ゴーレム決戦⑥
「さすがに、もうこれ以上は無理!」
「でも・・・、本当に勝てたんだな・・・」
俺は地面にへたり込む。
「あなた~!」
「旦那様~!」
「蒼太さ~ん!」
「ソータ~!」
彼女達が駆け寄ってきた。
「みんな!大丈夫だったか!」
「はい、回復魔法で何とか通常の行動は問題がないまで回復出来ました。」
「良かった。そして、みんなありがとう。」
「どうかしました?」
「この戦いはみんんなのおかげで勝てた。みんなが俺を支えてくれて、俺もみんなを守りたいと願ったから、あの魔法が使えたと思う。みんなと家族になれて、心から嬉しいよ。」
「私達もです。」彼女達も頷く。
「ソータ、コレ・・・、あそこで拾った。」
美冬が前に出てクリスタルを渡してくれ、俺の中に吸収された。
「ありがとうな、美冬。」
「このガントレットは凍牙が力を貸してくれたのか?」
美冬は両手に装着されているガントレットを微笑みながら見つめている。
「そう・・・、私を助ける為に・・・、ありがとう、凍牙お兄ちゃん・・・」
そして、ガントレットは白く輝き、光の玉となって美冬の胸の中に吸い込まれていった。
「凍牙お兄ちゃん!そう・・・、ずっと守ってくれるんだ・・・」
「これでソータと同じだね。」
美冬が俺を見つめながらニコッと笑ってくれた。
「そうだな・・・、美冬、お前、酷い怪我だぞ。」
ガントレットを嵌めていたので分からなかったが、美冬の両手の拳は血だらけになっている。俺は美冬の両手を軽く握り回復魔法をかける。
「これで良し!どうだ?」
「ありがと、ソータ。それと、もう少し握っていて欲しい・・・」
「それくらいなら・・・、別に遠慮する事ないだろ。」
「あのね・・・、ソータの事、『ソータお兄ちゃん』って呼びたいんだ。さっき、思わず言っちゃったけど・・・、凍牙お兄ちゃんは私が小さい時に村を出て行って、偶にしか帰って来ないから、あまり甘えられなかったから・・・」
「ソータは私を家族と言ってくれたし、私もソータに甘えたい・・・」
「俺は美冬の事はもう妹だと思っているよ。俺にとっては今更の話だよ。」
3人をチラッと見ると、ニヤニヤしながらサムズアップしてる。
美冬に視線を戻すと、今までにない笑顔でニコニコしている。
「凍牙に負けないくらいに、俺も立派なお兄ちゃんになってやるよ。」
「ありがとう!ソータお兄ちゃん!大好き!」
「それとね・・・、ドラの上で言ってた、もう1つの約束だけど・・・」
美冬の顔が真っ赤だ。そして、美冬の顔がどんどん近づいてくる。
そして、美冬の唇と俺の唇が重なった。
「「「なっ!」」」3人が石化した。
しばらく唇を重ね、美冬がゆっくりと離れる。
「これは、フェンリンル族の結婚する約束の儀式・・・」
「ソータお兄ちゃんは、まだ私を子供扱いしている。だから、今はまだ妹でもいいよ。でもね、私を大人の女として見てくれるようになったら、必ず、私をお嫁さんに貰ってね。約束だよ!」
「分かった。約束する。でもなぁ・・・凍牙は大丈夫か?」
「大丈夫だよ。私の中の凍牙お兄ちゃんからはOKが出てるし、さっさと結婚しろとまで訴えてるよ。」
「そ、そうか・・・」
「絶対に忘れないでね!ソータお兄ちゃん。」
「分かったよ。美冬。」
「ありがとう~!大好き~!」
美冬が俺に抱きつき、またキスをしてくる。
「「「うっ!」」」石化が解けかかった3人だったが、またもや石化してしまった。
さすがに俺の疲労もピークだったので、しばらく休む事にした。
隣は美冬がピッタリと寄り添っている。
石化が解けた3人は「今の美冬なら仕方ないねぇ・・・」と言って、少し離れた場所で休んでいた。
戦闘で破壊された街道や崖も、俺と春菜の魔法で元に戻し、ドラで街に戻った。
ギルドマスター執務室
「蒼太様、お疲れ様でした。」
「それにしても、あのゾーダを倒すとは・・・」
「あの神は、神界でも有名な邪神でした。神鉄を神殿から盗む以外にも、彼に滅ぼされた世界はどれだけあったか・・・、それだけ強力な神でしたよ。」
「まさか、この世界の存亡まで関わってくる戦いになるとは思わなかった・・・」
