上司がポンコツだと部下はどんなものか?
フローリアがドヤ顔で宣言していた。
それにしても・・・
ロイヤルガードとは言葉で言うと王族の護衛ですよね?
もしや?フローリアは神の世界での王族?
恐る恐る「フローリアって王女さま?」
「いえいえ、私はただのか弱い女神でございますよ。」
後ろの4人が必死に手を振って否定していた。
「ロイヤルって言えば、普通は王様関係に使う言葉だよね。」
「そうなのですか。語呂が良かったので使ってみましたけどダメでした?」
段々とこの娘のキャラが分からなくなってきた。
確実に分かるのは、かなりポンコツの可能性が・・・
「いや、別に著作権も無いから大丈夫じゃないの。」
これ以上の話は掘り下げないようにしよう・・・
我が身の安全の為にも・・・
「普通の人間に偽装していますが、これでも天使で、強さに関しては指折りですし、4人は私の世界では10本の指に入る実力者です。」
「まぁ、この世界では私が最強ですから、私より弱い人が護衛というのはちょっとですけどね。」
ドヤ顔のフローリアがいた。
「それでも皆さんはお役に立ってますよ。『肉壁』として時間稼ぎに・・・。ふふっ。」
に、肉壁って・・・
このポンコツ女神め!ちょっとは言葉を選んだらどうだ?
4人とも青い顔しているぞ。
こんなポンコツ上司の下にいる部下には同情する。
こういうところは地球の会社での上下関係に似ている気がする。
気を取り直して、改めて4人を見てみるとどれも個性的だわ。
メイド服にドレスアーマー、パンツスタイルの女性スーツに露出の高い服の女の子。
露出の高い娘は何と!犬の耳が!
ケモ耳キター!!!
フローリアがニコニコした顔で俺を見つめていた。
「蒼太様、今、心の中で『ケモ耳キター!』と叫んだでしょう?」
ドキッ!何故分かる?
「蒼太様の事は全て調べがついているんですよ。齢90になりながらも趣味はアニメ、ゲーム、ラノベ(主に転生もの)ですよね。この護衛も戦闘力以外にも蒼太様の趣味に全開で合わせてありますから。」
「それにあの耳は狼の耳です。間違って犬と言ったら思い切り噛みつかれますよ。」
そうだった・・・
コイツは重度のストーカーだから俺の個人情報は全て把握されているんだった・・・
とはいっても、このメンバーだと楽しそうだ。
念願のハーレムだ!
心の中でガッツポーズだぜ!
「蒼太様・・・」
「分かっているとは思いますが、私というものがおりますので手を出したらどうなるか分かってますよね?」
無表情になり目にハイライトが無くなったフローリアが見つめていた。
やはり心を読まれている・・・
「手を出したら・・・」
感情のない口調で
「すり潰します・・・」
前の時よりも激しく下っ腹が思いっきりキュッとなった。
目にハイライトが戻りニコニコ顔のフローリアから
「まあまま、皆さん。このままお見合いっていうのも何ですし、これから一緒に旅を行いますから自己紹介でもしません?」
「仲良くなるのは大事ですからね。」
何を言う。
適切な距離感を置かないと俺の下半身が危ない。
その恐怖にビビりながら旅をしないといけないのか・・・
「そして、4人には既に蒼太様の紹介を終わらせてありますの。」
「蒼太様の人生『生まれてから転生するまで』92年のダイジェストを三日三晩映像で叩き込んでおきましたし。」
4人をよ~く見てみると・・・
確かに目の下に薄っすらと隈が出来ている。
アレの被害者は俺だけじゃないんだなぁ・・・、と4人に激しく同情した。
「それでは春菜さんから自己紹介しましょうか。」
ピンク色のツインテールをしたメイド服姿の女の子がオドオドしながら一歩前に出てきた。
目が少しタレ気味で美人と言うよりも可愛いというのが似合う。
それ以上に目がいってしまうのは胸がデカすぎる!
