表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
147/184

フェンリル族の里60

よ、よし!あとはこの一口で全てが終わる!

俺の握っている箸の先にご飯が一口分乗っている。

目の前には大量の皿が山積みになっていた。


本当に辛い戦いだった・・・、こんな辛い戦いは今まで初めてかもしれない。


さぁ!これで戦いに終止符が打たれる!

よし!口に運ぶぞ!


うっ!どうしたのだ?腕が動かん!俺の口にご飯を入れて飲み込めば終わりの筈なのに、なぜ動かない?

俺の口の前でプルプルして、これ以上は口の方に進まない!


これ以上食べるのを体が拒否しているのか?マズイ・・・


マドカとシスターズが「あっと一口♪あっと一口♪」と応援してくれているが、どうしても腕がこれ以上進まない。

胃の方は既に限界突破していて、何かの拍子にリバースしてしまうくらいにはち切れそうだ。ルルが面白そうに俺の腹を見ているが、頼むぞ!絶対に触るなよ!絶対にだぞ!


ダメだ!やっぱりこれ以上は腕が動かん!絶体絶命の危機に違いない!どうやってこの危機を突破する?


アイリスが呆れた表情で俺を見ている。

「パパも意地になって食べなくてもいいのに・・・、まぁ、作ってくれた人の事を思って全部食べる気遣いはパパらしいね。そんな優しいパパが大好きだよ。」


「でもねぇ~、みんなはもう食べ終わっているし、いつまでも片付けが出来ないのもミドリ達に悪いからね。だから・・・」

そう呟いてから俺の腕を掴み、グイッと動かした。


「うぐっ!」


最後の一口が口の中に入った。モグモグと噛んで飲み込む。

アイリスやぁ~、手伝ってくれたのには感謝するけど強引過ぎるぞ。

危うくリバースしそうになった・・・


しかし!

「やったぁあああああああああああああああ!完食したぞぉおおおおおおおおお!」


思わずガッツポーズを取ってしまった。

周りから盛大な拍手が起こり、「おめでとう!」との声があちこちから聞こえる。

お前ら・・・、ずっと見ていたのか?食べる事に集中していたから気付かなかったけど、ずっと見られながら食べていたなんて、思い出したら恥ずかしい・・・

ララが感心した様に俺を見ていたが、キッとミドリ達を見渡し殺気を放った。

「1時間でこれだけの量を食べた蒼太さんには感心しますけど、あなた達、自分の旦那様を苦しめる気でしたか?妻となったからには夫の事を気遣うのは当然、それなのに、あなた達は自分の気持ちだけを優先して・・・、どうやら、真の妻となるにはまだまだ自覚が足りないみたいですね。」

ミドリ達がガクガク震えている。

「ルルも機嫌が戻りましたし、明日からは私も普通に働けるようですね。妻とはどういうものなのかビシバシと鍛えることにしましょう。ミドリさんとシズカさんは特に念入りにね。覚悟して下さいよ。」


ミドリとシズカがガックリとうなだれている。

あ~あ・・・、ララを怒らせてしまったな。ご愁傷様・・・、俺は助けられないぞ。



グッタリしている俺の前に凍牙が立った。

「蒼太、ご苦労さん。しっかし大変だな、振り回されない日が無いほどにお前の周りは賑やかだよ。この調子だと午前中は動くのは無理そうだな。午後からは俺に付き合って欲しい。美冬と吹雪も一緒に頼む。」


「どうした?」


凍牙がちょっと照れくさそうに笑っている。

「いやな、里にある親の墓に行きたいんだ。里を出てからほとんど行っていないし、俺も美冬も親父達に家族を紹介したいと思ってな。」


「そうか、それなら喜んで一緒に行くさ。美冬、お前ももちろん行くだろ?」


美冬を見ると、ニッコリ微笑んでサムズアップしている。

「ソータ、もちろん行くわよ。吹雪、じいちゃんとの模擬戦は午前中で切り上げるのよ。分かった?まぁ、私も一緒に付いて行くから、駄々をこねても無理やりにでも引っ張っていくけどね。」


義父さんも笑っている。

「ふはははははぁあああああ!美冬よ、心配するな。わしも午後からは残念ながら仕事だ。雹真、吹雪、それまでは思いっきり語り合おうではないか!わしを満足させてくれよな。」


