春菜の葛藤、フローリアの決意②
「そう、私は彼の意思を継いで、みんなが笑い合える世界を作りたいのです。その世界に春菜さんも必要です。」
「フローリア様・・・」
「もちろん、第1夫人は私ですが、春菜さん、第2夫人として頑張ってくださいね。」
「フ、フローリア様!私が蒼太様の妻となる事を認めてくれるのですか・・・?」
「もちろんですよ。ただ、私の前ではあまりイチャイチャしないで下さいね。どこまで我慢できるか分かりませんから。ふふふ・・・」
「あ、ありがとうございます!」
「それでね、春菜さんが旦那様と結ばれるには、ちょっと難しいところもあるのよ。地球で生きてきた時の倫理観がどうしてもねぇ・・・、旦那様はかなり頭が固いから・・・」
「まっ、既成事実を作れば、頭が固い分「責任を取る」という事で、すんなりと受け入れてくれるんじゃないかな?春菜さん、覚悟は?」
「も、もちろん大丈夫です!」春菜の顔が真っ赤になった。
「そうなれば、善は急げ!春菜さん、これから旦那様をより理解出来るところにお連れしますよ。」
フローリアと春菜は、蒼太が「拷問部屋」又は「監禁部屋」と呼ぶ部屋の中にいた。
「フローリア様・・・、何と言いましょうか?この素晴らしい空間は・・・、心が洗われます。」
春菜が胸に手を当ててキラキラな目をしている。
「春菜さん、あなたもこの素晴らしさが分かるなんて・・・、私も仕事が辛い時やイライラしている時とかに、この部屋でリフレッシュしてますのよ。お互いに妻として頑張りましょうね。」
「同士よ!」固く握手を交わす2人であった。
「それでは旦那様を呼びましょうね。」
「あらら、彼女達にこってりと絞られてますね。みなさん、春菜さんの事で怒っているなんて優しいですね。」
「えいっ!」
蒼太邸リビング
「あっ!消えた!どうも呼ばれたみたいだな。」
「フローリア様なら上手く解決するだろう。」
「ギルティ?・ノットギルティ?それともデッド・オア・アライブ?」
「多分、大丈夫だと思うが、如何せん相手がフローリア様だからなぁ・・・」
「「「う~~~ん・・・」」」
「おっ!ここは?」
「げっ!ヤバイ部屋・・・、となると・・・」
恐る恐る振り返ると、ものすごく良い笑顔のフローリアと春菜がいた。
「春菜さん、改めてどうぞ。」
「フローリア様に見られていると恥ずかしいですね・・・、でも頑張ります。」
春菜は蒼太の正面に立ち、真剣な顔で蒼太を見つめる。
「蒼太様・・・、大好きです。私をお嫁にもらって下さい・・・」
蒼太は困ったような顔をしてフローリアの方を見ると、フローリアは優しい微笑みで「旦那様。確かに日本では重婚は認められません。しかも、複数の恋人がいるとだらしない男とみられます。このような価値観で過ごされてきましたから、このような話には混乱するでしょう。そして、1人しか愛する事が出来ないものと考えるのは当然かもしれません。」
「しかし、ここは違います。もちろん1人だけ愛する人もいますが、複数の女性に対し平等に愛する人もいます。複数の女性を愛するとなると、もちろん優先順位や贔屓があるかもしれませんが・・・、そこは男の覚悟として娶るものです。女性達も皆で旦那様を愛し引き立てるものなのです。旦那様は必ず私だけでなく春菜さんも幸せにしてくれると確信してますわ。春菜さんも覚悟を決めたのですから、旦那様も本気で考えて覚悟を決めて下さい。どのような返事をもらっても私は何も言いませんので・・・」
長い沈黙が3人の間に漂う。
「春菜がここまで俺の事を想って覚悟を決めたからな。それでフローリアの事を言い訳にして逃げ出すのは男として最低だな・・・」
「分かった・・・、春菜・・・、一緒になろう・・・」
「蒼太様ぁぁぁ~~~!」
春菜が大粒の涙を流しながら蒼太の胸に飛び込んできた。蒼太は優しく春菜を抱きしめる。
しばらくするとフローリアが
「ふふふ・・・、旦那様が想ったよりも簡単にOKするとは思わなかったので、プランBが必要無くなりましたねぇ・・・、春菜さんと強引に既成事実を作って、そのまま責任を取らせる方法も考えていたのですが・・・」
