機械神族⑪
それにしても凄い威力だな。
最小限のパワーでも辺り一帯が消滅するとは・・・
魔法のブラックホールでもここまでは無理だぞ。マイクロ・ブラックホールとはいえ、本物のブラックホールは恐ろしいよ。そんな力が俺の中に眠っていたのも凄いと思うけど、それ以上にデウスの科学力には脱帽する。空想科学を現実のものにするからなぁ~
俺の後ろにいるデウス達を見てみると・・・
デウスはシッカリと事前に防御フィールドを張っているから爆発による爆風の影響は無かったが、エリーと雪は見事に吹き飛ばされているな。雪は装甲を着ているからまだマシだけど、普通の服しか着ていないエリーは派手に頭をぶつけたみたいで、マンガみたいなたんこぶを作っているし・・・、それでも何とかヴァーチャル・フィールドの範囲内で爆発が収まったみたいだ。建物に被害が出るとデウスから何を言われるか分からない。『賠償として解剖させろ』って、マジで言われるかもしれないしな。
(しかし・・・、ファンタジーからどんどん離れていくぞ。ジャンル詐欺って言われたらどうする?)
【心配するな。】
(デウスか!)
【そこまで細かく指摘する読者はいないだろう。その点は安心するが良い。しかし、作者も色々と疲れているのではないか?妄想が変な方向にかなり膨らんでいるからな。まぁ、そのおかげで今回は私も登場出来たし、お前の妻にもなれたからな。私からすれば作者には感謝しているぞ。その分、冷華が酷い目に遭っているのは、作者の憂さ晴らしかもしれん。ちょっと同情するな。】
(まぁ。そうかもしれんな。作者の精神がこれ以上病んでいない事を祈ろう。俺まで苛められて被害が出ても困る!さて、冷華を待っていよう。そろそろ元に戻るだろう。)
・・・
う~ん、いくら待っても冷華が姿を見せない。
・・・
(ヤバイ!もしかして本当に消滅させてしまったか?そこまで威力を上げいていないはずだけど・・・)
今までにない大量の汗が全身から噴き出てきた。
デウスと雪とエリーがなぜかハモって呟いてる。とても悲しい表情だ。
最悪の展開か???
言葉をよく聞くと・・・
「「「可笑しい人を亡くしてしまった・・・」」」
ズザァアアアーーー!!!
思いっきりズッコケてしまった。
「おいおい、普通は『惜しい人』だろうが!」
思わず突っ込んでしまったけど・・・
(お前ら余裕があるな。もしかして冷華は無事なのか?)
デウスがニヤッと笑った。
「蒼太、心配するな。冷華は無事だぞ。ちょっとややこしい事になっているがな。我らの強化装甲のセンサーにはちゃんと反応はあるぞ。」
人の姿に戻ったクローディアが上空のある1点を指差していた。
「旦那様、着弾点のところだけど、やっぱり空間が歪んでるわ。冷華はそこにハマっているみたいね。」
(良かったぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!)
「蒼太様、これに乗って下さい。」
いつの間にかたんこぶが無くなって普通にエリーが俺に話しかけている。たんこぶが出来たり自然に治ったりしているし、機械神族の義体ってどんなのだ?疑問に思っているうちにファルコンが颯爽と俺の前に飛んできて、目の前でホバリングして浮いている。これ以上考えると深みにハマりそうなので、考えるのを止めた。それが最善かも?
「エリー、サンキューな。」
「どういたしまして、夫を支えるのは妻の役目ですからね。彼女は放っておいても自力で戻って来るでしょうが、その時はその時で『何で私を助けてくれなかったのぉおおおおおおおおおお!』て、面倒臭い気がしますからね。まず間違いないですよ。」
「だよな、あいつなら絶対に言うな。不動のギャグ担当だからな。普段の行いが良くないから作者に目を付けられるのだろう。不憫なヤツだ。」
チラッと雪を見ると思いっきりウンウンと頷いていた。やっぱり雪もそう思っているか。
ファルコンの背に乗ると一気に上空の空間の歪みの前まで連れて行ってくれた。
(全く揺れないな。1人での移動手段にも最適だぞ。だけどなぁ、事情を知らない人が見たらちょっとビビるかもな?)
「ここが例の空間の歪みか?」
確かに景色が歪んで見える。ここで間違いないみたいだ。空間に手を添えて魔力を流してみる。
「タイム・リバース!」
グニャリと歪んでいた空間が元に戻ってくるのを感じた。
「ひゃぁあああああああああ!やっと出られたぁあああああああああああああああ!」
冷華がポン!といきなり何も無い空間から現われた。そのまま地面へと真っ逆さまに落ちていった。
「うひゃぁあああああああああ!」
ズン!