「スローライフ希望だったのが、ここまで大事になるなんてな。」
「蒼太様は神との戦いは避けられませんから、これからも大変です。」
「我々もお役に立てるよう、最大限の協力を惜しみません。」
「そう言ってもらえると助かる・・・、しかし、俺はみんなを犠牲にしてまで戦うつもりはないよ。俺は、それ以上に強くなって、みんなを守れるようになりたい。」
「そして、今回の戦いで分かったよ。」
「何が分かりましたか?」
「どんなに強くても、1人では絶対に勝つ事は出来ないって事さ。確かにヤツは強かった。普通なら俺達は負けていて、この世界も滅んでいたと思う。でもな、ヤツは1人だった。俺達は何度も負けそうになったけど、その度にみんなが助け合って支えて、状況をひっくり返す事が出来たんだ。これは、絶対に1人では出来ない事だと思う。もちろん、犠牲になった冒険者達も、貴重な情報を持ち帰ってくれたから、作戦も立てられたし・・・」
「俺は1人ではないという事だ。そして、みんなから戦う勇気をもらっている。」
「私もそう思います。」
「ありがとう。それと、犠牲になった冒険者達のことなんだが・・・」
俺は異次元収納から、ゴーレム戦で手に入れた金とダイヤモンドを全て取り出す。
「残された家族などの保障に回してもらいたい。少しは足しになるかな?」
「そ、そんな・・・、これだけあれば十分過ぎます。心遣いありがとうございます。」
「それと・・・、生き残った彼女の未来の為にもな。」
「そうです!先日、蒼太様がギルドを出られたその夜に、彼女に奇跡が起きたのです。あれだけの怪我が傷一つなく回復し、元の姿に戻ってました、我々天使の力でも、体の欠損まで直す力はありません。もしや・・・」
「俺は何もしてないよ。悪戯好きな女神でも遊びに来たんじゃない?」
「あれを悪戯と言いますか・・・、感謝します。」
「ただいま!帰ったぞ!」
「あなた、お帰りなさい。」
「春菜、みんなにケーキのお土産だ。仲良く食べるんだぞ。」
「すみません・・・、私が入れなくなってしまい、いつも買ってくる事になって・・・」
「構わないさ。春菜はあの店のケーキを気に入ってるんだろ。それくらい、いつでも買いに行くさ。」
「ありがとうございます!」春菜が嬉しそうに抱きつく。
「そういえば、美冬がいないな。いつもなら匂いを嗅ぎつけて真っ先に来ているはずだが・・・」
「美冬さんは、フローリア様と一緒に神殿にいますよ。戻って来た時に、みんなで食べましょうね。」
フローリアの神殿
「美冬さん、婚約おめでとうございます。」
「ありがとう。フローリア様。」
「でも、本当に旦那様と婚約して良かったのですか?フェンリル族は一度結婚を決めた相手とは2度と離れる事は許されないでしょう。それに、美冬さんの心はブルー様が占めていますし、いくら旦那様がブルー様の生まれ変わりでも、実質、別人ですよ。私は今の旦那様一筋ですから問題はありませんが・・・」
「いいの。私もソータお兄ちゃんが大好きだから・・・」
「ブルー様が私にしてくれた約束も、本当は最初から分かっていたんだ。私を悲しませたくない為の嘘だって事を・・・、でも、それくらいブルー様が好きだった。その気持ちは今でも変わらない。」
「でもね、私、思ったんだ。ブルー様の好きと、ソータお兄ちゃんの好きが違うんだって事にね。ブルー様は私の理想の人で、憧れの人なんだよね。だから、これは私の一方的な想いなんだ。」
「ソータお兄ちゃんは違う。いつも私を大切にしてくれるし、今では、私も素直になる事が出来る。そして、一緒にいると心が温かくなるんだ。だから、みんなもすぐにソータお兄ちゃんと結婚したのだと思う。それくらいソータお兄ちゃんはみんなを温かくしてくれるんだ。一緒にいると、本当に幸せな気分なんだ。しかし、ブルー様の時はそんなに温かくなる事はなかった。」
「だからね、ずっと一緒にいたいのはソータお兄ちゃんで間違いないんだ。」
「あらっ!私と同じ理由ですね。私も、最初はブルー様の転生体として追っかけていましたけど、彼を見ているうちにどんどん引きつけられていってしまいましたね。彼の地球での結婚の時なんかどれだけ相手をひき肉にしてやりたかったか・・・」
