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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第1章
36/184

逢魔の塔⑤

ヤツの正体がまさかこれだけ巨大だとは思わなかった。しかも、本体はこの塔の地下だ・・・

いくら蔦を切り続けようとも、ヤツの無限の再生力では焼け石に水だ。

剣の1本2本では数の暴力に到底太刀打ち出来ない・・・

しかも、この状況だとヤツの体内にいるようなものだ。塔の何処にも逃げ場がない・・・

転移の魔法を封じる結界が張られているのか、転移の魔法で避難しようとしたが使えない。


詰んだのか?


いや!まだ諦めるのは早い!

俺が諦めてしまったら、誰が彼女達を守る。

まだ方法があるはず!生き残る方法が!


考えろ!俺達が出来る事を!


覚悟を決めろ!



「よし・・・、今の俺達で出来る事はコレだな・・・」


【春菜、千秋、今から俺が指示を出すから夏子達に伝えてくれ。】【【はい!】】


【春菜は夏子にドラとアカを呼び出してもらうよう指示を出してくれ。ドラ達は塔の外で俺達のいる階の下で待機だ。ドラ達が来るまで春菜、夏子、美冬はゴンザ達の護衛だ。護衛をしながら同時に外壁に向かいながら全員を移動させてくれ。千秋は俺と一緒にヤツの攪乱をする。】


【分かりました!】【分かった!】


「よし!行くぞ!」



「くっ!どれだけ切れば終わりが来るんだ・・・、千秋!大丈夫か!」「あぁ、問題無い。」


「夏子!ドラ達はどうだ!」「あともう少しだ。こちらも、それまで持ち堪える!」


ヤツはジワジワ俺達をいたぶるつもりだろう。一気にトドメを差しに来ないで、10数本づつの蔦で襲いかかってくる。絶対的な自信があるのだろう。


しかし、その余裕がお前の命取りだ!


「蒼太殿!ドラ達の準備は終わった。だが、蔦が邪魔でなかなか外壁の方に行けない!」


「みんなが纏まっているなら何とかなる!夏子!ドラ達の方向は!」「あっちだ!」夏子がドラ達の方を指差した。


「あそこか!春菜!ちょっと派手にぶっ放すから防御結界を頼む。千秋は俺の後ろにいてくれ!」


「凍牙、頼む!いくぞぉぉぉーーー!」


凍牙に魔力を込める。凍牙の刀身が白く輝き始め、周りに風が渦巻きだした。風の渦が段々と大きくなるにつれ氷の結晶も舞い始める。


「うおぉぉぉーーー!くらえぇぇぇぇぇーーーーー-!」


凍牙を思いっきり夏子の差した方に振り抜く。刀身から衝撃波が一直線に外壁まで走り、外壁を吹き飛ばした。衝撃波の進路上の蔦は全て千切れ凍り付いてしまっている。驚いた事に、外壁の出口までの氷の回廊が出来上がった。


