表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
139/184

フェンリル族の里52

「さぁ!私を殺して邪神王にトドメを刺してくれ!」


蒼太が叫ぶと体が徐々に変化していった。

瞳が黒色から血のように真っ赤になった。髪が黒色から白く変わっている。肌も薄い紫色に変わった。


フローリアがポロポロと涙を流している。

「旦那様・・・、どうしても戦わなければならないのですか?答えてください。私はどうすれば・・・」

アヤノがそっとフローリアに寄り添ったが、アヤノも涙を流している。

「フローリア様、これが旦那様の意志・・・、あの邪神王を倒す事が最大の悲願でした。その為には自分をも犠牲に・・・」

キッとアヤノが邪神化した蒼太を睨んだ。

「でも、諦めてはダメです!単純に滅ぼすだけなら冷華さん1人の浄化能力で十分です。ただし、邪神王と一緒になった旦那様の魂も一緒に消滅してしまいます。」

フローリアがアヤノの腕をギュッと掴んだ。

「だからどうすればいいの!旦那様を殺すなんて私には出来ない・・・、でも、あの邪神王と化した旦那様がこの結界から出ればどうなるか・・・、あの憎悪の塊りと化した姿・・・、神界の全てを滅ぼすまで殺戮は終わらない・・・、私はどうすればいいの・・・」


アヤノがフローリアをジッと見つめた。

「旦那様は邪神王の倒し方を教えてくれました。ヒビキ様の血を引き継ぎし生まれ変わった列牙様なら・・・、白狼斬魔『剣』の秘奥義なら邪神王だけ倒せるかもしれません。そして、彼女、冷華さんが真の力に目覚めていれば・・・、旦那様はそこに賭けていると思います。」


「で、でも、凍牙さんはここにいない・・・、こんなの無理よ・・・」

フローリアが力なく崩れ落ちてしまった。


「フローリア様!諦めてはダメです!旦那様が言っていたじゃないですか、決して諦めるな!と。」


佇んでいた蒼太だったが、ゆらりとフローリアの方に向き右手を差し出した。


「何をする気・・・」

アヤノが蒼太を睨んだ。

蒼太の差し出した右手の先に真っ黒な人の大きさ程の玉が出来上がり、アヤノの方に向かって飛び出した。


「マズイ!アレは『虚無』!全ての理を消滅させる力!私が避ければフローリア様が・・・、あの時と同じになるの?それだけはダメェエエエエエエエエエエ!」


アヤノが絶叫しているが、黒い玉は無慈悲にもフローリアの方へ真っ直ぐ飛んでいる。

観念してしまったのかアヤノが目を閉じてしまった。


ズズーーーン!

大きな音が鳴り響いた。


アヤノがゆっくり目を開けると、信じられない顔で自分の体を確かめている。

「嘘・・・、何とも無い・・・、どうして?」

「はっ!フローリア様は?」

慌ててフローリアを確認したが、フローリアも無傷のまま座っていた。

「何があったの?」

そして、自分の前にある黄金の壁に気が付いた。

「これは・・・、インフィニティ!助けに来てくれたの!」

とてつもなく巨大な斧がアヤノの前の地面に突き刺さっていた。しかし無数のヒビがあちこちに入っている。

「インフィニティの無限再生でも防ぐのがやっと・・・、でも助かったわ。インフィニティ・・・、ありがとう。」

「虚無は連続して放てないからしばらくは時間が稼げるわ。その間に体勢を整えなくては・・・」

しかし、フローリアはまだ泣きながら座っている。

「私には出来ない・・・、どうすればいいの?」


突然、フローリアの目の前の空間が割れクローディアが現われた。

アヤノが叫んだ。

「クローディア!どうしてあなたがここに来れたの!そうか!インフィニティが来れるなら、神器であるあなたが来れない訳ないわね。あなたがいれば・・・」

クローディアはアヤノに微笑み、次にフローリアをキッと睨んだ。

そして、座り込んでいるフローリアの胸ぐらを掴み無理矢理立たせた。

「フローリア、いつまでメソメソしてるの?いい加減に旦那様の気持ちをくみ取りなさい・・・、あの邪神王が完全に復活していたらこんなものでは済まないわ。旦那様も中で必死に戦っているのよ、だから邪神王はああやってあまり動いていないのよ。」