まるでスイカが2個付いているような感じだ。
「は、は、春菜でしゅ!」
あ、噛んだ。
「は、恥ずかしいぃ~~~!」
アレと比べたら心が癒される~~~
「蒼太です。よろしく。」
「フローリアから何を言われたか分かりませんが、俺は至って普通の人間ですから安心して下さい。」
視界の隅でフローリアの頬が膨らんでいるが無視しよう。
「私はフローリア様のお付きメイドですが、多少の魔法の心得がありますので、蒼太様の足手まといにならないよう頑張ります。」
フローリアが
「この娘の魔法の腕は多少ではないですのよ。私の世界では1番の魔法使いですし、特に大量殲滅魔法が得意なんですのよ。」
春菜が小さくガッツポーズをしながら
「フ、フローリア様は私の事を持ち上げ過ぎです。」
「ご期待に添えられるよう、メイド業も含めて蒼太様にお使いさせていただきます!」
可愛いなぁ・・・
この世界でやっとまともな人に会った気がする。
フローリアがボソッと小さな声で
「春菜の恐怖はこれからなんだよねぇ・・・。ま、黙ってましょう。」
「お次は夏子さん。」
蒼い髪をポニーテールでまとめたドレスアーマーの女性が前に出てきた。
人形のような端正な顔立ちで、ドレスアーマーを着込んでいるのもあってか姫騎士の印象だ。
どこかのお姫様と言っても信じられるだろう。
「夏子だ。剣を得意としている。」
「私の腕は前衛として申し分ないと思うし、安心して戦闘をまかせてくれ。」
「それにしても・・・」
夏子がじっと見つめてくる。
「君は私の好みだ・・・。私の征服欲を「夏子さん!」・・・」
「も、申し訳ありません!フローリア様!」
「蒼太様は私のモノなんですから、勝手にあなたの好きにしてはいけませんよ。」
「あなたの趣味に付きあわせる気はありませんし。」
「は、はい!自重させていただきます。」
夏子がえらくビビッていた。
確かにフローリアから逃げられないとは思うが、俺の事はモノ前提かよ・・・とほほ・・・
「次は千秋さん。」
茶色のショートかっとの髪をしたパンツスタイルのキャリアウーマンみたいな女性が前に出てきた。
男装の麗人みたいな感じだ。
「・・・」
「えっと・・・」
「・・・」
沈黙に耐えかねてフローリアが
「千秋さ~~~~~ん!」
「千秋だ。男と話す気はない。」
そう言ってすぐに列に戻って行った。
「男なんてみんな死ねば良いのに・・・」
「ははは・・・、彼女は女の人しか興味なくてねぇ・・・」
「男は全滅すれば良いと思っているくらいなんだよなぁ・・・」
「俺と一緒に旅なんか無理じゃね?」
「彼女の索敵、潜入スキルは天使一の実力だし、暗殺技も高レベルで取得しているからパーティーを組むには必要なんだよね。」
「最高戦力のパーティーを目指していたもんだから、実力重視との事で。」
「ま、何とかなるでしょう。」
結局、俺に丸投げかいな。
もう、不安な旅でしかならない・・・
「最後は美冬さんです。」
真っ白な長い髪に狼の耳を生やした女性が前に出てきた。
タックトップにホットパンツの露出の高い服装だが、相当鍛えられている感じで引き締まった体だ。
「美冬です。よろしく。」
そう言ってすぐに列に戻った。
えっ!それだけ?
フローリアがニコニコしながら
「異世界転生モノにはケモ耳娘のモフモフは鉄板でしょ?」
「蒼太様の読まれていたラノベにも必ずそんなキャラが登場しているじゃないですか。」
「ケモ耳は外せませんよ。」
「それだけで同行させるのか?」
「ええ、私の決定に何か問題でも?」
「喜んで!」
「でも、彼女はとてもプライドが高いですので、相当の信頼を勝ち取らないとモフモフは出来ませんよ。」
「目指せ!モフモフ!」
はぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・
盛大なため息が出てしまった・・・
上司はポンコツで部下は個性あり過ぎか・・・
前途多難な冒険の未来しか見えないのだが・・・
頑張ってこの世界で生きていこう・・・