闇に堕ちた女神②
闇に堕ちた女神か・・・
「それとどんな関係があるんだ?」
「彼女は私と同じ時期に女神になりました。そして、私と同じ旦那様の前世であるブルー様を慕っていたのですよ。旦那様は今やブルー様の記憶も戻っていますから当時の事は覚えているのでしょうが、多分、彼女の名前は知らないと思います。」
確かに知らない名前だ。
「ブルー様の人気は凄かったのですよ。たった1人で候補者陣営を打ち破ってましたからね。特に、数億に上る神族を1撃で滅ぼした時のニュースは、神界中の女子が熱狂していたくらいです。傷だらけになっても1人で戦う姿・・・、女子が憧れない訳がありません。私もあの時助けてもらって、最後に名前を教えてもらいましたけど、最初から分かっていたら襲ってましたね。私もファンの1人でしたから。でも、私はレオ様の陣営の天使、結ばれない恋、今思うと何て素敵なシチェーションだったのでしょう・・・」
「あぁ・・・、あの時に戻れば、ああして・・・、こうして・・・、ぐふふふ・・・」
ちょっとぉ!目がヤバくなってきたぞ!自分の世界に入っている!
「フ、フローリア!落ち着け!元の世界に帰って来るんだ!」
フローリア・・・、お前は当時からヤバかったのか・・・
「はっ!失礼しました・・・」
「それで、熱狂的なファンの中に、私の友達でありライバルの『ガーネット』と言う天使がいたのです。」
「そして、ブルー様が現創造神であるレオ様に敗れた際、私の中で息を引き取ったではないですか。その時に、彼女も近くにいたのですよ。私も彼女もとても悲しみました・・・、それは、本当に長い間、悲しみを引きずっていましたね。そして、私達はしばらくしてから女神になりました。」
「私は女神になる前から美冬さんに会って、それから一緒に過ごし美冬さんに支えてもらったので良かったのですが、彼女は違いました。」
「女神となった彼女は自分の管理する世界を持つようになりましたが、その世界でブルー様とそっくりな人間を見つけたのです。彼女は歓喜しました。自分だけのブルー様だと・・・、そして、彼女は彼に近づく女性を全て殺してしまいました。誰にも渡さないと・・・」
うわぁ・・・、完全にアウトだ・・・
「彼女は人間に化け、彼に近づき一緒になりましたが、彼は人間、彼女は女神、ずっと一緒になれる訳がありません。彼が歳をとり天寿を全うするとすぐに転生で蘇らせ、同じように一緒になることが繰り返されていました。その間も、彼に近づく女性は皆殺しです。そして、彼女は考えました。『この世界の女がみんないなくなれば、ずっと独占出来る。』と・・・、そして、それを実行してしまいました。」
「さすがに彼もそのような暴挙には耐えられません。何度も自殺をしたのですが、その度に彼女に生き返らされ、ずっと監禁され続け彼女の慰み者と化してしまいました。彼女は女神の責務を放棄し、ずっと彼と一緒に居続け、彼女の管理していた世界もほとんどが崩壊してしまいました。」
待て!この話は何か覚えがあるぞ・・・
あっ!あの拷問部屋だ!お前も同じ様な事を考えていたのか!
い、今は言わないでおこう・・・、言ったら同じ目に遭うかもしれん・・・
「彼女はまた考えました。彼は人間、必ず歳をとって老いてしまう。だったら、神になればずっと若いまま愛でていけると・・・、そして、彼に神格を得させる為に、神族を殺し続けクリスタルを集めました。狂気に走った彼女の強さは異常です。何人もの神や天使が討伐に向かいましたが、みんな敗れ、彼女にクリスタルにされてしまいました。」
「十分にクリスタルが集まり、彼を神族にしようとしましたが、彼は既に心が壊れて単なる人形と化していました。そんな状態で神化に耐えられる訳もなく、彼の肉体と魂は砕け塵となってしまい、彼女はこの原因は創造神が不十分な人間を創造したのだと逆恨みし、神界まで攻めてきたのです。」
「うわぁ・・・、完全に狂ってるな・・・、邪神の中の邪神じゃないか。」
「でも、一歩間違えばお前も同じかもしれなかったかもな?」
やばっ!口に出してしまった・・・
「そうですね・・・、私もそう思います。彼女は私の欲望を具現化したものでしょうね。でも、私には美冬さんがいました。『お姉ちゃんを守る!』といった言葉の通り、私の心を守ってくれたのです。私の心のタガが外れないようにしてくれたのでしょうね。」
「だから、お前と美冬は仲が良いのか。」
「そうです。美冬さんには感謝してますよ。」
「彼女は強かった。創造神様と私の2人で何とか勝てましたが、彼女の狂気はそれだけで収まりませんでした。彼女は死ぬ間際に『不幸の因子』という呪いを撒き散らしたのです。ほとんどの因子はその場で浄化しましたが、4つの因子が浄化の手を逃れ、2つは神界に、残りの2つは時間と空間をを越えて他の世界に飛んでしまったのです。」
「春菜さんの因子はすぐに見つけられて浄化出来ましたが、夏子さんは取り憑かれてから時間が経ってしまったので、浄化するまでの間は辛い目に遭わせて申し訳なかったです。千秋さんとマリーさんは取り憑かれたら最後、死ぬまで不幸な目に遭うと決定された人生を送る事にさせてしまい、本当に申し訳ないと思ってます。」