族長もニヤッと笑っている。

「レオよ、わしを甘く見るなよ。族長と言われてはいるが、ワシはまだまだ若いからな!実践は久しぶりだが、戦いの駆け引きはまだまだ衰えてはいないぞ!」

そして凍牙に視線を移した。

「凍牙、お前の両親の墓は今でもキレイに残っているからな。何せ、お前の母親はわしの亡き最初の妻の親友だったし、里1番の美女でもあったからな。今でもファンがいるくらいだし、手入れは欠かしていないはずだ。まぁ、ゲートも出来た事だから、これからはお前と美冬がちゃんと管理しないとな。」


「分かっているさ。親父やお袋にはいい加減に安心させてあげないとな。」

凍牙がニカッと笑った。

「俺も最近は戦っていなかったから、久しぶりにレオと手合わせでもするか。親父の前でいい土産話も持って行きたいからな。」

そして冷華の方を見た。

「冷華、ちょっと試してみたい事があるから、付き合ってくれないか?お前なら上手くいきそうな感じがする。レオの驚く顔が見れるかもしれないからな。」


冷華がダラダラと冷や汗をかいている。

「凍牙、アンタと創造神様の模擬戦に私が駆り出されるなんて、何か嫌な予感しかしないけど・・・」


しかし、凍牙は再びニカッと笑っていた。

「冷華、大丈夫さ。レオと互角に戦うにはお前の力が必要だからな。今の俺とお前なら出来るはずだ。絶対にお前を危ない目に遭わせないよ。それは約束する。」


「分かったわ。アンタを信じる。もし、約束を破ったら分かっているよね、今度、私と2人っきりでデートよ。あんたの奢りであのケーキ屋のケーキをお腹いっぱいに食べさせてもらうからね。」


「分かったよ。約束するさ。」


サクラ達が凍牙の前に集まった。

「あなた、私達も一緒に行くわ。冷華さんと2人っきりでいると碌な事にしかならないと思うからね。約束をすっぽかして、これ幸いと誰かさんが強引に午後から2人で逃避行しそうな予感がするからね。」

サクラがそう言って、チラッと冷華を見た。

冷華がダラダラと冷や汗をかいている。


「やっぱりね・・・、思った通りだったわ。」

サクラ達が呆れていた。



「ふはははははぁあああああああああああ!凍牙よ!面白そうだな!どんな事をするか楽しみにしているぞ!」

義父さんが大喜びだ。


「レオ、安心してくれ。絶対に喜ぶと思うぞ。俺の親父の秘奥義だからな。今まで1度も成功した事はないが、冷華と一緒なら使えるはずだ。どんな技か楽しみにしていてくれ。」


「分かった!今日の1番の楽しみにしておくぞ!ふはははははぁあああああああああああ!」


「では行くとするか!」

義父さんが号令をかけるとみんなが頷く。そして次々と消えていった。

転移で修練の世界にでも行ったかな?いくらヴァーチャル・フィールドの魔法があっても、あのメンバーが戦うんだ。余程広い場所でないと戦えないだろうな。


みんな・・・

ちゃんと昼までに帰ってこいよ。しかし、バトルジャンキーばかりだからなぁ~、延々と「もう一勝負!」とか言って駄々をこねない事を祈る。

吹雪!特にお前だ!お前が1番駄々をこねそうだよ・・・


本当に何であんな風に育ったのか・・・


フローリアや春菜達は自分の仕事場の方へ転移していった。


我が家のリビングに平和な日常が戻った。



さすがにあれだけの量を食べたから、まだ腹がパンパンで苦しい。なので、リビングのソファーで横になって休んでいる。

ふう~、やっとゆっくり出来るよ。

アイリスが膝枕をしてくれて、優しく頭を撫でてくれている。

「パパ、少しは楽になった?」


「あぁ、ありがとうな。」


しばらく休んだら楽になったので座り直したが、俺の両隣にはルルを抱いたアイリスとララがピタッと座っている。

おいおい、こんなに広いリビングなのに何で3人並んで座っている。しかも、2人揃って俺に寄りかかってくるし・・・

まぁ、2人の好きにさせるか。1週間淋しい思いをさせたからな。


マドカが俺の前にマグカップを差し出してくれた。

「どうぞご主人様、食後のコーヒーはまだでしたでしょう?」


「サンキュー、マドカ。」


「いえいえ・・・」

そう言いながらマドカがニコッと微笑んだ。


ドキッ!

