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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
136/184

フェンリル族の里㊾

シズカを降ろした後、長老がニコニコして俺の前にやって来て頭を下げてきた。

「蒼太様、シズカをお願いしますね。すぐにテンパってポンコツになりやすいですが・・・」


「長老様ぁ~、それは言わないで下さい・・・」

シズカが真っ赤になって恥ずかしがっている。最初に比べてかなり素直になった感じだ。俺としても、今のシズカの方が好きだな。


『フローリア、すまんな。また嫁さんを増やしてしまって・・・』


『旦那様、大丈夫ですよ。もう諦めました。ヤキモチを焼いていた昔が懐かしいですね。』


『フローリア・・・』


『ふふふ、冗談ですよ。歴代の創造神様は数十人単位の妻と妾がいる時がありましたからね。色んな種族との友好の証としてね。パパの妻がママと霞さんだけなのはとても珍しいのですよ。妻の数というのは、上位神にとってはある意味ステータスのようなものでもあります。旦那様は創造神の家族となっていますから、それなりのステータスを周りに見せる必要もあります。だから、妻が増える事は仕方ないでしょうね。』

『それに、何だかんだいっても、旦那様は私を1番に扱ってくれますからね。私にとってはその事が嬉しいです。私の愛が1番だと分かってくれているみたいですね。それがとても嬉しい・・・』


『あぁ、そうだよ・・・』

フローリアの愛は今でも相当、いや、とてつもなく重いのは分かっている。だから、下手に刺激しないようにしているんだよな。でも、この重さも今ではフローリアが好きな理由の1つなんだよね。ここまで俺を好きでいてくれる。男としては本望だよ。

でもなぁ・・・、やっぱり重過ぎるかも?


『それにですね、私の専用部屋である旦那様の愛の部屋にいると心が休まりますし、私が食べる料理には時々旦那様の髪の毛をこっそり入れて食べてもいますからね。量が少ないので滅多にしか食べられませんが、旦那様の遺骨の粉末入りふりかけは最高です!旦那様と一つになれる・・・、その感覚は天に昇る程に最高です。これは他のお嫁さん達には内緒ですよ。これは私だけの特権、私だけが旦那様を独占出来ていると実感してますよ。ふふふ・・・』


マ、マジかい・・・、出会った頃とほとんど変わっていないぞ・・・

やっぱり重い!とてつもなく重過ぎる!意外とヤンデレ気味の妻達の中でもフローリアが別格に重いよ・・・、ヤンデレの中でも最強のヤンデレだ。THE・キングオブキング・ハイパーヤンデレに間違いない!

絶対に逃げる事は出来ないな。


『そして、やっと旦那様と私の間で子供も授かりましたし、私が生きてきた中でも今が1番最高の時ですよ。旦那様の妻になれて本当に良かったです。私の一生を捧げるのにふさわしい・・・』

『でも、旦那様・・・、分かっていますよね?私を裏切ったら・・・』


とてつもなく冷たい思念が俺の頭の中で広がってくる。一瞬で背中がベタベタになるくらいに冷や汗が出てきた。

『フローリア、俺がそんな事する訳がないだろう。それ以前に、お前からは絶対に逃げられないと思っているからな。』


『さすが旦那様、よく分かっていますね。私は絶対に旦那様を逃がしませんよ。どれだけ生まれ変わろうが、私は絶対に旦那様を見つけて何度も妻になりますからね。ふふふ・・・』



「おっほん!内緒の話は終わりましたか?」

ニヤニヤした表情で、長老が俺とフローリアを交互に見ている。

しかし、長老の表情が真剣になり、フローリアの前で膝を付き頭を下げた。

「フローリア様、本当に申し訳ありませんでした。お願いをしておきながら、ここまで脱線する事になってしまうと思いませんでした。彼女達の気持ちを思い、口を出さずに好きにやらせてしまった事はお詫びします。そして、やっと本来の依頼をお願い出来ます。」


「そうですね。誰かさんが脱線してから、ここまで大事になってしまいましたからねぇ~、まさか、旦那様のお嫁さん決定戦まで発展するとは思いませんでした。」

フローリアがクスクス笑いながら冷華を見ている。


冷華が自分を指差し、「えっ!私?」と不満げな表情でフローリアを見ていた。


「冷華さん、そうですよ。あなたがみんなの前で頭を下げてレズ軍団が現れてからドタバタが始まりましたからね。まぁ、そのおかげでスキュラ族と我々の心の壁が無くなったのは、嬉しい誤算でしたけどね。」

「春菜さんは、その事も含めて旦那様のお嫁さんの事を予知してたみたいですけど・・・」


そうだった。何で俺達がスキュラ族の里に来る必要があったのだ?俺は例の予知があって妻探しで一緒に来たのは分かるが、関係の無い冷華が一緒だし、何で?

