闇に堕ちた女神③
俺は神格を得た事で、フローリアと一緒に神殿に行くことが多くなった。
『あなたは神になりました。はい!あなたの世界ですから管理して下さいね。』っていう訳にいかないから、神としての知識、心構えなどを色んな神から教えてもらっている。
何か、地球時代の管理職研修に似ている気が・・・
まだ、正式にフローリアの夫として神界に住むことは認められてはいないが、確定するのはそう遠くないと創造神からの進言で、勉強を始めた。
マリーはギルドの受付を続けている。今までの事で最初は苦労していたが、真面目に仕事に取り組む事で冒険者からの信頼も得てきている。本当にギルドNo.1の受付嬢になりそうだ。
そして、天使になった事で天使の力も使えるようにと、春菜達と一緒にフローリアを相手にして修行をしている。
春菜とボロボロになったマリーが一緒に来て、訓練の報告をしてくれた。
「マリーさんは、かなりの力を持っていますね。攻撃はまだまだですが、回復と防御に関しては我々よりもレベルが高いです。将来が楽しみですね。」
一方のマリーはプンプンだ。
「一体、何なの!こんな地獄の訓練だとは思わなかったわよ!春菜達3人は、まだ私のレベルに合わせてくれているけど、あの2人はどうかしてるわよ!『唐竹割りぃいいい!』と叫んだ瞬間に真っ二つにされてるし、タッグを組んで喜々として私を何度も殺しにくるのよ!普段の鬱憤を晴らすかのように・・・、いくら蘇生魔法があるからといっても、限度があるわ!だから、今夜は私を慰めてね。あ・な・た。」
「マリーもフローリアの洗礼を受けたか。何度も死ぬ思いは結構くるからな。でも、以外と元気そうだよな。さすがマリーといったところか・・・」
「もう!バカにしないでよ!」
マリーが真っ赤になって怒っているけど、楽しそうな表情だ。
「でも、ありがとう・・・、みんな・・・、こんな私を受け入れてくれて・・・」
俺がこの世界に来てから1年と少しが経過した。
領主からギルド経由で邪神の情報をもらい、この世界に入り込んだ邪神を全て討伐した。
これで、俺とフローリアが夫婦として神界に住む事が正式に認められた。
でも、俺達は今の住んでいる世界を気に入っているので、そのまま住む事にしたけどね。
たった1年ちょいでの達成で義父さんはビックリしていたが、「さすが、我が息子!また手合わせしないか?」と、真剣な顔で迫ってきたけど、丁寧にお断りしたよ。正直、もう義父さんとは2度と戦いたくないしな。
この世界での邪神の心配も無くなり、俺達の周りは平和だ。
ずっと、こんな日が続けば・・・
ある日の食事中
「春菜、どうした?最近、あまり元気が無いし、食事も進んでないぞ・・・」
「いえ、大丈夫です。何か食欲が・・・、でも、何だか酸っぱいものが欲しいですね。」
も、もしや・・・
横に座っていたマリーが、俺の脇腹をつつく。
「あんた・・・、春菜の感じだけど、ウエンディがおめでたになった時の状態に似ているんだけど・・・」
やっぱり・・・
地球時代に一緒だった婆さんも、昔、妊娠した時は似たような感じだったので、もしかして?と思ったが・・・
人間も天使も妊娠初期は同じ症状が出るみたいだ。
「マリー、どうもそうらしいな。すぐフローリアに連絡する。」
「頼んだわ。本当だったら、私達家族の初めての子供ね。自分の事のように嬉しい・・・」
【フローリア・・・】
【旦那様、どうしました?】
【春菜がおめでたみたいだ。どうしよう・・・、天使の妊娠の事に関してどうすれば良いか分からん・・・】
【な、何ですってぇえええええええええ!、す、すぐ行きます!】
「は、春菜さん!大丈夫ですか・・・、今すぐ、神殿の医療室に連れて行きますので・・・、あそこは最新の設備に最高のスタッフが揃ってますからね。」
「旦那様、安心して待ってて下さい。」
本当にすぐに来たね。全くのタイムラグ無しだ・・・
フローリアが春菜を神殿へと連れて行き、俺達は結果を待つ事にした。
みんなも結果が待ち遠しいのかそわそわしてるし・・・
本当に時間が長く感じる。結果が待ち遠しい・・・
フローリアと春菜が帰ってきた。2人ともニコニコ顔だ。
表情で分かる。
みんなも歓喜した。
「「「「「「おめでとう~~~~~~~~!」」」」」
「あ、ありがとうございます。」
春菜が照れながら喜んでくれた。
「春菜、良かったな。俺も嬉しいよ・・・」
「はい・・・、私も・・・、ママになるかと思うと、もう嬉しくて、嬉しくて・・・」
「最高に幸せです・・・」
フローリアがニコニコしながら俺の横に来て腕を組んできた。何故かプレッシャーを感じるぞ。
「次にママになるのは私ですからね。旦那様、頑張って下さいね・・・」
「ぜ、善処します・・・」
そして・・・
「義父さん、何で一緒にいるんだ?」
