春菜とデート②
どっと疲れた気がしたが気にしないでおこう。
ギルドへ出かけるつもりだけどアポも取っていなし、それなら、先日みんなで行った街の散策が途中で終わってしまっていたので、春菜と一緒に街を周りながら行くとしよう。
「春菜、ギルドに行くけど、途中であちこち寄ってみたいんだが、一緒に行くか?」「喜んで!」
そんな訳で春菜と一緒に出かける事にした。
他のメンバーはというと・・・
「まさかみんな子供好きだとは思いませんでしたね。今日も孤児の子供達と一緒に遊んでいますし、意外な一面を見ましたね。」
そう、本当に意外だったが、みんな子供好きで、あれ以来、暇を見ては子供達と遊んでいる。特に千秋は子供に対しては男も女も関係なく楽しそうにしている。あの笑わない千秋が子供の前だと時々微笑んでいる姿が未だに信じられない・・・
夏子は遊ぶだけでなく、子供達に勉強も教えているし・・・
美冬は遊んでいるよりも遊ばれている感じかな?
教会はお隣さんだし、仲良くなるのは良いことだ。
春菜がちょっと恥ずかしそうな顔でモジモジしながら話しかけてくる。
「私も子供は大好きですよ。」「でも・・・、早くあなたと私の子供と一緒に遊びたいです・・・」
うわぁ~~~!恥ずかしい~~~!
でも・・・、そんな風に言われると、とても嬉しい。こんな良い娘の旦那が本当に俺みたいな人間で良いのかと思う。
周りを見てみたら・・・、あちこちから嫉妬の視線が俺たちに突き刺さっていた。往来でイチャイチャしてすまん・・・
喫茶店みたいな店を見つけ、「まずは、あのお店で少し食べていくか?」そう言って店に行ってみた。
どうやらこの店はケーキが自慢の店みたいで、食事が出来るスペースもある。店員にテーブルまで案内してもらい、メニューを見せてもらった。
「ほぅ、ここはケーキが自慢みたいだな。色んな種類のケーキがあるぞ。春菜は本格的なケーキは初めてだっけ?」
「そうです、前に作ってもらった時とても美味しかったので、また食べたいと思ってました。すごく楽しみです。」
「そうか、この前のは俺が簡単に作ったヤツだし、ここは本格的な店だしすごく美味しいだろうな。遠慮せずに注文してみたら?」
「そうですね・・・、店員さ~ん!」春菜が店員を呼んだ。
「すみません、メニューのケーキ全部下さい。」店員の目が点になる。
はっ!全部???
忘れてた・・・、春菜も暴食キャラだった・・・
他のメンバーもそうだが、最近は普段の食事は普通の量で満足しているが、好物やご馳走になると途端に胃袋の底が無くなる。
春菜、店員が固まってしまったぞ。
「もしもし~、大丈夫ですか~?」店員が我に返った。
「お客様・・・、本当に全部ですか?必要ならお持ち帰りも出来ますが・・・」
「本当に全部食べたいんです。お願いします。」
店員が大量の汗をかきながら奥へ去っていった。そして、次から次へとケーキが運ばれてくる。
「うわぁ~、本当に美味しいですぅ~・・・」そう言いながら春菜が次から次へと食べていた。
メニュー全てのケーキを食べて満足したのか、春菜はニコニコしている。店員は青い顔をしている。
「味見は終わりましたので、また全部のケーキをお願いしますね。」
嘘だろ・・・、また食べるの・・・、さっきので味見?
店員がダラダラ汗をながしながら次々とケーキを運び、春菜の口の中に消える。全部食べた後に「おかわり。」と言って、また全部注文する無限のループが出来ていた。お金に関してはドラゴンの素材を売ったから問題無いが、それ以上にヤバイ空気が出来上がっている。
春菜のものすごく美味しそうに食べる姿は見ていて可愛かったけど・・・
延々と続くのを見ていると、こちらまでお腹がいっぱいになってきそうだ。
メンバー唯一の常識人だと思っていたが、もしかしてメンバーで一番危ないのでは?とちょっと考えてしまうが・・・
無限とも言えるループに終わりが来た。
店員と店長が春菜の前に土下座し、「もう材料も無いので、これ以上は勘弁して下さい!」泣きながら懇願していた。
「とても美味しかったので、もう少し食べたかったのですが・・・、残念です・・・」
落胆した表情の春菜だったが、店長が小声で「ば、ば、化け物だ・・・」と震えながら呟いていたのが聞こえた。
かなりの金額になってしまったが、ちゃんと支払いしたし大丈夫かな?と心配していたが・・・
店を出る時に「また食べに来ますね。」と春菜が言ったけど、店長が「もう!勘弁して下さいぃぃぃ~~~~~!」と泣いていたので、この店は間違い無く出禁だと思う。
俺の方が頭が痛い・・・、ついでに胸焼けも・・・
歩きながら春菜が「ケーキ美味しかったですね。また行きたいです。」とニコニコ顔で話してくれた。
「春菜・・・、頼むから外で食べるときは自重してくれ。その調子で食べ歩くと出入り出来る店が無くなる。」
「そうですか・・・」納得していない春菜だった。
気を取り直して次の店を見つけた。宝飾品の店だ。結婚指輪はフローリアからなので、俺の方からも春菜にプレゼントをあげようと思っている。
外観はオシャレだし、良いものがあると期待して入ってみた。中もオシャレだな。色々な宝石や宝飾品が並んでいる。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件で?」身なりの良い初老の男性が対応してくれた。
「えっと~、彼女にプレゼントと思ってね。」
その言葉を聞いた春菜の顔がすごくキラキラしている。とても嬉しいみたいだな。頑張って良いものを買ってあげよう。
【旦那様、わたしにもお願いしますね。】頭の中にフローリアの声が!
