蒼太の特訓
誤字のチェックをしました。
出てくる出てくる・・・
今までのチェックの甘さを痛感です。m(__)m
翌朝、目が覚めた。
右側にフローリア、左側に春菜と左右からがっちりとホールドされていた。
いわゆる、抱き枕状態である。
美人2人の両手に花状態で添い寝してもらえるなんて男冥利に尽きるのだが、ここまで2人の愛が重いとちょっと引いちゃうかな・・・
フローリアは最初から衝撃的だったが、春菜も弾けてしまったのだろう、自重という言葉は完全に捨てているな。
でも、俺はそんな2人を受け止める覚悟を決めたから頑張っていこう・・・
それでも、昨日の夜は少しビビった。
「旦那様、今夜は私が抱きまく・・・、ごほん!しっかりと添い寝してあげますね。」
「いえいえ、あなた、私がしっかりと密着して差し上げますね。」
「「私が旦那様(あなた)を抱き枕にします!」」
おいおい、俺の意見は無いのか?
それにしても、俺の目の前でフローリアと春菜の視線が物理的に火花を上げているぞ。
このままだと本格的に俺もヤバそうだ・・・、「真っ二つにして分けましょうね」と言いかねない・・・
「まあまあ、それなら仲良く左右から俺に抱き付いて寝てくれ。それなら大丈夫だろ。」
「あ、そうですね、ちょっと冷静になってなかったもので・・・」
「フローリア様、仲良く分け合いましょう。」
そんな訳で2人から左右がっちりホールドされて寝る事に・・・
一晩中、直立不動で寝返りも出来ない。一応寝たが、あまり寝た気がしなかった。
ゆっくり落ち着いて眠りたい・・・
朝食後、俺とフローリアと春菜はフローリアの作った別の異世界にいた。
「ここは私が作った世界で、通称『鍛錬の世界』です。ここならどんな大技や魔法を使っても、誰もいませんから大丈夫ですよ。威力を試す為に地形を変えても問題ないです。大きな道場と思って下さいね。」
そう、昨日の夜、俺は自分の弱さを実感し、フローリア達に強くしてもらうようお願いしたのだ。
まさか、昨日の今日だとは思いもしなかったが・・・
「懐かしい世界ですねぇ・・・」春菜が顔を青くしながら言った。
「春菜、どうした?顔色が悪いけど・・・」
「いえ、この世界でかつて私と、夏子さん、千秋さんがフローリア様から指導を受けていたのです。フローリア様は剣技も魔法も並び立つ者がいないと言われるくらいのレベルですし、最強の1人となっています。実力は創造紳様に次ぐNo.2の実力なんです。私は当時は誕生していませんでしたが、あの地獄と言われたあの大戦を勝ち抜き頂点に立たれた方々ですからね。」
「そして、私達3人は修行と称してもう何度殺されたか・・・」
「ちょっと待て!殺されたって・・・」
「旦那様、蘇生魔法は魂が無事なら死後30秒以内なら、例え肉体が塵となっても完全に元に戻せますのよ。強くなるには何度も死線を超えないといけませんし。」
いやいや、死線を超えるというのは例え話であって、実際に超えちゃってる。でも、これくらいの覚悟がないと早く強くなれないのかもな。
「もう・・・、それは大変でした・・・。フローリア様の目が血走って『死ねぇ~』と言って殺され、すぐに蘇生され、また殺されるの永遠とも思えるループに・・・」
「おかげで強くなれはしましたが、あの体験は正直トラウマですね・・・」
春菜がガクガクしてる・・・
「フローリア・・・、お前、訓練と称してストレス発散も兼ねていたんじゃないの?」
「ソ、ソンナ事アリマセン・・・」フローリアが挙動不審になった。
当りか・・・
「まぁ、それは置いといて・・・、まずは旦那様の今の実力を測らないといけませんね。それから、どんな訓練をするか考えましょう。」
「私も少し本気で相手をしてあげますよ。」
フローリアが光に包まれその輝きが収まると、いつもの女神スタイルでなく、金色のドレスアーマーに包まれた姿のフローリアがいた。
夏子もドレスアーマーを装着してるのだが、装着部が部分的なものでなく、全身が被われたフルプレートタイプのドレスアーマーだ。スカートまで金色の甲冑の輝きになっている。
まるで漫画に出てくる戦女神のような状態だ。あまりの神々しさに思わず見とれてしまった。
「ふぅ、このスタイルは懐かしいですね。でも、この状態になると手加減が難しいので気を付けて下さいね。」
いつも優しい笑みを浮かべているフローリアだが、今、目の前にいるフローリアは真剣な眼差しで俺を見据えている。戦闘モードに入ったみたいだ。
見ているだけで分かる。この状態のフローリアはとんでもなく強い。あのデスブリンガーとは比較にならないくらいのプレッシャーを感じる。訓練だと思っていたが、あの春菜のトラウマに陥ったという恐怖の戦闘力をぶつけてくるのだろう。
死んだ・・・
「それでは剣技の方からいきますね。」フローリアの右手に光が集まり剣の形になっていく。
嘘だろ・・・
信じられないモノを見た。フローリアは確かに剣を握っているが、その大きさといったら・・・
