街の教会①
書き貯めが出来たので一気に投稿します。
無事に身分証明書をもらい、街の中を自由に散策出来るようになった。
異世界の街は初めてだし、どんなものか非常に興味がある。
「みんな。折角だし、街の中を散歩しないか?」
「「「「は~~~い!」」」」
そんな訳で街の中を散策してみる事になった。
街の建物の作りはフローリアが言ったように中世ヨーロッパ風の建物が中心だ。大通りを歩いているが、建物の前には屋台が並んでいて色んなものが売っている。その中でも気になるものが食べ物だな。
地球でも見たことのあるような野菜や果物もあったし、どうしても食べる気がしないグロテスクな魚なども売られていて、見ていても楽しいものだ。
そうして歩いていると、異世界定番の串焼きを売っている店が目に入った。
「オヤジ!美味しそうだな?」
「どうだ?買っていかないか?このデビルラビットの串焼きが一番お勧めだぜ。一緒のキレイなお嬢さん達もどうだ?」
「食べたいです!」
「この肉なら太らないから安心だろう。」
「問題なし。」
「肉~~~~~~~!!!」
みなさん食べるみたいだね。
「オヤジ、それじゃ、1人1本づつで合計5本・・・いや、美冬ならもっと食べそうだから8本頼む。」
「10本食べる・・・」
「訂正、14本で・・・」
オヤジから串をもらったが、さて、何処で食べよう?
時間停止収納に放り込んでおけば、いつでも出来たてホヤホヤの状態で食べる事が出来るが、やはりこういったものはすぐに食べるのが一番美味しい気分になれる。場の雰囲気も大事なのだ。
とは言っても、歩きながら食べるなんて行儀の悪い事はしたくないし・・・
「みんな、どこか食べるのに良いところないかな~。」
「蒼太様、あそこに公園みたいな場所が見えます。芝生もありますので、そこにみんなで座って食べたらどうです?」
ナイス意見!春菜!
そうして俺達は公園の芝生のところに行き、みんなで仲良く座った。
オヤジが包んでくれた串焼きの袋から串を取り出し
ジーーーーーーーーーーーーー
かぶりつこうと
ジーーーーーーーーーーーーー
したら
ジーーーーーーーーーーーーー
えぇぇいっ!誰だ!この視線は?
視線を感じたところに目を向けると、2人の子供が木の陰から俺達を見ていた。
12歳くらいの男の子と8歳くらいの女の子だ。
「どうした?もしかしてコレが欲しいのか?」
子供達は全くしゃべらず、ひたすら俺達を見ている。取り合えず串を袋に戻し、俺は子供達の方に歩いていった。子供達の視線はやはり俺でなく袋に向いていた。
やっぱり食べたいんだろな。
近づいても子供達は逃げる事もなく目の前に辿りついて、子供達をよく見てみると、ボロボロの子供服を着てかなり痩せていた。
袋を差し出し「コレが食べたいんだろ?遠慮しなくていいから。」と話したところ、子供達は一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに困ったような悲しい顔になってしまった。
女の子が「私たちだけ食べたらみんなが・・・」とつぶやき、男の子の方を見ていた。
男の子が「アンナだけ食べて。みんなには内緒にしとくから。」と・・・
「お兄ちゃん・・・」
良い兄貴だ。・・・
「じゃあさ、今から君たちのところへ行って、みんなでコレを食べないか?どうだ?春菜たちもそれで良い?」
「我々は問題ないです。」
「みんなありがとな。それじゃ、一緒に行くか。」
2人の子供達の顔がこれ以上ないくらい嬉しそうだった。
子供達に連れられてしばらく歩くと教会みたいな建物の前に着いた。
「ここでみんなと暮らしている。シスター呼んで来るからちょっと待って。」
そう言って男の子が建物の中に入っていった。しばらく待っていたら、修道服を着た2人の女性が出てきた。