「すげぇ~、衝撃波で吹き飛ばすまでは考えていたけど、まさか、ここまで見事に凍り付くとは思ってもみなかった・・・」


「凍牙、サンキューな。」凍牙に語りかけると、刀身から嬉しそうな波動が出るのを感じた気がした。


「お、おのれぇぇぇ~!こしゃくな手を!」


「よし!出口まで一気に走り抜けるぞ!そのまま空に飛び出ろ!」


俺達は全力で外に向かって走る。途中で蔦が襲いかかってきたが、氷の壁が奴らの攻撃を防いでビクともしない。おかげで全員が無事に外に飛び出すことが出来た。

外に出て着地すると、そこはドラの背中だった。隣にアカが待機しており、俺1人がアカに飛び乗る。


「ドラ、アカ、よく来てくれたな。」


「ドラ!お前は春菜達を乗せたまま、全速力でここから離れろ!春菜!今から特大の1発をぶちかますから、最大級の防御結界を頼む!」


「あなた・・・、もしかしてアレを放つのですか?しかも至近距離で?巻き込まれたらどうするのですか?」


「そうだ。アレでないと一瞬でヤツの全てを焼き尽くす事は出来ない。」

「安全を考えて遠くから放っても、ヤツは気付いて逃げてしまうだろうな。それでは意味が無い。」

「あの時より威力は抑えるけど、それでもアレは凄まじいからな・・・、春菜、みんなを頼む。」


春菜が心配そうに俺を見つめている。千秋も春菜の様子に気が付いたのか、春菜と同じように俺を見つめていた。


「大丈夫さ。自分の魔法で死ぬようなヘマはしないさ。この1発で戦いも終わらせるし、今夜もバーベキューパーティーをしような。」


「「はい・・・」」


春菜と千秋が抱きついてきた。しばらく抱き合い離れる。


「アカ、悪いけど、もう少し付き合ってくれ。」「ドラ!早く離れろ!春菜達を頼むな。」


「グアァァァ~~~!」ドラが一際大きく咆哮し飛び去っていった。


「行くぞ、ウッディ!俺の最後の力を見せてやる!」


「「「「「「「「ほざけ!どんな手を打とうが神には勝てん!」」」」」」」」


ウッディの声が塔全体から響いた。


「アカ!塔の真上の上空まで頼む!」


アカが垂直に飛び立ち、塔を見下ろせる程の高さまで上昇した。


「これで最後だぁぁぁ~~~!」


「フェニックス・プロミネンスーーー!!!」


塔に向けた俺の掌から巨大な火の鳥が出現し、塔に向かって飛び立った。


「アカ!全速力で脱出だぁぁぁ~~~!」


火の鳥が塔を飲み込み始める。


「「「「「ま、まさかこの魔法は・・・、創造神様とフローリアだけしか使えない最上級魔法だと!あ、ありえ~~~ん!!!」」」」」


火の鳥が激しく輝き大きな火の竜巻に変わる。塔よりも大きな火の竜巻が塔全体を飲み込んでいく。


「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーー!か、神である私がぁぁぁぁぁーーーーーー!」」」」


そして、塔を中心とした大爆発が起こった。



「げ!爆発が迫ってくる!くそ!脱出が間に合わん!クリスタル・シールド!」


アカにシールドを施した直後に爆風が俺達を襲う。アカの巨体をも吹き飛ばす衝撃だった。


目が覚めると、俺は地面の上にいた。アカは首を地面にめり込ませていたが無事のようだ。


「アカ、大丈夫か?」「グゥ・・・」


「傷だらけじゃないか。」


「ヒール!」「これで良し!」


「頑張ったな。お前のおかげで助かった。後で夏子にご褒美を増やすよう言っておくよ。」


【あなたぁ~!】【蒼太さ~ん!】春菜と千秋の念話が聞こえる。


俺に向かって飛んでくるドラの姿が遠くに見えた。


【あぁ、何とか無事だよ。】



ドラが俺の近くに降り立つ。


「あなた~!」「蒼太さ~ん!」「蒼太殿!」「ソータ!」


4人がドラの上から一斉に俺に向かって飛びついてきた。


「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ったぁぁぁ~~~!」


4人が一斉に飛び降りているのだ。当然、俺1人で受け止める事なんて無理!見事に4人にダイビングプレスを喰らって潰されてしまった。


「死ぬぅぅぅ・・・」


「「「「すみませ~~~ん!」」」」


「だ、旦那ぁ・・・無事で良かったです・・・」ゴンザ達もドラの上で泣いていた。


俺はみんなを見渡した。


色々と騒々しかったが、最後まで誰1人欠ける事無く無事で本当に良かった。



美冬が俺の横に来た。何故かモジモジしてる。

「ソータ、お願いがある。あの刀を少しだけでも良いから貸して欲しい・・・」


「良いけど、何だ?そういえば、前のダンジョンの時も気にしてたな。」


「良いから貸して!」


「分かったよ。」そして、俺は凍牙を顕現して美冬に手渡す。


「ソータ、どうしてこの刀を凍牙と呼ぶの?」


「いや、実のところ俺もよく分かっていないんだ。ただ俺が分かっているのは、この刀が『凍牙』という名前と戦い方を何故か知っている事、そして、ずっと昔から魂で繋がっている気がしてな。何でなんだろうな?」


「そう・・・」


美冬が寂しそうに呟くと、凍牙を愛おしそうに抱きしめ目を閉じる。すると、凍牙が淡く光った。


「間違いない・・・、お兄ちゃんだ・・・」


美冬の頬に一粒の涙が流れる。


「美冬・・・、大丈夫か?」


「違う・・・、これは嬉し涙・・・」

「ソータ、返すね。それと、ちょっと内緒の話がある・・・」


「何だ?」


美冬の顔に耳を近づけた。


チュッ!


