フェンリル族の里㊸
目が覚めた。外が明るくなり始めている。
俺の両隣にはミドリとクローディアが眠っている。2人共とても満足そうな寝顔だよ。この2人の幸せも守っていかないとな。
ミドリの顔を見ていたらパチッとミドリが目を覚ました。恥ずかしそうに俺を見ている。
「寝顔を見られているなんて恥ずかしいです・・・、でも、あなたが私の全てを受け入れてくれて幸せです・・・」
そう言って俺に抱きついてキスをしてきた。お互い裸だから俺も恥ずかしいよ。でも、ミドリの肌から伝わる温かさが心地良い。このままずっと抱き合っていたいくらいだ。
しばらくミドリと抱き合っていると、クローディアも目を覚まし抱きついてきた。
「初めての相手が旦那様で良かった・・・」
目を潤ませ俺にキスをしてくる。
しばらく3人で抱き合いお互いの温もりを感じ、昨夜の余韻に浸っていた。
「さて、私はみなさんの朝食の準備をしてきますね。お2人はもう少し休んでも良いですよ。それとも、もう少し頑張ります?」
ミドリがクスクス笑うとクローデァが真っ赤になった。
「ミドリ、そんな事していたら私と旦那様が朝食に間に合わなくなるわよ。さすがにそれはマズイからねぇ・・・」
「そうですね。朝から修羅場は勘弁ですよ。ふふふ・・・」
春菜達なら確実にマジモードで暴れるから冗談で済まないよ。ちゃんと朝食には間に合わせないとな。
ミドリがベッドから降り立ち上がった。
「あなた、どうしました?」
「いや・・・、ミドリがあまりにもキレイだったから見とれていた・・・」
一糸まとわぬミドリの姿は本当にキレイだ。スタイル抜群と平凡な言葉で褒められない。まさに美の女神が舞い降りたのではないかと思ったくらいだ・・・、それだけ美しかった。
「ふふふ、そう言われると嬉しいです。」
嬉しそうにキスをしてくれた。
「それでは行ってまいります。」
「あぁ、朝食を楽しみにしているよ。でも、そんなに寝ていないから、あまり無理するなよ。」
ミドリが嬉しそうに微笑む。
「心配してくれて嬉しいです。でも大丈夫ですよ。昨夜はあなたにたくさん愛して貰いましたからね。今の私はあなたの愛に満ち溢れています。」
うわぁ・・・、そう言われると凄く恥ずかしいよ・・・、でも、今のミドリは本当に幸せオーラに包まれているのが分かるよ。
ミドリが服を着て部屋から出ていくと、クローディアが再び抱きついてきた。
「旦那様、ありがとう・・・、私を女としてフローリア達と同じように接してくれて・・・」
うっとりした表情で俺を見つめている。
「どうした?そんな事を言うなんて・・・、お前は神器だけど、ちゃんとした女だと思っているぞ。時々、神器だと忘れる事もあるし・・・、まぁ、お前は凍牙の逆バージョンみたいなものだよな。」
クローディアが急に暗い表情になって俯いてしまった。
えっ!俺、何かマズイ事を言ったか?
「兵器として生み出された私は、このように女の姿になっても所詮は兵器・・・、私はそう思っていたわ。フローリアやチヅルのように友人として扱ってくれるマスターも少なかった。女のマスターは私の女の姿に嫉妬し離れていく者も多かったし、男に至っては私のこの体目当てで挑戦する者しかいなかったからね。」
確かに、クローディアの美人度はフローリア級だし、何といってもあの胸だからな。俺も初めて見た時は思わずガン見してしまった。クローディアのマスターになれば彼女を好きにしてもいいと思うゲスな考えをするヤツも出てくるだろう。というか、そんなヤツしか挑戦してなかったのか?
