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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第1章
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領主③

翌日、俺達は馬と馬車を借りにギルドへ行った。


ギルドは至って普通だった。

一体、昨日のあの惨状は何だんだ?夢でも見ていたのか・・・


【渚・・・、本当に完璧に躾されてるんだなぁ・・・】


【ふふふ・・・、私を誰だと思っている。旦那様、惚れ直しただろう?】


【あぁ、本当にすごいな。さすが渚だ。】


【うっ!素直に褒められると、ちょっと恥ずかしいな・・・】



ギルドの人に馬車が停められている場所に案内されて着いた。


職員の人が馬を見ながら質問してきた。

「馬と馬車は用意してありますが、御者はどうするんですか?」


「へっ!」


しまったぁぁぁ!そんな事、考えてなかったぞ!

車ならAT、マニュアル、大型まで完璧に運転出来るが、さすがに馬の経験は無い・・・


「誰か御者の経験している人、いるかなぁ・・・?」みんなに向かって聞いてみた。


春菜と千秋と夏子は首を振っている。渚からは念話で返事がきた。

【鞭使いなら完璧だが、馬相手の経験はないな。】


絶望感が漂い始めたが、美冬が俺の前に来た。


「私なら馬に言う事を聞かせられるよ。」


「頼んだ!美冬!」「うん!」


美冬が馬に近づいていく。2頭の馬はすごく大人しく見えるが、少し後ずさっているようにも見えるが・・・

そして、美冬が馬のすぐそばまで来て、首を優しく撫でた。

馬はとても大人しい、しかし、怯えているように見えるのは気のせい?


「お前達、私が近づいてもよく逃げたり暴れたりしなかったな。偉いぞ。そんな事したら頭から食べてあげるつもりだったから、命拾いしたね。」


そうだった・・・

今の美冬は可愛らしい女の子の姿だが、本来の姿は大きな狼だ。

そりゃぁ、馬にとって美冬は捕食者だからなぁ・・・、大人しくしないと喰われてしまうと本能で察知しているのだろう。それか、もう人生、いや、馬生か・・・を諦めてしまっているか・・・


「ソータ、この子達はもう大丈夫だよ。私の言う事を全部聞いてくれるって!」


「やったぞ、美冬!今夜はご褒美にステーキだ!」


「ありがと~、ソータ!好き!」そう言って、美冬は俺に抱き付いてきた。美冬は孫じゃなくて完全に妹ポジションだね。


無事に馬車を借りる事も出来て出発だ。






1時間後・・・


「う~~~・・・、もう駄目・・・、馬車の乗り心地がこんなに辛いなんて・・・」


俺は春菜の膝枕の上で死んでいる・・・


「あなた・・・、大丈夫ですか・・・?」


「やっぱり、ドラに乗せてもらった方が正解だった・・・、うっぷっ!」


そう、俺は酔ってしまった。

馬車がこんなにも辛いものだったとは・・・


街道とはいっても、現代地球のようにアスファルトなどで舗装もされていない。地面を平らに踏み固めたようなものだ。おかげで路面はかなり凸凹しているし、馬車にはサスペンションなんて付いていないから、ショックがモロに尻に伝わってくる。常に小刻みに揺れているようなものだ。

車輪も木と鉄で出来ているから、更に振動が伝わってくる。おかげで、全身シェイクされたようになって、あっという間に酔ってしまった。

ゴムタイヤの偉大さを実感する。

昔、大八車の荷台に乗っていた時を思い出す。あれも乗り心地は悪かった。でも、大八車のタイヤもゴムタイヤだったよな。今のはそれ以上に悪い・・・


「それなら馬の速度を落とします?少しは楽になりますよ。」


「いや・・・、それだと時間がもっとかかってしまう・・・、すぐに慣れると思うから、そのまま行こう・・・、うっ!」


「まぁ、この調子だと、私達は膝枕が出来るご褒美を貰えますので、どちらでも構いませんよ。」


千秋が俺の隣に座る。

「蒼太さん、次の休憩は私が膝枕をするからな。それまでは慣れるなよ。」


「そんな無茶な・・・」


次の休憩まで慣れる事なく、結局、千秋に膝枕をされてしまった。

千秋は嬉しそうに俺を膝枕して頭を優しく撫でてくれた。千秋、可愛いぞ。その表情で俺も癒される。


【旦那様・・・、大丈夫か?】


【渚か・・・、さっきよりは楽になったよ。】


【そうか、今日の家事は私が全部やっておくから、旦那様はゆっくり休んでいてくれ。】


【助かる・・・】


「なぁ、夏子。異世界の馬車って、こんなに乗り心地が悪いのか?地球の頃の馬車はここまで酷くなかった気がするけど・・・」


「そうだな・・・、この馬車自体が貸し出し用の馬車だからだろうな。貸し出しても必ず返ってくる保障もないし、ギルドもそこまで無駄にお金をかけるような事もしないだろう。私達も色んな馬車に乗ったが、この馬車は人と荷物を載せる最低限の事しか考えていない。本当に酷い馬車だ。」

「ちなみに、馬の質も悪い。美冬のおかげで言う事を聞いてくれるが、只の人間だと苦労するだろうな。」

「ここは旦那様みたいな安全な世界ではないからな。壊れても奪われてもギルドには一番被害が少ないようにしているのだろう。」


夏子は脳筋だと思っていたが意外とインテリなんだよな。さすが子供達に勉強を教えるだけある。


「何なら、地球の神に1台、ちゃんとした馬車を貰えるように話をしておくか?ご褒美を与えれば、喜んで回してくれるぞ。」


地球・・・、そんな神で将来は大丈夫か・・・?


