機械神族⑨
俺に抱きついていたデウスが離れ、冷華の方へと歩いて行った。
そして、冷華の前に立った。
「冷華、この仕様はどうだ?魔力問題は解決したはずだが、他には問題は無さそうか?」
冷華が嬉しそうにしている。
「デウス様、問題が無いどころか凄すぎますよ。さっきのとは全く違いますね。全ての武装をフル稼働させても出力には余裕がありますし、私の神器である唯我独尊への魔力供給も可能なんですね。これなら私からの神器への負担もかなり減りますから、とても戦いやすくなりましたよ。それに、デザインも最高です!もう、感謝以外の言葉しか出ません!」
デウスもとても嬉しそうだ。
「喜んでくれて何よりだよ。今までお前に手伝ってもらったお礼がやっと出来たよ。今までありがとうな。そして、これからも頼むぞ。」
冷華が慌てて恭しく頭を下げている。
「い、いえ!神界の重鎮であるデウス様にこうして目をかけていただくなんて恐れ多いです。」
そしてニコッと微笑んだ。
「それにしても以前とは雰囲気がガラッと変わりましたね。今のお姿の方が私はとても好きですよ。しかも、とても柔らかい感じになって親しみやすくなりましたね。これからは私達と一つ屋根の下で住む事になりますし、主婦のデウス様はどんなものか楽しみにしてますよ。やはり恋をしたからですかね?本当に生き生きしていますよ。」
デウスが真っ赤になってしまう。
「こ、こら!からかうな!そういうお前だって結婚してから変わったな。落ち着いたというか堂々としているな。昔の『凍牙ぁ~、何で死んでしまったのぉ~』って、時々陰でこっそり泣いていたのも知ってるからな。」
今度は冷華が真っ赤になってしまった。
「デ、デ、デウス様!何でそんな事を知っているんですかぁあああ!もう!そんな事は忘れて下さい!」
デウスがニヤニヤ笑っている。
「ふふふ、私をからかうからこんな目に遭うのだよ。私に知らない事は無いからな。それにしても、お互い知り合った時は今のこの状態は予想もしていなかったな。正直、今でも信じられないのだけどな。しかし、こうやって胸に手を当てて蒼太を思い浮かべると心が温かくなってくるのが分かるよ。お前の場合は凍牙だな。やはり夢ではないのだと実感するよ。プログラムで構成された思考の私でも恋は出来るのだ。以前にフローリアが言っていたよ、『想いの力は神の力さえも超える事もあります。それを私達は奇跡と呼ぶのですよ。』とな。その時は何を与太話をしていると思っていたが、今は信じるどころか確信してるよ。この私が直に奇跡を体験したからな。」
「冷華、私は蒼太にお前は凍牙と、お互いの夫を支えていこうではないか。楽しみだよ、これからどんな未来が待っているかと思うとな。こんなにワクワクしているのは初めてだ。」
「そうですね。」
冷華もニコッと微笑んでいた。
デウスが上を見上げて目を閉じた。
「ワタル・・・、ソノカ・・・、お前達は非業の死で早々とこの世を去ってしまったな・・・、しかし、お前達は今、やっと本当の意味で結ばれたのだろう。蒼太とフローリアとしてな。悠久の時を経てやっと・・・、お前達の想いが奇跡を呼んだのだろう。そして、その想いから来る奇跡がお前達2人だけでなく、周りの者全てに降り注いでいる。そんな気がしてならないよ・・・」
そして目を開け微笑んだ。
「ふっ、私もそんな事を思うようになったとはな・・・」
「さて、この場所に来たのはお披露目をして見せるだけではない。実戦さながらの模擬戦を行い、実際の運用も体験してもらう為だ。」
デウスが腕を組み、俺達の前でふんぞり返って立っていた。基本、彼女は偉そうなポーズがデフォルトだよな。その態度の方が俺は安心するよ。
時々デレてくるけど、そんなギャップも可愛いな。
「蒼太、例の魔法を頼む。ただし、今回は術式を少し変更してもらいたい。まともに戦ってもお互いの防御フィールドが強力過ぎてまともにダメージが通らないと予想されるからな。装甲部分には耐久値を設定し、生身の露出部分はしっかりとダメージが通るようにしてもらいたい。装備の防御力に過信などしない事も必要だからな。」
「分かったよ。」
俺の脳内で魔法の術式を書き換える。
「ヴァーチャル・フィールド!」
俺を中心にして視界全ての地面が一瞬光った。
「デウス、コレで良いかな?一応、今回は空中の高機動戦もありそうだから、半径3キロを仮想空間にしておいたぞ。これだけの広さなら飛び出す事は無いと思うけど・・・」
デウスを見ると唖然とした表情で俺を見ているし・・・
(何で?)
