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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
126/184

フェンリル族の里㊴

冷華が俺達の前に出た。

「私はフェンリル族の里族長の娘、冷華と申します!」

そして、いきなり全員に向けて土下座をした。

「私はフェンリル族とスキュラ族の昔の経緯いきさつを知った!我々の先祖が犯した罪は到底許されるものではないと分かっている!しかし、謝らせて欲しい!先祖の力を欲した愚かな行為により、愛し合う家族を引き裂いてしまった事を!そして、この事が今回の争いの根底になっていた事も!」

全員が静まりかえった。誰1人冷華から目を離そうとしない。

「昔のように仲良くなって欲しいなんて虫の良いことは私の口からは言えないけど、どうか!もう2度とこのような争いが起きなくなる事を私は願います!」

土下座の姿勢を続けていた冷華に、慌てて長老が駆け寄った。

「れ、冷華さん!そこまでしなくても!」


「いえ!長老様、これは我々フェンリル族のケジメです。そして、私の父と兄に嫁いだ方々が堂々と一緒にいる為にも必要な事です。」


長老がハッとした表情になった。

「報告にあったリンカ、スズ、ハツネの事ですか?」


「はい、今までみたいな里の関係では里返り出来ませんから。やはり、生まれ故郷にも時々は堂々と帰れるようにしたいのです。」

スッと冷華が立ち上がり、右手を頭上に掲げる。

「出でよ!唯我独尊!」

神器が冷華の右手に握られていた。


長老が驚愕の表情で神器を見つめている。

「こ、この黄金の輝きは!まさしく神器!まさか、神器に認められている程の存在だなんて・・・、そういえば、あなたの髪は金色・・・、まさか、言い伝えの黄金のフェンリル族の子孫なの?」

冷華がニコッと微笑んで長老に囁いた。

「いえ、私はただのフェンリル族の女よ。でも、かつてのミヤビの言い伝えに付け足しをして欲しいの。離ればなれになった家族だったけど、生まれ変わった4人が再び出会い、そして一緒に暮らすようになったってね。ずっと幸せに・・・、と・・・」

長老がこれでもか!というくらいに目を見開いて冷華を見ている。

「あなたは・・・、いえ、あなた様は、まさか言い伝えの黄金のフェンリル族の生まれ変わり?そして、先ほど出ていた名前の凍牙も確か言い伝えのミヤビ様の子供の名前・・・、そして嫁いだミヤコ、ミツキは・・・、まさか!本当に生まれ変わって再び一緒に!」

冷華がソッと長老の口に指を添えた。

「長老様、言い伝えは言い伝えです。でも、悲しい結末で終わった言い伝えもハッピーエンドになった方が良いかなって思っただけです。私は冷華、誇り高いフェンリル族の女、冷華です。前世は関係ありません。ただそれだけです。」

長老がニコッと微笑んだ。

「分かりました。今から言い伝えを変えましょう。最後は幸せになった話に・・・」


冷華が再びスキュラ族の前に立った。神器が一瞬輝き剣の形に変化した。

「今回の戦いが終わっても返って来ない者もいます。その方々は私の父と兄に嫁ぎました!里の過去の経緯を越えて結ばれる事となったのです。しかし、長い間、里同士の交流はありませんでした。このままだといつかは必ず問題が出てくるでしょう。」

「ですが、私は誓います!嫁いだ方々を必ず幸せにすると!」

「これが私の覚悟です!」

その瞬間、冷華の左腕が自分の髪の毛を掴み、神器を髪に当てバッサリと切り落とした。

腰まであった美しい髪が肩の上の長さまでになっている。

今度はフローリアが慌てて冷華に駆け寄る。

「冷華さん!何もここまでしなくても!」

冷華がスッキリした表情でフローリアを見つめていた。

「フローリア様、これで良いんですよ。私は凍牙と結婚出来て幸せです。しかし、私だけが幸せではダメなんです。父と兄に嫁いだ彼女達も幸せにならないといけないのです。みんなが2つの里を結びつけるかけ橋にならないといけませんからね。」


