機械神族㉔
前回に続き、蒼太さん無双です。
ここまでの無双は初めてのような気がする・・・
やっと主人公らしく頑張っている回かも?
※9/10に少し加筆しました。
「そ、そんなテラノが・・・、こうもあっさりと・・・」
ユリーが青いどころか真っ白な顔色で俺を見ていた。
余程テラノを倒された事がショックだったのだろうな。
ズイッとタイタンがユリーの前に出てきた。
スーっと床の上に降り立ち、両手の指先を俺に向けてくる。
「・・・」
(全く無言かい?それにしてもでかいなぁ~)
「タイタン!テラノの仇よ!フインガー・レーザー発射ぁあああ!」
上空のユリーが叫ぶとタイタンの指の先端がピカッと光った。
ズバババババァアアアアアアアアアアア!
何十本ものレーザーが俺を襲う。
「無駄だ。」
スパァアアアアアアアアッン!
寒桜の一薙ぎで全てのレーザーを切り落とした。
(さすがは凍牙の母さんだけある。尋常じゃない切れ味だよ。義母さんから『絶対に大丈夫!』と言われて切り払ったけど、まさか光までも切り払うなんて想像以上だ。)
【うふふ、褒めて褒めて!これでも生きていた時は里1番の戦士だったからね。】
(マ、マジっすか?)
【そうよ、だから安心して私を使ってね。最強の剣に間違いないはずだからね。】
「嘘!嘘よ!レーザーを切り落とすなんてあり得ない!そんな事を出来る存在はいないはずよ!私は悪い夢を見ているんだわ・・・」
ユリーが頭を抱えて絶叫している。
「こ、こうなったら物量で押し切るのよ!いくら何でも絨毯爆撃級のミサイル攻撃は躱せないわ!躱しても爆風は防げないし、ぼろ雑巾のようになりなさい!」
タイタンがグッと構えると全身の至る場所の装甲が開き、ミサイルの先端が現れてくる。
「全弾発射ぁあああああああああああああああああああああああああ!」
ユリーが叫ぶとタイタンの全身から大量のミサイルが射出される。
ミサイルの雨が俺に迫ってくる。しかし焦りは全く無かった。
人差し指を頭上に掲げる。
「タイム・ストップ」
ピタッ!
全てのミサイルが空中で停止していた。
上空で俺達の戦いを見ていたユリーがガタガタと震えている。
「そ、そんな・・・、時間を操る魔法なんて・・・、文献だけにしか残っていない既に消え去ったロストマジックよ。それをこの目で見るなんて・・・」
(あれ?デウスも疑似的だけど時魔法は使えるのだけどなぁ。どうやら意図的に情報を渡さなかったみたいだ。)
チラッとデウスを見ると・・・
ニヤッと笑って俺を見ていた。
やっぱり。確かにこの魔法はチートってレベルじゃないよな。この魔法を使って悪い事を考えたらキリが無いし、使い手は慎重に選ばないといけないと思う。その魔法の使い手として信用してくれたご先祖様に対して裏切る真似は出来ないな。
(しかしなぁ~、あの非常識の塊のデウスも一応、善悪の分別はあるんだ。研究の為なら悪用も辞さないタイプだと思っていたが、少し見直してあげよう。)
【蒼太よ・・・】
デウスの念話だ!何か殺気を感じる!
【今、何か失礼な事を考えていなかったか?】
す、鋭い・・・
(イ、イエ、ナニモシツレイナコトハオモッテイマセン。)
【まぁ、良い。そろそろカッコ良く私を助けてくれよ。期待しているからな。】
おいおい、とうとう自分から言ってしまったかい。
期待に沿えるように頑張ろう。
さて、この大量のミサイルを処分しないとな。
「虚無よ・・・」
俺の周囲に無数の黒い玉が浮かび上がった。魔法のダークボールよりも遙かに黒い感じがするし、危険な禍々しいオーラが滲み出ている。
その黒い玉が一斉にミサイル目がけて飛び出した。
シュオン!