「あはは・・・、女神としてはしたない言動でしたね。」
「大丈夫、フローリア様にとっては平常運転だから。」
「むぅ・・・、美冬さんも言いますね。」
「それにしても・・・、私も美冬さんも、前世を含めて同じ人を好きになるなって思いませんでしたよ。」
「あなたと私、似た者同士なんでしょうかね?ふふふ・・・」
「それと、これは私からのプレゼントですよ。」フローリアはみんなが着けている指輪を美冬に差し出した。
「本当は、結婚した時に渡すつもりでしたが、それだとまだ先になりますし、美冬さんだけ着けていないのも仲間外れに思えるもので・・・」
「ありがとう。フローリア様。私も欲しかったんだ。でも・・・、ソータお兄ちゃんがコレは呪いのアイテムって言ってたけど・・・、まっ、みんな喜んで着けているから私も着けるね。」
「呪いの何とかは、旦那様とじっくりOHANASHIする必要がありますが、私と美冬さんの友情の証として、私が着けてあげますよ。」
フローリアが美冬に指輪を嵌めてあげた。
「へへへ・・・、これで全員お揃いだ。」
「フローリア様・・・、これからは正式なライバルだね。フェンリル族は嫉妬深いんだよ。」
「美冬さん、望むところですよ・・・、私の大人の魅力に敵います?」
「「ふふふ・・・」」
「「今夜は旦那様にどっちが一番好きかハッキリと聞きましょう!」」
「おわっ!」
「旦那様、どうした?」夏子が不思議そうな顔で、俺を見ている。
「分からん・・・、急に寒気がしてな。一瞬、頭から食べられるような気がして・・・」
「いや・・・、蒼太さん、それは気のせいでないかも?私も、急に蒼太さんに危険が及ぶ気が一瞬だけした・・・」
「私も思いました。何故か修羅場の予感が・・・」
「春菜もか?」
【私も思う。フローリア様と美冬の2人は我々以上に付き合いが長いからな。結婚宣言した美冬とで今頃、旦那様の取り合いをしているかもしれん・・・】
【渚・・・】
「う~~~ん、渚の言う通りかも・・・」夏子が難しい顔で呟く。
「あなた・・・、正直、私達3人では、あの2人に敵いません・・・、2つに分けられない事を祈りますね。」
「縁起でもない事、言わんでくれぇ~~~!」
夜、2人が帰ってきた。
「「ただいまぁ~~~!」」
2人の仲は良さそうだ。アレは杞憂だったかな?美冬を見ると、左手の薬指に光るものが見えた。
「あれっ!美冬、これは?」
「ソータお兄ちゃん、これはね、フローリア様から婚約のお祝いだって。私1人だけ着けていなかったし、いつか結婚するから先にって。」
「そうか・・・、俺が言うのも変だけど、おめでとう。」
「ありがとう!ソータお兄ちゃん!」美冬が抱きついてくる。本当に遠慮しなくなったな。俺としては嬉しいから良い事だと思う。
「フローリア、美冬に指輪を渡したって事だけど、そうなると、あの1個はどうなるんだ?」
「大丈夫です、旦那様。ちゃんと渡す相手はいますからね。」
「一体誰だ・・・、心当たりがないぞ。」
「秘密です。すぐなのか、ずっと先なのか・・・」フローリアが俺に微笑んでくれたが、俺にはさっぱり分からん・・・
「それと!旦那様!」
「ん!何だ?」
「今夜は、私と美冬さんが一緒に寝ますね。もちろん、美冬さんは妹ですから私も含めて添い寝だけで寝ます。安心してお休みして下さいね。」
「でも、寝る前に美冬さんと3人でお話がしたい事があって・・・」
「ソータお兄ちゃん、もちろん!私が一番好きだよね?」
「美冬さん、さっきの話し合いで今夜は色仕掛けは禁止と決めてますが、それでも私には勝てませんよ。」
2人の間に火花が飛ぶ。「「ふふふ・・・」」、「「私が一番!」」
さっきの嫌な予感が当たりそう・・・
助けを求めようと3人の姿を探したがいない・・・
逃げられたか・・・、この2人の間に入る勇気はさすがにないな・・・
はぁ・・・、普通にゆっくり眠りたい・・・
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