「冷華さん、あなたの誇り高さには敵いません。さすが、凍牙さんが認めた相手ですね。」


「フローリア様、そんな・・・」

冷華が真っ赤になった。


シーンと静まり返っていたスキュラ族達だったが、パチパチと拍手の音が聞こえたと思った瞬間に割れんばかりの拍手と歓声が響いた。

「冷華、どうやらみんなに認めてもらったみたいだな。まさか、たった1人でみんなの気持ちを動かす事が出来るなんてな、凍牙に良い土産話が出来たよ。」


冷華が照れてあたふたしている。

「蒼太さん、凍牙にそんな話はしないで下さいよ~・・・、絶対にネタにされますからぁ~」

長老も嬉しそうだ。

「冷華さん、あなたのような方がフェンリル族にいるなら安泰ですね。そして、このような立派な方を育てられた族長様なら交流を復活しても問題無さそうですね。」

「それと、お願いがあるのですが、あなたの手に握っている髪の毛を渡していただけないでしょうか?覚悟と友好の証としてこの里に残しておきたいの。あなたの事はこれからずっと語り継がれるでしょうし・・・」

最初は照れていた冷華だったが、段々と冷や汗をかいてきている。

「いやいや、私はそんな立派ではないですし・・・」

まさか、自分が言い伝えになるとは思ってもいなかったみたいだな。まぁ、諦めろ。

十数人のスキュラ族が冷華の前に出て、片膝を付き頭を下げている。

「冷華様・・・、いえ!冷華お姉様と呼ばせて下さい!我々は冷華お姉様の凜々しいお姿にとても感動しました。我々はこれからは『冷華お姉様親衛隊』として一生慕って参ります!どうか我々にお姉様の愛をぉおおおおおおおおおお!」

全員がウルウルした瞳を冷華に向けていた。冷華は逆にとても怯えた目になっていた。

「わ、私はレズの趣味は無いわよぉおおお!勘弁してぇえええええええええ!」

まぁ、女だけの集落だ。そんなヤツも出て来るだろうな。


フローリアがクスクス笑っている。

「ふふふ・・・、さすが冷華さんです。この締まらない終わり方は鉄板ですね。でも、冷華さんのおかげでお互いの里の距離が一気に縮みました。今後が楽しみですよ。」


「フローリア様ぁあああ!笑い事じゃないですよぉおおお!」

冷華が親衛隊に追いかけられ逃げ回っている。

頑張って逃げ回っていたが、とうとう追い詰められてしまった。2階建ての民家の壁を背にして3方を親衛隊に塞がれている。

「ふふふ・・・、冷華お姉様、もう逃げられませんよ。私達の秘密の場所でお互いに愛し合いましょう・・・、冷華お姉様も私達の同志になりましょうね。いえ、お姉様こそ私達の盟主に相応しいです!ぐふふふ・・・」

親衛隊の全員の目が血走っている。さすがにヤバイぞ!

「フローリア、さすがにこれ以上は冗談では済まなくなるぞ。冷華の貞操がヤバイ・・・、あっ!でも女同士ならどうなるんだ?よく分からんが、冷華がそっちの趣味に目覚めても困るな。」

フローリアはまだ楽しそうな表情だ。

「そうですね、それでは王子様の登場といきますか。」

指をパチンと鳴らすと冷華の前に魔法陣が浮かび上がった。その中から1人の男が出てくる。

「な、何だ!サクラめ・・・、いきなり『冷華お姉ちゃんがヤバイ!』と言って、タイムリープの魔法をかけられて大人にされたと思ったら、足元に魔法陣が浮かぶし・・・」


「凍牙!」冷華が叫んだ。


「「「きゃぁああああああああ!凍牙様ぁああああああ!」」」あちこちから凍牙の名前を叫ぶ黄色い声が聞こえた。

次の瞬間、冷華親衛隊の横に、シュタタタ!と10人程のスキュラ族達が舞い降りた。

こいつら忍者か?

そして、全員が片膝をつき頭を下げる。1人が顔を上げ凍牙を見つめているが、表情はうっとりしている。

「凍牙様・・・、こんなにも早くお会い出来るとは、やはり、我々『凍牙様親衛隊』と結ばれる運命なのかもしれません。いえ!私達は凍牙様と必ず結ばれる運命です!あぁ・・・、凍牙様・・・、私達の愛を受け入れて下さぁあああああああああああっい!」

『凍牙様親衛隊』!何だこのネーミングは!いつの間にこんなモノが出来ている。いや、よく見たらフェンリル族の里に転送させられてきたスキュラ族もいるぞ。さすがにあの時の全員の顔は覚えてはいないが、数人は覚えがある・・・

