エピローグ①
長くなりましたので2つに分けました。
「ララ!戻ったぞ~!」
「あっ!ご主人様!春菜奥様!」
ララの顔がパァ~と明るくなったが、すぐに泣き顔になって俺の胸に飛び込んできた。
俺は優しく抱いてあげた。ララは俺の胸の中で泣いている。
「よくぞご無事で・・・」
「ララ・・・、心配させて済まなかった・・・」
しばらく俺の胸の中で泣いていたが、落ち着いたのかゆっくりと春菜の方を見た。そして固まった。
「は、は、春菜奥様・・・、も、もしかして、もう生まれたのですか・・・?」
春菜はニコッと微笑みアイリスを見つめてからララに向き直った。
「違いますよ、ララ・・・、この子、アイリスは私達の子供ですよ。ララも一緒に育てましょうね。」
「は、はい・・・、一体・・・」
ララが困惑しているが当然だよな。
春菜が説明をしてくれた。
「事情は分かりました。私も育児に参加させていただきますね。これでも、村では何人も赤ちゃんの世話をしてましたから安心して下さい。」
「ところで、美冬さんが抱えている子犬は?」
「俺は犬じゃないぞ!」
美冬に抱かれている凍牙が、ちょっと怒った口調で話した。
「い、犬が喋っている!」
ララがまたもや驚いてしまった。まぁ、これも当然だよな。
「だから!犬じゃない!俺は狼だ!」
凍牙が必死に訂正しているが、俺から見ても犬にしか見えん。
どうやら、犬と呼ばれるのは本当に嫌みたいだ。
そういえば、美冬と初めて会った時にもフローリアから、美冬を犬と呼んだら噛みつくと言われた覚えが・・・
「お兄ちゃん、こんなに可愛いから犬にしか見えないよ。だから、諦めて!」
おっ!美冬がララのフォローをしているぞ。
「凍牙・・・、俺も美冬の意見に賛成だ。もう少し大きくなるまで諦めろ。そもそも、大きくなるのかな?」
「う、兄貴の威厳が・・・、このまま変わらないとなると・・・」
だらんと尻尾が垂れて、凍牙が落ち込んでしまった。その仕草も可愛い子犬みたいだし、仕方ないだろうな・・・
その後、俺からララに凍牙の説明をした。
「分かりました。凍牙さんは美冬さんに任せましょう。でも・・・、私も1度だけ抱かせてくれませんか?」
「いいよ!」
ララがうっとりした表情で凍牙を抱きしめている。
「可愛い・・・、癒やされますぅ・・・」
おい!凍牙!お前までも幸せそうな顔をするんじゃない!ララは俺の嫁さんだからな!
予想通りララがビックリしていたが、素直に受け入れてくれて良かった。
フローリアが微笑みながら俺の隣に来た。
「ララさんにも素直に受け入れてもらって良かったですね。しかも、赤ちゃんの世話まで出来るなんて、ラッキーですよ。ララさん以外は子育て経験が無いので、最初は地球時代に経験のある旦那様にお願いしようと思ってましたけど・・・」
そ、そうか!それは気が付かなかった。俺も本当にイクメンで頑張らないとな。
「あと、旦那様、どうぞ。ガーネットに壊されてしまったでしょ。春菜さんもこちらに来て下さい。」
フローリアが差し出したのは2つの指輪だ。俺と春菜の指輪はガーネットに壊されたんだ。
春菜が俺とフローリアの前に来る。フローリアから指輪を受け取った。
「春菜・・・、もう一回指輪交換だな。」
「はい・・・」
俺と春菜がお互いの薬指に指輪をはめる。すると、みんなが拍手をしてくれた。
春菜が顔を真っ赤にしている。
「恥ずかしいですね・・・、でも、この温かい家庭に戻れて本当に良かったです・・・、ありがとう、みなさん・・・」
最初は俺とララと2人でアイリスの世話をしながら彼女達に育児を教えた。夏子に頼んで地球の神から粉ミルクや紙おむつなどの育児に必要なものをもらったけど、俺が昔、子育てをした時に比べて道具の進化がすごい。そして、春菜も呪いが解けて家事をしても何も起きなくなったので、喜んでアイリスの世話をララと一緒にしていた。
ララがいて助かった・・・、俺だけだと不安だったし・・・
みんなもアイリスの世話を手伝ってくれて、アイリスは元気に育っている。
俺は最高に緊張している。
フローリアを含めた俺の妻達7人全員がウエディングドレスを着て、俺の前に立っているからだ。
元々、全員が美人だけど、今日の彼女達の美人度は天元突破しているんじゃないか?