「フローリア、長老からの依頼って?」


「それは私の口から説明させていただきます。」

長老が俺の方を見て話を始めた。

「今回の争いの発端は、ミツキがクイーンの霊廟に赴いた時です。霊廟でミツキが前世の負の残留思念に取り込まれてからおかしくなりました。そして、霊廟は今も不穏な雰囲気が漂っています。多分、前世のミツキの負の怨念が、過去のクイーン達の負の意識を呼び覚ましたのかもしれません。」


そうだった。ミツキは前世の自分の思念に取り込まれてあんな戦いを始めたのだった。

そして言っていたな。

『クイーンになってからは孤独になったわ。私以外もこんな気持ちになったクイーンはいたでしょね。後悔を残して亡くなったクイーンは何人もいたと聞いた事があったわ。』

長老の言葉通りだろう。前世のミツキの負の残留思念で活性化した残留思念があってもおかしくないな。神界は俺の地球での常識が通用しない世界だから・・・


長老が話を続ける。

「ただ問題がありまして、霊廟の周囲は魔法が使えない結界が張られています。霊廟を建てられたのは初代創造神様で、亡くなられたスキュラ族の妻を弔う為に建てられたと伝えられています。その時に、不埒な者が手を出せないように、封魔の結界を張られ今も効果が続いています。その妻もクイーンでした。名前は『ソノカ』様と言い伝えされています。」


ソノカ・・・

どうしてだ?その名前を初めて聞いた感じがしない・・・

ソノカ?園花?花園?フロー・・・

うっ!急に頭痛が!


「旦那様・・・、大丈夫ですか?」

フローリアが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

「あぁ、大丈夫だ。一瞬だけだったし、もう何ともないから。」


何が起こったのだ?不安だけがどんどんと増えてきている。みんなには察知されないようにしないとな。


「普通なら浄化の魔法で負の存在は浄化出来るのですが、魔法が使えない結界が厄介なもので・・・」

難しい顔で長老が里の奥を見ている。その視線の先に霊廟があるみたいだな。

「魔法は使えませんが、スキルなら発動は可能なのです。フェンリル族の浄化能力なら浄化も可能だと思いレオ様に相談しました。そして、冷華様の浄化能力を教えてもらい、フローリア様に相談した訳です。」


そういう事ね、冷華も一緒にいる訳が分かった。


「フェンリル族の浄化能力は浄化魔法の比ではありません。どんな負の存在も浄化出来ると聞いています。」

「冷華様、申し訳ありませんが、我々に力を貸して下さい。」

長老が冷華に頭を下げる。冷華がニッコリ微笑みながら長老の手を取った。

「長老様、私が嫌と言う訳が無いでしょう。私の力がみんなの役に立てるなら、こんなに嬉しい事はありません。今回の事だけでなくても、私の力が必要ならいつでも言って下さい。あのゲートがあればお隣さんみたいなものですからね。」


「冷華様、本当にありがとうございます。」

長老が冷華に深々と頭を下げた。



長老を先頭にして、アヤ、フローリア、冷華、俺が霊廟のある森の奥へ向かった。

俺は関係ないはずだけど、何で一緒について行くのだ?

フローリアも不思議そうな表情だ。

「そうなんですよ。私も旦那様を連れて行く理由が分からないのですよね。でも、なぜか旦那様をどうしても連れて行かなくては!と気持ちが訴えているのですよ。私もこんな気持ちになるなんて初めてですし、不思議です・・・」


アヤ、シズカに続いてフローリアもか・・・

このスキュラ族の里には何があるのだ?単にクイーンの暴走を止めただけでは終わらない事なのか?


細い獣道のような道を歩き続けていると、突然目の前の光景が変わった。

森の中なのに急に森が開けて草原が出現している。その草原の中央に木造の社が見えた。


うっ!さっきと同じ頭痛が・・・


そして俺の意識が途絶え、目の前が真っ暗になった。




はっ!ここは?

目が覚めたが、感覚が何か違う。何があった?

俺の目の前にフローリアの顔があった。

「フローリア!」

そう叫んだが声が出ない。いや、俺は意識だけの状態みたいだ。体の感覚が全く無いし、誰かの体の中から傍観者のように外の景色を見ている感じがする。だが、俺の体の感覚はある・・・、不思議な感覚だ。


本当に何が起こった?


そして、目の前のフローリアだが、落ち着いて見ると違う・・・

顔は確かにフローリアだが、髪は黒く犬耳が生えている。瞳は同じ金色だが・・・

そして今にも死にそうなくらいの瀕死の表情だ。


まさか・・・


「ソノカァアアアアアアアアアアアアアアアア!」


俺が女性を抱いて絶叫している。そして止めどなく涙が溢れている事も分かるが、やはり、傍観者みたいな感じだ。


「馬鹿野郎!何で俺を庇った!死ぬのは俺で十分だった・・・、何でお前が犠牲にならなければ・・・」

視線が徐々にソノカというスキュラ族の下に移動した。


うっ!腰から下が無くなっている。どんな事をしたらこうなるのだ・・・


「どんな時でも私はワタル様を守る・・・、結婚する時にそう誓ったではないですか・・・、だから、私はその使命を全うしただけです・・・、おかげで邪神王は撤退しましたからね。」


