ギルドはテンプレの宝庫だった
俺と4人はビルの案内でギルドへ向かっている。
ビル・・・
ちょっと緊張し過ぎだぞ。
右手右足、左手左足で歩いているし・・・
俺はもう慣れてしまったけど、この4人の美少女度は天元突破してるからねぇ・・・
人間離れ(確かに全員人間じゃないし}した美貌に間違いないから、すれ違う人はみんなガン見してるよ。
俺は全く眼中にないというか、完全に空気だな。
「み、みなさん!こちらがギルドです!」
「おう!ありがとう。」
「「「「ビルさん!ありがとう~!」」」」
お礼に3人(さすがに千秋は手を握らないけどな)から手を握られたビルは、盛大に鼻血を吹き出して倒れてしまった。
合掌・・・
「さてと・・・、入ってみるか。」
西部ガンマン映画みたいなスイングドアを開けて入った。
殆ど男ばかりだな。
予想通りだけど、一瞬チラッとだけ俺を見るが、すぐに視線を戻し無視している。
そして4人が入ってくると・・・
見事に全員の視線が釘付になった。
テンプレだねぇ・・・
受付はどれかな?と探していたところで、男どもの1人が立ち彼女たちのところに向かう。
大柄なスキンヘッドの厳つい顔の男だ。
予想通り彼女たちのところに向い
「ネーちゃんたち、ここは初めてか?何なら俺が手取り足取り教えてやるよ。もちろん夜のアレもな。」
直後、奴の後ろで下品な笑い声が響いた。
「アニキ~!1人くらいは回して下さいよ~」
「アニキの後だと壊れて使いモノにならないかもなぁ・・・」
「それでも4人いれば結構楽しめるからイイんじゃない。」
見た目通りのクズだな・・・
春菜が「ふざけないで下さい!私たちはこの方と一緒に来ていますので、変な事言わないで下さい!」
スキンヘッドが
「はぁ!こんなとこに男なんていたっけ?」
と言った瞬間に俺を蹴りつけてきた。
蹴られた俺は盛大に吹っ飛び、テーブルや椅子を倒しながら奥に転がっていった。
「ほら!誰もいないだろ。だから、ネーちゃん、黙って俺に付き合えや。」
男がニタニタした顔で春菜の胸に顔を近づけ、舐め回すような視線を向けていた。
男の後ろに10人ほどが立ち上がり、スキンヘッドの男と同じようにニタニタしていた。
「テンプレだね~~~~~」
俺は何事もないように立ち上がり、スキンヘッドに向い歩いていた。
そして奴の目の前に立ち
「俺にやられるのもテンプレ。」
スキンヘッドの額にデコピンをかました。
男はそのまま吹っ飛び、後ろの男たちをなぎ倒していく。
「おぉぉ~!スットラ~~~イク~~~~~!」
「蒼太様!」
春菜が両手を胸の前に合わせて、心配そうな顔をして駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ。俺があんなのに遅れを取ると思ってる?いやぁ~、十分にテンプレを堪能できたよ。」
「もぅ!心配したんですよ。ところで、さっきからテンプレと言ってますが何です?」
「まぁ・・・、それは俺の趣味みたいなもんで、あまり深く追求しないでほしいなぁ・・・」
「まぁ、あのバカどもが春菜をいやらしい目で見ていたから、ちょっと気分が悪くなってやり過ぎたか・・・」
「お前たちの強さは分かってるけど、あんなクズどもに何かされるかと思ったらさ、つい我慢出来なくてな。やっぱり何だかんだいっても、男としてか弱い女の子を守るのは当たり前だし・・・」
「はわわわぁぁぁ!いきなりそんな言われると恥ずかしいです・・・」
美冬:「天然ジゴロ・・・」
周りは騒然としていた。
「お、おい!A級のゴンザレスさんが瞬殺だと・・・」
「デコピンだけであんなに人が吹っ飛ぶなんて・・・」
「俺なんか何も見えなかったぞ・・・」
「あの平たい顔の男は何なんだ!」
「きゃ~!私を好きにして~~~!」
何か変なセリフも聞こえるが・・・