「そして、私の力で浄化までは出来るのですが・・・、一度取り憑かれた人には、彼女の意思がすり込まれてしまいます。そうなると、いつまた彼女のような存在が出てくるか・・・、すぐには無理なので、指輪を使い時間をかけて浄化する事にしたのですよ。旦那様の魂に彼女の意思が引きつけられ、彼女達が旦那様に惹かれるまでは想像してましたが、こんなに早く結ばれるとは予想外でしたね。」
「ちょっと待て!そうなると、あの4人が俺を好きなのは、例の女神の影響か?だから、あんな短期間で俺に惚れて結婚までしたのか・・・、俺が好きなのは彼女達の本当の意思ではないんだな・・・」
「彼女達が可哀想だよ・・・」
「旦那様!そんな事は決してありません!私も予想外でしたが、ガーネットの意思は旦那様と結ばれた時点で消えてしまっていたのです。本当のブルー様と結ばれたと思い、ガーネットが満足したからでしょうね。だから、今の彼女達は自分の意思で旦那様が好きで一緒にいるのですよ。最初はガーネットの意思だったとしても・・・」
「ですから、旦那様。今の彼女達の意思を尊重してあげて下さい。私には分かります。本当に心から旦那様の事が好きだと・・・」
「そうか・・・」
彼女達はガーネットの意思にずっと縛れていないんだ。自分の意思で俺を好きになっていてくれる。俺も彼女達の意思に応えてあげないとな。
でも・・・
「本当は、もう彼女達には指輪は必要ないのでしょうが、旦那様の結婚の証しとしての意味ですごく喜んでいますから、そのままにしておきましょう。」
そうだな、知らない方が良い事だってあるからな。
「フローリア、最後に確認だ。」
「お前は、俺がお前を含めて妻を複数人持っている事に対してどう思っている?ガーネットはお前の欲望を具現化した存在だったと言っていたが・・・」
フローリアが黙って俯いてしまった。あの性格だとそうだろうな・・・
「そんなの嫌に決まっているじゃないですか!」
「私はずっと旦那様1人を独り占めしたい!それこそ、旦那様に近づく者は許せない・・・、殺してやりたい程憎い時も・・・、だから、ガーネットの気持ちもよく分かります。」
「でも、美冬さんなら昔から一緒にいましたし、どれだけ旦那様が好きだったか分かっています。本当は私と美冬さんの2人の妻で良かった・・・、そして、3人で仲良くずっと暮らしたかった・・・」
「私のせいで4人は酷い目に遭わせてしまった・・・」
「私から旦那様に近づくなと言えない!そんな事!言える訳がないでしょう!幸せだと思える恋を見つけて、今は生き生きとしているのに・・・」
「本当は私が旦那様の妻になる資格すら無かったのかも・・・」
「フローリア・・・」
俺はフローリアを優しく抱きしめてあげる。
「お前の本当の気持ちが分かったよ。時々、無理しているように感じたからな。」
「だ、旦那様・・・」
「やっぱり、お前は俺の1番の妻だよ。本当によく頑張っていると思う。時々、暴走するけどな。だから、そんな寂しい事は言うな。いつもみたいに堂々としていればいいさ。」
「確かに、俺は彼女達も好きだ。でもな、その縁を作ったのは、お前、フローリアだよ。お前が中心になって初めてみんなが回る。俺達はそんな家族なんだよな。だから、誰が1番好きかと言われれば、フローリアに間違いない。それが、俺の本当の気持ちだよ。」
「う、う、うぅぅぅ・・・」
「泣くなよ。今はこうして2人っきりだし、お前が好きな事も出来るんだぞ。いつもは無理だけど、たまにはこうして2人の時間を作ろうな。」
「は、はい・・・」
「少しは元気が出たか?今夜はずっと一緒にいるから、安心しろ。」
「そうですね・・・、朝まで2人っきりですねぇ・・・、好きな事をしていい、そう言いましたよね?」
ん!フローリアの様子が少しおかしい・・・
や、やってしまった?
「旦那様・・・、言質は取りましたよ。」
フローリアが俺を強く抱きしめてきた。そして、耳元で囁く。
「そして、私が1番好き。最高のご褒美ですよ。こんな嬉しい言葉はないです。もう、天にも昇る気分ですよ・・・」
「今夜は旦那様と2人っきり、私が独り占めなんですよね。誰にも邪魔されないし、私だけのもの・・・、最高です・・・」
「ふふふ・・・、私の好きなようにしていい・・・、今夜は遠慮しなくていい・・・」
「はぁ、はぁ・・・、旦那様・・・、どう料理しましょうか・・・?体中が疼いて、もう抑えられません・・・」
「もう、我慢しなくていいんですよね?本当の私を曝け出しても・・・」
いかん!フローリアの禁断の扉を開けてしまった!
今までの最大の危機に違いない!
「旦那様・・・、私も旦那様が大大大大大大大大好きですぅううううううううううう!」
「もう!ずっと!ずっと!ず~~~~~~~~~っと!離しませんからぁああああああああああああ!」
あ、死んだな・・・
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