そうか、その時に凍牙に一目惚れして、好きな者同士で同盟を作ったのか・・・

冷華大好きのレズっ娘達もそうだし、スキュラ族の団結力、恐るべし・・・


凍牙が大量の冷や汗をかいている。

「な、何だ、この状況は?周りは全てスキュラ族だと!まさか、スキュラ族の里に転移させられたのか?」

「はっ!それよりもだ!冷華!大丈夫か?お前がヤバイと聞いたが・・・」

冷華は凍牙の背に抱きついてブルブル震えていた。

「凍牙ぁぁぁ!怖かったぁぁぁ!レズ娘達に追いかけられて、もう少しでお嫁に行けなくなるところだったぁぁぁ・・・」


凍牙が呆れた表情をしている。

「お前なぁ・・・、一体何をしたんだ?まぁ、お前は男らしいところもあるからな、女に惚れられる事もあるか・・・、それに、お嫁に行けなくなるって言うなんて・・・、もうお前は俺の嫁だぞ。お前に何があろうとも絶対に守るからな。安心しな、俺が必ず助けてやる!」


「凍牙、ありがとう・・・」

冷華が凍牙の背中にギュッとしがみついている。

「「「あぁあああ!冷華お姉様に邪魔者がぁあああ!駆除よ!」」」

冷華親衛隊のメンバーが大量のファイヤー・ボールを放った。数十個の火の玉が凍牙に向かって飛んでいく。

「あなた達!凍牙様に何をするの!もう間に合わない!」「「「凍牙様ぁあああああああ!」」」

凍牙親衛隊のメンバーが絶叫していた。

しかし、凍牙は余裕の表情だ。スッと右手を上げる。

「次元斬!」

凍牙の正面に空間の裂け目が出来て、全ての火の玉が吸い込まれ消滅してしまった。

あまりの出来事に冷華親衛隊のメンバーは呆然としている。

「な、何・・・、あの技は・・・、空間を裂くなんて・・・」

逆に凍牙親衛隊のメンバーは歓喜していた。

「きゃぁあああああ!凍牙様の技を見られるなんてぇえええ!最高です!」


「よし!今のうちに・・・、冷華!しっかり掴まっていろよ!」

凍牙が冷華の後ろに回り込み、冷華を抱きかかえ一気にジャンプし、2階の屋根の上に着地する。

長老が驚いている。

「凄い・・・、あの高さをノーモーションで飛び上がるなんて・・・、しかも、冷華さんを抱えての状態なのに・・・、何という身体能力なの・・・」

凍牙に抱かかかえられている冷華が真っ赤になって、ブツブツ言っている。

「凍牙にお姫様抱っこされている・・・、ずっと憧れていたお姫様抱っこ・・・」

凍牙が冷華の顔を覗き込んだ。

「冷華、大丈夫か?どうした?顔が赤いぞ。」

冷華が凍牙の首に両手を回した。そして顔を近づけてきた。

「だって、凍牙にお姫様抱っこされているんだよ。それに、私のピンチにちゃんと駆けつけてくれたし・・・、もう我慢出来ない・・・、凍牙、大好き。愛してる・・・」


「冷華、俺もだ・・・、愛してるよ・・・」


2人の顔が近づき唇が重なった。

冷華親衛隊メンバーが血の涙を流して絶叫している。

「れ、冷華お姉様が汚されるぅううううううううううう!」

凍牙親衛隊メンバーも血の涙を流して絶叫していた。

「と、凍牙様ぁあああああ!私達にも慈悲をぉおおおおおおおお!」

その他のスキュラ族の人々はうっとりした表情で2人を見つめていた。


それにしても、よくこの大観衆の前でキスするなぁ・・・、俺は絶対に出来ないぞ。

冷華はデレるとあんなに可愛くなるんだな。新発見だ。千秋と結婚した時を思い出してしまった。


2人の唇が離れお互いに見つめ合っている。凍牙が口を開いた。

「冷華、その髪、どうした?いつも自慢していた髪なのに、何があった?」

冷華が少し困った顔になってしまったが、凍牙が優しく微笑んだ。

「まぁ、お前の事だからな。こんなにスキュラ族から好かれているんだ。とても良い事をした結果だろう。これ以上は聞かないよ。」

冷華がニコッと微笑む。

「ありがとう、凍牙・・・、それと、どうだった?私のファーストキスは?」

今度は凍牙の顔が真っ赤になった。

「お前なぁ・・・、キスの感想なんか聞くかぁ・・・、でも、今のお前はすごく可愛いよ。いつものツンツンした感じじゃないし、本当に女の子って感じだな。」


「ふふふ・・・、嬉しい。じゃあ、もう1回キスして・・・」

再び2人がキスをした。スキュラ族達から盛大に拍手が湧き起こった。