「で、でも・・・、私には・・・」

フローリアが泣きながらクローディアを見ている。

クローディアの目が更に細くなり、ギリギリと歯ぎしりをしてから、右腕を大きく振りかぶった。

「フローリアァアアアアアア!歯を食いしばりなさぁあああああああああああああああああああっいぃいいいいいいいい!」

クローディアの右ストレートがフローリアの左頬に炸裂する。


「ぐひゃぁあああ!」


フローリアが変な悲鳴を上げながら錐揉み状態で吹っ飛び、地面を抉りながら上半身が埋まった状態で止まった。


「クローディア!あなた!何をしているの!」

アヤノが驚きの表情でクローディアを見て叫んだが、クローディアはニコッと微笑んでアヤノを見てからフローリアを見つめている。

「フローリアはあれぐらいの事をしないと目を覚まさないわ。彼女との付き合いは長いからね。」

クローディアが埋まっているフローリアのところに行き、地面から引き抜き再び胸ぐらを掴んで持ち上げた。フローリアの左頬が思いっきり腫れていた。

「フローリア・・・、私達の役目は何?神界の平和を守る事でしょう・・・、あんたが旦那様をどれくらい好きか分かっているわよ。でも好きだから手を出せない?それでウジウジ悩んで泣くだけで何もしない・・・、あんたの好きはその程度?じゃぁ、旦那様の気持ちは分かっているの?旦那様がどんな思いで私達に討たれる方法を選んだか?そんなのも分からないなんて見損なったわ。」

クローディアがポロポロと涙を流している。

「旦那様から念話で連絡があったわ。いつもの旦那様とは違うけど、とても懐かしい感じだった。『フローリアを助けてくれ』とね・・・、そして、私の過去も教えてもらった。私はかつての旦那様の最初の5人の妻の1人・・・、今のあんた、私、アヤ、春菜、そしてアイリス・・・、その後から妻となった者や旦那様のかつての仲間も次々と今の時代に転生しているとね。みんなで一緒になろうとの想いを叶える為に・・・」

フローリアがハッとした表情になっている。

「私と霞はいつか復活する邪神王とその娘を倒すために作られた神器に魂を移した。戦う力が無くて戦いに参加出来なかった悔しい思いを込めて、次は必ず一緒に戦いたいと思って・・・、でも、私と霞は記憶を無くしてしまった。しかし、私達はこうして再び巡り会いお互いに妻となれたのよ。今度は一緒に戦えるとね。だから私は戦う!」

「そして旦那様はこうも言っていたわ。『この戦いの決着はアカシック・レコードに書かれていない。真っ白な状態だ。』とね。『だから絶対に諦めるな!未来が書かれていなければ、自分達で未来を書き加えていけば良い。みんなが幸せになる未来をな。』そう言ってくれた・・・」


