闇に堕ちた女神⑧
「ガーネット・・・」
「ブルー様・・・、とうとう私と1つになる決心がつきました?早く!なるべく痛くしないようにしますよ。」
ガーネットが涎を垂らしながら俺を見つめている。
正直、もう勘弁して欲しい・・・
こんな姿を見ると、フローリアの暴走の方が可愛らしいくらいだ。
「フローリア、ヤツの防御シールドはハンパないな。どうだ?」
「問題無いですよ。さすがに1人だと厳しいですが、私達3人だと誰にも負ける気がしません。」
フローリアがガーネットに見せつけるようにして、俺の腕を組んでくる。
「そうだよな。それじゃ、そろそろ終わらせるか!」
「何で私の前でイチャイチャしているの!女狐!もう許さない!」
美冬が俺達の前に出てきた。
「凍牙お兄ちゃん、お願い・・・、私に力を貸して・・・」
美冬がそう呟くと、体が白く輝く。光が収まると、あのガントレットが両腕に装備されていた。
「それじゃ、私からいくよ~!」
ガーネットに向かって走り出す。
「右のぉおお!マグナムゥウウッ!・ブレイィイイックゥウウウッ!」
ガキィイイイイン!
「そして、左のおぉおおおお!ファントムゥウウウウッ!・クラッアアアアッシャーァアアアアアアッ!」
グシャァアアアアア!
「よし!ヒビが入った!お姉ちゃん!次!」
「美冬さんに負けられませんね。」
美冬と入れ違いにフローリアがダッシュでガーネットに駆け寄り、大剣を振り上げる。
「はぁあああああああああ!」
「乾坤一擲!雲耀の太刀ぃいいいいいいい!」
ガキィイイイインンンンンン!
ヒビが更に大きくなる。
「ふっ!私に断てぬものはありません・・・」
「お、おのれぇぇえええええ!」
「旦那様!最後です!」
「分かった!凍牙!いくぞぉおおおおおお!」
凍牙が俺の手に現われる。
「ガーネット!これでお前を守るものは無くなる!」
「くらえぇえええええええええええ!」
「無蒼流秘奥義、終の型・・・」
「乱れ雪月花ぁああああああああああ!」
バリィイイイイイイイイン!!!
ついに、防御シールドが砕け散った。
「し、信じられない!絶対に破られる事のない私のシールドが・・・」
「はっ!何、これ!私の顔に傷がぁあああああああああ!」
乱れ雪月花の剣がガーネットの頬に掠り、傷が出来て血が流れていた。
「こ、この美しい顔に傷がぁあああああ!」
「ゆ、許さない!」
ガーネットの醜悪な顔が更に歪んでいる。
「あら、これのどこが美しい顔ですの?ご自分で鏡を見てみましたか?」
フローリア!お前、何を挑発している!
相手を怒らせてどうする?
「だ、黙れぇえええ!私を挑発するなんて無駄よ!女狐!大人しく私に殺されなさい!」
「そう・・・」
フローリアが指を鳴らすと、ガーネットの前に巨大な鏡が現れた。
ガーネットが鏡に映った自分の姿を見て絶叫したぞ。
「な、な、何!この化け物は!これが私!そんな訳がなぁああああああああい!女狐め!そんな事をして私を動揺させようとしても無駄よ!美しい私がこんなに醜い姿である訳がない!」
フローリアがニヤニヤした顔でガーネットを見ている。
「どう思おうとあなたの勝手ですけど、これが今のあなたの真実の姿ですよ。あなたの醜い魂そのままの姿ですよ。」
「フローリア・・・、あんなに怒らせて大丈夫か?」
「私もビックリです。あんな手に引っかかるとは思いませんでしたよ。彼女は自分の美しさに絶対の自信を持っていましたから、そこを突いてみたのですが、あんなに怒るとは・・・」
「それと、私達の事をずっと『女狐』や『雌豚』なんて言い続けていましたし、私もいい加減に頭に来てました。少しくらいは仕返ししてもいでしょう。」
「お前・・・、意外と余裕があるなぁ・・・」
「彼女の性格はよく分かっているつもりですよ。」
「がぁあああああああ!私が!私が!あんな姿である訳ないぃいいいいいい!この雌豚女狐がぁああああ!今すぐ八つ裂きにしてやるぅうううう!」
ガーネットが怒り狂って鏡を粉々にした。
「今です!」
粉々になった鏡の破片が宙に浮き、全てガーネットに向かって飛んでガーネットの全身に刺さった。
