千秋の変化
朝になった。
隣を見ると千秋が眠っている。
いつもムスッとした表情の千秋だが、今、目の前にいる千秋の表情はすごく穏やかだ。元々キレイだったが、今の千秋の方が遥かにキレイだと思う。
しばくしたら千秋が目を覚ました。
「おはよう。千秋。」
「おはよう。蒼太さん。」
千秋がスッゲー可愛い!思わず抱きしめたくなる。
ふと気が付いた。背中の方が妙に温かい・・・
恐る恐る振り返ると・・・
フローリアが眠っていた!しかも何故?裸・・・
フローリアが目を覚ました。「お・は・よ・う・・・、だ・ん・な・さ・ま・・・」
俺のアレがすり潰される未来が見えた・・・
俺はフローリアの前で正座していた。そして、隣には春菜と千秋も同様に正座させられている。
「旦那様・・・、とうとう、やってしまいましたね・・・」
「そうだ・・・、全ては俺が悪い。春菜も千秋も悪くない。むしろ千秋は被害者だ。だから、罰は全部俺が受ける。2人には何もしないでくれ。」
「あなた・・・」「蒼太さん・・・」
「旦那様!私が言いたいのはそんな事ではありません!」
フローリアが黙った。沈黙が怖い・・・
「なぜ!私を呼ばなかったのですか!」「「「はぁぁぁ!」」」
「そうでしょう!千秋さんにとって初めて女になる初夜ですよ!こんなイベントに参加出来ないなんて・・・、春菜さんの時はちゃんと一緒になって参加出来たのに、何で今回は・・・」
春菜の顔が真っ赤だ。
「初めての日は1回だけしかないのですよ。見逃したらそれで終わりです。それを、旦那様は・・・、春菜さんもちゃんと連絡してくれないと困ります。あぁぁ・・・、勿体ない・・・」
そうだった・・・、コレがフローリア品質だった・・・
「神殿の仕事が忙しくて旦那様の行動確認が疎かになっていた時に限って、こんな事があるんですよね。もっとチェックを頻繁にしなければなりませんね。」
おいおい、指輪の機能を暴露したぞ。やっぱり行動はフローリアに筒抜けだったのか・・・
「まぁ、過ぎた事は仕方ありません・・・。」
「今は妻が3人揃っていますし、折角ですからもう1回戦頑張りましょう。春菜さん、千秋さん、よろしいでしょうか?」
「「はい!喜んで!」」
「それでは、旦那様・・・」
フローリアの顔が怖い・・・
3人にがっしりと掴まれた。ビクともしない。
そのまま、朝と比べていつの間にか大きくなっていたベッドに運び込まれ・・・
3人がかりで、念入りに徹底的に搾り取られた・・・
「う~~~、辛い・・・」
春菜と千秋は部屋を出て行き、今はフローリアと一緒にいる。
「旦那様・・・、千秋さんの事は本当にありがとうございました。」
「いや、俺こそ勝手に妻にして申し訳ない。でもな、あのままだといつかは必ず自分で自分を滅ぼしてしまう気がしてな。放っておけなかった。」
「そうですね・・・、私は女神なのに千秋さんの心を救えなかった・・・、時折、千秋さんの辛そうな顔を見ると私の無力さを痛感して、天使に転生させて本当に良かったのかと思ってました。やはり、幸せな人間の人生に転生させた方が良かったのかと・・・」
「フローリア・・・、そんな事は言ったらダメだ。確かに千秋の人間の生は酷かった。今は俺が幸せにしてやると誓ったんだ。まやかしの転生の幸せでなく、心からの幸せを千秋に与えたいんだ。まっ、俺の頑張り次第だけどな・・・」
「旦那様なら大丈夫ですよ。春菜さんも千秋さんもあんな幸せそうな顔なんて、私のところにいた時なんか無かったですし・・・。旦那様に会わせて本当に良かったです。」
「後は夏子さんと美冬さんですね。」
「やっぱり、あの指輪の数はそうだったか。」
「さぁ、何の事でしょう?ふふふ・・・」
「さて、私は神殿に戻ります。次は必ず呼んで下さいね。」
「あはは・・・、わ、分かった・・・」
フローリアが帰った後、千秋が俺の部屋にやって来た。
「蒼太さん。お願いがあるんだけど・・・」「どうした?」
「さっき気が付いたけど、3人同じ場所に同じ指輪をしていたね。私も欲しいな・・・」
うわぁぁ!千秋変わり過ぎ!いつものツンツン千秋は何処に行った!でも、これが素の千秋なんだろうな。素直で、可愛らしくて、男に対する恐怖心を女好きだと自分で自分を騙して、心が壊れるのを防いでいたんだろうな。
「千秋・・・、本当に良いのか?」「何で?」
「アレは祝福のアイテムじゃなくて、フローリア謹製の呪いの装備だぞ。身に着けると2度と外せなくなるし、行動が全てフローリアに筒抜けになってプライパシーが無くなるぞ。」