「えっ!」何と、頬に美冬がキスをした。


「これはお兄ちゃんを忘れなかったお礼・・・」


「美冬・・・」


「美冬さん・・・」「美冬・・・」春菜と千秋の目が据わってる・・・

ヤバイ!空気を変えなくては・・・


「美冬、また後で教えてくれな。」「うん!」


「さぁ、みんな、やっと終わったんだ。今夜はバーベキューパーティーで食べまくろうな。」


「「「「「「お~~~~~!」」」」」」



ドラとアカで塔のあった場所に向かった。


破壊の跡は凄まじい状態だった。


塔の場所を中心とした巨大なクレーターが出来ていた。クレーターの周りの木々は昔、写真で見たことのあるツングースカ大爆発のように広範囲になぎ倒されている。


「よく、これで無事だったものだ・・・」


自分の魔法だが、これだけの破壊力に呆然としてしまう。


クレーターの中心に行くと、青いクリスタルが落ちていた。手に取ると俺の中に吸い込まれていった。


「本当にヤツを倒したんだな・・・」


その夜は昨日の夜と同じくバーベキューパーティーで大盛り上がりだった。

明日は帰るだけだから、ゴンザ達にはビールを大奮発した。彼らはべろんべろんに酔っぱらってしまい、早々にリタイヤしてしまったけど・・・

春菜に頼んで、彼らに結界を張ってもらっておかないとな。朝、目が覚めたらモンスターに齧られていたなんて可哀想だし。


食事が終り小屋の中に入るとフローリアが待っていた。


「旦那様、ちょっと2人でお話が・・・」


「そうか・・、春菜、千秋、悪いけど、夏子達のところに行っててくれ。終わったら呼ぶからな。」


そして、俺とフローリアの2人になった。


「旦那様、それでお話というのは・・・」


「夏子と美冬の事だろ?」


「な、何故、分かるのですか・・・」


「俺は地球では90年以上生きてきたんだ。人生経験も長いし、色んな人間を見てきた。彼女達はみんな分かりやすい性格だし、それくらい分かるよ。」


「夏子はちょっと不安定だよな。俺と千秋が一緒になってからは顕著だしな、今日は戦闘中でもいきなり告白してくるし・・・、夏子は千秋と同じで誰かに心の安らぎを求めている気がする。昔、人間関係で良くない事が続いたんだろうな・・・、人間でなく神か天使か。」

「俺は、もう春菜と千秋を受け入れている。だから、夏子も受け入れても良いと思っている。しかし、これは俺が決める事ではない。夏子自身が考えに考えて自分で決めなくては意味が無いと思っている。感情に流されて一緒になっても、いつかは破たんするだろうからな。」


「そうですね・・・」


「フローリアはどうなんだ?俺が妻を増やすのに抵抗はないのか?」


「それは多少あります。私も旦那様を独占したい気持ちは確かにあります。でも、私だけが幸せになる事だけ考え、春菜さん達を無視するような事はしたくないです。女神としての義務ではなく、私達全員が幸せを共にしたいのです。」


「やっぱりフローリアだな。さすが俺が惚れただけあるよ。」


「だ、旦那様・・・」フローリアの頬が赤くなった。


「夏子よりも厄介なのが美冬だろう。多分だけど、今の俺じゃなくて、その前の俺に関係しているんだろう・・・、凍牙の事で確信した。俺の知らない事を美冬は知っているし、俺に対する憧れも感じる。フローリアも最初はそうだったんだろ?」


「はい・・・、でも、今は!蒼太様が好きです!」


「分かっているさ。でないと、あんな部屋は作らないしな。それにしても、今の俺の前の俺は相当だったみたいだな。おかげで今も助けてもらっているようなものだし・・・」


「フローリア・・・、かつてお前が憧れた人になれるよう頑張るよ。お前達に嫌われたくないし、失望もさせたくない。約束する。美冬もそれを望んでいるだろうしな。」


「すまんな。俺が一方的に話して・・・、中身が年寄りだから話が長くなる・・・」


「いえ、私が言いたい事を全て話してくれました。私からは何も言う事はありません。」


「それじゃ、今日はもう寝ようか?さすがに今日は1日中戦ったから疲れた。」


「旦那様・・・、私が今日来たのは、この話だけだと思っていたのですか?」


フローリアの雰囲気オーラが変わったぞ・・・、ヤバイ!今のフローリアは肉食獣のフローリアだ!

このままでは食べられてしまう・・・、何とか逃げる口実を作らないと・・・


「今日、千秋さんに何と言われたか覚えてますよね?」


ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!


「今夜は朝まで寝させませんよ。」

「カモ~ン!春菜さん!千秋さん!」


「「待ってました!!!」」


フローリアの後ろから2人が飛び出す。一体、いつの間にそんな芸を身に着けたんだ・・・

しかも、2人の目つきもフローリアと同じように肉食獣化してる・・・


「ち、千秋・・・、あれは単に勢いだったよな?本気でなかったよな・・・?」


「いや、本気のセリフだった。蒼太さん、覚悟してよ。」千秋の目が本気マジだ・・・


「私だけ仲間外れは認めませんよ。」春菜からもフローリアと同じオーラが出ている・・・


「旦那様、安心して下さい、この『愛の囀り』も防音は完璧です。中でどんなに騒いでも一切、音は外に漏れませんから・・・」


3人の視線が俺にロックオンしている・・・

ジリジリと3人が迫ってくる・・・


もう逃げられない・・・


「旦那様ぁぁぁ!さぁ!私達と愛しあいましょう!!!」


俺は睡眠を諦めた・・・


評価、ブックマークありがとうございます。

頑張ります。

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