いが・・・、春菜達と話をしたい。ここだと子供達もいるから、ちょっと別の場所でお願いしたい・・・」
「一体何だ?まぁ、分かったよ。」
「春菜、クローディアが話しをしたいみたいだ。夏子達を集めて、奥の部屋に行ってもらえないかな。」
「分かりました。じゃぁ、行きますね。」
春菜が念話でみんなに連絡をして、フローリアと義母さん以外の大人が部屋に集まった。
クローディアがみんなの前に立っていた。
「クローディア、どんな話だ?」
クローディアがいきなり土下座をする。
「ちょっ、お前!一体何をしてるんだ!」
さすがにビックリするぞ。
「マスター、これは私なりのケジメの付け方です。今までの私の態度がみなさんに不快な思いをさせていましたから・・・」
千秋が彼女の指輪に気付いた。
「クローディア・・・、その指輪。まさかお前・・・、蒼太さんと・・・、本気なのか?」
「はい、本気です。そして、フローリアから認めてもらいました。今はまだ婚約ですが、アイリスが成人となった時に正式に妻になる事を・・・」
「だから、私はみんなと一緒にいたい。でも、今までの私は嫌な女でした・・・、アイリスのおかげで私が間違っていた事に気付かされました。特に、ロイヤルガードだった春菜達には嫌な態度ばかりしていた自覚はあります。今の私のままでは、私が一緒に暮らす事はみなさん嫌でしょうし・・・」
全員が息を呑んだ。静寂が広がる。
「これで許してとは言いません。ですが、チャンスを下さい。私がみなさんと一緒になれる資格が欲しい・・・、どうか!お願いします!」
そうか・・・、アイリスが言っていたな。みんなと仲良くして欲しいと・・・
彼女なりに考えての行動か・・・
春菜がクローディアの前に立ち、彼女の手を取り立たせてあげた。
「クローディアさん、私達はあなたの事を嫌ってはいませんでしたよ。お互いに本音をぶつけ合える仲間だと思っていましたから。だから、そんなに卑屈になる必要はありません。でも、自分の事を反省し謝る事はとても勇気がいります。それを、あなたは実行出来ました。もう、あなたは私達の家族ですよ。資格云々なんて言いません。お互いに助け合う気持ちが私達家族の1番大切な事ですからね。」
そして、ニッコリとクローディアに微笑んだ。
「ようこそ、クローディアさん。私達と一緒に頑張りましょうね。」
「はい・・、ありがとうございます・・・」
クローディアが春菜に抱きつき思いっきり泣き出した。春菜が優しく抱きしめてあげる。
「今までずっと霞さんと2人っきりでしたから、淋しかったのですね。もう強がる必要もありませんから。私には分かりますよ。あなたは本当はとても優しい人だと・・・」
春菜がクローディアから離れ、みんな順番に彼女とハグをしていた。
この様子なら、一緒に暮らしても大丈夫だろう。彼女に気付かせてあげたアイリスに感謝しないとな。
「さぁ、みんな、子供達のところに戻ろう。いくら義母さんとフローリアがいても、ガーネットがみんなに揉みくちゃにされていては堪らんからな。」
みんな部屋から出て行ったと思ったが、夏子と千秋がミドリと楽しそうに部屋に残って話をしている。3人がチラチラと俺を見て、2人がミドリとハグしているし・・・
まさか、夏子と千秋に根回しをしているのか?