ザワザワしていると、カウンターみたいなところの奥から金髪の女性が出てきた。
「あんた達!何やってんの!ギルド内は喧嘩ご法度でしょ!出禁になりたいの!」
「ちょっと奥に行ってたら騒がしいんだけど!」
その女性が俺を見ながら「はぁ~、あんたかな?何かやらかしたのは?」
「いやいや、俺は被害者で・・・」
「まぁ、アイツは最近A級に上がって調子に乗ってたから、良いクスリかもね。」
「私はこのギルドの受付で『マリー』と呼んで。」
「ところで、あんた何しに来たの?」
意外と気が強そうな人だ。
「あぁ、初めてこの街に来たんだが・・・、身分証明が無いから、このギルドで証明書を作ってくれると教えてもらって来たんだがね・・・」
「そう。それじゃ、私のところで受付するわ。色々と記入してもらいたいから、ココに来て。」
「分かった。」
そう言って俺は受付に向い、4人も一緒に付いていった。
「な、な、何!あんただけじゃないの?」
マリーが四つん這いになって、何故か落ち込んでいる。
「な、な、何・・・、この4人・・・。キレイや可愛いって次元じゃない・・・」
「私はこのギルドで一番モテる自信はあったのに・・・」
「女として完全に負けた・・・・・・・・・・・」
「もしもし・・・、大丈夫ですかぁ~~。」
「はっ!私はギルドNo.1の受付嬢・・・」
「こんな事で落ち込んでなんかいられない・・・」
「ふぅ・・・、少し取り乱しましたね。もう大丈夫ですよ。確か身分証明の件ですね。発行に1人1万ゴールドかかりますが大丈夫です?」
・・・
しまった!
よく考えたら俺、無一文だぞ!
食生活は収納家で快適に生活してたから、お金の事なんて考えてなかった・・・
何かお金になるモノがないか・・・
閃いた!
「そう言えば、この前、旅の途中でモンスターをかなりの数を討伐したのですが、その素材をそちらで買い取って発行の手数料に出来ません?素材だけなら大量にありますので・・・」
「この辺りのモンスターの素材は大した金額にならないけど、あなたの言う方法なら可能ですよ。それで、どんな素材をお持ちで?」
「これです。」
この前倒しまくったドラゴンの素材の金色の鱗を、人数分5枚取り出してマリーに渡した。
本当に倒しまくったからなぁ・・・
数千体のドラゴンの素材だから、上手く売れば当分生活に困らないと思う。
「こ、こ、こ、こ、こ、これは!」
マリーが額から汗をダラダラ流しながら激しく動揺している。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!」
脱兎のように駆け出し、奥の方に消え去ってしまった。
何か、反応が予想してなかったが・・・
しばらくして、マリーが1人の男と一緒に戻ってきた。
一緒にいた男はスラッとして良い身なりをしているが眼光が鋭い。
近くに来てからジッと俺を値踏みするように見つめてきた。
「コレは君が持って来たのか?」
「はぁ・・・、まぁ、そうですけど・・・」
「私も長い間この仕事をしているが、実物を見るのは初めてだ。しかも5枚も存在するとは・・・」
「君は知っているのか?ゴールドドラゴンの鱗は国宝級の扱いで、所持している国はごく僅か。しかも、厳重に管理された保管庫にあるものなんだよ。それを君は何事もないように出してくるとは・・・」
しばしの沈黙の後
「君は一体何者だ?ここでは何だから、私の執務室で話をしようではないか?もちろん、拒否権は無いぞ。」
「はぁ・・・」
そうして俺はギルドの執務室にいる。
「君は予想していると思うが、私はこのギルドのマスターだよ。先ほどの鱗の件だが、どこから持ち出してきた?普通では持ち歩ける代物でもないしね。」
どうも、俺は犯罪者でないかと思われているみたいだ。
「どこから持ってきたかという事は無いんですがね・・・」
「普通に倒して素材として持ってきただけですよ。」
