神器②
一体、誰だ・・・
声からすると女性のようだが・・・
声の聞こえた方に視線を向けると、いつの間にか1人の女性が立っていた。
真っ白のワンピースに淡いブルーの髪、先に行くに従って少しずつピンク色になっている。
そして瞳は赤い、とんでもない美人だ。
そして何よりも・・・
胸がデカイ!我が家で一番の春菜よりも・・・思わず視線が・・・
「パパ・・・」
アイリスの声が聞こえた。アイリスを見ると怒っている。
「パパって大きな胸の人が好みなの?パパの視線がずっとあの人の胸に釘づけじゃない。パパの浮気者!」
「ア、アイリス・・・、そんなんじゃないから・・・」
思いっきり見ていたのが分かってしまった。アイリスが不機嫌になってしまっている。困った・・・
「私だって大きくなったら、春菜ママに負けないくらい胸が大きくなるはずなんだから!」
「だからパパ、私がいるんだから浮気は許さないからね。」
「アイリス、パパはそんな事はしないから安心しな。どうしたら機嫌が直るんだ?」
「じゃあ、パパ・・・、抱っこして・・・」
「分かったよ。ほら、アイリス。」
俺は両手を広げた。アイリスがダッシュで俺に向かって走って手前でジャンプして抱きついてきた。
殆どボディプレス・アタックだぞ。アイリスがここまでヤキモチを焼くとは・・・、迂闊だった・・・
「パパ、大好き・・・」
アイリスがしがみつきながら、俺の頬にキスをしてきた。
そして、女を睨む。
「このデカ乳女・・・、パパは渡さないからね・・・」
「小娘が、生意気ね・・・、また真っ二つにされたいの?」
女がアイリスを睨んだ。
真っ二つだと!なぜだ!何でその事を知っているんだ!あの女は一体・・・、そして、アイリスもあの女に対して最初から敵愾心を持っている気がする・・・
「クローディア!子供に対して大人気ないでしょ!」
フローリアが女に対して注意している。どうやら面識があるみたいだな。
「いいねぇ・・・、お嬢ちゃん。あんた気に入ったよ。このデカ乳女の事は私も嫌いだからさ。気が合いそうだね。」
また別の声が!声の方を見たら、義父さんの隣に赤い忍者装束に似た服を着た女の子が立っている。黒髪のショートカット美少女で、見た目は義母さんとそう変わらない。
「霞、お前も出て来たのか?」
義父さんが話しかけている。義父さんの知り合いか?
「そうよ。あのデカ乳女が出てきたら、私も出て来るわよ。あの女ばかりにいい顔をさせる訳にはいかないからね。」
忍者少女が俺を睨む。俺が何か悪い事したか?
「そして、あんた!あんたの事は絶対に忘れない!私を折ってくれたからね。あの屈辱は絶対に忘れないから!マスター、必ずあの男を真っ二つにしてね!」
真っ二つ・・・、折った・・・
・・・
もしかして・・・
「分かったみたいね、マスター。私はフローリアの神器。そして、あのツルペタ幼女はレオの神器なのよ。」
やっぱり!ガーネットはフローリアの神器で俺が真っ二つにしてしまったから、アイリスは彼女を嫌っているのか。本能的に止めを刺されたのを覚えているんだな。
そして、義父さんの神器は俺が折ってしまった。それで俺の事を恨んでいるんだ。
それにしても、折れた神器は元に戻るのか?