えっ!マドカってこんなに可愛く笑えるのか?思わずときめいてしまった。

確かにキレイ可愛い系の美人だけど、普段は少し気を張り詰めている感じだったよな?それに、今までの事からして、スキュラ族のギャグ担当のはずだったけど・・・

それが普通に可愛い美人メイドにジョブチェンジか?


「マドカ、そういえば、お前はみんなと一緒に行かなくて良かったのか?お前なら喜んで先陣切って参加すると思ったけど、気にはならないのか?」


「ご主人様、私はミナコ姉さんに言われて気付いたのです。」

マドカが胸に手を当てて少し俯きながら話し始めた。

「今までの私は強さだけを求めていました。戦士として強さを求めるのは当然の事、そう自分で思い込んでいたのです。ですが、姉さんに言われて自分の戦い方を振り返ってみると、確かに私の戦い方はどれも派手で見栄え重視だったと思います。なぜそんな戦い方をしていたか・・・」


「私は周りから認めて欲しかったのだと思います。強くなって目立って・・・、私の母は私が小さい時に流行り病で亡くなりました。その後は里のみんなで育ててもらいましたが、やはり淋しかったのだと思います。だからでしょうね、強くなってみんなの注目を集めたいと無意識に思っていたみたいです。」


そうなんだ。でも、俺から見てもそんな風には見えなかったけど・・・

単なるバトルジャンキーだと思っていたからなぁ~


「ですが、ご主人様のおかげで今までの私ではダメだって分かったのです。」

キラキラした目でマドカが俺を見ている。俺、何かした?

「ご主人様が私を変えてくれました。私の変な体質を・・・」


あっ!それね。あの一撃必殺の毒メニューを作る才能ね。


「ご主人様は私をちゃんと見てくれている・・・、私の知らない事まで私を理解してくれているんだと・・・、そう思ったら心がスッと軽くなったのです。今までの私は無理に強くなろうとしていたのでしょうね。でも、それは間違いだったと気付きました。強さは見せびらかすものではないのだと。ご主人様は運命を変えたり時間でさえ操れる程の神をも越えた存在であるにもかかわらず、普段通りに優しく我々に接してくれます。真の強さとは内に秘めるものだと実践しています。」


マドカが片膝をつき、俺に臣下の礼をする。

「ご主人様、今まで私の一方的な気持ちをぶつけてばかりで申し訳ありませんでした。ご主人様にも都合がありますし、フローリア様が私達の行動を見極めてから判断すると言われた事が今、分かりました。シズカ姉さんやアヤみたいに相手を思いやる気持ちが欠けている事を見抜いていたのでしょう。」

「ですから、これからの私達を見ていて下さい。必ずや皆さんに認められるように頑張ります。」


マドカ・・・、どうしたのだ?お前はこんなキャラじゃないだろう?

何か変なものでも食べたのか?



「ふふふ、マドカ、大人になったじゃないの。」

リンカがニコニコした表情で立っていた。


「リンカ姉さん!みんなと一緒に行ったのでは?それにこの装備は?」

驚いた表情でマドカがリンカを見ている。


「マドカ、ミナコ姉さんが言ったじゃないの。私達はここのお手伝いに来たってね。」

リンカはエプロンを着けて掃除機を片手に持って立っていた。完全に主婦の出で立ちだ。これを装備と言うマドカの感性も凄いと思う。

「まぁ、姉さんは旦那様のサポートに付いて行くから仕方ないとしても、私も一緒に行ったらここに来た目的が違う事になってしまうでしょう。だから、私は今からミドリさんから今までにない方法の掃除の仕方を教えてもらうのよ。まずは掃除機の使い方を教えてもらう為にね。」

リンカの目がメラメラ燃えている。掃除にそこまで気合が入るものなのか?

「私は主婦なのよ。主婦には主婦としての戦いがあるの。家庭を守り旦那様の心の拠り所になる事、今までの戦いよりも難しいわよ。かつての私は攻める事しか出来なかったから、家庭を守る事は本当に大変よ。旦那様の事を気遣わなければいけないし、私だけが我が儘を言って周りに迷惑をかける事も出来ないからね。攻めるよりも守る事の方がどれだけ難しいか、好きなだけで一緒にいてもダメなのよ。自分の気持ちを押しつけるのではなく、共に歩む事の大切さ、これが夫婦なんだと、この1週間で実感したわ。」


主婦は大変だって昔から聞いているけど、本当に大変なんだな。今の嫁さん軍団にも感謝するけど、昔の婆さんも愚痴一つ言わず俺に付いてきてくれたよなぁ~、本当に感謝しないといけない。

婆さん・・・、いつかは生まれ変わって会えるかな?