ハッと我に返ったようだな。ホント、今のデウスは表情が豊かだよ。
「蒼太・・・、何なのだ、このデタラメな範囲は?こんなのはあり得ないぞ・・・」
「う~ん、そうか?俺もよく分からないけど、今までよりも魔力の総量が上がっているんだよな。多分、さっきの変身で俺の基礎能力が向上したんじゃないか?ホント、ブルーの力は凄いな。」
デウスが嬉しそうに俺を見ている。
「ふふふ、お前は本当に面白い男だよ。常に私の予想を上回るな。やっぱり解剖してみたくなったよ。念入りにな。お前の細胞どころか原子構成や魂の組成まで隅々と知りたくなった。」
ゾッと背中に冷や汗が流れた。
(コイツ、マジで考えているぞ・・・)
「勘弁してくれよ・・・、断固拒否させてもらうぞ。」
「仕方ない、今は我慢するとしよう。『今は』な・・・」
そう言ってニヤッと笑った。
(おいおい、諦めてくれないのか?マジで、ホントに勘弁してくれよ。女らしくなったと思ったけど、本質はやっぱりいつものデウスだよ。俺の結婚生活は大丈夫か?朝、目が覚めたら解剖されていたって事はないだろうな?少し不安になってきた。)
「まぁ、その話は切り上げよう。蒼太をからかうのはこんなにも面白いと気が付いたが、やり過ぎは良くないな。」
(あれでからかっていただと?絶対に本気だったと思うぞ。いや、多分本気だよ・・・)
「さて、エリーに雪、まずはお前達から対戦してくれ。面白い戦いになるのを期待しているぞ。」
エリーと雪が距離を空けて対峙している。
ニヤッとエリーが笑った。
「雪さんでしたっけ?さっきはよくも私に向けて矢を打ち込んでくれましたね。しっかりとそのお返しをさせてもらいますわ。」
負けじと雪がニコニコと微笑んでいる。
「あら、そうでしたね。行儀の悪い方にはちゃんと躾しないといけませんからね。今からは容赦しませんよ。私の尊敬している蒼太さんに迷惑をかける存在は認めません。次に尊敬している千秋様から教えてもらった数々の技術をお見せしましょう。あなたが誰に牙を剥いたのか分からせてあげますよ。フェンリル族の誇りに懸けて勝たせてもらいますわ。」
2人の視線がバチバチと弾けている。
(おいおい、これは模擬戦なんだから喧嘩しないでくれよな。まぁ、これからは一緒に暮らすのだから、今回の戦いで分かり合えたら良いと思うけどな。)
雪がアルテミスをブレスレット状態から弓に具現化した。
その瞬間、エリーが叫んだ。
「先手いただきぃいいい!いっけぇえええ!ツインブラスタァアアアアアア!」
エリーのショルダーキャノンから火線が迸る。
ズドドドォオオオオ!
