闇に堕ちた女神⑦
あれがガーネットの本体・・・
どれだけの悪意を溜め込めばあんな風になるのか。
「春菜さん!」「春菜!」
フローリアと美冬が春菜へ駆け寄ってくる。
「フローリア様、美冬さん・・・、ご迷惑をおかけして申し訳ありません・・・」
春菜が泣きそうだ・・・
「いいのよ、春菜さん・・・」
春菜が泣きながらフローリアに抱きついた。
「うぅぅぅ・・・、怖かった、怖かったです・・・、もう、フローリア様に、みんなに会えないかと思ってました・・・」
「でも、こうやってまた会えましたし、良かったじゃないですか・・・」
フローリアが優しく春菜の頭を撫でている。
「は、はい・・・」
「それに、私とお揃いなんて嬉しいですね。」
「えっ!お揃いですか?一体、何が・・・」
「色は違いますが、私と同じです。私とあなたの鎧ですよ。女神の証です。」
ガーネットが憑りついていた時は漆黒の鎧だったが、今は春菜の瞳と同じ色の淡い桜色の鎧になっている。
春菜は本当に女神に覚醒したんだ。良かったな。
「私が女神・・・、信じられません・・・」
「「「春菜ぁあああ!」」」
夏子達3人が走ってきて、春菜に抱きついた。
「み、みなさん!」
「春菜!良かったぁあああああ!」「こんな事は2度とゴメンだ!」「春菜・・・、春菜・・・」
3人が泣きながら春菜を抱いていた。友情はいいね・・・
フローリアが真剣な顔で俺に話しかけてきた。
「旦那様・・・、ガーネットを春菜さんから引き離しましたが、まだ終わりではありません。」
「あぁ、分かっている。」
「これからが本番です・・・」
「ガーネットは、かつて神界に攻め込んだ時に、創造紳様と戦う事で自分の体に傷が付く事を恐れました。その時はダミーの体で攻めて来ましたので、何とか倒せましたが、真の肉体はどこかに隠されています。ここまで追い詰めてしまいましたから、彼女は必ず自分の肉体で戦うでしょう。」
「みなさん、旦那様と私、美冬さんで最後の決着を付けます。離れていて下さい。」
『旦那様・・・、いえ、ブルー様・・・、何故、私を選ばないのですか・・・』
『私がこんなにもあなた様をお慕いしているのに、何故です?私のあなた様への愛情が足りないのですか?』
『いいえ、私の愛情が足りないはずはありません!愛情で負けていないのに何故です!ブルー様ぁあああああ!』
「ガーネット・・・、何故、お前を選ばないか教えてあげるよ・・・」
『えっ!』
「それはな・・・、確かにお前の愛情の凄さは分かる。愛の重さでいったら、多分、お前が1番だろう・・・」
『何故、私を選ばないのですか・・・?』
「お前は自分に正直過ぎた。周りを一切顧みない押しつけだけの愛をな。しかし、フローリア達みんなは違う、時には独占したい気持ちで胸がいっぱいになる時もあっただろう。でもな、彼女達はみんなで一緒に輪を作ろうと努力している。お前に無くて、みんなにあるもの、それは他の人を思いやる気持ちだ。さっきまでお前と一緒にいたが、俺の心が落ち着く事はなかった。でも、彼女達と一緒にいると心が落ち着く。」
「だから、お前を選ぶ事は、絶対に無い!」
『嘘、嘘、嘘・・・、私がフラれる・・・、そんな事は無いですよね・・・』
「いや、現実だ。いい加減、現実を認めろ・・・」
『そんな事は無いです!私のブルー様に対する愛情が足りないだけ・・・、もっと、もっと、もぉおおおっとブルー様に愛情を注げば、必ず私に振り向いてくれるはずです。そして、私のブルー様をたぶらかす雌豚どもも排除しなければ、永遠にブルー様と結ばれる日が来ない・・・』
『出でよ!私の真の肉体!この世で一番美しい私の体よ!』
何だ!ヤツの横の空間が歪む!何かが現れる。
あれは!女性の体だ!春菜に似ている・・・
『さぁ、ブルー様、雌豚どもを駆除してから、私と愛し合いましょう・・・』
黒いモヤが女性の体に吸い込まれた。ゆっくり目が開く。
「ブルー様・・・、でも・・・、この体に戻ったら愛し合うだけじゃもの足りませんね。もう、食べたいくらい愛おしいです。あぁ、もう我慢が出来ません・・・」
「な、何だ!あの口は!」
ヤツの腹部の鎧が弾け、中から牙の生えた大きな口が現れた。
「ブルー様、この口であなたを食べてあげますよ。あなたの肉体も魂も食べて、私と一緒になりましょう。真の意味で私と1つになるのです。これこそ!私からあなた様への究極の愛!あぁ・・・、全身がゾクゾクします。」
「さぁ!私と1つになりましょう・・・、大丈夫ですよ、痛いのは最初だけですからね。」
「さぁああああああああああ!ブルー様ぁあああああああああ!」
ガーネットの肉体が変貌を始めた。
手足が異常に長くなり、歪な角度に曲がっている。春菜に似ていた顔も面影がない程醜悪だ。
く、狂っている・・・、いや、狂っているレベルではない!