長さは4mを越えてるし、幅も30cmほどある黄金の剣だ。大きさが尋常でない・・・
それを普通に片手で握って、軽く素振りをしている。軽自動車を片手で持って振り回している感じだ。
これって、女子が普通に持っている代物でもないし、物理法則を完全に無視している。
「コレではですね。私専用の神器なんですよ。素材はひたすら強度と耐久性を極めた神鉄というもので出来ていますし。普通の人は持つ事すら出来ませんね。でも、私としては旦那様もこのレベルまでになって欲しいんですけど・・・」
無理です。
「旦那様の能力を先ほど確認していますけど、例の力を抜きにしても加護を含めると私と同じくらいなんですよね。ただ、力の使い方を全く分かっていないみたいです。ですから、まずは力の流れを感じる事からですね。」
「私がコレを軽く振り下ろしますから、旦那様は受け流して下さい。」
そして、フローリアと対峙して剣が振り下ろされてきた。全く見えずにいきなり真っ二つにされた。
「はっ!今、俺が真っ二つにされた夢を見た気が・・・」
「現実です。すぐに蘇生させましたので、技術よりもまず死の恐怖に慣れましょう。大丈夫、嫌ほど死ねば慣れますよ。」
そうしてフローリアにどれだけ真っ二つにされたか・・・、それも何だか嬉々とした顔だし・・・
絶対に慣れない!春菜達のトラウマが出来た理由がよく分かった気がする・・・
「旦那様、嫌なら早く受け流して下さいね。」体育会系真っ青なノリで剣を振るう、すごく嬉しそうなフローリアだった。
もう死にたくない!嫌だ!どれだけ思ったか・・・
キンッ!辛うじて受け流して死ぬことはなかった。それでも大怪我だけどな・・・
すぐにフローリアに回復してもらった。
「旦那様、やれば出来ましたね。人間死ぬ気になれば何でも出来ますよ。死にたくないとの生存本能が肉体を陵駕しましたね。これでほんの1歩進みましたよ。今日の私の講義はこれで終わりです。」
講義というよりも、ただひたすら俺を真っ二つにしてただけなんだけど・・・
こんな訓練が続いたら、俺も間違いなくトラウマになる。
剣技なんだからもっと技術的な事を教えて欲しい・・・
多分、「見ろ!」「感じろ!」「盗め!」のノリなんだろう、一体いつの時代だ。
「魔法に関しては春菜さんからです。春菜さん、どうぞ。」
「フローリア様の剣技は身体強化と重力魔法による剣と自身の重さのバランスを刹那の中で切り替えながら行うものです。ですから、あの冗談みたいな剣を軽々扱えますし、この事を可能にするのが魔力の制御と圧縮ですね。コレはあくまでも基本で、フローリア様並の剣技の域に達するにはそれだけではないですが・・・」
「あなたの魔法は確かに強力ですが、ただ放っているだけで中身が無いです。ですから、先日の戦いでも同じ魔法でも簡単に飲み込まれてしまったのですね。同じ魔法でも魔力を圧縮すると威力は全く違いますよ。」
「それでは試してみましょう。まず、私が手本になります。右が魔力1のファイヤー・ボールで、左が魔力10になります。ではよく見て下さいね。」
見た目は同じ大きさの火の球だけど、放った瞬間から全く違う。左側がスピード、破壊力も全て上だった。
「お分かりでしょうか。圧縮するにしても基本は魔力制御になりますので、制御の方法、感覚を教えますね。」
春菜から魔力制御の方法を教えてもらった。フローリアと違い親切・丁寧な説明ですぐに制御できるようになった。春菜はあのフローリアから魔法を教えてもらっていたんだよな、アレからここまで理解出来ているなんて、春菜は相当優秀どころか天才なんだろ。
「それでは実践です。ファイヤー・ボールに魔力をどんどん圧縮して下さい。」
掌にファイヤー・ボールを生み出す、そして魔力をどんどん込めてみた。
最初は全く変化が無かったが、突然大きくなり始めた。
ヤバイ!これは本当にヤバイ気がする。本能的に危険を察知し、思いっきり遠くへ放った。
放たれてしばらくすると火の玉が突然大きな鳥の形になり、炎を纏いながら遥か彼方へ飛び去った。
直後、信じられないくらいの爆音と衝撃が俺達を襲って、俺と春菜は吹き飛ばされた。フローリアは防御魔法を張って涼しい顔だったけど・・・
「し、信じられない・・・、あれはフェニックス・プロミネンス・・・」春菜が青ざめていた。
「あなた!やり過ぎです!まさか炎系の最上級魔法を放つなんて・・・、私もまだ習得してないのに・・・、規格外過ぎます。」
「まぁ、魔力制御も覚えましたから、今日はこれくらいにしましょう。そうでないと私の自信が・・・」
ちょっと涙目の春菜だった。
何かドタバタした修行だった気がしたが、俺は少しでも強くなれただろうか?
まぁ、死の恐怖から逃げる直感だけは身に付いた気がする。
トラウマにならないように頑張ろう・・・
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