「私は幸せな未来をつかみ取る!自分の手で!そして旦那様も助ける!それが私が選んだ未来!」

「今のあんたは負け犬ね。私が旦那様の1番の妻になってあげるわ。」


クローディアが手を離すとフローリアが力なく座り込んでしまい俯いている。


「フローリア・・・、これでも目を覚まさないのね・・・」

そして長老の方に視線を移した。

「チヅル!久しぶりにあなたと一緒に戦うわ。勘は鈍ってないでしょうね?」

長老が頷いた。


「それじゃチヅ・・・、何!この殺気は!こんな恐ろしい殺気なんて、今まで経験が無いわ!」

クローディアが慌てている。

「この殺気は何処からなの!えっ!フローリア!」



「許・・・せない・・・」

「こんなに自分が情けなかったなんて・・・、情けない自分が許せない・・・」

ゆらりとフローリアが立ち上がった。

「旦那様への愛は私が1番なのよ・・・、誰よりもずっと・・・、旦那様の全てを私は知っているはずなのに・・・、でも、旦那様の真意が分からなかった・・・」

「あぁ、情けない・・・、こんな情けない私を思いっきり殴ってあげたい。そうか、クローディアが私を思いっきり殴ったのは、そういう事だったのね。情けない私を叱咤してくれた。やっぱり私の親友よね。でもとっても頬が痛いわ。ちょっとやり過ぎじゃないの?私の目を覚ましてくれたクローディアには感謝するけど、これはこれ、あれはあれ・・・、少しくらいお返ししても良いよね。旦那様に見せる為に頑張ってキレイにしている私のこの顔がこんなにも腫れてしまっているし・・・、あっ!奥歯まで折れている。やっぱり仕返しは確定ね」


フローリアが狂喜の表情で邪神化した蒼太をジッと見て、「ふふふ・・・」と声を出した。

「旦那様は私のもの・・・、誰にも渡さない・・・、たかが邪神王ごときに旦那様を渡すものですか・・・」


「奪われたものは奪い返す。私を誰だと思って・・・、私はフローリア、今も昔も旦那様の1番の妻なのよ。私が旦那様と永遠に添い遂げるのよ。誰にも邪魔されずに。おかしいわね、何でそんな事を忘れていたのかしら?そうね、最近は旦那様も妻が増えていましたからね。私も創造神であるパパの娘として仕方ないと思っていたわ。旦那様は私1人だけに縛られてはダメだってね。妻の数が1つのステータスである事で仕方ないと思っていた・・・、でも、それは間違いだった・・・、やっぱり私は旦那様が大好き。旦那様無しでは生きていけない。そして、誰にも渡したくない。私1人が独占したい・・・、でも、旦那様の魅力は計り知れないわ。みんな旦那様を好きになっている。やはり、私の旦那様を見る目は間違ってなかったのね。モテている旦那様を見ているのも好き・・・、そんな旦那様が私に遠慮して謝ってくる姿なんて、やっぱり私を大事にしていると実感しているわ。ふふふ、やっぱり旦那様は何だかんだいっても私を1番大事にしてくれているのですよね。だから私もたくさんの愛情を旦那様に注いでいるの。そして、私は旦那様の為に家事もララに並ぶくらいに覚えたのよ。元々家事は出来たけど、やっぱり妻として1番になりたかったからね。何で1番になりたかったか?もちろん私の手料理をたくさん食べてもらう為にね。でも、最近はみんなが家事をしているから私が作る機会が減っているわ。ふふふ、今夜は私がたっぷりの愛情を込めてご馳走を作ってあげましょう。とても精力がつく料理をね。私は出来る女なんですからね。家事も仕事も完璧よ。その姿に旦那様も惚れ直してくれるでしょう。2人っきりで私の手料理を囲んでの夕食を楽しんで、そして、今夜は旦那様と激しく愛し合うのよ。朝まで寝させません。いえ、3日くらい頑張っても大丈夫よね。旦那様はそれくらいの体力はありますからね。昨日の夜は断腸の思いでクローディアとミドリさんに譲ったけど、私は毎日でもいつでも旦那様と愛し合いたいの。あの部屋で旦那様の写真に囲まれながらね。ベッドの中で旦那様に抱かれている時間が私は最高に幸せを感じる・・・、でも、旦那様を私が好きに蹂躙するも大好き。だって、旦那様を私が好きに出来るのよ。私の旦那様に対する支配欲が満足するの。あぁ、涎が出てきそう・・・、ふふふ、私ってSなのかしら?でも、旦那様が望むなら私はMでも構わないわ。旦那様に苛められる私・・・、あぁ、そんな私を想像するとゾクゾクする。旦那様に凌辱される私・・・、新しい悦びが発見出来るかも?旦那様なら私はどんな責めも受けても良いわ。あぁ・・・、本当にゾクゾクしてきたわ。ずっと旦那様と愛し合いたい・・・、念願の子供も生れたけど、1人じゃガーネットが可哀想だわ。もっとたくさんの子供が欲しい・・・、今夜からは私も容赦しない・・・、旦那様の全てを搾り取ってあげる。ふふふ、旦那様、私、フローリアは旦那様を2度と離しません。旦那様も私から離れられないくらいに、私で頭の中をいっぱいにしてあげます。寝ても覚めても私しか考えられないくらいに・・・、最高です。私しか考えられない旦那様・・・、あぁ・・・、天にも昇るくらいに最高です。ふふふふふ・・・、あはははははぁあああああああ!」


