闇に堕ちた女神①
最終章です。
もう少しお付き合い下さい。
マリーと結婚した翌々日、俺はマリーと一緒にギルドに向かった。
昨日は大変な目に遭ったからな。
何度ミイラにされたか・・・
ミイラになる度に回復魔法をかけられて、本当にエンドレスだった・・・
今朝のみんなの満足そうな顔・・・、全員が極端過ぎる肉食系女子だったと改めて恐怖を覚えてしまった。
異世界ものでハーレムはかなり鉄板な設定だが、やっぱり限度があるぞ!
平和なスローライフの為にも、みんなをあまり刺激しないようにしよう・・・
マリーはギルドまでの間ずっと俺の手を握っていた。
今まで恋愛の経験がなかったので、恋愛の雰囲気を味わいたいとの希望だ。
マリーがずっとニコニコしている。本当に嬉しそうだ。
フローリア達で美女耐性が付いている俺でも、時々ドキッ!とするような表情もあるくらいキレイになったと思う。
今までの負の感情が無くなって、本来の美貌が出てきたのだろう。
ギルドの前に着いた。
「マリー、そろそろ手を離さないか?」
「いいの!あんたと手を繋いで入りたいの。あんたを狙っている他の受付嬢に見せつけて、売約済みだと教えてあげたいのよ。」
「そうか・・・、マリーが構わないなら・・・」
ギルドの中に入る。
今までの反応と違うぞ。俺達をチラッと見るが、以前と比べて静かだ。
マリーに手を握られたまま一緒にマリーの席に向かう。
周りのヒソヒソ話が聞こえる。ステータスが最強だから耳も良いんだよな。
「あの毒蛇マリーにとうとう喰われたか・・・」
「今回はどれだけ貢がされるやら・・・」
「いくら稼いでも全部アイツに持っていかれるからなぁ、可哀想に・・・」
「旦那も女を見る目がないな。」
「でも、何だかいつもより数段キレイだぞ。やっぱり、稼ぎの違うヤツからの貢ぎ物は違うのか。」
「夏子様がいない・・・」
「ご褒美がぁ!」
おいおい、最後の連中は何を期待しているんだ。ちゃんと仕事しろ!
【マリー・・・】
俺はマリーに念話で会話を始めた。
【これが、私のギルドでの本当の評価・・・、自分でNo.1だと思い込む事で居場所を作っていたんだ。あんたには私の全てを見せたかった・・・】
【私を軽蔑する・・・?】
【いや、逆に嬉しいよ。マリーがそれだけ俺に心を開いてくれたと思うとな。更に惚れ直したよ。】
【バ、バカ!恥ずかしい・・・】
【でも・・・、ありがとう・・・】
マリーの席の近くまで来た時、ウエンディに呼び止められた。
「あら!マリーさん。昨日は休んでどうしたのですか?心配しましたよ。」
「あぁ、ちょっと体調が悪くてね・・・」
「そうですかぁ・・・、へぇ・・・」
ウエンディが俺達を見ながらニヤニヤしている。女の勘は鋭いからな。俺とマリーの関係がバレたか?
「蒼太さん、ちょっと・・・」
ウエンディが小声で話しかけてきた。
「マリーさんと蒼太さんの指に同じ指輪が着いていますよね?もしかして・・・」
ドキッ!バレた!
「それくらい分かりますよ。だって、マリーさんから幸せオーラが全開に出ていますからね。私が主人と結婚した時と同じ雰囲気ですよ。それに、あんなにキレイになって・・・、今までのピリピリした表情もありませんからね。蒼太さんを見る目が完全に乙女ですよ。マリーさんが心から蒼太さんの事が好きだと伝わってきましたね。」
「そ、そうか・・・」
「私はマリーさんの事は心配していたのですよ。いつも余裕が無い感じでしたし、悪い噂も色々と聞いていましたから・・・」
「マリーさんはどう思っているか分かりませんが、私はマリーさんを大切な友人の1人と思っています。蒼太さんが旦那様なら、もう心配する必要も無いですね。」
マリー・・・、良かったな。信じられる友達がいて・・・
「ウエンディ、ニヤニヤして私を見ないで!恥ずかしいじゃない!」
「あら!いいじゃないですか。昨日はマリーさんにとって良い事があったのでしょう?ギルドを休んでまで・・・、2人が熱々になるとは思っていませんでしたけどね。」
「マリーさん・・・、良かったですね。おめでとう・・・」
「あ、ありがとう・・・」
「ウエンディ!私の心配ばかりしないで、お前はどうなの!お腹も少し目立ってきているし大丈夫?」
「大丈夫ですよ。主人と私の子供ですから元気に決まっているでしょう。早く生まれて欲しいです。私が母になるなんて思ってもいませんでしたが、こうして、お腹に赤ちゃんがいると母になるんだと実感しますね。」
そう、ウエンディは妊娠中だ。
最初のつわりは酷かったみたいだったが、今は落ち着いている。
あの筋肉ゴリラもパパになるのか・・・、世の中、本当に何があるか分からん・・・
「私は子供が生まれたらギルドを辞めますから、後はマリーさんに任せますよ。今のマリーさんなら安心して辞める事が出来ます。」
「マリーさんも早く子供を作って下さいね。」
「い、言われなくても・・・」
