機械神族㉗
マリーがチラッと渚を見ると、渚も同じタイミングでマリーを見ていた。
「渚、相手は200体だったよね?お互いに半分ずつ担当して殲滅よ。」
「分かったわ!どっちが早く全滅させるか競争ね!」
ニヤッとマリーが笑う。
「負けないわよ。あっという間に終わらせてあげるから!」
ガーディアン達が腕から出てきたガトリング砲を上空のマリー達に向けると、嵐のように弾丸を発射する。
ズドドドドドドドドォオオオ!
「こんな豆鉄砲で私達をどうかしようなんて甘いわ!」
サッとマリーが右手を前に突き出した。
「クリスタル・シールド!」
マリーと渚の前に透明なドーム状のシールドが現われた。
ガガガガガガ!
弾丸が全てシールドに弾かれている。
「無駄よ!私のシールドはそう簡単には破れないわ!」
渚がニコッとマリーに微笑んだ。
「マリー、私の分のシールドも張ってくれてありがとう。でも、勝負は手を抜かないわよ。」
「ふん!弾を避けてお互いに無駄な体力を使いたくないからね。一気に突破するから、弾幕を抜けてからが勝負よ!」
ガガガガガガ!
無数の弾丸が切れ間無くガーディアン達から発射されているが、マリーの張ったシールドはビクともしない。一直線にガーディアン達へと向かっている。
『ガーディアン達!左の弾幕が薄いわよ!もっと集中させなさい!』
アイリスがニタッと笑った。
「ねぇ、美冬ママ。あのセリフって聞いた記憶があるんだけど・・・」
美冬も面白そうにしている。
「あのセリフねぇ・・・、ホント有名だよね。まさか、こんなところで聞くとは思わなかったわ。ソータとお兄ちゃんが聞いたらとても喜ぶわね。後で春菜に頼んで再生魔法で今のシーンを再生しようよ。」
「そうだね。」
「はいはい、みなさん、あの2人なら本当にあっという間に終わらせるでしょうから、私達もすぐに動けるようにしないといけませんよ。あれだけが全てではないでしょう、隠し玉が楽しみですね。」
春菜が引率者のようにみんなの前で指示を出している。
「「「「はいはい~」」」」
みんなはマイペースでほのぼのしながらマリー達を見ていた。
『くっ!止められない!このままでは弾幕を突破されてしまう!』
ラスト・ガーディアンからサリーの焦った声が聞こえる。
「弾幕を抜けたわ!マリー、勝負開始よ!」
「渚!分かっているわよ!負けないからね!」
スタッ!
二手に分かれ、マリーと渚が別々にガーディアンの中で立っている。
渚が両手を左右に広げた。
ピタッ!
渚の周囲にいる数十体のガーディアンの動きが突然止まる。
『ガーディアン達!一体どうしたのよ!早く血祭りにあげなさぁあああいい!』
サリーが叫んでいるが全く動いていない。しかし、よく見ると完全に動きが止まっている訳ではない。何かに縛られているかのように細かくプルプルと震えていた。
ペロッと舌なめずりをしながら渚がニタッと笑う。
「いい声で鳴きなさいと言いたいけど、ロボットだから喋れないわね。少し興ざめだわ。」
優雅に両手を目の前で交差した。
スパパパパパパァアアアアアアアアン!
数十体のガーディアンが一斉に細切れになって吹き飛んだ。
『なっ!何が起こったのよ!』
サリーがコクピットの中で冷や汗をかきながらモニターの状況を見ながら叫んでいる。
「あら、こんなからくりも分からないの?」
ニヤリと渚がラスト・ガーディアンに視線を移した。
指をくいっと動かすと、また十数体のガーディアンが細切れになっていく。
「これはね、デウス様特製の神鉄で出来た単分子ワイヤーよ。まず目に見えないから何をされたか分からないけどね。そう簡単に切る事も出来ないから、拘束するには最適よ。それに私の技術があれば全てのモノを切り刻む事も可能ね。今の様に無惨に痛みを感じる暇もなく・・・、逆に神経だけを痛めつけて拷問にも使えるし、私の為だけに作られた武器なのよ。ふふふ・・・」
サリーの背中に大量の冷や汗が流れた。
(こ、こんな事って・・・)
マリーが渚の方を見ている。
「派手にやってくれているわね。まぁ、相手がロボットで良かったわ。あれが生き物だったら周りが血の海になって目も当てられないくらい凄惨な光景になっていたからねぇ・・・、まぁ、ドSの渚にピッタリの武器だわ。」
そしてぐるりと周りのガーディアン達を見渡した。
「まっ!私は渚と逆でスマートにキレイに殲滅する事にするわ。」
指をパチンと鳴らす。
「クリスタル・キューブ!」
ピキィーーーーーーン!