頭から地面に落ちて上半身まで埋まってピクピクしている。
(おいおい、空を飛べるのだろう?何で普通に落ちる?)
デウスが埋まった冷華の隣に行き、足首を掴んで引っこ抜いた。
そのままポイッと放り投げて地面に転がす。
「冷華、どうだ?少しは頭が冷えたか?今のこの装甲は機能を止めているから、単なる重いだけの拷問道具と化しているからな。お前のスキルを使っても干渉出来ないように念入りにプロテクトを施しているから無駄だぞ。」
冷華がうつ伏せの状態で地面に這いつくばっている。相当重いのかピクピクしているだけで動く気配が無い。
「は、はい・・・、デウス様、私が調子に乗ってました。蒼太さんの言う事はちゃんと聞いて、凍牙の妻に恥ずかしくないよう頑張ります・・・」
デウスがニヤッと笑った。
「分かれば宜しい。蒼太を馬鹿にする事は蒼太の妻になった私を馬鹿にするのと同じ事だからな。私の最も大切な旦那様に対する態度は今後改めなければ敵として認識する。これからは私もお前に対しては容赦はしないぞ。」
(お~い、デウスや、そこまで大袈裟に考えなくても良いと思うぞ。馴れ馴れしいのが冷華なんだし、変に畏まった冷華は逆に不気味に感じるよ。)
「だけどな、冷華よ、礼を言うぞ。お前が蒼太に挑発的な態度をしてくれたおかげで、私も自分の正直な気持ちに気付く事が出来たよ。お前の蒼太に対する不遜な態度を見ているとイライラいていたからな、最初は何でそんな気持ちになっていたのか分からなかった。だけどな、気が付いたのだよ、『あぁ、私は蒼太の事を心から愛している』とな。好きな人に対する失礼な態度を気に入らなかったのだと・・・」
そして俺に流し目を送ってきた。とても蠱惑的な目つきだよ。見た目が同じクローディアとは思えないくらいに色っぽい目つきだ。しかし、ペロッと舌舐めずりをしている。
ゾクッ!
背中にまたもや大量の冷や汗が流れる。
(マズイ!デウスがフローリア化している!こんなところで暴走は勘弁してくれぇえええええ!)
「蒼太よ、先ほどは私は妻の中では新参者だからお前を独占する事はしないと言っていたが、今はお前を独り占めしたくて堪らないよ・・・、これがフローリアやエリーの境地であるヤンデレというものか?面白い・・・、私もこんな気持ちになるとはな・・・、もう抑えられないし我慢が出来ないよ。」
デウスの目からハイライトが段々と無くなっている。
(これは非常にマズイのでは?今のデウスはフローリア並の存在だよ。エリーや雪ではまず止められないぞ。クローディアでも厳しいと思うし、俺の生命の危険センサーがデウスを最大級の危険として警報を放っている!)
「ふふふ・・・、この私の気持ちも研究材料として面白い。さぁ!蒼太よ!私と愛し合おうではないか!これも貴重な研究だよ。研究の為なら私自身もサンプルになるのも構わない!最も、お前が1番の研究材料だけどな。何で私がお前にここまで惹かれてしまったのか理由も知りたいし、興味が尽きないよ。お前は本当に面白い・・・」
ジワジワとデウスが近づいくる。
(やっぱり覚悟を決めないといけないのかもな?だけど、この状況を切り抜けるにはこの方法しかないだろうなぁ・・・、修羅場にならない事を祈る!)
「どうせこの状況も把握しているんだろ?フローリア、ヘルプ。」
ドォオオオオオオオオオオオオオオンンン!
