ダンジョンでの戦い①
ダンジョンか・・・
初めての経験だし、他の神の干渉の可能性が高いから慎重にいくしかないな。
ダンジョンと言えばコレしかない。
そんな訳で俺は冒険者ギルドにいる。今回は情報集めだから1人で来た。
何かねぇ・・・、前回の時に夏子信者が出来てしまったので、そのメンバーと夏子が会ってしまうと碌な事にしかならないし・・・
幸い、ゴンザレスのメンバーは依頼に出ていたので、取りあえず今回は大丈夫そうだ。
「ようこそ、蒼太さん。今日はどのようなご用で?」
マリーがいた。
無言で振り返り外に出ようとしたが、「蒼太さん、何で逃げるのですか?あなたのマリーが待っているのにつれないですぅ~」と、カウンターを飛び出して俺の腕を掴み組もうとしてくる。
ゴールドドラゴンの鱗やギルドマスターの対応で、俺が相当の人物だと思っているのか、あからさまに俺に取り入ろうとしている。多分、彼女の目には俺が『¥』マークに見えるのだろう。
とはいっても、ダンジョンの情報も欲しいし無下に出来ないからなぁ・・・
「ギルドマスターいます?」
「はい、私がマスターのところまで案内しますね。」
「はぁ・・・、頼みます。」
マリーに連れられてギルドマスターの部屋に着いた。
「マスター、蒼太さんがお越しになられました。」「そうか、入ってくれ。」
そうしてギルドマスターの部屋に入りダンジョンの件について質問した。
「あの村は本当に災難だった・・・。ダンジョンに関しては正直よく分かっていないのが現状で、我々ギルドも調査を開始しているよ。ただ、出てくるモンスターが付近のモンスターよりかなり強いので、調査は難航しているよ。」
「そうですか・・・、我々も参加して良いですか?」
「それは助かるよ。我々としても多いに歓迎したいね。何せあれだけのドラゴンを倒せるメンバーだからね。君たちにかかれば正直我々の出番も無いかも?と思うくらい君たちに期待している。」
「幾人かの冒険者達が持ち帰った情報を早急に纏めておくから、後でマリーに資料を持っていかせるね。」
「それは助かります。マスターの期待に応えられるよう我々も頑張ります。」
そうして一度家に戻ったのだが・・・
「ギルドマスターの話を聞く限りこのダンジョンは、やはり私の創造した状態ではないですね。怪しい臭いがプンプンします。」
「この世界の事を分かっているフローリアに対して目立つような事をしているから、あからさまにフローリアか俺を誘っている感じだな。それでも、そのままにしておく訳にはいかないだろう。第2、第3の犠牲の村が出ないとは限らないし、俺達を誘っているなら乗るしかないかもな。」
マリー視点
蒼太さんは確か教会の隣に住んでいるのでしたね。でも、そんなところに家なんかありましたっけ?
色々と規格外の事をしている人ですから、多少の事では驚きませんよ。絶対にすごい人でしょうから。
ギルドNo.1受付嬢の名にかけて、蒼太さんに絶対に取り入りますの。
そうすれば、私も玉の輿に・・・、ふふふ・・・
ここですか?
何です!この家!今まで見たことの無い家じゃないですか!周りの家と比べて浮いてます・・・
正直、変わった外観の家ですね・・・
やはり変わった人なんでしょうか?
今は仕事で資料を持って来ましたけど、上手く家の中に入れてもらって、後は私の魅力で・・・
ふふふ・・・
気を取り直して・・・
「ごめんくださ~い!ギルドからですが資料をお持ちしました。」
「は~い。」そう声が聞こえてドアが開き、蒼太さんが出てきました。
「マリーさん、ありがとう。助かりました。」
「これくらい大した事でないですよ。それにしても立派な家ですね。中はどうですの?見せてもらっても?」
これで中に入れば私の勝ちに間違いないわ。
しかし、蒼太さんの後ろから女性が・・・、しかも、私でも比較にならない美人・・・
「旦那様、誰です?」
だ、旦那様だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~!