そのまま上空へ飛び上がり空中で雪の様子を見ていた。
「これでカタが付けば簡単なんだけどね。」
雪の周りの土煙が晴れて雪の姿がハッキリと見えてきた。
「ちっ!そう簡単に仕留められないか・・・」
エリーが悔しそうに雪を見ている。
雪は右手を前に突き出していた。その前には輝く盾が形成されている。多分、あれはイージスの盾だな。すごいな、魔力があっても魔法を使えないフェンリル族が魔法を使えるようになるなんて・・・
「まさか、私が魔法を使えるなんてね。この装甲を媒介にして、私が魔法を使えるようになっているんだわ。ただ、今は防御シールドしか使えないけど、経験を積めばもっと色々と使えそうね。気に入ったわ。」
嬉しそうに雪が微笑んでいる。そして、エリーに視線を移した。
「よくもやってくれたわね。お返しよ!」
アルテミスを引き絞り矢を放った。一度に3本の矢を放つ。
高速で飛んでいる矢がエリーに当たったと思った瞬間に、矢がエリーを素通りした。
「何!」
雪が叫んだ瞬間、エリーの輪郭がぼやけ姿が消える。
「残像?」
「そうよ、良く気が付いたわね。」
雪の後ろから声が聞こえた。エリーがニヤッと笑って佇んでいた。
「ふふふ、このファルコンは高速移動が最大の武器なのよ。今のあなたには私のスピードに付いていけないでしょう?それに、あなたには最大の弱点があるわ。悪いけど、その弱点を突かせてもらうわね。蒼太様の前では私は負けられないのよ。私の勝利を蒼太様に捧げるわ。」
腰の剣を両手に握り構えた。
「あなたは弓使い!懐に入られたら終わりよ!私のスピードなら一瞬であなたの懐に入れるからね。」
「くっ!」
雪が焦った表情で空に飛び上がった。
「逃がさないわ!」
エリーが一瞬ブレたと思ったらあっという間に雪の目の前に出現した。
「遠距離攻撃しか出来ないアルテミスなんて!これで終わりよ!」
剣を振りかぶり雪に切りかかった。
しかし、雪がニヤッと笑った。
ガキィイイイイイッン!
「何!」
エリーが驚愕の表情で雪を見つめていた。
雪の両手には黄金の双剣が握られていて、エリーの斬撃を防いでいた。
「そ、そんなバカな・・・、アルテミスはどこに?」
「はぁああああああ!」
雪が気合いの入った声を上げ、エリーを弾き飛ばした。2人が距離を空け空中に浮いている。
「これもアルテミスよ。剣にも形状を変えられるわ。エリーさん、知らなかったの?焦った演技をしたら、あなたは上手く食いついてくれたわね。おかげでだいぶあなたの動きが目に追えるようになったわ。今度は私の番ね。」
余裕の表情の雪がエリーを見ているが、エリーは冷や汗をかきながら忌々しそうに見つめていた。
チラッとデウスを見ると・・・
嬉しそうに俺を見ていた。
「デウス、エリーにアルテミスには第2形態があるって伝えなかったのか?」
「そうだ、教えて何になる。これからはあいつも1人で戦っていかなくてはならないからな。いかなる状況でも対応出来ないと、今後、お前達の隣で一緒に戦う事は出来ん。敵が親切に教えてくれる事なんてしないし、自ら判断して勝ちをもぎ取る事をしなければならん。今回はあいつにとっていい勉強になるだろう。正直言って雪は強い、エリーは負けるだろう。だが、強者から実戦で学ぶ事も大事だよ。」
「そうか、それでエリーと雪を戦わせたのか。まぁ、雪なら冷華みたいに調子に乗って戦う事はしないからな。雪の戦い方はエリーにとってはいい手本になるよ。」
ゾクッ!
(何だ!この殺気は!)
慌てて振り返ると冷華が俺を睨んでいた。
「蒼太さん、私を何だと思っているの?決めた!次は蒼太さんと戦わせてね。私のこの『レッド・ソウル』であなたをこの装甲の色のように血祭りにしてあげるわ。凍牙にはあなたに勝ったと報告してたくさん褒めてもらうわね。」
(はいはい・・・、って、何だよ、このネーミングは!いつの間にこの装甲に名前を付けたのだ?)
デウスが面白そうに俺を見ていた。おっ、念話だ。
【蒼太、冷華には少しお灸を据えてやれ。雪と違って新しい装備が手に入ったと思って少し浮れているからな。まぁ、お前が負ける事は無いとは思うが・・・】
(分かったよ。クローディアの新しい力も試したいしな。ちょっとキツめにお灸を据える事にしておくよ。)
【頼んだぞ。冷華の驚く顔が見物だよ。誰に噛みついたか思い知れば良い、ふふふ・・・】
おっと、雪とエリーの戦いもちゃんと見なくてはな。
ガキン!ガキン!キィイイイイイッン!