「構わない。蒼太さんや春菜が身に着けているのに、私だけ仲間外れは嫌だ。フローリア様に監視されていようとも、蒼太さんと同じようになれないのはもっと嫌なんだ。」
「分かった。それじゃ、左手を出してくれ。」
仮称宝石箱から指輪を1個取り出し、千秋の左手の薬指に嵌めてあげた。
「余計な機能が付いているが、これで正式に俺と千秋は夫婦だな。」
「嬉しい・・・、憧れだったんだ、お嫁さんになる事が・・・」千秋が俺の頬にキスしてきた。
「人間だった頃は絶対に無理だと思っていたけど、念願の結婚指輪なんだね。結婚式までは贅沢か・・・」
「あれ!千秋は結婚指輪と結婚式は知っているんだ。」
「うん、私の世界にはあったよ。女の子の憧れなんだよね。」
「そうだ。春菜にも話してあるが、落ち着いたら結婚式を挙げると約束している。千秋、お前も一緒だな。」
「嬉しい!ありがとう!蒼太さん!」千秋が抱き付いてきた。
千秋のテンションがMAXだ。う~ん、千秋が本当に可愛い。
【千秋さん。】【フ、フローリア様!】
【千秋さん、妻ネットワークに加入おめでとうございます。これでどんなに離れていても、このように念話で会話出来ますので、旦那様の愚痴があったら私が聞きますし、ついでに粛清もしますからね。】
【サラッと何怖い事言ってる・・・】
【千秋さん・・・】【はい。】
【本当に嬉しそうですね。私では千秋さんの笑顔を取り戻す事は出来ませんでした。申し訳ありません。】
【いえ!フローリア様が私を天使にしてくれたからこそ、蒼太さんと巡り合う奇跡が起きました。そして、私がずっと求めていた幸せというものを手に入れる事が出来たと思います。フローリア様には感謝以外の言葉はありません。本当にありがとうございます。】
【そう言ってもらえると、私も嬉しいです。】
【千秋さん、ずっと私達幸せになりましょうね。】
【はい・・・】千秋の目には涙が溜まっていた。
この地で俺達のする事は全て終わったので街に帰る事にする。
ララはずっと俺達と一緒に生活する事になるので、俺達の正体を教える事にした。
春菜を始め3人がララの目の前で天使の姿になり、ララは床が抜けるくらい頭を下げてしまったのは仕方ないだろう。
落ち着いてから「神界の方々にお仕えする人間は私しかいないでしょうね。」と、ちょっと自分の仕事に誇りを持ったみたいだ。
家を異次元収納に収納した時もララは驚いていたが、夏子が呼んだドラゴンを見た瞬間に気を失ってしまったのは仕方ないだろうな。
途中1泊して街に戻った。
教会に着くと、シスター・マリアとアンナが外にいて、俺達を見つけ駆け寄ってきた。
「皆様方お帰りなさいませ。」「ただいま。無事に戻ってきたよ。」
「ご無事で何よりです。」
アンナが千秋をジッと見ている。
「千秋お姉ちゃん・・・、何かとっても良い事あった?」
「な、何でそんな事が分かる?」千秋がかなり動揺している。
「だって、千秋お姉ちゃん、すごく嬉しそうだから。」アンナが俺と千秋の手をジッと見つめる。
「はぁぁん、そういうことですか。お兄ちゃん、千秋お姉ちゃん、おめでとう!」
「なっ!子供がそんな事言うな!」千秋が真っ赤になってしまった。
家を元に戻し、教会にララの紹介と俺と千秋の結婚の報告をした。教会の人も大変喜んでくれて、千秋も満更ではない感じだった。
そして、その日の夜、今夜から俺は春菜と千秋の2人と一緒に寝る事になった。
「まさか、帰ってきたらこうなるとは考えもしなかったな。」
「そうですね。」
「私が一番ビックリしている。女の幸せを諦めていた私が、まさか春菜の次に蒼太さんの妻になるなんて・・・」
「千秋、今まで不幸だった分、これからそれ以上に幸せになれば良いだけだよ。」
「うん!期待している。蒼太さん!」そう言って千秋が抱き付いてきた。
「あっ!私も!」春菜も負けじと俺に抱き付く。
「おい!今日は大人しく寝るはずだぞ!」
「「むぅ・・・!」」「「えいっ!」」
結局、俺は2人に襲われてしまった・・・
翌日、俺は千秋をデートに誘った。以前、春菜と一緒に回ったコースを回りたかった。
良い店だったので、千秋にも喜んでもらいたい為である。
千秋も初めてのデートで嬉しいのだろう。ずっと俺と腕を組んでニコニコした顔で歩いている。
ケーキの店に着いた。
「千秋、ここのケーキは最高に美味いぞ。あの春菜が感動してたからな。」
「そうなんだ、楽しみだね。どれを食べようかな?」
店に入ろうとしたら看板が目に入った。そこに書かれていたのは・・・
『ピンクの髪のツインテールをした女性の入店はご遠慮下さい。』
春菜ぁぁぁ~~~!やっぱり出禁になってたぞぉぉぉ~~~!