俺達から離れた場所に大きな音が響いた。全員がその音の方に顔を向けると・・・
「みなさん、こんにちは。何か面白い事になっていますね。ふふふ・・・」
フローリアがニッコリと微笑んで立っていた。
「フローリア!どうしてここに!私の許可が無いと直接の転移は不可能なはずだぞ!」
デウスが驚愕の表情でフローリアを見ている。しかし、フローリアは変わらずニコニコの表情だ。
「デウス様、私を見くびってもらっては困りますよ。私は旦那様と一心同体、旦那様のいるところには必ず私がいますからね。如何なる障害も私の旦那様に対する愛の前には無駄ですよ。それが旦那様の妻序列1位の私ですからね。」
(おいおい、いつの間にそんな序列なんてものが出来たのだ?まぁ、フローリアならぶっちぎりで1位は間違いないだろうな。)
フローリアがニコッと俺に微笑んだ。
「さすが旦那様ですね。私の事をよく分かっていますよ。」
(そうだった・・・、こいつも俺の心を読むのだった・・・)
再びフローリアがデウスに向き直った。
「いつも冷静なデウス様がここまで情熱的になるなんて、私も想像しませんでしたよ。ですけど、痴態を晒すのは明日の夜まで待っていて下さいね。ちゃんと順番がありますから、ルールは守ってもらわないと困りますよ。」
デウスの目が元に戻ってきている。
「そうだったな、蒼太の妻になる事を認める条件として、妻としてのルールを色々と教えてもらっていたな。私とした事が熱くなってすっかり忘れていたよ。ふふふ、だけど面白い、この私が研究以外の事でここまでの情熱を秘めていたとは新しい発見だ。蒼太よ、明日の夜は覚悟してもらうぞ、私の溢れんばかりのパトスをぶつけるからな。あぁ、楽しみだよ。」
(勘弁してくれよ・・・、肉食獣が増えるなんて・・・、とほほ・・・)
「だけどなぁ~、フローリアよ、ちょっとだけでもいいからつまみ食いだけでもさせてもらえないものか?そんなには時間はかからんぞ。やっぱり我慢出来ないからな、どうだ?」
途端にフローリアからどす黒いオーラが噴き上がった。しかも目つきが臨戦態勢に入っているし・・・
「デ~ウ~ス~~~様ぁぁぁ~~~~~、あんまり調子に乗らないで下さいよ。私だってどれだけ旦那様と一緒にいたいか・・・、やっとガーネットの子育ても落ち着いて旦那様と2人っきりの時間が増えて嬉しい中で・・・、それをお邪魔するのですか?」
そして俺の腕を組んでくる。
「そもそもですけど、旦那様が私を呼んだのはデウス様が暴走を始めたからですよ。旦那様は本気で女性には手を出す事は出来ませんし、ここにいる彼女達だけではデウス様を止められませんからね。このまま引かないのなら、少し痛い目に遭ってもらいますよ。いくら神界の重鎮でおられるデウス様でも容赦しません。」
しかし、デウスは舌なめずりしながら俺を見ている。
「ふふふ、面白い・・・、対ルナ用に準備していたモノだったが、まさかお前が相手になるとはな。ブロンズやシルバーと違い、私のこの装備は次元が違うぞ。まさしく黄金の輝きに相応しい力を見せつけてあげるからな。」
(おいおい、この装備って、まさかのアレ?単にロボットのコスプレだけではなかったのか?一緒にアレの要素も入っていたのか!確かにエリーとデウスの装備は色もシルバーにゴールドだし、鷹や竜が分解して全身に装着するなんてアレにそっくりだぞ。情報の出所はどこだ?あのマンガを教典としている美冬か?はっ!デウス!これ以上は言ったらダメだ!著作権に引っ掛かるぞ!)
デウスがニコッと俺に微笑んだ。
「蒼太、安心するが良い。いくら私でも運営に喧嘩を売る真似はしないぞ。そんな事をしてお前を困らせたくないからな。愛するお前の為だ、言葉には気を付ける事にしよう。」
フローリアも負けじと俺に微笑んでいる。ギュッと腕を掴む力も段々と強くなっているのは気のせいか?
「ふふふ・・・、デウス様、本当に面白い装備を作りましたね。旦那様の趣味を良くお分かりです。ですけどねぇ~、私も旦那様の趣味を分かっていますからね。今の旦那様が住んでいる世界は旦那様の好きな異世界モノですからね。私はそんなチンケな装備でなく世界を授けたのですよ。」
そうだよ、確か神界の神殿に転生させられた時にフローリアに言われたよなぁ~、俺の好みの世界で冒険する事にしてあげるってな。今では俺はその世界の管理する神の1人であり、最強主人公として無双しているんだよ。大変な事もあるけど、とても充実した毎日を送っているし、こんな人生を与えてくれたフローリアには感謝しかない。フローリアが一番俺の事を俺以上に理解してくれていると思う。
しかしだ!2人の会話を聞いていると、既にフローリアとデウスの修羅場に突入していないか?今は舌戦の状態だけど、いつ実力行使に出るか分からん!バケモノ2人がまともに戦ったら、この神界もヤバイと思うのは俺だけだろうか?
マズイ!マズイ!マズイ!
しかし、2人が同時に俺に微笑みかけてくれる。
「旦那様、心配ないで下さい。私達は神界の守護者ですよ。そんな私達が神界を焦土とするようなアホな事をする訳が無いでしょう。」
「そうだ、フローリアの言う通りだぞ。ここだけはフローリアと意見が合うな。面白くないが・・・」
(おいおい、2人揃って俺の心を読むな!)