「そんなの当たり前だ!フローリアの夫であるお前の妻達は、もうわしの娘と同然だ。そして、おめでただぞ!わしもとうとう孫が出来るかと思うと、いてもたってもいられなくなったのじゃ。」
「春菜よ、早く元気な孫を見せてくれよ。」
「はい、創造紳様。」
春菜が恭しく返事をする。
「そんなに固くなるな。この家にいる間くらいはわしを父と思ってくれ。そうでないとわしも寂しいからな・・・、わしからのお願いじゃ。お前達もじゃ!」
「それじゃ、言い直しますね。」
「ありがとうございます。お父様。」
春菜が満面の笑みで義父さんに挨拶したぞ。義父さんもすごく喜んでいる。正体は〇オウなんだけど・・・、意外と寂しがり屋のギャップが面白い。
そして、俺の横に来て耳打ちしてきた。
「次はフローリアも頼むぞ・・・」
うわぁ・・・、親子揃ってプレッシャーをかけてきたぞ・・・
弱った・・・
その日の夜はお祝いでパーティをした。春菜はあまり食べられなかったけど・・・
体調が落ち着いたら、あのケーキ屋のケーキを山のように買ってきてやるからな。それまで我慢してくれ。
夜、ベッドに行ったら・・・
全員(春菜以外)の目が怖い・・・
「みなさん・・・、どうしましたか・・・?」
「旦那様、決まっているじゃないですか。みなさん、『春菜さんに続け!』ですからね。」
「明日から覚悟して下さい・・・」
フローリアがニヤリと笑うと、みんなが続いてニヤリと笑った。
春菜のおめでたが分かってから2週間が経過した。
春菜も少しは落ち着いたみたいだが、あまり無理はさせられないだろう。
ララが頑張って春菜の手伝いをしている。ララは春菜の事を姉と慕っているからな。こうやって見ていると、本当の姉妹に見えるよ。
マリーは元々家事はバッチリだったし、夏子も千秋も家事がかなり上手になったので、今ではみんなで分担している。
みんな良い妻達だな。俺も幸せだ。
数日後
春菜から念話だ。
【あなた、私の部屋に来て欲しいのですが・・・】
何だろう・・・
春菜は今、自分の部屋に1人でいる。
体調が悪くなったのか?心配だ・・・
春菜の部屋にやって来た。
「春菜、どうした?」
「あ、あなた・・・、ちょっとお話があって・・・、今、コーヒーを淹れますから、椅子で座って待ってて下さい。」
俺は椅子に座って、春菜がコーヒーを淹れるのを待っている。
春菜はてきぱきとコーヒーを淹れてくれる。
「お前・・・、誰だ・・・?」
春菜が激しく動揺した。
「あ、あ、あなた・・・、な、何を言っているのですか?変な事言わないで下さい。」
「いや、俺は真面目だ。だから、もう1度言う。お前は何者だ。」
「な、何で分かったのですか?」
「簡単だよ。春菜は家事が壊滅的に下手だしな。家事をすると呪いみたいな冗談な結果になるんだ。だから、失敗しないように、お茶を淹れる簡単な作業でもビクビクしながら淹れている。それを、お前は躊躇なくスムーズにコーヒーを淹れてくれた。すぐに分かったよ。」
「そう・・・」
春菜の雰囲気が変わった。いつものニコニコ顔でなく、全ての男を虜にするような妖艶な笑みだ。春菜は絶対にそんな表情はしない。
「私のかけた呪いが裏目に出るとはねぇ・・・」
「気付かずに薬入りのコーヒーを飲ませて、意識を失わせてから私の世界に運ぼうと思ったんだけど・・・」
呪いだと!やはり、あの冗談のようなドジスキルは呪いだったのか。
見た目は完全に春菜だ。しかし、中身が全く違う。一体、何が起こっているんだ!
「この体の魂から主導権を奪うのは苦労したわ。不幸の因子を植え付けたのは良かったけど、すぐに女狐に浄化されてしまったし・・・、すぐに浄化してしまったから私のこの魂の欠片には気付かなかったみたいね。おかげで、元の魂まで復活出来た。でもね、この娘の魂の力も強かったから、なかなか私がこの体を乗っ取る事が出来なかったのよ。」
不幸の因子・・・、まさか!ヤツの正体は・・・
そうか!あの時、春菜の髪の毛が1本黒かった。そして、春菜もあの女神の事を知っていた素振りだった。
たった1人で抱えて、ずっと戦っていたのか・・・
「でもね、赤ちゃんが出来たのよね。私は歓喜したわ。長い間、偽物の彼との子供は出来なかったし、そして、この赤ちゃんは私の大好きな本物の彼の赤ちゃん!この想いがこの娘の魂の力を超えたわ。私は蘇る!そして、ブルー様の妻になり、このお腹の中の赤ちゃんの母親として!」
春菜の髪の毛がどんどん黒くなっていく。
「こんな嬉しい事はない!あの憎い女狐フローリアからあなたを奪う!」
そして、左目も黒くなった。
「そして、誰にもブルー様を渡さない!」
「このガーネットがただ1人、永遠にあなたを、ブルー様だけを愛し続けます!」
「私達2人とこの子だけで、永遠に暮らしましょう・・・」
「邪魔するものは皆殺しです!例え、創造神でも!」
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