マリーの周りにいた数十体のガーディアン達1体1体が透明な立方体に囲まれた。
まるで透明な棺桶のように・・・
激しく動き壁を破ろうとしているがビクともしない。数体がガトリング砲を撃って破壊を試みたが、そんな狭い中で何百発の銃弾を発射するから、内部で跳弾を繰り返し粉々になって自滅していた。
「さっきも言ったけど、私のシールドを甘く見ないでね。あんた達の戦力だと傷一つ付けられないわ。」
そしてニヤッと笑った。
「このシールドはね、普通は外部からの攻撃から身を守る為のものだけど、中から出られないという事は私が思っている事は分かるわね?」
スッと掌を前に突き出した。
「潰れなさい!」
グッと拳を握った。
メキョッ!
キューブ状のシールドが見る見る小さくなっていく。
ガーディアンが必死に手足を当てて踏ん張って耐えていたが、圧力に耐え切れず折れてしまいプレス機にかけられたようにどんどんと潰されていった。
メキャメキャメキャ!
あちらこちらでガーディアン達が潰されていき、見えなくなるくらいまで小さくなって消滅した。
「防御魔法でも考え方を変えれば十分に戦闘にも使えるわ。攻撃魔法だけが戦闘の花形ではないのよ!」
マリーがドヤ顔でふんぞり返っていた。
『そ、そんな・・・、ガーディアン達が・・・』
「マリー!」
渚が嬉しそうにマリーを見ている。
「なかなかやるわね。さすが最短記録でロイヤル・ガードに入っただけあるわ。」
マリーもニコッと微笑んでいる。
「そうよ、あんた達にどれだけしごかれたと思って・・・、あの地獄の日々に比べればこんな戦いなんて子供の遊びと同じだわ。まだまだこんなものじゃないわよ!」
「ふふふ、頼もしいわね。でも、私も負けないわよ。」
渚が右腕を振るうといつの間にか真っ黒な鞭が握られていた。
「さぁ!残りは1/3程度よ!さっさと終わらせましょう!」
ヒュン!
スパァアアアアアアン!
渚が鞭を振るうとガーディアンが粉々になって吹き飛ぶ。
『な、何なのよ!あの鞭の破壊力はぁあああ!あり得ないわ!』
サリーがまたもや絶叫している。
「あはははははぁああああああああああああ!私を誰だと思ってぇえええ!女王様とお呼びなさぁああああああああああああああああああああああいぃいいいいいい!」
スパァアアアアアアン!
女王様モードになった渚が妖艶な表情でガーディアン達を見つめ、踊るような仕草で次々と粉々にし吹き飛ばしていく。
「うわぁ~、痛そう・・・、絶対にあの鞭で叩かれたくないわね。敵とはいえ同情するわ。」
マリーが渚の変わりように引いていた。
「ボ~としていると渚にみんな取られてしまうから、私も頑張らないとね。」
キッとガーディアン達を睨み両手を広げる。
「シールド・チャクラム!」
マリーの周囲に薄い円盤状のようなものがいくつも浮かび上がった。
「これも本来はピンポイントで防御するシールドなんだけど、間違った使い方を教えてあげるわ。通常よりも遙かに薄く速く高速で回転をさせれば、全てのモノを切り裂く事が出来る武器にもなるのよ。」
スッと右腕を上に掲げた。
「舞え!チャクラム!」
無数の円盤がガーディアン達を襲う。
ズババババババァアアア!
一瞬にしてマリーの前にいたガーディアン達が細かく輪切りにされ、残骸となって地面に転がっていた。
しかし、その中から1体が猛スピードでマリーに接近している。
「へぇ~、チャクラムの攻撃を避けたんだ。他のガーディアン達と微妙に仕様が違うわね。どうやらカスタム機なのかしら?まぁ、私にとってはそんなに差はないけどね。」
ホバーリングをしながらマリーへと一直線に向かっている。
ブゥン!