「お前なぁ・・・、そんな事まで考えていたのか・・・、勘弁してよ・・・」
フローリアが少し邪悪な笑みになる。
「折角、春菜さんがその気になってくれたのですから、プランBを多少変更して、そのまま春菜さんの初夜に突入しましょう!」
「はい!ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」春菜の顔がこれまでにないくらい真っ赤になった。
「ちょっ、ちょっ、ちょっとぉぉぉ~~~~!」
蒼太の右腕はフローリアが、左腕は春菜ががっちりホールドしており、蒼太の身体能力をもってしてもビクともしない。
そのままベッドに連行され・・・
2人がかりで絞り尽くされた。
「う~~~ん・・・」
目が覚めたが、体がだるい・・・
右を見ると幸せそうな顔をしながらスヤスヤ眠っているフローリアがいる。
左を見ると笑顔で俺を見つめている春菜がいた。いつもの笑顔でない。本当に幸せな気分になっている心からの笑顔だった。
「蒼太様・・・」
春菜が話しかけてくるが、フローリアが眠っているので小声だ。それがまた可愛い。
「どうした?」
「蒼太様・・・、お願いがあります。」
「分かったよ。ただし、出来る範囲でな。」
「もう!それでお願いというのは・・・」春菜がモジモジしてる。
「これから、蒼太様の事を『あなた』と呼ばせてください・・・。フローリア様は旦那様と呼んでいますし、私が同じように旦那様と呼ぶのはちょと気が引けまして・・・、よろしいですか?」
「そんなお願いなら全然大丈夫だよ。」
『旦那様』と呼ばれるより『あなた』と呼ばれる方が俺にとって破壊力が大きい気がするが・・・
「ありがとうございます。それでは改めまして・・・、これからもよろしくお願いします、あ・な・た・・・」
春菜がそう囁きキスをしてきた。
春菜の破壊力ハンパないッス!元々可愛かったけど、今の春菜の可愛さは天元突破してる。こんな俺の妻で良いのか?とも一瞬思ったが、誰にも春菜を渡したくない気持ちが遥かに強い。いつの間にか俺も春菜を好きになっていたんだと思った。
必ず春菜を幸せにして、ずっとこの笑顔を守らないとな。
「あなた・・・、さすがにみんなの前でそう呼ばせていただくのは恥ずかしいので、『蒼太さん』と呼ばせていただきますね。」
「分かったよ。」
「ありがとうございます。」春菜が嬉しそうな顔でまたキスをしてきた。もの凄く甘えてくるな。今まで色々と抑えていたんだろう。気の済むまで甘やかせてあげよう。
「一応・・・、私も一緒にいるんですがぁ・・・」
「げっ!」「はわわわぁぁぁ!」
振り返ると・・・
どす黒いオーラを纏っているフローリアがいた・・・
神殿内の春菜の部屋から荷物を取りに、蒼太と春菜は部屋を出た。
残されたフローリアは呟いた。
「春菜さんが旦那様と結ばれるなんてねぇ・・・、まぁ、旦那様の魅力なら仕方ないですか。最初から良い雰囲気でしたが、まさかこんなに早く春菜さんが陥落すると思いませんでしたけど・・・」
「前に4人に手を出したらすり潰すと言いましたが、今回は春菜さんに免じて許してあげましょう。」
「それにしても・・・、あの3人も時間の問題かもね?・・・、ふふふ・・・」
2人は春菜の部屋に向かう。春菜が蒼太と一緒に暮らす事になったので、私物を引き取りにいく為である。
現在の春菜は天使の状態になっていた。
「春菜、そういえば、前に見た時よりも翼が大きくなってないか?」
「分かりましたぁ?あなたと夫婦の契りを交わしたので神格が上がったみたいです。普通はそんな事は無いんですけどね。何ででしょう?神格が上がるよりも、あなたと一緒になれた事の方が、私にとって一番嬉しいことですけどね。」
そう言って、春菜が蒼太の腕に抱き付いてきた。
イチャイチャしながら2人は部屋に行き、春菜の私物を異次元収納に収める。
「それじゃ、みんなのところに戻ろうか。」「はい!」
2人はリビングにいる3人のところに行った。
「ただいま。」
「みなさん、今回は本当にすみません・・・」春菜が頭を下げて謝る。
「なt!言った通りだろ。」
「予想通りだな。」