「ある男からは『人形は人形らしく黙って俺に抱かれればいいんだ!』なんて言われた事もあったわ。速攻で首を刎ねたけどね。でも、そんな事を言われると、やっぱり私は女の姿をしただけの兵器なんだと思った事もあった・・・、体目当てのゲスな目をした奴等は片っ端から殺したわ。私は男の欲望を満たす為の存在ではない。確かに作られた存在だけど、私はこうして自分で考えて行動出来るの。何も考えない人形と違うわ。そうしているうちに、いつの間にか私は神器の中で1番気難しい神器と呼ばれるようになった・・・、母様達を恨んだ事もあったわ。なぜ自我やこの姿を私に与えたのかってね・・・」
クローディアの目から涙が溢れている。
「クローディア・・・」
「でもね、旦那様だけは違っていたわ。レオも私の事をいやらしい目では見ないけど、まぁ、霞のマスターだからね。私の事は眼中無しなんでしょうけど・・・」
いや、義父さんは幼女趣味かもしれないぞ・・・、だって、義母さんや霞がそうだからな。
う~ん・・・、幼女趣味の〇オウか・・・、前もそう思った事があったが、やはり確定かもしれん・・・、俺の子供達と遊んでいる時も本当に嬉しそうだし・・・
「レオ以外では旦那様だけですよ。私を見ても普段と変わらないどころか、最初は私を受け入れる事も嫌がっていましたからね。昨夜は目潰しまでされるし、でも、旦那様と一緒にいると毎日が楽しくて飽きないです。」
「うっ!アレはすまん・・・、思わず咄嗟にやってしまったが、さすがに女の人にする事じゃないよな。」
クローディアがニコッと微笑む。
「構いませんよ。あれも旦那様の愛情表現の1つなんでしょう?」
いやいや、あれは違うよ。もしかして、クローディアはMの気があるのかもしれん。Mに覚醒しても困るから、あまり変に刺激しないようにしよう。
「こうやって旦那様と抱き合っていると、私は兵器である事を忘れられる。1人のただの女として実感出来るの・・・、旦那様と心も体も結ばれて、今は本当に幸せよ。私が作られたのは、こうやって旦那様と巡り会う為だったと思いたいの。」
そうか・・・、クローディアも色々とあったのか・・・
「だから、もう少しこのままでいて欲しい。お願い・・・」
デレているクローディアは本当に可愛いな。初めて会った時は少しツンツンした感じでちょっと近寄りがたい雰囲気があったが、今は全くそんな感じは無いし、春菜達とも仲良くしているみたいだから良かった。
「分かったよ。お前の気の済むまで抱きついていなよ。でも、朝食に間に合わなくなるのはゴメンだぞ。」
クローディアが嬉しそうにギュッと俺を抱きしめてくる。
「分かってるわよ。」
そして、俺の顔をジッと見ている。
「旦那様、大好き・・・、旦那様の生ある限り、私はずっと旦那様と共にいる事を誓います。」
そろそろ時間になったので俺達は服を着て1階のリビングへと階段を降りていった。クローディアは嬉しそうに俺の腕に抱きついている。
リビングに着くと・・・
「うっ!」
アイリスがすごく不機嫌そうな表情で俺を見ている。チラッと隣のクローディアを見ると、頬にツツーと冷や汗が垂れていたのが見えた。
アイリスがダダダ!と駆け寄って俺に抱きつく。何だ!クンクンと匂い嗅いでいるぞ・・・
そして、ゆっくり顔を上げて俺を見ている。しかし、その目はハイライトの無い目だ。
ヤッバァアアアアアアアアアアアッイ!
「ねぇ、パパ・・・、何でパパからミドリとクローディアの香りがするの?」
ガシャァアアアアアン!
「きゃ!ミドリさん!急にお皿を落として、どうしたの?」
キッチンにいるミドリが皿を落としてしまい、ララが心配そうにミドリを見ている。
クローディアも冷や汗ダラダラだ。
アイリスがハイライトの無い目でジッと俺を見つめている。
「ミドリは朝からウキウキしているし、昨日までの様子と全然違うのね。絶対に何かあったのね。とても嬉しい事が・・・、そしてクローディア、パパと嬉しそうに腕を組んで降りてきたわ。いくら結婚したからといって、朝、一緒に仲良く降りてくる?2人揃ってパパの部屋から出てきたみたいね。クローディアが1番分かりやすいわ。なぜ?そんなに大量の幸せオーラが出ているの?」
「パパ・・・、まさかと思うけど、私を置いてけぼりにして、昨日の夜はミドリとクローディアの2人とエッ・・・」
「わわわわわぁあああ!」
咄嗟にアイリスの口を塞いでしまった。それ以上は言わないでくれぇえええええ!