「出来ればお願いしたいな。皇室や王家用の豪華な馬車はいらないけど、観光地用のものなら欲しい。使わない時は異次元収納に入れておけば、置き場にも困らないからな。」


「分かった。旦那様の希望に沿うようなものを頼んでおくよ。」


夕方くらいには何とか慣れてきたのか、最初の頃よりはかなり楽になった。

夕食は渚が作ってくれたので、俺はベッドでゆっくり休めた。やはり、俺以外に料理がちゃんと出来る人がいると助かる。

あのギルドの光景とは全く違い、ちゃんと主婦をしてくれる。

しかも、胃に優しい消化の良い食事を、俺用に別に作ってくれた。

渚に感謝だ。


夜、フローリアが戻ってきて、転移の魔法で移動出来ないか訪ねてみたら・・・


「旦那様・・・、下手すれば死にますよ。」


「何で?」


「転移も転送も一度行った場所なら問題ありませんが、知らない場所に移動するのは危険極まりない事です。一度行けば記憶に刷り込まれますので、移動する際には自動的に転移先の情報を先に収集してくれて、障害物や人がいないか判断して微調整してから転移します。」


「そんな複雑な事を一瞬でしてくれるんだ。」


「そうですよ。ですから、転移魔法は上級のカテゴリーに入るのです。」


「マップの魔法を使ってマーカーで座標指定を行ってから強引に転移も可能ですが、転移先が壁や石の中だと同化してしまい、確実に死にます。相手が人だと融合してしまいますね。」


うわぁ・・・、そんな状況になりたくないなぁ・・・

『壁の中にいる!』と表示が出てLOSTしてしまう、某ゲームみたいになるのか・・・

しかも、ここは現実だし、リセット技で回避も不可能だしな。


「それと、お互いの原子も融合していまいますから、核融合反応を起こして大爆発し辺り一帯焼け野原になりますよ。それでも構わないなら止めはしませんが・・・」


「絶対に止めとく・・・」


世の中そんなに甘くなかったか・・・



2日目


昨日よりはかなり楽に馬車に乗れていた。



3日目


サーチに反応有り。野盗が現れた。20人程だ。


酔いでストレスが溜まっていたのか、過剰防衛気味に撃退してしまった。

全員を拘束し、手紙を付けてギルドに転送した。



4日目、5日目


平和だった。というか暇!

サーチの魔法にも全く反応は無いし・・・



6日目お昼前


街が見えてきた。俺達の住んでいる街よりもかなり大きい。遠くからでもその事がはっきり分かる。

さすが領主が住んでいる街だけあるな。


「やぁぁぁっと、着いたぁぁぁ~~~!」

「今度からは、何を言われてもドラで行くぞ!」


「ソータ、せっかちだね。」


「美冬、言うな・・・。現代日本の快適な高速移動に慣れている俺にとって、この馬車の旅はかなり苦痛だ。」


「そっか・・・、私はみんなで一緒にワイワイしながら行けるから好きなんだけどな・・・」


「私も美冬さんと同じ意見ですが、あなたが嫌がるなら仕方ないですね・・・」


2人が少し落ち込んでいる。まるで俺が悪いみたいではないか・・・

夏子、千秋、犯罪者を見るような目で俺を見ないでくれ!


「春菜、美冬、分かった!また馬車で旅をしような、夏子に馬車を頼んでいる事だなしな。」


「あなた、無理してません・・・」


「そんな事ないさ。お前達が楽しめる事が俺にとって一番重要だからな。気にするな。」


「そう言ってもらえると嬉しいです。楽しい旅になるよう、私達も頑張りますね。」


4人が俺に向かって頷いてくれる。


「俺こそ悪かった。自分だけの都合でお前達の事を考えてなかったし・・・」


「そんなに気を遣わなくても構わないですよ。あなたの優しさはみんな知っていますからね。」


「ありがとう、春菜・・・」


街に近づき門の前に来た。


「おっ!あそこが門か。このカードを見せれば良いと言ってたよな。」「そうですね。」


門番にカードを渡し確認してもらう。

「間違いなくレインボーカードです。領主様よりお話を伺っておりますのでご案内します。」


門番に案内されて領主の館の前に着いたが、デカい!というか、門から玄関まで遠いぞ。やはり偉い人の住む場所は違うな。

門番から使用人に案内が代わり、俺達は玄関ホールに通された。

玄関ホールの階段の上から3人の人物が降りてくる。1人は正に貴族服というものを着た30代後半くらいの男性で。その後ろに豪華なドレスを着た20代後半に見える女性と、お姫様服を着た5歳くらいの女の子だ。


下まで降りてきて、男の方が口を開いた。

「やぁ、君達が蒼太一行かな?」


「初めまして。私が水上蒼太と申します。」

貴族の挨拶なんて知らないから、俺はサラリーマン時代に憶えた両手を横に添えて、45°の丁寧なお辞儀をしたが、大丈夫だろうか?


「変わった挨拶だね。だが、誠意はちゃんと感じるよ。」

「そして、君はとても強い。さすが、フローリア様に認められただけあるね。」


評価、ブックマークありがとうございます。

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