2人の激しい斬り合いだ。空中でよくバランスを保って斬り合っているな。
それにしても、雪は本当に強くなった。千秋も褒めていたぞ。本人には絶対に言わないでくれと言われているけどな。
だけど、剣の技量に関してはエリーの方が一枚上手かな?段々と雪が押され始めている。
「はぁあああああああああ!」
ガキィイイイイイッン!
「くっ!」
雪が双剣を交差してエリーの袈裟切りを受け止めたが、そのまま力任せにエリーが雪を吹き飛ばした。
再び距離をかなり空けて対峙している。
「ふふふ・・・」
エリーが笑った。
「雪さん、やりますね。この私に対して互角だなんて・・・、あなたの認識を改めますわ。認めます、あなたは強い!さすがあの凍牙さんの妻ね!私も全力で戦わせてもらいます!」
雪も微笑んでいる。
「そうですね、私もあなたの事を誤解していました。単なるお邪魔キャラではなかったのですね。それだけ勝ちに拘るのは、蒼太さんの為なんでしょう。あなたの愛もデウス様と同じ本物ですよ。だけど、私も凍牙さんの妻であり続ける為にも負ける気はありません。何でしょうね?あなたとは良い友達になれそうな気がします。」
「そうね、私もそう思うわ。友達でありライバルのような感じね。」
エリーが真剣な表情になった。
「だから、これからは本気でやらせてもらうわ。お互いに恨みっこ無しね。」
雪も表情から笑みが消えた。
「分かりました。私も本気であなたと勝負させてもらいますよ。ブルー・デスティニー!今こそ真の力を解き放ちなさい!」
(雪も名前を付けていたのか?まぁ、冷華よりは良いセンスだと思う。)
装甲の銀色の部分が青白く発光し、背中の4枚の翼が大きく開いた。
「な、何!この魔力は!これが本気の力・・・」
エリーが驚愕の表情で雪を見ていた。
「だけど!私は負けられないのよ!私の勝利を蒼太様に捧げるのよ!」
「いけぇえええええええ!ツインブラスタァアアアアアア!」
エリーから放たれた極太のレーザーが雪の体を貫いた。
「この出力なら防御フィールドも紙のようなものよ!勝った!えっ!な、何いぃいいいいいい!」
レーザーに貫かれたはずの雪の姿が徐々に薄くなり消えてしまった。
「な、何!何が起きているの!」
「こっちよ!」
雪の声が聞こえる。エリーが慌てて後ろを振り向くと、ニコッと微笑んだ雪が浮いていた。
「ど、どうして・・・、センサーには何も反応が無かった・・・」
「どう?さっきの真似をされた気分は?簡単な事よ、センサーにも引っかからない程のスピードで移動しただけよ。スピード自慢はあなただけではないって事ね。」
「そ、そんな・・・」
エリーが大量の冷や汗をかいている。
「ブルー・デスティニーの真の力はスピードではないわ。これからよ、本当の力を見せるのは。」
雪が両手を広げる。
「行きなさい!フェザー・ビット!」
そう叫んだ途端に、背中の翼から大量の羽が舞い始めた。
(幻想的だ・・・、これがあの装甲の真の力なのか?)