「やっぱりね・・・」
手を離すと、ボソッとアイリスの呟きが聞こえた。
しかし、いつもの目に戻り、ニコッと笑ってクローディアを見ている。
「クローディア、おめでとう。それにミドリもだね。2人揃ってパパと結ばれたんだね。」
クローディアがどうしていいか分からない表情でアイリスを見ている。
「アイリス・・・」
アイリスはニコニコしながら俺に話し始めた。
「だって、私はまだ子供だから置いてけぼりにされても仕方ないよ。ミドリやクローディアみたいな事は出来ないからね。」
しかし、目に薄らと涙が浮かんでいる。本当は泣きたいのに我慢しているんだな・・・
「でもね!パパ!私が成人した時は覚悟してね!私の気の済むまでパパを蹂躙してあげるんだからね!絶対に寝させないからね!」
ビシッと人差し指を俺に向けてニヤリと笑った。
「それに、サクラ達も私と同じだからねぇ・・・」
アイリスの事で気が付かなかったが、サクラとガーベラがリビングのソファーで不機嫌そうに座っていた。
2人の近くで雪とミヤコもなぜか燃え尽きたような感じで座っている。
雪がブツブツ言っている。
「う~、あの時パーを出せば冷華じゃなくて私だったのに・・・、チョキと迷った昨日の私を殴ってやりたい。今夜は私達の番だから私の想いを全て凍牙さんにぶつけるわ。ふふふ、寝させないからね・・・」
ミヤコもガックリしている。
「勝負の世界は非情よね・・・、ミツキが私より先に女になったのね・・・、羨ましいわ・・・、でも、今夜は私も女になれるのね、ふふふ・・・」
うわぁ~、2人揃って落ち込んでいたかと思ったら、急にニヤニヤし始めたぞ。表情が怖いよ。
しばらくすると、2階への階段から凍牙が降りてきた。
あれ?まだ大人バージョンだぞ。しかし、何か疲れた感じだ。凍牙の両脇には冷華とミツキが凍牙と腕を組んでいて、後ろにはレイラがいる。3人が幸せオーラ全開でツヤツヤした顔だ。まるで今朝のミドリやクローディアと同じだよ。
まさか・・・
アイリスと目が合うと俺に頷いた。
「そうなの。冷華お姉ちゃんがサクラにね、どうしても大人の凍牙お兄ちゃんのままでいさせてと頼んでいたのよ。その後でみんなが血走った目でジャンケンをしていたのね。雪お姉ちゃんとミヤコお姉さんが負けて血の涙を流しながら落ち込んでいたわ。その後、あの4人で一晩一緒に同じ部屋にいたからねぇ・・・、どんな事になったか想像出来るわ。みんなで大人の階段を登ったみたい・・・」
「はぁ・・・、私も早く大人になりたい・・・」
アイリスや・・・、お前、子供なんだから、そこまで考えなくていいよ。サクラもガーベラもだよ・・・
それにしても、本当にこの3人は・・・、考え方がしっかりと大人だし怖いよ。とても8歳や7歳とは思えない。一体、誰が教育したのだ?あっ!俺達か・・・
クローディアが嬉しそうに冷華達のところに行った。冷華達もクローディアに気付きニコニコしている。ミドリも冷華達に気付き、慌てて冷華のところに行った。どうやらみんな、昨夜は何があったのか分かっているみたいだな。
ララが嬉しそうにミドリを見つめている。
「今朝のミドリさんは本当に幸せそうね。黙っていても分かるわよ。ふふふ、初めて旦那様に抱かれた時を思い出すわ。私もあんな感じだったからね。」
凍牙はグッタリした感じで俺のところまで来てソファーに座った。
「凍牙、大丈夫か?」
疲れた感じだが、目には決意みたいなものが見える。
「あぁ、大丈夫だよ。お前も覚悟を決めたんだな。ミドリとクローディアの全てを受け入れる事にな。あの2人も昨日までとは全く違う。今の冷華やミツキ達と同じ感じだからな。俺もだよ。サクラやガーベラには悪いけど・・・」
「サクラのタイム・アクセルの魔法は時間を進める魔法だ。加速装置みたいな使い方も出来るけど、本来は今の俺みたいに対象の時間を進める魔法なんだよ。一度進めたら元に戻らないから、元に戻す時はタイム・リバースの魔法をかける必要がある。今までの俺は子供の姿という事で冷華達の気持ちから逃げていたんだ。昨日、スキュラ族の里で冷華を見ていたら、あいつがどれだけ俺の事を待っていたか・・・、一度は死んでこうやって復活したけど、あいつと雪はずっと俺が里に帰って来る事を信じていた。奇跡が起きる事を信じてな・・・、そして奇跡が起きた。」