真っ赤になっているマリーをウエンディが微笑みながら見つめている。女の友情って良いよな。
「それと、ギルドマスターから伝言です。執務室で待ってますとの事です。」
ギルドマスター執務室
「蒼太様、この度はおめでとうございます。フローリア様から色々とお話を伺いましたよ。」
ギルドマスターが恭しく俺に挨拶をしてきた。
「ねぇ、何でギルドマスターがあんたに対して腰が低いの?」
「マリー、それは、私から説明しますよ。マリーも天使になったから分かると思いますが・・・」
「な、何で!私の事を天使だと・・・」
「そう、私もあなたと同じ天使ですよ。そして、蒼太様は既に神の身。今はこの世界を管理しているのはフローリア様ですが、ゆくゆくは蒼太様がこの世界の神となりますからね。失礼があっては申し訳ないでしょう。」
「あんた・・・、そんなに偉いんだ・・・」
マリーが俺を不思議そうな目で見ている。実際、俺も実感が湧いていないけど・・・
「そうみたいなんだ・・・、正直、俺もまだよく分かっていない。これから、色々と神の勉強や引き継ぎとかがあるみたいなんだけど・・・」
「蒼太様、マリーの事はありがとうございました。我々神に仕える者としては、干渉する事も出来ませんでしたし、結果として蒼太様の妻になる最良の結果になって良かったです。」
「いや、俺は大した事はしてないよ。フローリアに助けられてばかりだしな・・・」
「そんな事はありません。蒼太様の周りには自然と人が集まっていきます。そして、みんな力になりたいと思っているのです。私もその1人ですからね。」
「そう言ってくれて嬉しいよ。」
「それで、マリーの事だが、当分はこのギルドで働かせて欲しい。色々と悪い噂もあったけど、今は文字通り生まれ変わったし、過去の恐怖も無くなったから変な事はしないと俺が保証する。そして、マリーとは常に連絡が取れるから、何かあったらマリーに伝えれば、すぐに俺に連絡がつくよ。」
「分かりました。マリーさんはこのギルドにとって必要な人ですからね。これからは、もう後ろ指を指されるような事はしないなら問題はありません。分かりました?マリー。」
「はい!ギルドマスター、ありがとうございます。」
マリーが泣いていた。
その夜、俺はフローリアの個室に2人でいた。
「フローリア、確認したい事があるんだか、いいか?」
「何でしょうか?」
「この指輪なんだけど、6個ある内の2個は俺とフローリアの分だよな?そして、残り4個は途中まではお前の護衛4人だと思っていたよ。確かに3個までは美冬以外の彼女達だったからな。でも、最後の1個はマリーだった。美冬とララは別にお前が用意した指輪だったし・・・」
「一体、これには何の意味があるんだ?お前は知っているみたいだったし・・・」
「旦那様・・・、気が付きましたか・・・、意味はあります。」
「一体・・・」
フローリアが真剣な顔になった。良い意味ではなさそうだな・・・
「この指輪はある悪意を浄化する為のものです。ちなみに、私と美冬さん、ララさんは普通の指輪に念話機能を付けただけのものですよ。美冬さんにはあの姿になると指が千切れちゃいますから、サイズ変更の魔法はかけてますけどね。旦那様の指輪だけ、どこにいようが何をしようが全て私が把握出来るようにしてあります。だって、旦那様の事は24時間365日気になるでしょう・・・、もう絶対に離さないと誓っていますからね。拒否権は認めませんよ。」
とうとう自白したか!プライバシー丸裸は俺だけか・・・
「拒否権云々より、これはもう外せないぞ!」
「良いじゃないですか。私の事が嫌いなのですか?」
「そ、それはないが・・・」
「だったら問題無いでしょう。もちろん、私に隠し事は無いですよね?もし、あったらどうなるか・・・」
こ、怖い・・・、フローリアの目からハイライトが消えかかっている。
これ以上、この話題はマズイ!
「無い!無い!それはお前もよく分かってるだろ?続きを教えてくれないか?」
「話を元に戻しますね。」
よ、良かった・・・、元に戻った・・・
「4人には『不幸の因子』と言うものが取り込まれています。この因子は厄介なもので、取り込まれたら最後、その人は不幸な運命が確定してしまうのですよ。千秋さんとマリーさんは不幸のまま死ぬ運命だったでしょう?」
「確かに、千秋は悲惨だったよな・・・、マリーもそんな感じだ。夏子もお前達に会うまではずっと孤独だと言っていたな。」
「人間だったら完全にアウトで死ぬ未来と、天使は運命を変える力があるからギリギリセーフで死から回避という訳か・・・」
「でも、春菜はどうなんだ?孤児だった事以外は聞いてないな。」
「それに関しても説明しますね。順番にお話しします。」
「発端はある女神が闇に堕ちてからです。名前はガーネット。かつて、私のライバルだった女神です。」
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