「ち、千秋!頼むから、ここのケーキは10個までにしてくれ!でないと、千秋も入れなくなる!」
「えっ、どうして?美味しいモノはたくさん食べたいな。でも、少しずつ食べて次のお楽しみにするのも良いか。」
10個で少しだと・・・
「そうだよ、千秋。少しずつ毎週食べに行こうな。そうすれば、毎週千秋とデート出来るしな。」
「そうだね。」
良し!これで出禁は回避された!
店に入る。
「いらっしゃいま・・・」店員が俺を見て固まった。
「お、お客様・・・、本日はどのようなご用件で・・・」店員から冷や汗が出ている。
「今回もケーキを食べに来たけど・・・、でも大丈夫!一緒にいる娘は前回と違うだろ。食べ尽くすような事はないから安心してくれ。」
「は、はぁ・・・」定員は凄く不安そうな顔をしていたが・・・
千秋は約束通りケーキを10個で我慢してくれた。これでまた行ける!
「千秋、どうだった?」
「美味しかった!来週も絶対に行こうね!」飛びっきりの笑顔の千秋だった。
次は宝飾品の店だ。
店に入る。「いらっしゃいませ。」丁寧な態度で迎えてくれる。
店の中を千秋と一緒に回っていた時に、フローリアから念話が入った。
【旦那様、前回のプレゼント渡してくれませんでしたね?】
【あっ!忘れてた・・・】
【むぅ・・・、千秋さんと同じプレゼントで許します。次は絶対!!!に忘れないで下さいね!】
【了解です・・・】
色々と見て回り、千秋の瞳の色と同じアメジストの宝石が埋め込まれたネックレスを『2個』購入した。
1個を千秋の首にかけてあげる。よく似合う。
「嬉しい・・・、こんなに幸せで良いの?」千秋の目が少し潤んでいた。
「もちろんだよ。」
絶対に千秋を幸せにしてあげないとな。
最後は服屋だ。
店に入ると前回と同じ店員が駆け寄ってきた。
「お客様ぁぁぁぁぁ~~~~~!この方も是非、当店のモデルにぃぃぃ~~~!」
「却下!」店員は盛大にコケた。
「モデルは無理だけど、前回のように試着は許す。」そう言うと、店員の目が輝いた。
「それじゃぁぁぁ!お借りしますぅぅぅ!」店員はマッハの速さで千秋を連れ奥に消えていった。
しばらく待つと2人が奥から現れた。
「は、恥ずかしいけど、似合うかな?」
思わす俺の目が点になる。似合う、いや!似合い過ぎる。この服は千秋のプロポーションの為にあるようなものだ・・・
我に返り、思わず俺は店員にアイアンクローをかましてしまった。
「何でこんなところでネタをぶっ込む!」「痛い!痛い!・・・」
「彼女を見てピーン!と来たんです。この服なら絶対だと・・・」
そう、千秋の着ていた服はチャイナドレスだった。
それにしても本当に似合う。店員の気持ちも分からないではないが、この服でどうやって街中を歩くんだ?
千秋と店員は再び奥に行って、しばらくしたら出てきた。今度はまともな服を着ていた。
ブラウスにスカートとシンプルな服装だが店員のセンスが光る。
「似合うな千秋。いつもの感じと全く違って、すごく可愛く見えるよ。」
「嬉しい・・・」千秋が真っ赤になった。
最初のチャイナドレスも捨てがたいと思い両方購入し、店を出た。
「千秋、どうだった?ちょっとバタバタしてたけど、満足できたか?」
「うん!初めてのデート嬉しかった。また連れて行って欲しい。」
満面の笑顔だ。
それにしても・・・、本当に千秋は変わったな。まるで別人だよ。
人間(元だけど)こうも変わるものなんだね。良い方向に変わったと絶対に思いたい。
俺は千秋と腕を組みながら帰っていった。
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