いや、そんな考えはミドリに失礼だな。俺も疑ってばかりではダメだ。
リビングに戻ると、フローリアと義母さんが話があると言って隣のダイニングの方に連れて行かれた。
別に内緒の話でもないから聞かれても良いのだが、子供達が寄ってくるからゆっくり話がしたいとの事だった。
「旦那様、クローディアの事ありがとうございます。これで、この家でちゃんと暮らせるようになりましたね。今まであんな態度でしたから、みんなに溶け込めるか心配してましたから・・・」
「いや、俺は何もしてないよ。アイリスが彼女に気付かせて、彼女が自分で考えて行動した事だからな。ちゃんと謝る事が出来たから、あんな風にみんなと一緒にいれるのだろう。」
「そうですね・・・、みんなと一緒にいて、あんな楽しそうな顔は初めてですよ。良かった・・・」
「私はまた帰りますが、戻って来た時に、ミドリさんがガーネットの世話を是非させて欲しいと言ってましたね。ルルで世話をマスターしたから、ガーネットでも問題無いという事ですよ。そして、将来、自分の子供が生まれた時はこれで安心だと言ってましたよ。若いのにちゃんとしてますよね。」
「そうだな。」
フローリアがミドリは若いと言っているが、一体いくつなんだ?謎だ・・・
「出来れば、旦那様の子供が欲しいと言ってましたね。この言葉を言った時のミドリさんの表情の可愛らしい事・・・、思わず私も応援したくなってしまいましたよ。私もミドリさんなら旦那様の妻にしても良いかも・・・」
「えっ!ミドリがそんな事を・・・、俺は何にも聞いていないぞ。」
ヤバイ!フローリアも攻略されている。
「あの子は見た目と違ってシャイですからね。中々、旦那様に言えないのかも?アイリスの成人の時は、一気に旦那様のお嫁さんが増えるかもしれませんね。楽しみですよ。」
「そ、そうか・・・、まぁ、まだ時間があるから、その事はゆっくり考えような。」
マジか・・・、ミドリはみんなに相当気に入られているぞ。俺はあんまり彼女の事を知らないのに、このままでは嫁確定だ。1度、どう考えているかちゃんと本人と話をしないといけないぞ。
アカにミドリが何者なのか、それとなく聞いておこう。
「蒼太さん、どうしました?顔色があまり良くありませんが・・・」
義母さんが不安そうな顔で俺を見ている。
「大丈夫ですよ。何か俺の知らないところで話が進んでいる事を聞いたもので・・・、まぁ、悪い話ではないから安心して下さい。」
「そうですか・・・、ミドリさんが蒼太さんの事を心配していましたよ。『最近、色々と大変で疲れているのでは・・・』と、『私がしっかりして支えてあげなくては!』と言っていましたね。彼女は最近見ない良い子でですね。妻にするには十分な人格者ですよ。私は応援しますから。」
嘘ぉおおおおおお!まさかの義母さんまで根回し!間違いない!ミドリに完全にロックオンされている・・・
さっきの3人の会話も夏子と千秋を攻略していたのだろう。あのハグまでしている感じだと、あの時点で既に攻略が完了されているに違いない。
残るは美冬とマリーか・・・、もう時間の問題かも・・・
恐るべし、ミドリ・・・
「それと、クローディアの事は本当にありがとうございます。これで、霞も主人と私の3人でずっと一緒に暮らせるようになりました。彼女1人あの空間に残すのはとても残酷でしたから・・・、昨日は霞が浮かれてずっと主人と一緒にいたもので、余計にあの子に淋しい思いをさせてしまったと思います。あの子は強がっているだけで、かなりの寂しがり屋さんですからね。」
「それは分かります。でも、もう彼女は大丈夫ですよ。新しい居場所が出来ましたし、みんなにも受け入れてもらいましたからね。」
「本当に・・・、あの子があれだけ喜んでいますからね。あんな嬉しそうな顔を見ていると、私まで嬉しくなってきます。」
そう言って、義母さんが少し涙ぐんでいた。
その日の夜
俺は春菜、夏子、千秋、美冬の5人で寝室にいる。
まだ就寝前なのでみんなソファーで寛いでいた。
「このメンバーだけで一緒にいるのも久しぶりだな。お前達と初めて会ってから10年近くか・・・、何かあっという間に時間が過ぎた感じだな。」
春菜が頬笑みながらてきぱきとコーヒーを淹れてくれる。