凍牙が冷華を見ていた。冷華が凍牙の視線に気付き顔を赤らめている。
「もしかして、みんなの願いがこの奇跡を起こしたのではないかと思っているよ。ミツキ達の転生もそうだし、偶然にしては出来過ぎだ。だから俺は決めたんだ。元々の大人だったこの姿でいる事にな。まぁ、当時よりは若返っているけど・・・、タイム・リバースの魔法で元に戻らない事をサクラに頼んだ。冷華も頼んでいたみたいだけどな。冷華達の気持ちから逃げずに全てを受け入れる事に・・・、蒼太、すまないな、お前の娘達を後回しにして・・・」
照れくさそうな表情で凍牙が俺を見ている。
「凍牙、構わないさ。俺もお前と同じ気持ちだったからな。だから、俺もミドリとクローディアの気持ちに応えた。今のあの2人の表情を見ていると、判断は間違えていなかったと思う。アイリスを置いてけぼりにしたと思っているのも、お前と同じだけどな。」
凍牙がため息をついた。そして何がブツブツ言っている。
「う~ん・・・昨夜の記憶があまり無い・・・、部屋に入った途端に3人が目の色を変えて襲って来た気がする。あっという間にベッドに押し倒されてからの記憶が・・・、気が付くと3人はとても気持ち良さそうに裸で俺の隣で眠っていたし、俺も裸だったしな・・・、やっぱりアイツらを抱いたのだろうか?よく分からんが、アイツらの幸せな表情なら間違いないのだろう・・・、蒼太もあんな経験をしていたのかなぁ・・・、不思議だ。」
今の言葉は独り言だろうな。聞かなかった事にしておこう。あいつらも超肉食系か・・・、同情する。凍牙、頑張れよ。
春菜達もゾロゾロ降りてきた。冷華達と楽しそうに話をしていたミドリが慌ててララのところに戻ろうとしている。そのミドリを春菜が呼び止めた。
「ミドリさん、ちょっと待って!」
春菜がニコッと微笑みミドリをソッと抱きしめた。
「ミドリさん、おめでとう。昨夜、フローリア様から連絡があったの。『絶対に!旦那様の部屋に行くな!』ってね。予想はしていたけど、今のミドリさんを見たらねぇ・・・、これで本当に私達の仲間入りね。でもね、蒼太さんは独占させないわよ。ふふふ・・・」
ミドリもニコッと微笑む。
「ふふふ、私も負けませんからね。」
2人が嬉しそうに離れ、ミドリがララのところに戻っていった。
クローディアは夏子と握手をしていた。夏子の後ろには千秋と美冬がニコニコして立っている。
「クローディア、これで私達と同じステージに立ったな。昨夜はお前に譲ったが、これからはそうはいかないからな。お前とは友人であり妻同士だが、旦那様との添い寝に関してはこれからは私達も遠慮はしないぞ。全力でお前を叩き潰してやるからな。」
クローディアが涙を流している。
「夏子・・・、私の事を友達だと思っていたの・・・、兵器の私を・・・」
夏子がニコッと微笑んだ。
「そんなの当たり前だろう。私だけではないぞ、ローヤルガード全員がそう思っているぞ。確かにお前はフローリア様の神器には間違いないが、我々全員がお前の事は仲間だと思っているからな。まぁ、その巨乳を自慢し過ぎる事がちょっとな・・・、特に美冬が悔しがっているぞ。でも、胸の大きさが女の全てじゃないからな。」
泣いているクローディアが夏子に抱きつく。
「夏子、そしてみんなありがとう。こんな私を友達と言ってくれて・・・、とても嬉しい・・・」
夏子から離れニコッと微笑んだ。
「でもね、私の魅力は胸だけはないからね。旦那様の隣は私がもらうわよ。」
千秋も美冬も微笑んだ。
「「「私達に勝てると思うなんて甘いわよ。」」」
クローディアも夏子達も楽しそうに笑っていた。
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