何か面倒くさいな。これだけで驚くなら、もっと驚かせてみようかな。
「ドラゴンなら数千体ほど倒しましたし、素材ならこれだけの数を揃えてますよ。」
そう言って、収納魔法の収納リストのウインドを広げてギルドマスターに見せた。
「は!こんな収納魔法見たこと無い・・・」
「普通に収納するだけの魔法のはずなのに、リスト表示まで出来るなんてあり得ん・・・」
顔面蒼白のギルドマスターがいた。
「これが、もし本物で数も本当なら・・・、この国のギルド全ての資産をもってしても全て買い取る事が出来ん・・・」
「あなたは神か・・・?」
「いや、俺は普通の人間の旅人ですよ。」
まぁ、女神を妻(予定)にしているし、上級天使が護衛の人間なんて存在しないよなぁ・・・
みなさん普通に接しているから、そんな特別な存在だった感覚が無かったし・・・
「多分・・・」
「まぁ、俺は普通に許可証というものが欲しかっただけだし、そんな特別な扱いをしてもらっても困るんだよね。」
「は、はい!ちゃんと用意させていただきます!」
「ありがとう。そういえば、この素材だけど、ずっと収納の肥やしにしているのも勿体ないし半分あげるよ。どうせタダで手に入ったしな。」
ギルドマスターが土下座して感謝してくれた。
余談だが、その後この街は「ドラゴン素材の街」として、大いに栄えたのだった。
ギルドマスターとの話を終えて受付の方に戻ってきたら・・・
女王様モードの『裏』夏子がいた・・・
何があった?
よ~~~く見てみたら、夏子はあのゴンザレスを四つん這いの椅子にして座っている。
ゴンザレスは「ご褒美ですぅ~~~!」ともだえながら呟いている。
春菜が慌てて駆け寄ってきた。
「蒼太様、大丈夫でした?」
「全く問題無かったよ。しかも、ギルドとしてとても歓迎してくれるみたいだしな。それにしてもあの光景は?」
「それが・・・」
「あの後、彼らが目を覚ましたのですが、どうも、強い人は蒼太様だけだと思ってたみたいで、蒼太様がいないうちに私たちを強引に連れて行こうとしたのです。ただ、彼らの視線があまりにもいやらしくて・・・」
「夏子さんが我慢の限界を超えて爆発しまして・・・」
「それであんな状態か・・・、俺もあの連中の視線はホント嫌だったしな。夏子の気持ちは分かる。春菜たちの安全を考えれば、徹底的にすり潰しておいた方が良かったかな?」
「いえいえ!そんなお気遣いしなくても大丈夫です。あのような低レベルの集団なら私たちには傷一つ付けられませんから安心して下さい。」
「そうか・・・、身分証の話もまとまったし、早速手続きに行くか。」「はい!」
「マリー、発行の手続き頼む。」
「は、はい!どうぞこちらに。」
「夏子、千秋、美冬、こっちで手続きするから来い。」
「「「はい!」」」
夏子が一瞬のうちにドレスアーマー状態に戻り、みんな駆け寄ってきた。
しばらく待つとカードが出来上がった。
虹色のカードで、俺たち5人全てが虹色のカードをもらった。
それと、素材を提供した事でかなりのお金も手に入った。
そのカードを見た冒険者が口々に
「あれは・・・、特別な人間にしか発行しない特SSSランクのカードだぞ!噂では聞いていたが初めて見た。」
「やっぱり只者ではなかった・・」
「手を出さなくてよかった・・・」
「リア充爆発しろ!」
「もげろ!」
またもや変なセリフが・・・
マリーが
「このカードであれば、どこの街、国にも見せるだけで自由に通行出来ます。再発行出来ませんから決して無くさないで下さいね。ついでに私ももらって下さい。」
「却下。」
マリーが四つん這いになって落ち込んでしまった。
「あの4人にはどうしても勝てないの?・・・・・・・・・・・」
ギルドを出る時に、新たに夏子の下僕となった男達から「夏子様~~~!またご褒美を~~~!」と言っていたように聞こえたが気のせいだろう・・・