彼は結婚していたの?しかも、こんな美人と・・・・
ま、負けた・・・・・・・・
「旦那様、この方どうしたのでしょうね?いきなり四つん這いになって落ち込んでますが・・・」
「まぁ、見なかった事にしよう・・・」
「はっ!そうです!マスターから頼まれた資料です。お持ちになりました。ついでに私もお持ち帰り下さい。」
「資料だけで良いです。」
マリーがまたもや四つん這いになって落ち込んでしまった。
資料を見ながら、「ダンジョンは3階層まで攻略されているんだな。最深部は何階層かまだ分かっていないか・・・それと洞窟型みたいで、現時点ではトラップ無し。あまり参考にならないけど、少なくともかなり難易度が高いのは間違いないみたいだな。」
「俺とフローリアが一緒に攻略するには、相手の罠もある可能性から無理だと思う・・・。フローリア、悪いが今回はフローリア以外のメンバーで行くし、もし万が一の時は頼むぞ。念話もあるから連絡が取れなくなる事は無いと思うが、相手は腐っても神だから油断は禁物だな。」
「分かりました。留守はお任せ下さい。」
「今日中に準備を整えて、明日出発だな。」
翌日
「フローリア、行ってくるな。」
「旦那様、お気を付けて。それと、みなさんも気を付けてね。」
「「「「分かりました。」」」」
街の外に出てすぐ夏子に尋ねた。
「夏子、そういえばこの前のドラゴン戦だけど、何匹か下僕にしてたよな。アレを使って空を飛んで移動出来る?」
「あぁ、任しとけ。来い!下僕共よ!」
十数体のドラゴン軍団が押し寄せてきた。街のあちこちで警報が鳴り響いていた・・・
やっちまった・・・
1体のドラゴンでも国が亡びるかどうかの騒ぎになるのに、10体以上で押しかけてしまったからなぁ・・・
そりゃ、騒ぎになるだろう。驚かせてごめんなさい。
「夏子、乗せてもらうのは1体でいいぞ!街中が大パニックになってるから、残りのドラゴンは大急ぎで帰らせてくれ!もたもたしてるとヤバい!」
一番大きなドラゴンが街からかなり離れた場所に降り立ち、残りは何か残念そうな感じの咆哮をしながら帰っていった。
ギルドでは今ごろ大がかりな討伐隊でも編成しているだろうな。当分ギルドに顔を出さない方が良いだろうな。あのギルドマスターなら、俺の仕業だと気付いているかもしれない?何か言われてもすっとぼけておこう。
それからドラゴンに乗って報告書にあったダンジョンへ向かう。
時折、夏子がドラゴンに鞭をいれていたが、ドラゴンが打たれる度に嬉しそうに咆哮していた。
数時間でダンジョンに到着した。
岩山の山肌に入口が出来ていた。
「変だな?あまりにも静かだ・・・」
そう、ダンジョンの周りには生物の反応が全く無い。サーチの魔法を使ってもモンスターどころか普通の動物の反応も無い。ダンジョンの方にサーチをかけたが、ジャミングされているのか反応にノイズがかかっている。
誘っているのかも?そのまま手をこまねいていても仕方ないので、中に入る事を決意した。
覚悟を決めて中に入ってみた。
中に入ってみると、内部は意外と広い。鍾乳洞の岩場バージョンみたいな感じだ。天井も高く、俺達が横に並んで歩いてもまだ幅に余裕があるくらいだ。そして、洞窟内なのに薄っすらと明るい。不思議な空間だった。
サーチをかけてモンスターの反応を確認したが、地上と同じく全く反応がない。間違いなく俺達を誘っている。多分、普通の冒険者が奥まで行かせないよう、俺達以外だと強力なモンスターを使って排除していたのだろうな。
報告書通りに地下3階まで進んだが、やはり何も起きず、地下4階に下りる階段も見つけ、静かなダンジョンの内部を地下5階まで黙々と進んだ。
一番奥であろう場所に、一際大きな扉があった。
「今まで全く何も無かったが、ここから本番だろうな。」「みんな気を引き締めていくぞ。」
扉を押すとひとりでに扉が開き、俺達は中に入り周りを見渡した。学校の体育館くらいの大きさの空間だった。
やはり、ガランとしている。奥に今の扉と同じような扉を見つけた。何故か開いている。
「見事なくらい何もなかったな。一体奴は何をしたいんだ?」
「この様に何もないように装い、後ろから襲うかもしれませんね。」
春菜がそう答えてくれた。
警戒しながら進み、広間の中央辺りまできた途端に床のあちこちに魔法陣が出現した。
その魔方陣の中からモンスターが続々と現れてくる。大半がスケルトンだが、上位個体らしき一際大きなスケルトンも何体かいた。
奥の扉を見ると、何と、少しずつ閉まり始めている。
夏子が「ここは私に任せよ!お前たちは先に行くんだ!」そう言って俺達の前に出て剣を構える。
「さぁ!行け!」「全部片付けてから、あの扉をぶっ壊して追い付くさ。」
夏子がそう言い、春菜が魔法を発動し扉までのスケルトンを吹き飛ばす。道が空けた。
「夏子・・・、絶対に追い付けよ。」「分かった。」
そして俺達は走り扉をギリギリ潜り抜けた。抜けた先はまたもや同じ作りの広間だった。
「また、同じパターンかなもな?ジワジワ追い詰めるつもりか・・・」
「どんな罠があっても噛み砕く!」
注意しながら進むと、同じように魔法陣が出現し輝きだした。その中から現れたのはリザードマン軍団だ。
「クズ・・・、次は私が殺る・・・」
千秋が前に出てきた。口元に薄く笑みが浮かんでいる。本気のアサシンモードだ。
「頼んだ・・・、千秋・・・」
そう言って俺達はまた走り出した。
そして・・・
また同じ光景が広がっていた・・・
「こうも続くと・・・」
春菜が俺のそばに寄り、「あの2人も頑張っていますから。私たちも頑張りましょう。」
ありがとう、春菜・・・
気を取り直して進むと、やはり魔法陣が現れ、今度はオークやオーガなどのモンスターが現れる。
美冬が前に出て「今度は私。」「ちょっと本気になるから離れて。」
そう言った途端、美冬の体が光り出した。
光りが収まると、そこには純白の大きな狼がいた。ただ大きいだけでなく、どこか神々しい。
「これが本当の私。豚共は餌。問題無い。」
「ただ・・・、食事中の私を見られるのは恥ずかしい。先に行って。」
「わ、分かった・・・、美冬、頼んだぞ。」「うん。」
そう言って俺と春菜は再び走り出し扉に飛び込んだ。
「これは・・・」
先ほどまでの光景と全く違っていた。広大な荒野に所々岩が乱立している。
「くっくっく・・・、ようこそ、私のステージへ。」
何処からか声が聞こえる。