本当に俺が旦那で良かったのかと、逆に思ってしまうくらいだ・・・
以前に、落ち着いたら結婚式を挙げようとみんなに話をしていて、今日、結婚式を行った。
場所は隣の教会だ。
シスター達や孤児院の子供達と、ギルドのゴンザと子供を抱いたウエンディが式に参加している。
アンナを含めた女の子達が、花嫁達を見て目をキラキラさせていた。
アンナがフローリア達の前に立ち嬉しそうに話す。
「お姉ちゃん達、すっごいキレイ・・・、私もこんな服、着たいな・・・」
夏子がアンナの頭を優しく撫でていた。アンナは夏子に一番懐いていたからな。
「大丈夫だ。アンナ達は頑張っているからな。すぐに良い旦那が出来るさ。お前達の時は私達が腕によりをかけてもっとキレイな服を作ってやるぞ。」
「嬉しい・・・、ありがとう。夏子お姉ちゃん!」
「旦那様・・・、この教会は私が祝福をする場ですが、私が私を祝福するなんて何か可笑しいですね。」
「そういえば、気が付かなかった。悪い!」
「構いませんよ。別に悪い事ではありませんし、この世界でも結婚式が広まれば、それだけ女性の幸せの数が増えると思いますよ。私の祝福でみなさんが幸せになってもらいたいです。」
「そうか・・・、そんな考え方もあるか。やっぱりお前は女神だな。時々ポンコツだけど・・・」
「むぅ・・・、旦那様の意地悪・・・」
「ところで、何でお前が牧師役だ?」
俺の視線の先にはランスがいた。
「良いじゃないか。今日はおめでたい日なんだから、細かい事は気にしない。一応、僕は結婚式の知識はあるから、是非とも協力したいと思った訳さ。」
「君は僕達家族の恩人だからね。」
「確かに、牧師がいないとこの結婚式は進まないしな。感謝するよ。」
義父さんは最前列で見ていたが、ポロポロ涙を流すなんて・・・、俺の中の〇オウのイメージが崩れてしまうのだが・・・
無事に結婚式も終わって、いつもの日常が戻った。
春菜がベッドの中で微笑んでいる。
「春菜・・・、頑張ったな。とうとうお前もお母さんだよ。」
「嬉しいです・・・、私もとうとうママになるんだと・・・、こうして無事に生まれて良かったです。」
愛おしそうに春菜は自分の子供を見つめている。
みんなも笑顔で春菜を祝福している。
「髪の毛も瞳も全部春菜と同じなんだよな。大きくなったら春菜と全く同じになったりして?」
「そうなると・・・、この子が大きくなったら、私と同じであなたに告白するかも?」
「いや、それは勘弁・・・、さすがに自分の娘と夫婦になる気はないぞ。あの子1人だけを除いてな。」
「最近は俺にベッタリだ。記憶が無いはずだけど本能に刷り込まれているのか?」
春菜は笑いながらみんなを見渡す。
「私の次は誰でしょうか?夏子さん、千秋さん、マリーさんもお腹が目立ってきましたし・・・、3人一緒にお母さんになるかもしれませんね。」
「こんな私が母親になるとはなぁ・・・、渚も信じられないと言っているよ。全ては旦那様のおかげで私達の運命が変わったと思うよ。」
「私も母親になるなんて・・・、でも、この子には親の愛情をたっぷり注いであげたいな、私みたいな思いはさせたくない・・・」
「私も女の幸せを諦めていた時もあったけど、あんたに会えて本当に良かった。」
みんな不幸だったからな。少しでも幸せにしたかったし、そう思ってくれたら俺も嬉しいよ。
「春菜、ところでこの子の名前なんだけど・・・、『サクラ』ってどうだ?」
「俺の故郷の花なんだけど、お前の名前の『春』に咲く花だし、俺が思っているお前の瞳の色も同じ呼び方なんだ。桜色ってな。それに、俺の1番大好きな花というのもあるけど・・・」