次々とミサイルを飲み込んでいく。
爆発は全く無く、粛々と静かに全てのミサイルが消えてしまった。
静寂が辺りに漂う。
「・・・」
(タイタンさんやぁ~い・・・、じっと見られている感じだけど、何か喋ってくれないかな?この沈黙は意外と精神的にダメージを喰らうぞ。)
「・・・」
(うおぉおおおいっ!ずっとだんまりかよ!もしかして、発声機能が無いのか?)
「いやぁああああああああああああああ!何なのよ!この沈黙はぁあああああああああああああ!」
(あっ!ユリーが耐えられなくなって壊れた。)
「はぁはぁ・・・、タイタン、多少の被害が出ても構わない、反陽子砲の使用を許可するわ。マスターはそれくらいの存在よ。だけど、その肉体を我々のものに出来れば、その恩恵は計り知れないわ。何としてでも手に入れるのよぉおおお!」
ゴゴゴゴゴォオオオ!
胸部の装甲が開き、内部から巨大な砲身がせり出てきた。
(どうやってあれだけの巨大な砲身を収納していたのだ?謎だ?)
グッと腰を屈めて体勢を整えると、腰から床にアンカーを突き差し発射体勢が整ったみたいだ。
「これだけの準備をするなんて、どれだけの破壊力なんだよ。俺1人に対しての火力じゃない気がするぞ。」
(まぁ、それだけ俺が危険視されているんだろうな。)
「骨も残さず消え去りなさぁあああああああああああああああああああっい!」
「おぉおおおっい!肉体を手に入れるって言っているのに消滅させるだと!熱くなり過ぎて言っている事が滅茶苦茶だぞ!」
「うるさぁああああああああああああああっい!」
ユリーが完全にヒステリーモードに突入してしまっているよ。
「はぁ~~~~~」
思いっ切りため息が出てしまった。
タイタンに視線を戻すと砲身が輝きを放っていて、今すぐにでも発射されそうな雰囲気だ。
ピシッとユリーが俺を指差す。
「てぇええええええええええええええええ!」
ズバァアアアアアアアアアアアアアア!
砲身から真っ赤な光が迸り、俺目がけて一直線に迫ってきた。
「やれやれ・・・、ヒビキ義父さん、奥義を使わせてもらいます。」
寒桜を上段に構え、迫りくるビームに袈裟切りを叩き込んだ。
「次元斬っんんん!」
剣閃に沿って空間が裂けた。
裂けた空間が一気に広がり、大量のビームがその裂けた空間に飲み込まれていく。
【見事だ!】
(ヒビキ義父さん!)
【凍牙でも取得には10年近くかかったが、それを一瞬で身に着けてしまうとはな。さすが美冬が選んだ男だけある。美冬の事は頼んだぞ。】
(任せてください。美冬さんはずっと幸せにします。)
「そ、そんな・・・、反陽子砲でさえも通用しないなんて・・・、そこまで出鱈目な存在がいるの?」
ユリーは呆然とした表情になっているが、そろそろ終わりにさせてもらう。
いい加減にデウスの方も構ってあげないと後が怖いからな。
「虚無よ!」
俺の周囲に大きな黒い球が3つ浮かび上がった。
そのまま高速でタイタンへ飛んでいく。
ボシュッゥウウウウウウ!
両腕、頭部が虚無に飲み込まれ消滅してしまった。
アンカーで下半身を固定されているので、少したじろいだだけでまだ砲身は俺に向いている。
「まだよ!単にメインカメラとマニュピュレーターが壊れただけよ!戦闘に支障はないわ!」
まだ頑張るのかい・・・
いい加減に終わりにしないとな。
「最後は俺自身の最大必殺技で終わりにさせてもらうよ。」
掌を頭上に掲げた。
「トォオオオオオルゥウウウ!ハンマァアアアアアアアアアアアア!」
ドン!