それにしても・・・
「なぁ、フローリア、デウスって昔からこんな感じだったのか?俺はデウスと会ってから3年くらいしか経っていないから昔の事は分からないからなぁ~、初めて会った時はもっと静かで何を考えているか分からない感じだったよな。それなのに今はガラッと変わってしまっているし・・・」
フローリアも不思議そうに俺を見ている。
「そうですね、旦那様に言われて私も気が付きましたよ。旦那様に合うまでのデウス様は他人には全く興味を持ちませんでしたからね。研究が友達という方でしたよ。ママとは昔からの知り合いで仲は良いですけけど、ママと会っても今みたいな喜怒哀楽がはっきりした感じではないです。それに、ちょっかいを出してくるのは決まって旦那様が絡む時だけですね。」
そうだよな、俺も最初に会ったデウスと今のデウスの変化には驚いている。何かがあるかもしれない。
「旦那様の考えもあながち外れではないかもしれませんよ。今まで旦那様の妻になった者は、私も含めて旦那様とは何らかしらの繋がりがありましたからね。デウス様に関しても私達の知らない繋がりがあるかもしれません。まぁ、今はデウス様を抑える事が最優先ですし、この件は後でじっくりと確認しましょう。」
「そうだな、ご先祖様との繋がりではないのは確実だろう。今の俺に執着しているからな。フローリア、悪いけど頼む。」
ニコッとフローリア微笑んでくれた。
「任せて下さいね。何とか収めてみせますよ。やりすぎないようね、ふふふ・・・」
デウスの方を見るとニヤニヤしながら俺達を見ている。
「ふふふ、相談は終わったようだな。本来はお前と雪が戦って、その勝者と私が最後の戦いをする予定だったが、今からは始まるのはエキビジョンマッチだ。蒼太よ!私の強さを目に焼き付けておくれ!私はお前の為にならいくらでも戦えるからな!」
そして、ビシッとフローリアを指差した。
「フローリアよ!今からのお前との戦いは今夜の蒼太を賭けての戦いだ!勝った方が蒼太を独占出来る。どうだ?」
フローリアは俺から離れデウスの前まで歩いて行くが微笑みを崩していない。
「良いですよ。勝った方が旦那様を独占出来る、何て嬉しい事なんでしょうね。私もやる気が出ますよ。まぁ、今回はあくまでも模擬戦ですから、お互いにやり過ぎないようにしましょうね。」
(お~い、いつの間に俺が景品になっているんだ?)
「望むところだ!私もお前とは一度は戦ってみたかったのだよ。神界の最終兵器と呼ばれるお前とな!」
デウスが剣を構えた。
フローリアが右手を掲げる。
「クローディア、久しぶりに戦うわよ。おめでたが分かってから今までずっと主婦をしていたから、まともに戦う事はほとんどありませんでしたし、久しぶりに暴れられると思うと、私もうずうずしてきますよ。」
掲げた右手に巨大な黄金の剣が現れガシッと掴み、肩に乗せてトントンとしている。フローリアの表情がとても嬉しそうだよ。
頼むからやり過ぎないようにしてくれ!心から祈っているぞ!
フローリアとデウスが睨み合っていると、突然、デウスの前にフワッと銀色の装甲を纏ったエリーが降り立った。
「母様、私も協力します。今夜は2人で蒼太様を独占しま・・・」
ザシュッ!
「甘いわ。」
フローリアが一瞬にしてエリーの前に移動し無造作に片手で剣を振り下ろした。
「えっ・・・」
エリーが肩口からフローリアに袈裟切りをされ呆然としている。
「そ、そんな・・・、いつの間に・・・、全く見えなかった・・・」
エリーの全身が輝き姿が消えてしまった。
フローリアがつまらなそうに呟く。
「ふん、足止めにもなりませんでしたね。もっと実力を付けてから私に挑みなさい。」
そしてデウスの方をジッと見た。
「さて、デウス様、本番といきますか?私も今の姿ではデウス様には失礼ですね。」
フローリアの全身が金色に輝き光が収まると、黄金の女神の鎧を纏った姿で佇んでいた。
そしてニヤッと笑い、神器を両手で持ち正眼の構えでデウスと対峙している。
「デウス様、私の準備はOKですよ。」
デウスもニヤッと笑った。
「ふふふ、こうしてお前と戦うのは始めてだな。不思議だよ・・・、私もワクワクしている。今日はこんなにも私の感情が激しく揺さぶられる日になるとは思わなかったぞ。」
2人が向かい合っているだけで空気がヒリヒリする程に張り詰めている。どんな戦いになるのだ?
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