うおっ!フローリアの監視の事を忘れていた。同じものを買わないと後が怖いだろう・・・
色々と見て回り、ダイヤモンドみたいなモノがはめ込まれた銀色のネックレスを2つ購入した。その1つを春菜の首にかけてあげる。
「春菜、よく似合うよ。」
「あなたからの初めてのプレゼント・・・、ずっと大切にします。」
春菜がうっとりとした表情でネックレスを見つめている。喜んでくれて何よりだ。
後ろで店員がボソッと「爆発しろ・・・」と呟いていた気がしたんだが・・・
【旦那様、後で必ず!取りに行きますね!】【分かった、分かった、期待しないで待ってるよ。】
【むぅ、何で私の扱いは軽いんですか・・・プン、プン】
その次は服だ。
いつも思っているのだが、春菜は寝る時のパジャマ姿以外はずっとメイド服を着ている。今もメイド服だし私服というものは持っていないのか?思い切って聞いてみよう。
「春菜ってさ、いつもメイド服だけど、他に服は持っているのか?」
「いえ、私はフローリア様に仕えてからはメイドとして職務を全うするよう心がけていました。他の事は考えていませんでしたね。オシャレなんてそんな・・・」
「それにメイド服にも色々とあるんですよ。普段着用のメイド服、戦闘用メイド服、正装時のメイド服、外出用の今着ているメイド服に、その他たくさんありますよ。」
そうなんだ・・・、俺にはいつも同じ服にしか見えないが・・・
「でも、頑張ってフローリア様にお仕えしようとしてはいるのですが、高い頻度で何故か火を点ければ爆発するし、皿を運んでいる途中で躓くし、一体何でですかね?それに、今は家事はあなたがほとんどされていて、私の存在価値が・・・」
ヤバイ!春菜が落ち込んできた。
それにしても・・・、頑張っているんだが、ドジっ娘属性が全てを台無しにしているんだな。しかも自覚が無いみたいだし不憫は娘だ・・・
話題を変えないと増々落ち込んでくるぞ。
「まあまあ、今は折角のデートなんだから、春菜もオシャレをした方が良いぞ。俺達は夫婦なんだから一緒に歩く妻がメイド服というのも変だろ?それに春菜は可愛いからどんな服も似合うよ。」
「そんな・・・、嬉しいです・・・」春菜が嬉しそうに笑ってくれた。
「よし、それじゃ店に入るぞ。」「はい!」
店に入ると店員が「いらっしゃい・・・」「!」
俺達の姿を見て声をかけようとしていたが、これでもかと思うくらい目を見開いて駆け寄ってきた。
店員が春菜の手を握って興奮しながら話す。
「お客様!お客様!ぜひともこの店の専属モデルになって下さい!お客様のような完璧な美をお持ちの方は他にいません!絶対によそにやれません!、ぜひうちのモデルに!!!」
やっぱり、春菜ってすごいんだよな。春菜が店員の迫力に押されてる。
「え、え、え・・・」「是非とも!是非とも!是非ともぉぉぉ~~~!」
興奮し過ぎている店員に軽くチョップをかまし冷静になってもらう。
「まあまあ、落ち着いて下さい。いきなりだから本人がビックリしてますよ。」
「そうでした・・・、改めまして、あなたに当店の専属モデルにと是非ともお願いしたいのです。これだけの逸材はどこを探しても金輪際見つかる事はないでしょうし、これも縁だと思って何とかお願い出来ないでしょうか?」
「お断りします。モデルに興味はありませんので。」バッサリと春菜が切った。
膝から崩れ落ちる店員だったが、それでも「何とか、そこを何とか!」と食い下がってくる。
「店員さん、本当に落ち着いて下さい。俺達は彼女の服を買いに来ただけですから、それ以上は勘弁して下さい。」
「そ、そうですか・・・」
「そ、そんなに落ち込まないで下さい!ただ、俺達だとどんな服を選んでいいのか分からないので、店員さんの方で彼女の服を選んでくれれば助かります。」
見るからに落ち込んでいた店員だが、目を輝かせ「分かりました!色々と試着しますので彼女をお借りしますね。」と言って、春菜の手を引っ張り奥の方へと消えていった。
長い・・・、服を選ぶのにどれだけかかっているんだ・・・
かなり待って、春菜が店員と一緒に奥から出てきた。店員の顔がとても満足している感じだ。
「お待たせしました。あなた、どうです?」
春菜はいつものメイド服でなく、淡い緑色のワンピースを着ていた。所々に花の模様が書いてある。髪型もいつものツインテールでなく、後ろで軽く束ねてあった。いつのも春菜しか知らないからか、今目の前にいる春菜は別人のようだった。それくらい可愛い。
「可愛いといか言いようがない・・・」
店員が「私も今まで試着でここまで心が震える経験は初めてです。どの服を着せても似合いますし、本当に悩みました。こんな機会に立ち会えるなんて私の方がお礼を言いたいです。」感動が隠し切れない感じだ。
「やはり、専属モデルに・・・」
「却下!」「ごめんなさい!」
「うっ!」店員が膝から崩れ落ちた。
店員は諦め切れずに勧誘を続けていたが、俺達は会計を済ませて店を出た。春菜はこの服がとても気に入ったようで、今日はずっとこの服装で過ごすと言ってくれた。
行くところ全て騒がしかった気がしけど、俺と春菜はギルドへ向かった。
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