雪の周りに大量の羽が舞っている。意思を持ったようにゆっくりと雪の周りを回っていた。
「さぁ、私のターンね。」
ゆっくりと雪の周りを回っていた羽が突然エリーの方へ向きを変え襲いかかった。
羽が次々とエリーの装甲に突き刺さった。あっという間にエリーが羽だらけの状態になっている。
「こ、こんなチマチマした攻撃ではこの装甲に影響は無いわよ!すぐに自己修復が始まって刺さった羽も抜けるわ。」
エリーが叫んでいるが、雪は涼しい顔だ。
「甘いわ!エクスプローション!」
雪が拳をギュッと握り叫んだ途端にエリーの装甲に突き刺さっていた羽が全て爆発を起こした。
「きゃぁあああああああああああああ!」
エリーが炎と煙に包まれる。煙が晴れてエリーの姿が再び見えたが、装甲があちこちと破損し、やっとの状態で浮いていた。
「こ、こんな・・・」
エリーがガクガク震えている。
「どう?フェーザー・ビットの威力は?さすがデウス様が製作した強化装甲ね。あれだけの攻撃でもここまでしかダメージを与えられないなんて・・・、普通なら木っ端微塵なんだけど、本当に頑丈過ぎるわ。でもね、このビットにはもう1つ機能があるのよ。でも、どうします?まだ続けますか?」
「も、もちろんよ!勝負はまだ終わっていないわ!」
エリーの目に再び闘志が戻ってきている。
「さすがは私のライバルね。行くわよ!」
雪がニコッと微笑んだがすぐに真面目な表情に戻った。
「フェザー・ビット!リフレクトモード!」
雪の周囲に漂っていた羽が再びエリーに襲いかかった。
「くっ!ツインブラスター!拡散モード!」
エリーに突き刺さろうと迫って来る羽をレーザーで撃ち落とし、搔い潜って来た羽は両手に握った剣で全て払い落とした。
「はぁはぁ、どう?この羽は刺さらなければ脅威ではないわ!まだ、私の周りには羽が舞っているけど、離れていれば爆発なんて意味は無いからね。」
しかし、雪はまだにこやかに微笑んでいる。
「甘いわよ。このフェザー・ビットは単に刺さって爆発するだけのモノではないわ。このアルテミスと連携して初めて真価を表すのよ!」
「見てなさい!」
雪がアルテミスを引き絞り弾丸の速さで光の矢を打ち出した。
「甘いわ!」
エリーがサッと矢を躱した。そしてニヤッと笑う。
「たかが弾丸ぐらいの速さの矢なんで、今の私の機動力では当たらないわよ!そんなのが奥の手なんて・・・、ぐあっ!」
いきなりエリーが肩を押えて苦しんでいた。
「な、何で矢が私の肩に刺さっているの?それも後ろから・・・」
「もう一撃!行くわよ!」
雪が再度矢を放った。
「くっ!舐めるなぁあああ!」
またもやエリーがサッと矢を躱した。
「マグレは2度と・・・、ぎゃあぁあああああああああああ!」
今度は太ももに深々と矢が刺さっている。
「そ、そんな・・・、何で矢が刺さるの?確かに避けたはずなのに・・・」
信じられない表情でエリーが雪を見つめていた。
「まだ分からないみたいね。もう一撃よ!」
雪が矢を放った。
「くっ!何で私がここまで追い込まれる?」
エリーがまたもやサッと矢を躱した。しかし、今度は躱した矢を目で追っていた。
「バ、バカな・・・、信じられない・・・、こんな事って・・・」
躱した矢が空中に舞っている羽に当たると、角度を変え飛んで行った。その矢がまた別の羽に当たり再び角度を変え飛んで行く。何回か反射を繰り返してエリーに迫った。
「ぎゃあぁあああああああああ!」
エリーの左の二の腕に深々と矢が刺さった。
ガタガタと怯えた目でエリーが雪を見つめている。
「どうやら理解したみたいね。これがアルテミスとブルー・デスティニーの合わせ技よ。名付けて『リフレクト・ショット』!そして・・・」
「神器解放!」
雪が何十人にも分身した。
「これでチェックメイトよ。これだけの人数のアロー・レインの矢を躱せるかしら?」
「ミラージュ・ショット!&アロー・レイン!」
雪から放たれた何十本も矢が分裂を始め何百もの光の矢がエリーに襲いかかった。空中に漂っている羽で反射を繰り返し、全方位から隙間無く矢がエリーに降り注いだ。
「いやぁああああああああああああああああああああああ!」
エリーの絶叫が響いた。
ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッン!
大爆発が起き、煙が晴れた時にはエリーの姿は無かった。
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