「夏子、千秋、もの凄く心配してた。」「「言うな!」」
「まぁ、それよりも・・・」夏子がバツの悪そうな顔しながら言う。
「「「おかえり!」」」
「ただいま!」
夏子が蒼太と春菜が腕を組んでいるのに気付き「春菜、良かったな。これで晴れて恋人同士だな。」
「い、いえ・・・、じ、実は・・・そのぉ・・・」春菜が手を頬に当ててモジモジしている。
「ま、まさか・・・、恋人でなく・・・」「はい・・・」
「ち、契りは・・・」「は、はい・・・」春菜の顔が更に真っ赤になった。
「なっ・・・」夏子が膝から崩れ落ちた。
「ふ、夫婦だと・・・、いきなりすっ飛ばし過ぎだ・・・」
ガックリとした夏子を千秋と美冬が引きずり、3人が部屋の片隅でゴニョゴニョと何か言っている。
突然「我ら4人の純潔同盟の一角が綻びたぁぁぁ!」と3人が血の涙を流しながら号泣していた。
「あいつらずっと結婚しないつもりなのかな?」「私だけが幸せになって、その・・・、すみません・・・」
色々と騒がしかった3人だったが、夕食前には大人しくなった。
春菜と夫婦となったお祝いとしてご馳走にした。さり気なくフローリアも参加していた。
メニューはすき焼きだ。
俺の昔の頃はすき焼きは本当にご馳走だったしな、盆や正月くらいしか食べた事がなかった。そんな訳で中身の肉も奮発したのだが・・・
俺とフローリアと春菜で1つの鍋をつついて食べる、それは分かるが、残りの3人何故1人1鍋なんだ。大きなすき焼き鍋で1人分、それも何杯もおかわりだと、一体どれだけ食べれば気が済む・・・
特に美冬、お前、肉しか食べてないぞ!野菜はさりげなく夏子と千秋の鍋に入れているし・・・
そうやって、色々騒ぎながらも楽し夕食の時間が過ぎ、就寝の時間となる。
フローリアは「神殿に帰りま~す。」と言って帰っていった。
今までの2階の部屋は、俺・フローリアの部屋、春菜・美冬の部屋、夏子・千秋の部屋割りになっていたが、春菜が俺と一緒に寝る事になり、夏子・千秋・美冬が寝る部屋と寛ぐ部屋となった。
俺と春菜が部屋に入って気付いた。何時の間にかベッドが大きくなっている。まぁ、これから3人で寝る事を考えればそうなるな。
春菜が恥ずかしそうに「あなた、お願いが・・・、私をお姫様抱っこで優しくベッドに運んで欲しいです。」そう俺に頼んできた。
「任せな。」「きゃっ!」春菜を抱き上げる。
「は、恥ずかしいけど・・・、すごく嬉しいです・・・」
春菜を抱きかかえながらベッドに向かうと不自然な盛り上がりがある。近づくとフローリアが毛布を跳ね上げて飛び出してきた。
「フローリア・・・、帰ったのでは?」
「そんなもん、嘘に決まってるでしょ。あの3人を安心させる為です。私がいると何だかんだ気を遣いますからね。」
「今日はゆっくり寝たいぞ。」「そこは旦那様の意志を尊重しますのでご安心を。」
ちょっとホッとした。
寝る前に俺達3人はソファーに座った。
「この世界に来てちょっとしか経っていないのに、いきなり妻が2人も出来るなんて思いもしなかったな。しかもお付き合い期間0日だし、人生何が起きるか分からないな。」
「でも、第2の人生でお前たちと出会いこうして一緒になれたのは素直に嬉しいし、3人で必ず幸せになろうな。」
「旦那様・・・」「はい!」
「それとな、フローリア・・・、今回の事で俺は実感したんだ。」「何がです?」
「お前の加護や春菜たちの力は確かに強い。それで俺は強くなったと思い込んでした。しかし、それは借り物の力で、俺自身は弱いと実感した。身も心も・・・」
「俺は強くなりたい・・・、どんな神が来てもお前達を守れるだけの、自分自身の強さを・・・」
「俺の中にはとんでもない力が眠っている・・・、それでも守れる時に力が出ないと意味が無い・・・、それに、この力だけに頼るのもダメだ。今の俺自身が強くなければ、この眠った力も意味が無いと思う。」
「幸い、2人は強い。これからは妻としてだけでなく、師匠として俺を鍛えて欲しいな。」
「ふふふ・・・、旦那様、分かりましたよ。」「あなた、手加減はしませんよ。」
2人がニヤリと笑った。
「し、死なない程度にな・・・」