「素晴らしいじゃないですか。この子にピッタリですね。あなたは『サクラ』ですよ。お父さんだけでなく、みんなから好かれるようになって下さいね。」
春菜が愛おしそうにサクラを抱いていた。その光景を羨ましそうに見ているフローリアもいたけど・・・
また、今夜プレッシャーが来るな・・・
夏子、千秋、マリーのお腹も順調に大きくなっていった。
そして、美冬のお腹にも新しい命が宿っている事も分かった。
春菜の言葉通りにというか・・・、何と!3人同時に陣痛が始まって、ほぼ同じ時間に生まれた。
春菜も、「冗談で言ったのに、まさか本当になるとは・・・」と焦っていたが・・・
夏子は何と青色の髪の女の子と赤色の髪の女の子の双子だった。
夏子も渚も感動していた。
「私と渚、間違いなく私達の子供だ。生まれてきてくれてありがとう・・・」
【私も母になる事がこんなに嬉しいとは思わなかった。必ずこの子達は幸せにしないとな・・・】
青い髪の子は『アクア』、赤い髪の子は『マリン』と名付けた。
夏子と渚、この2人から海を連想したからだけど、我ながら良い名前だと思う。
千秋の子供も女の子だ。アイリスを見ていて、女の子が欲しかったと思っていたみたいで、とても喜んでいた。
「私がこうやって自分の子供を抱ける日が来るなんて・・・、蒼太さん、私を幸せにしてくれる約束を守ってくれてありがとう・・・」
千秋のイメージで子供の名前は『紅葉』と名付けた。千秋もとても喜んでくれた。
マリーも女の子だった。
「私も女の子が欲しかったんだ。あんたと私の子供だからキレイな良い子になると思うよ。この子は私みたいな人生を歩ませてはいけないから、私達も頑張らないとね。」
「そうだな。マリーは頑張り屋さんだから、あまり無理すんなよ。」
「ありがとう・・・」
「おや、いつものマリーと反応が違うぞ。やっぱり母親になると違うな。」
「当たり前よ!いつまでもあんた達にオモチャにされる訳にはいかないんだから!」
みんながマリーの言葉でドッと笑う。マリーがいると本当に周りの雰囲気が明るくなるよ。
マリーの子供の名前は『ガーベラ』と名付けた。桜の次に好きな花で、花言葉は『常に前進』だ。マリーの子供らしいと思うしな。
春菜が彼女達を1人1人抱きしめて、「おめでとう。」とお祝いをしている。
そして、俺の隣に来て微笑んだ。春菜のこの笑顔は本当に最高だ。俺も嬉しくなる。
「一気に賑やかになりましたね。美冬さんもおめでたですし、私ももっと頑張らないといけませんね。いつまでもララばかりに頼る訳にはいきませんから。」
「そうだな。3人が家事に復帰するまでは頼むな。でも、お前も新米ママだから、あんまり無理すんなよ。」
「分かってますよ。でも、あの呪いが無くなって、ちゃんと家事が出来ることが嬉しくて・・・」
「あなたのお世話は、私が専属で行いますよ。」
ララが俺と春菜の後ろでちょっと拗ねている。
「ララ、心配するな。ちゃんとお前の仕事は残してあげるからな。仲良く頼むぞ。」
2人がニッコリ微笑む。
「「もちろんです。」」
本当に仲の良い2人だ。見ている俺まで嬉しくなるよ。
「あなた、美冬さんの子供の事でララさんと話していたのですが、アイリスからずっと女の子が続いているじゃないですか。次は男の子じゃないかと話題になっていたのです。まさか、当たる訳ないですよね?」
春菜・・・、それはフラグだぞ・・・
評価、ブックマークありがとうございます。
励みになります。