「デウス様のところで見せてもらった、異世界の物語に出ていた結婚式みたいだね。」

冷華が満足そうな表情で凍牙を見つめていた。

凍牙がフッと笑った。

「そうだな、蒼太達も結婚式をしたんだよな。冷華、俺達も正式に結婚式をするか?俺達の家の隣は教会だし、蒼太達はそこで結婚式をしたんだ。どうだ?」

冷華がポロポロと涙を流す。

「本当に?私、物語を読んでから凄く憧れてた・・・、もちろんよ!みんなで結婚式をしたいね。」


「よし!みんなで結婚式をしような。蒼太達の結婚式の記録映像は残っているから参考になるよ。でもなぁ・・・、やっぱり、俺やサクラ達がちゃんと大きくなってからの方が良いかもな。サクラの魔法で今の姿みたいに強引に大人になる方法もあるが、そこはちゃんとしたいからな。すまんな、待たせる事になって・・・」

冷華が微笑みながら首を振った。

「大丈夫、私はずっと待っていられるから。だって凍牙とはいつも一緒にいられるし、サクラちゃん達が大人になるまでなんてあっという間よ。アンタが里から出て行ってしまって、やっとキスが出来た今日までどれくらい待ったと思って・・・」


「そうだよな・・・、待たせて本当に済まなかった・・・」


「いいわ、今は本当に幸せだからね。待った甲斐があったわ。」

そう言って、冷華が再び凍牙にキスをした。


お前らぁ・・・、いつまでイチャイチャしている・・・、いい加減にしないと話が進まないぞ・・・

作者が頭を抱えているのが容易に想像出来る。作者もここまでシリーズが長くなるとは思ってなかっただろうし、一体、このシリーズはいつまで続くんだ?色々と伏線みたいなものも出ていたが、回収は可能なのかな?作者も忘れている伏線も出てきているかもしれんぞ。お前達が色々と脱線してやらかしているから、作者には同情する・・・

それに、お前達は良いかもしれないけど、親衛隊は最悪の状態だ。全員が真っ白な灰になってしまっているよ。

合掌・・・


「冷華、蒼太のところに戻るぞ。立てるか?」


「凍牙、お願い・・・、もう少しこのままでいたい・・・、ダメ?」

冷華が淋しそうな表情で凍牙に話しかけた。凍牙はニコッと微笑んでいた。

「分かったよ。可愛い冷華の頼みだ。だったら、ちゃんと掴まっていろよ!」

凍牙が2階の屋根から華麗にジャンプする。冷華が小さく「きゃっ!」と悲鳴をあげたが、嬉しそうな表情で凍牙に抱きついていた。

凍牙が俺達の前に着地した。冷華を抱えながらなのに、スッと音も立てず着地し何事も無く立っている。本当にとんでもない身体能力だ。

長老がニコニコしながら凍牙の前に来た。

「あなたが凍牙さんね。いいものを見させてもらったわ。さすが神界最強メンバーの1人ね。冷華さんがここまで惚れるのも分かるわ。」

冷華が真っ赤になって慌てて凍牙から飛び降りた。

「ちょ、長老様!恥ずかしいです・・・」


フローリアが嬉しそうに凍牙達を見ている。

「まさか、こんなイベントが起きるとは思いませんでしたね。でも、おかげで凍牙さんと冷華さんの距離が一気に縮んだみたいですよ。」

それからジッと俺を見つめた。

「フローリア、どうした?」

ニコッと微笑んでくれる。

「いえ、私もこうして旦那様と一緒にいられて本当に幸せだと実感していたのですよ。」

「旦那様・・・、ずっとみんなと一緒にいましょうね。ラブラブなのは私達もです。凍牙さん達には負けませんからね。」


「お、おう・・・」


「それにしても、美味しいところは冷華と凍牙に全部持っていかれたな。おかげで俺のフラグは無さそうだよ。どうやら、春菜の予知は初めて外れたかもしれんな。良かった・・・」


「旦那様、そう思うのは甘いですよ・・・」

フローリアの目がキラッと光った。


次の瞬間、俺の前にも十数人のスキュラ族が整列し、片膝を付き頭を下げた。

「蒼太様、我々は『蒼太様親衛隊』です。」

1人がそう言ってから全員が顔を上げ、俺をうっとりした目で見つめている。

ちょっと待て!いつの間にそんなモノが出来た!

評価、ブックマークありがとうございます。

励みになりますm(__)m

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