右手から光の剣が出現した。
「ふ~ん、さしずめレーザーブレードっていうモノかな?後で回収してガーベラにプレゼントしようかしら。喜ぶ顔が浮かんでくるわね。」
マリーの目の前まで一瞬にして迫り、光の剣を振り上げ頭めがけて振り下ろした。
「甘いわ・・・」
マリーがサッと左足を後ろに下げ、体を90°ひねると光の剣が目の前を通過した。
そのままガーディアンの剣の持ち手を左腕で軽く握る。同時に右手は相手の左の脇の下に添えた。
「そぉ~い!」
クルクルと回りながらガーディアンがマリーに投げられてしまった。
「あ、あれは!」
冷華が叫んだ。
「あの技は間違いなく合気よ!相手の突進力をそのまま利用して投げる技だわ!そんな苦も無く出来るなんて、マリーさん!格闘もマスタークラスなの?」
「そうよ。」
ドヤ顔のマリーが立っていた。
「ロイヤル・ガードになるには魔法だけトップクラスではダメなのよ。どんな状況でもフローリア様を守る護衛の力量も必要だからね。接近戦の技術もマスターする必要があるのよ。」
「良い勉強になります!」
冷華が嬉しそうにマリーを見ている。
「ふふふ、素直な子は嬉しいわね。ついでにもう1つ技を見せてあげるわ。」
スッとマリーが構えると、先程投げ飛ばされたガーディアンが立ち上がった。
足音も立てずに一瞬でガーディアンの前まで移動する。
「は、速い!瞬歩?」
雪が驚愕の表情で見ている。
マリーが右足を踏み出す。
ダン!
踏みつけた右足が地面に陥没し、足を中心に放射線状にヒビが走った。
同時に右拳がガーディアンの胸に吸い込まれた。
「はっ!」
拳がめり込んだと思った瞬間に相手の上半身が吹き飛んだ。残った下半身がゆっくりと倒れる。
「あ、あれは!震脚からの発勁!」
「よく分かったわね。」
マリーがニコッと雪に微笑んだ。
「はい!この技は美冬が得意としているので分かります。でも、中々身に着けられなくて・・・」
「そうなの、まぁ、美冬は教えるのが下手だからねぇ~、擬音ばかりの説明で何を言っているのか分からないから、そう簡単には覚えられないでしょうね。分かったわ。これからは私もあんた達の訓練に付き合ってあげるわよ。普段はギルドの受付業務とミツキの指導をしているから時々だけどね。あんた達は実力はあるし、基本はちゃんと出来ているから、八極拳くらいならマスタークラスまであっという間にさせてあげるわ。」
「「よろしくお願いします!」」
2人がペコリと頭を下げていた。
「さて・・・、遊びは終わりよ。覚悟してよね。」
マリーが残ったガーディアン達へ視線を移し呟いた。ガーディアン達が後ずさりする。
「へぇ~、感情が無いと思っていたけど、恐怖は感じるんだ。でもね、誰に喧嘩を売ったか分からせてあげるわ。恨むなら私達に喧嘩を売った上司を恨んでね。」
マリーの全身から闘気が立ち上っている。
「「ラスト!1体!」」
スパァアアアアアアン!
ザシュッ!
渚が鞭で粉々に粉砕し、マリーはチャクラムで細切れにしてガーディアン達が全滅した。
「同時だったわね。」
渚がマリーに微笑んだ。
「ちっ!ちょっと遊んだのがマズかったわ。まぁ、あの2人の良い刺激になったから悪くないかな?」
マリーが少し悔しそうにしている。
『そ、そんなぁぁぁ・・・、200体ものガーディアンがあっという間に・・・、悪夢だわ・・・』
サリーがコクピットの中でワナワナ震えている。
しかし、キッと2人を睨んだ。
『だけど、これで終わりじゃないわよぉおおおおおおおお!』
地面に巨大な光のリングが現われた。
ズズズズズ・・・
リングの中から巨大なロボットが現われる。
次々と出現し、5体のロボットが立ち上がった。
大きさはラスト・ガーディアンほど大きくはないが、それでも20mはあるだろう。
『まさかこれを起動するとは思わなかったわ!性能はオリジナルであるこのラスト・ガーディアンに劣るけど、あなた達がどんなに強くても生身では絶対に勝てないわ!』
ビシッとラスト・ガーディアンが春菜達を指差した。
『量産型ラスト・ガーディアン!今度こそ地獄を見せてあげなさぁああああああいっ!』
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