「ぎゃぁあああああ!い、痛い・・・、痛いぃいいいいいい!」
「私の体が・・・、この美しい体がぁあああああ!」
「頭に血が上り過ぎて、こんな簡単なトラップも気付かないとは・・・」
「旦那様!今です!」
「分かった!フローリア!美冬!お前達の力も借りるぞ!」
2人が頷いた。
「トォオオオルゥウウッ!!・ハンッマァアアアアーーーーーーー!!」
俺の目の前に巨大な黄金のハンマーが現れる。
「フローリア!美冬!」
「「「はぁあああああああああ!」」」
「「「ハンマァアアアアアーーー!、コネクトォオオオオオッーーー!!」」」
3人でハンマーの柄を掴み魔力を流す。
ハンマーがかつてないほどに光り輝いた。
「2人ともありがとう。これならヤツを完全に消し去れるはずだ。」
「ガーネット!これで最後だぁあああああ!」
ハンマーを握り直し、ガーネットと対峙する。
「おぉおおおおおおおお!」
ガーネットにむかって駆け出し、手前でジャンプをしてハンマーを振りかぶる。
「させるかぁああああああああ!」
「出でよ!グングニールの槍ぃいいいいい!」
何だ、ガーネットの右腕が巨大な槍に変化したぞ!
構うかぁあああ!
「ファイナルゥウウ!・クラッアアアアッシャーァアアアアアアッ!」
黄金のハンマーと漆黒の槍が激突する。
「おぉおおおおおおおおおおお!」
「はぁあああああああああああ!」
「負けるかぁあああああああああああああ!」
黄金のハンマーが槍の尖端から徐々に光の粒子に変え始めた。
「うおぉおおおおおっ!」
槍がどんどん光になって消え始める。
「光になぁれぇえええええええええええ!!」
槍が全て光になった。
このまま押し切ってやる!
「おぉおおおおおおおおおおお!」
ガーネットの右腕のつけ根まで光になって消え去った瞬間、俺の背筋に強烈な悪寒が走った。
何だ!
俺の視線がガーネットの腹にある口に向かう。ここがヤバイと感じた。
口の中が漆黒の闇で満たされていた。
こ、これは!何て邪悪な気配!
その瞬間、口から闇が放たれた。
「ヤバイ!」
咄嗟にハンマーを盾にしたが、ハンマーが粉々に砕かれてしまい、吹き飛ばされてしまった。
「くそぉおおおおおお!あと少しだったのに!」
ガーネットがゆらりと立ち上がり、俺の方に向く。
「ブ、ブルー様・・・、何故、そこまで私を拒絶するのですか・・・、どうして、そんなに私を嫌うのですか・・・、私はあなたとずっと一緒にいたかった・・・、ただ、それだけの願いだったのに、何故です?」
「ガーネット・・・、お前は俺と一緒になりたい。その気持ちは嬉しい・・・、しかし、お前が望んでいるのは俺とお前2人だけの世界だ。そして、他は全て排除する2人っきりだけの寂しい世界だ。俺はそんな世界は望んでいない。俺が望んだ世界はお前と真逆、みんがが笑い幸せになる世界だ、誰1人も欠けて欲しくない。そうして、みんなが手を繋ぎ助け合う・・・、それが俺の望みだ。」
「だから、ガーネット・・・、お前が俺達の輪の中に入る気持ちがあったなら、俺はお前を受け入れていただろう・・・、だが、お前はそれを拒み、排除を選択した・・・」
「私は・・・、ブルー様と一緒にいたい!それがどんな手段でも!ブルー様の望みは分かりました・・・」
「そして、私を受け入れてくれると思った気持ちも・・・、嬉しくて失神しそうです。」
「だけど・・・、私の体も魂も限りなく汚れています・・・、もう、私はあの頃に引き返せません!だから・・・、ブルー様!私と一緒に死んで、魂で一つになりましょう!誰にも邪魔をされない世界で・・・」
「さぁ!一緒に死にましょう!ブルー様、愛してますぅうううううううう!」
「これが究極の愛です!」
何を言っても無駄か・・・
ガーネットの今の言葉で一瞬でも救いたいと思ったが・・・
もう、どちらかが完全に滅ぶ道しかないのか・・・
だから・・・、俺よ!覚悟を決めろ!
「ガーネット!俺はお前と心中する気は無い!死ぬのはお前だけだ!」
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