「旦那様ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!愛してますぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!」



クローディアとチヅルが大量の冷や汗をかいている。

「チヅル・・・、私、フローリアをとても危険な方向に目覚めさせたみたい・・・、これはヤバイわ。」


「クローディア・・・、フローリア様ってあんなお方?私が思うには、今のフローリア様はあの邪神王よりも遥かに危険な存在だと思うけど・・・、私、間違っている?」


「いえ、長老様のお考えに間違いはないと思います。」

アヤノが2人の会話に入ってきた。

「これを見て下さい。」

アヤノがスッと掌を差し出す。

「インフィニティがビビりまくってこんなに縮んでガタガタ震えています。あの邪神王でさえ恐れる事がなかったインフィニティが・・・、フローリア様の殺気をまとも受けてこんなに・・・」

掌の上に5㎝ほどまでに小さくなって、細かく震えているインフィニティがいた・・・


「はっ!そういえば冷華さんは!」

アヤノが慌てて後ろを振り向くと・・・


「げっ!」


フローリアの殺気をまともに浴び、ピクピクしながら白目を剥き倒れている冷華がいた・・・


「冷華さん・・・、でも凍牙さんがいなくて良かった。こんな姿を凍牙さんに見られたら、恥ずかしくて家出しますよ。」


「ちょっと待って!アヤノ!冷華の横の地面に刺さっている剣は何?真っ白な刀身の剣よ。さっきまで無かったし、あの剣はよく知っている剣だわ。まさか・・・」

クローディアがゴクリと喉を鳴らすと剣が白く輝いた。


「冷華、呼んだか?」

凍牙が姿を現し気絶している冷華をチラッと見た。

「仕方ないなぁ、こんなところが冷華らしいよな。」

ニコッと笑って凍牙が何事も無いように冷華を抱きかかえた。


アヤノが羨ましそうに凍牙を見ている。

「うわぁ~、凍牙さんって優しいですね。自然にあんなにさりげなく冷華さんを介抱するなんて・・・、烈牙さんもそうでしたねぇ・・・、押しかけ女房だったサユリさんとは本当にラブラブでしたし、今も変わってないですねぇ。」


凍牙の腕の中で冷華が目を覚ました。

「凍牙・・・、いつの間に・・・、どうしてここに来れたの?」

冷華が潤んだ目で凍牙を見つめていた。再び凍牙が冷華に微笑んだ。

「言っただろう、お前がピンチの時は必ず駆けつけるとな。俺とお前は昨日の夜、お前を抱いて契りを交わした。真の意味で夫婦になったんだ。記憶があまりないから不安だったけどな。」

冷華が昨夜の事を思い出してなのか真っ赤になった。

「俺とお前はもう心で繋がっている。どれだけ離れていようが世界が違っても、お前の心の声が聞こえたらすぐにお前のところに駆けつける事が出来るようになった。これがフェンリル族の覚醒者同士が夫婦になった特典かもな。今までそんな夫婦なんていなかったし・・・」


冷華がポロポロと泣き始めた。

「凍牙ぁぁぁ~、ありがとう・・・、でも怖かった・・・、フローリア様がああなってしまって・・・」

2人がフローリアの方に視線を移した。



「何度も言います!旦那様ぁああああああああ!愛してますよぉおおおおおおおおおおおお!」

フローリアは天にも届くかと思うほどのドス黒いオーラを放ちながら絶叫していた。

評価、ブックマークありがとうございます。

励みになりますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