圧倒的なプレッシャーが辺りを覆い尽くす。
「な、何よ・・・、この信じられない魔力は?」
翼を大きく広げ上空へと飛び上がった。
俺の姿を追っていたユリーの視線だったが、目が今までで一番大きく開かれている。
「そ、そんな・・・、こんな物が存在するなんて・・・私達は決して手を出してはいけない存在に手を出してしまったの?」
そう思うだろうな、上空にはタイタン以上に巨大な黄金のハンマーが浮いているからな。
しかも表面はバチバチと放電しているし、こうして見ているだけでも恐怖しか感じないだろう。
ハンマーから伸びている柄をガシッと握った。
「ハンマァアアア!コネクトォオオオ!」
俺の全身が黄金色に輝く。
巨大なハンマーも更に強く輝き始めた。
「これで終わりだぁああああああああああああああああ!」
ハンマーを握り締めてタイタン目がけて一気に急降下する。
「負けられない!タイタン!頑張るのよぉおおおおお!」
タイタンの胸にある巨大な砲身が頭上の俺に向けられた。
赤い光が迸る。
ズバァアアアアアアア!
「ハンマーよ!噛み砕けぇええええええええ!」
黄金のハンマーと真っ赤な光線が激突した。
ボシュゥゥゥ!
光線が全てハンマーの黄金の光に飲み込まれてしまった。
「俺の勝ちだぁあああああああ!」
目の前までタイタンが迫っている。気合と共にハンマーを一気に振り下ろした。
「おぉおおおおおおおおおおおおおお!」
タイタンにぶち当たり、接触面から次々と光の粒子へと変換されていく。
「光にぃいいいいいい!なぁあああああっ!れぇえええええええええええ!」
ドォオオオオオオオオオオッンンン!
タイタンが完全に消滅し光の粒子が空に舞い上がった。
「あ、あぁぁぁ・・・」
ユリーが放心状態で光の粒子を見つめていた。
ブゥン!
周りの景色が最初のコントロール・ルームの状態に戻った。どうやらユリーの心が折れて空間拡張が維持出来なくなったのだろう。
でも良かった。正直ユリーとは戦いたくなかったよ。いくらデウスと同じナノマシン・ボディで厳密には女性ではないけれど、見た目は可憐な女性の姿だから戦いは避けたかった。
そのユリーはもう戦う意思は無いだろう。
床にへたり込んで焦点の定まらない目をしている。
(ちょっとやり過ぎたかなぁ?)
「おっと、デウスを助けないとな。」
宙に浮き、デウスが張り付けにされている十字架の目の前に来た。
デウスがとろ~んとした表情で俺を見ているが・・・
「寒桜」
右手に剣が握られる。
スパァアアアン!
デウスを縛り付けていたコード類が弾け飛び、デウスが宙に浮いた。
「おっと!」
落下を始めたデウスを抱き止める。いわゆるお姫様抱っこの状態だ。
デウスの顔が更に赤くなっているけど大丈夫かな?
何かブツブツ言っているが・・・
「これがお姫様抱っこ・・・、ドキドキが止まらない・・・」
デウスが潤んだ瞳で俺をジッと見ている。
そして両手を俺の首に回し顔を近づけてきた。とても嬉しそうに微笑んでいる。
(うわぁ~、滅茶苦茶可愛いよ。今日一番の笑顔じゃないかな?)
「蒼太よ・・・、私は最高に幸せだよ。女として・・・、こうも心がときめいてしまうなんてな。囚われの姫となった私を助けてくれる、そんな私の夢を叶えてくれてありがとう・・・」
俺もニコッと微笑んだ。
「蒼太・・・」
「どうした?」
「改めて宣言させてくれ。私は蒼太、お前を愛している。もうお前無しでは生きていられないくらいに大好きだ・・・、ずっと一緒にいさせて欲しい。」
「もちろんOKだよ。こんな可愛いデウスは絶対に手放したくないからな。誰にも渡さない。」
「ふふふ、嬉しい・・・」
嬉しそうに微笑んでから目を閉じ唇を軽く突き出してきた。
そっと唇を重ねた。
しばらく唇を重ねお互いの顔が離れる。
とても幸せそうな表情のデウスがジッと俺を見ていたが、ギュッと抱き着いてきた。
「これが幸せな気持ちなんだな。こうしてお前に出会えた奇蹟に感謝する・・・」
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