それにしても、主婦業を戦いと例えるなんてフェンリル族に匹敵する戦闘民族だけあるわ。


今のリンカの台詞をみんなに聞かせたい。みんなグイグイ来るから少しは自重して欲しいと思っているし・・・


マドカがキラキラした目でリンカを見ている。

「さすが!リンカ姉さん!私も姉さんを見習って立派な主婦を目指します。ご指導、ご鞭撻よろしくお願いします。」

ペコリと頭を下げている。


「あら、負けん気の強いあなたが素直ね。気に入らなければ上司にでも平気で噛みつくあなたが良い顔になっているわ。でもね、主婦はそんなに甘くないからね。最強の主婦になるとドラゴンでさえ一撃で沈める事も可能だと聞いた事があるわ。私もその境地を目指しているの。どんなに辛くてもね。」


おいおい、そんな話、どこで聞いた?誰がそんな事を言っている?主婦の定義が間違っているぞ。

まぁ、フローリア達基準ならそんな事もありそうだ。あながち間違っていない気もする・・・


「私もまだまだ勉強中だから、一緒に最強の主婦を目指しましょう!私は雹真さんの。あなたは蒼太さんの1番頼りにされる妻にね。」


「はい!」

マドカが大きく頷いた。


おいおい、何か違う気がする・・・、変な方向を目指さないでくれよ。

まぁ、2人で盛り上がっているからそっとしておいてあげよう。



マドカが目を閉じ両手を胸に当てジッとしている。

「私に足りなかったもの・・・」


「そうか・・・、守りたい気持ちなんだ・・・、ご主人様だけでなくみんなを守りたい。今はまだまだ弱い私だけど、いつかはフローリア様達と一緒に家庭を守れるくらいになるまで強くなりたい。力でなく心が強くならないと・・・」


突然マドカの目の前の空間が裂け、裂け目から黄金の光が溢れだした。マドカが驚いた表情でその裂け目を見ている。

「な、何?何が起こったの?」


光が収まると、そこには1本の黄金の剣が浮いていた。

握りや鍔は黄金だけど、刃の部分は少し青みがかかった金色だ。細身の剣で、レイピアに似ている。


「これは神器『ミーティア』、何でマドカの前に?」

思わす呟いてしまった。

この神器も今までマスターが存在しなかった。本当は随分前に美冬が認められていたけど、「私は素手で戦う事に拘っているの。剣は私のポリシーに反するからね。」と言って辞退していた。

フローリアと神器について話をした事があったけど、フローリア曰く

「ミーティアは高速戦闘特化型の神器だから、使い手をかなり選んでしまうのよ。挑戦する神は大体力自慢か魔法特化が多いから、中々ミーティアの特性に合わないのね。美冬さんみたいに体術が得意なら使いこなせると思うけど、体術使いがわざわざ剣に持ち替える事はしないからねぇ・・・」

「ミーティアの特性でも大丈夫な夏子さんや千秋さんは既に神器を持っているし、あの2人みたいなレベルの人は他にはいないのよ。あと数本はまだマスターがいないし、神器は気難しい子ばかりだから認められるのは難しいわ。誰かいないかしらね。」


まさか!マドカをマスターと認めたのか?


マドカが恐る恐る手を伸ばし神器を握った。次の瞬間、マドカの全身が一瞬青白く輝き光が収まる。

「こ、これは・・・、そう、あなたはミーティアと呼ぶのね。私が気付くのを待っていてくれていたんだ。バカな私でゴメンね。随分待たせてしまったみたいで・・・」

神器を握り直し、キッと構えた。

「あなたの期待に応えられるよう頑張るわ。私は『神速の戦士、マドカ!』」

「スピードが1番の自慢だった事を思い出したわ。そのスピードを極める!あなたと一緒にね。」


「よろしくね。」

マドカの言葉に応えるように刀身が青白く光った。

そして全体が輝き光の玉に変化した。小さくなってマドカの右耳へ移動し、小さな黄金のイヤリングに変化し耳に装着されていた。

「そう、これならいつでもあなたの加護が使えるという事ね。そして、私とあなたはいつも一緒、共にみんなを守る為に頑張りましょうね。」

そう言って、嬉しそうに自分の右耳のイヤリングを撫でていた。


評価、ブックマークありがとうございます。

励みになりますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