「デカ乳女!私をツルペタと呼ぶなと何回も言っているぞ!胸が大きいからといって威張るな!」
「折られてもすぐに戻れるけど、痛いのは痛いんだ、今まではレオに免じて我慢してたけど、デカ乳がアイツの手伝いをするって言うから、気に入らなくて出てきた。あんた!あの女のマスターになるくらいなら、私のマスターになりなさい!そうすれば、私を折った事を許してあげる。」
義父さんが困った顔をして俺を見ているよ。
「息子よ、どうやらお前は霞にも気に入られたみたいだな。神器は通常1人しか認めないのだが、2人をマスターとして認める事は珍しい。それも同時に2本もか・・・、ワシもどうして良いか分からん・・・」
うわぁ・・・、カオスというより、何故か修羅場と化している気が・・・
巨乳美人が俺の傍に近寄ってくる。だが、俺の胸に抱きついているアイリスが猫のように「フシャァアアア!」と言って威嚇してるぞ。
「アイリス、どうしたんだ?こんなお前なんて珍しいぞ。」
「だってぇ~、何かパパが取られるような気がして・・・」
「アイリス、そんな事はないよ。だって、アイリスは俺と結婚の約束をしてるじゃないか。お父さんはちゃんと約束を守るから安心しな。アイリスを置いてどこにも行かないから。」
「うん、分かった。」
「旦那様も大変ですね。」
フローリアが俺の隣に来てくれた。
「お、フローリアか。ガーネットはどうした?」
「ガーネットはぐっすり眠ってますから、当分は大丈夫ですよ。」
「それにしても、何かこの雰囲気って、昔の春菜さん達と旅に出ていた時に似てますね。旦那様を中心にドタバタしてましたからね。今では、みなさんママになって落ち着いてしまいましたから、こういう事は無くなりましたけど、やはり楽しい雰囲気ですよ。」
「それと、クローディア。あまり調子に乗ったらダメですよ。」
「すまない、フローリア・・・」
巨乳美人がフローリアに謝っている。
「フローリア、彼女はやはりあの剣なのか?」
「そうですよ。彼女の名前はクローディアと言います。私の神器で、今の姿が人化した状態ですね。」
「旦那様、説明しますね。彼女を含めて神器は12本あります。どの神器も使用者を認める為に意志はありますが、自我を持って人化出来る神器は、彼女以外にはパパの持っている神器の霞だけなんですよ。この2本が神器の頂点のようなものですね。ただ、2本なので、どっちが上かで彼女達が揉めるのがねぇ・・・」
「ありがとう、フローリア。よく分かったよ。」
それにしても、神器が人化するなんてなぁ・・・
「子猫ちゃん、だから安心して。あなたの未来の旦那様を取る気はないからね。」
「でもね、あなたが結婚してからその後で私が結婚しても良いでしょ?私もマスターとの結婚願望があるから・・・、ダメ?」
突然、フローリアから黒いオーラが噴き上がり、背後に般若のようなモノも見える。ヤバイ・・・
「クローディア・・・、あなた、へし折られたいの・・・?」
クローディアの顔が真っ青になり、慌ててフローリアの方へ土下座をした。
「フローリア!ゴメン!」
「でもね・・・、あなたの幸せオーラを浴び続けているのも辛いのよ。ずっとあなたを見ていると、私も結婚したくなってきてね・・・、お願い・・・」
フローリアの顔が元の優しい笑みに戻った。
「分かりました。アイリスが成人を迎えて旦那様と結婚するまでに、旦那様からOKが出れば認めましょう。でも、今の旦那様は手強いですよ。ただ胸が大きいだけでは振り向いてくれませんからね。」
クローディアが驚愕した顔で俺を見ている。
「マスター・・・、まさか、霞みたいな貧乳派ですか?」
「違うわ!巨乳も貧乳も関係ない!俺が求めているのは、アイリスみたいな常識キャラだ。濃いキャラはいらん!」
抱きついていたアイリスがギュッと抱き締めてきた。
「パパ、嬉しい・・・、私、ずっとパパに好かれるように頑張るね。」
う~ん、アイリスが可愛い!癒されるよ。
「こらぁあああ!私を無視して話を進めるな!私の事を貧乳、貧乳と・・・、もう許さない!」
あっ!あの子の事を忘れていた・・・、怒ってるなぁ・・・
「レオ!やっぱりアイツは真っ二つにしましょう!さぁ!早く私を使うのよ!」
義母さんがニコニコ笑って、俺達と義父さん達の間に入ってきた。
「霞・・・、ここは赤ちゃんが寝ていますから、大声を出されると困りますねぇ・・・、分かってます?そんなに決着を着けたいなら、私が見届け人になってあげますよ。ここだと不味いので、例の場所で行いますよ。あなたも宜しいですか?」
義父さんが頷く。
「それでは、フローリア。しばらくみなさんをお借りしますよ。蒼太さん、それでは行きますね。」
目の前の光景が一瞬で変わった。
ここは『鍛錬の世界』だ。
「さぁ!レオ!殺るわよ!」
「マスター!私を使って!」
2人が輝き剣の姿に変化した。お互いに神器を握りしめる。義父さんは〇オウの姿に戻っていた。完全に俺を抹殺する気満々だよ。
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