それにあの姿・・・、完全に化け物だ・・・
俺の事が好き、嫌いの話ではない。どれだけ自分の愛情を押し付ける事が出来るか・・・
それだけしか考えられない化け物だ。
「女狐フローリア・・・、私がフラれたのは全てお前が原因・・・、お前だけはあらゆる苦痛を与えて、魂も残さず念入りに滅ぼしてやる!」
「でも、その前に邪魔な雌豚どもを殺しましょう。」
「滅びよ!ドラゴニア・プロミネンス!全てを焼く尽くせ!」
ヤツの掌から巨大な炎の竜が現われた。
いかん!春菜達の方に向かっている!
ま、間に合わない!
マリーがみんなの前に出て構えた。
「私はあんなヤツ負けない!こんな私を受け入れてくれたみんなを守る!」
「展開!イージスの盾ぇえええ!」
マリーの前に大きな光輝く盾が現われ、炎の竜が盾に当たる。炎の竜は盾を突き破ろうともがいている。
「ぐっ!負けるかぁあああああああ!」
マリーの絶叫とともに盾が更に輝くが、ヒビが入り始めてしまっていた。
「マリーさん、ご苦労様です。後は私が・・・」
マリーの横に立った春菜が右手を前に差し出した。
「フェニックス・プロミネンス!」
巨大な炎の鳥が現われた瞬間に盾が砕けたが、炎の鳥はそのまま炎の竜に激突し、もつれながら上空に上がっていく。
目に見えないくらいに遙か上空に飛び立ち、そして、空が真っ赤になった。
「な、何だと!私の最強の魔法が・・・」
「そして、お前はあの魔法を使えないはずでは・・・、しかも、新米天使がイージスの盾だと!」
驚愕の顔でガーネットが春菜達を睨み付けている。
ガーネットの突き刺すような視線に負けずに春菜も睨み返している。
「さっきも言ったでしょ。忘れたのですか?私は怒っていると・・・、そして、私達はあなたみたいに奪う為に力は使いません。守る為に使うのです。大切な人を守る為なら力は無限大です。例え、あなた相手でも・・・」
「生意気な小娘が、何を・・・」
「うっ!しまった!いつの間に・・・」
ガーネットの周りに光の玉が舞っていた。
「行きなさい!、アタック・ビット!」
光の玉から大量の魔法がガーネットにむかって飛ぶ。しかし、ガーネットはただ棒立ちになっている。
「フッ・・・」
大量の魔法がガーネットに当たり大爆発を起こすが、ガーネットは無傷だった。ガーネットの周りに球状のようなものが張られている。
「雌豚の攻撃など効きませんよ。」
「見事な防御シールドですね。では、これはどうです?」
「フェニックス・プロミネンス!」
春菜の掌から巨大な火の鳥が飛び立ち、ガーネットを炎の渦で包み込む。
炎が消えると、そこには先ほどと同じく、無傷のガーネットが立っていた。
「無駄よ!この私に傷を付けることは不可能。だって、愛しのブルー様に愛してもらわないといけない体ですからね。傷1つ付ける事すら許しません。」
「そうですね・・・、私達だと骨が折れそうです・・・」
「あなた、フローリア様、美冬さん、続きをお願いします。」
「分かった。」「任せて下さいね。」「春菜、了解したよ!」
さぁ、今度こそ最終局面だな。
俺も気合いを入れていかないとな。
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