「私はこの教会を管理するシスター・マリアと申します。そして隣にいるのがシスター見習いのアリスです。アレクから聞きましたが、あなた様方は彼らに食事をさせていただけるとか?本当のお話ですか?」
「そうですよ。それにしてもあの2人は素晴らしい兄弟ですね。あんな良い兄弟の為に私も何か力なれるかと思いまして。」
「ありがとうございます。心から感謝します。それでは中を案内しますのでお入り下さい。」
中に入ったところで、シスターから説明を受けた。
「この教会は女神であるフローリア様を祀られています。フローリア様の教えはすべての人に慈悲をとの事で、私達もこの教えを守り日々お祈りをしています。おかげさまで街の方々からの寄付で運営は問題無かったのですが・・・」
「1ヵ月ほど前に、この街から馬車で3日ほど離れた村のそばにダンジョンがいきなり現れ、そこから這い出てきたモンスターの集団に滅ぼされていましました。かろうじて生き残った村人たちがこの街に辿り着いたのですが、身寄りの無くなった子供の処遇が問題になり、浮浪児として放り出す訳にもいかず、私たちが引き取り養っていく事を決めました。」
「ただ、やはり私たちもそんなに裕福ではない身なので、子供達が増えた分、日々の食事にも困窮してしまう有様で・・・女神様に申し訳が立ちません・・・」
【旦那様・・・】
うぉ!いきなりフローリアの声が頭の中に・・・
【旦那様、びっくりさせて申し訳ありません。旦那様には説明はまだでしたが、私と夫婦の契りを交わし心を通わせましたので、私との念話での会話が可能になっています。どれだけ離れていても心が繋がっている限りは会話が可能ですよ。】
そうなんだ。
【助けてあげましょう。私の信者が困っているのは見逃せません。それと、そのダンジョンの事も気になりますから・・・】
分かった。食事は収納家の異次元冷蔵庫で何とでもなるだろう。ダンジョンの事はギルドでも聞けば良いしな。
問題は、子供達の今後だな。いつまでも俺が食材を供給する訳にもいかないし、街の事は街の人間で何とかしないと・・・
【フローリア・・・、後でお前の力を借りるぞ。】
【喜んで!】
さてと、これからの事も何とか目処が付くような考えも出たし、今は子供達の食事だな。シスター達もよく見るとかなりやつれている。自分達も食事は満足に出来ていないんだろうな。
「シスター、ちょっとお願いがあるけど良いか?」
「何でしょう?」
「この教会の隣に広い空き地があるけど、これは教会の所有の土地?」
「そうですけど、手が回らず荒れ放題になってますが・・・」
「悪いけど、その場所に家を建てさせてもらっても良いかな?邪魔ならどかすけど・・・」
「はぁぁぁ!家ですかぁ~!問題ありませんが意味が分かりません・・・」
「まぁ、見てのお楽しみという事でな。」
「はぁ~~~・・・」
「食事まで準備に時間がかかるから、うちのメンバーに子供遊び相手をさせようと思うけど、子供は何人いる?」「20人です。」
「美冬、悪いけど俺の手伝い頼むわ。」「分かった。」
「春菜、夏子、千秋、ここの子供達の相手を頼む。特に・・・、夏子、千秋・・・、絶対に子供に変な事すんなよ!絶対だぞ!」「「わ、分かった・・・」」
「シスター、俺が勝手に何かして後で言われたくないから立ち合いを頼む。」「は、はい!」
「それじゃ、外に出ますか。子供達を頼む。」「「「はい!」」」
空き地に来た。
「それじゃ始めますか。」
「サイクロン・カッター!」広範囲の真空竜巻呪文で雑草が全て刈り取られる。
「グラビティ・プレッシャー!」広範囲に高重力をかけ地面を固める。
「収納家取り出し。」家が建った。
「ストーン・ウオール!」家の周りに適度な高さの石の塀が出来る。境界の確定とプライパシーの保護に役立つ。
「よし!終わり!あれ!・・・シスター・・・?」
隣でシスターが白目を剥き卒倒していた・・・
「か、神が・・・降臨・・・なされた・・・・」