「そうですね。当時はこうなるなんて全く思っていませんでしたよ。単なる護衛として一緒に旅をするだけでしたから。それが今では・・・、ふふふ・・・」
そして、コーヒーを渡してくれた。一口飲む。
「美味いな。春菜が淹れてくれたコーヒーが一番だよ。呪いが解けて本当に良かったな。あの頃の春菜は別の意味で凄かったから・・・」
春菜の顔が真っ赤になる。
「もう!その時の話はしないで下さい。いくら呪いで家事が全くダメだったとしても、女として本当に恥ずかしいんですから・・・、あなたの意地悪・・・」
「ごめん・・・」
夏子が隣に座り腕を組んできた。
「そうだよ、旦那様。春菜にとって、あれは黒歴史なんだからな。でも、私も旦那様と結ばれる前は同じか・・・」
夏子の髪が赤色に変わった。
「そうだな、私のせいで夏子には淋しい思いをさせた。でも、旦那様はこの私を受け入れてくれた。人と交わる事を諦めていた私に希望を与えてくれたんだ。」
青色の髪の戻った。
「孤独に恐怖を抱いていた私と渚を旦那様は救ってくれた。もう他の人に怯える事もなく、自由に生きる希望をな。だから、クローディアの気持ちはよく分かる。旦那様、彼女も救って欲しい。同じ長い孤独から怯えていた者の気持ちとして・・・、私達からのお願いだ。」
「もちろんだよ。彼女は必ず救ってあげるさ。そうでないと、アイリスも悲しむからな。」
千秋が夏子の反対側に座り寄り添ってくる。
「男に酷い目に遭わされ天使に転生して、その力で幾多のクズ男を殺してきた私だったが、こんなにも男に依存するようになるとは思わなかった。もちろん、蒼太さん限定だし、未だに男嫌いは治らないけど・・・」
「でも、蒼太さんのおかげで私は女の幸せを感じている。もう、蒼太さん無しでは生きられない程に・・・、あの時の約束を守ってくれてありがとう。こうして寄り添っていると、本当に幸せ・・・」
美冬が俺の膝に乗って抱きついてきた。
「ソータ・・・、私は最初はブルー様の生まれ変わりとしてしか見ていなかったけど、旅を続けるうちにソータという人に惹かれていった。ただ強いだけでなく、みんなを思いやる優しさ、そして諦めない心。私の王子様だよ。ずっと一緒にいたい・・・、だから離さなないからね。」
春菜が後ろから抱きついてきた。
「私が初めて好きになった人はあなたでした。あなたを好きになって本当に良かった・・・」
「私も幸せです。これからもずっと私達を幸せにして下さいね。お願いします・・・」
「お前達と結婚した時の約束だ。永遠に破るつもりはないよ。安心してくれ。」
「「「「はい・・・」」」」
春菜が俺の頬に優しくキスしてくれた。
「あなた、そろそろ寝ましょうか。と、言いたいところですが・・・」
「何だ?」
「私達もそろそろ2人目が欲しいなぁ・・・、と思っていまして・・・、あっ、夏子さん達は3人目ですね。」
「だから、あなた、今夜は寝させませんよ。みなさん、頑張りましょうね。」
春菜以外の3人が頬を赤らめながら頷く。
「お前達・・・、明日も忙しいんだろ?俺もギルドの依頼の事もあるからな。だから、今夜は大人しく寝ないか?」
「あなた、大丈夫ですよ。1晩くらい寝なくても仕事に差し支えはありませんから。だから、今夜は大人しく私達の愛を受け入れて下さいね。」
お前達は良いかもしれんが、俺は勘弁だぞ。徹夜明けで仕事なんかしたくない!
でも、俺の話は聞かないだろうな・・・
「分かったよ。断っても無駄だろうし・・・」
みんなの顔がとても嬉しそうだ。
「さすが、私達の事を分かっていますね。嬉しいです・・・」
フローリアを除いた妻達の中では、特にこの4人が俺に対する執着がハンパないからなぁ・・・
最初からいたからか?
「春菜・・・、段々と行動がフローリアに似てきたな。嬉しいのか悲しいのか・・・」
「ふふふ・・・、褒め言葉として受け取っておきますね。」
春菜の目つきが段々と肉食獣のように鋭くなって舌なめずりをする。
気合が入ってきたみたいだよ。ちょっと怖い・・・
「さぁあああ!みなさん!愛し合いましょう!」
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