「だ、だからって、お前が犠牲になる事なんて・・・」

「邪神王のスキル攻撃は存在そのものを無くしてしまう、ことわりすら・・・、何でそんな攻撃をお前が代わりに受けなければならなかったのだ・・・」


ソノカがニコッと微笑んだ。

「ワタル様は遙か昔から戦乱が続いているこの神界を、初めて統一される方ですよ。もう一息です。あの邪神王さえ倒せば、私を含めてワタル様の妻達や仲間全員の悲願が果たせるんです。だから、ワタル様は絶対に死なす訳にはいきません。その為なら、私達全員は命を投げ出すことも怖くありません。そして、奴隷だった私を救ってくれただけでなく、1番最初の妻にまで迎えてくれました事には感謝してもしきれません。ワタル様の身を守って死ねる。そんな嬉しい事はありません。」

苦しそうにうめき声をあげていたが、すぐに元の微笑みに戻り俺を見つめている。

「妹のハルカや私の奴隷時代に一緒に奴隷にされていた人族のクローディアもワタル様の妻になりました。私はもうダメなのは分かっています。だから、残ったみんなを幸せにして下さいね。我々スキュラ族もワタル様が保護して下さったおかげで、長い間奴隷として男の慰み者とされていた時代も終わりました。スキュラ族の明るい未来を作ってくれた事に感謝しています。」


ポロポロと突然ソノカが泣き出した。

「でも・・・」

「本当は死にたくない・・・、ずっとワタル様と一緒にいたかった・・・、みんなでずっと一緒に・・・」


俺はソノカをそっと抱きしめた。

「ソノカ・・・、やっとお前の本音が聞けたな。誰も喜んで死ぬヤツなんていないぞ・・・」

「もう一度やり直そう・・・、遠い未来に平和になった神界でみんなで一緒にな・・・、俺のスキルで運命を変える。ソノカ、アカシック・レコードにお前と俺の魂を繋げた。俺もお前も何度生まれ変わろうが必ず出会うようにな。生まれ変わって記憶を無くそうが、魂の繋がりは消せない。もう一度、お互いの初恋から始めよう。そして、必ず再び夫婦になろうな。」


ソノカが嬉しそうに微笑んだ。

「分かります・・・、ワタル様の心と繋がっているのが・・・、これで安心して逝けます・・・、それでは未来に再び会いましょう・・・、絶対に逃がしませんからね。」

段々と言葉に力が無くなってきている。

「大・・・、好き・・・、です・・・、旦那・・・、様・・・」



俺は冷たくなったソノカをずっと抱いていた。

「ガイ・・・、裂牙・・・、そしてソノカ・・・、俺の大切な人が次々と死んでいってしまう・・・」

「お前達に誓う。俺は必ず神界を統一するとな・・・、延々と続く争いや弱い者が虐げられているこの世界を平和にする。でもな、俺もそう遠くないうちにお前達のところに行くだろう。残ったみんなには悪いけどな・・・、俺の運命がそうなっているし、書き換える気もない。」


「みんな・・・、生まれ変わって、また一緒になろうな。ふっ、みんなが揃うと賑やかになりそうだよ・・・」




はっ!何だったのだ?今の光景は?


「旦那様、本当に大丈夫ですか?」

フローリアがまた俺の顔を覗き込んでいた。そしてクスクス笑い出した。

「昨日は頑張り過ぎました?昼は戦っていた上に、夜はクローディア達と激しく・・・、むふふふ・・・」


しかし、今はフローリアのそんな冗談を聞いている気は無かった。あの光景が生々し過ぎて今の現実との区別がつかない感じだ。そして、フローリアの顔がソノカの顔と重なって見える。

「ソノ・・・、カ・・・?」

思わず口からその名前が出てしまった。

フローリアの瞳からポロッと涙が零れた。


「えっ!私、どうしたのですか?いきなり涙が出てくるなんて・・・、こんな事は初めてです。」

真っ赤な顔でフローリアが慌てている。女神族とスキュラ族の違いはあっても、フローリアの顔はソノカと同じにしか見えない。

あの光景は・・・

「フローリア、ちょっと聞きたいけど、俺は何かしていたか?」


元に戻ったフローリアだけど、ちょっと照れている感じがする。

「いえ、特に・・・、旦那様が頭を押さえてうめき声をあげたのですよ。『うっ!』と呻いたらすぐに元に戻って私の顔を見ていましたけど・・・、それに、旦那様の呟いた『ソノカ』って言葉ですが、何かとても懐かしい感じがして・・・、ずっと昔にもそう呼ばれていた気がします。何かとても嬉しい気持ちになりましたね。」

「でも、ソノカっていう名前は初代創造神様の奥様の1人ですよねぇ・・・、そして、あの霊廟に祀られていると・・・、何か私と繋がりがあるのですかね?」


フローリアが不思議そうに霊廟を見ている。


やはり、あの光景は・・・

現実ではほんの一瞬だったけど、しっかりとあの光景は鮮明に全部覚えている。

もしかして、俺とフローリアの間で、昔、実際に起こった事ではないのか?


そうなると・・・、昔の俺とフローリアは・・・



そ、そんな・・・、嘘だろ?信じられない・・・

評価、ブックマークありがとうございます。

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