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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
111/184

フェンリル族の里㉔

オーガ・エンペラーが切り落とされた右腕を左手で押さえ、片膝を付いている。距離を置いて冷華が神器を構えて対峙している。

しかし、その状態でもエンペラーの方が冷華よりも遙かに大きい。

いくら冷華が神器でエンペラーの拳を受け止めたとしても、微動だにしなかったのが不思議だ。あれだけの体格差だぞ、いくら神器が頑丈でも、冷華の力だとさっきみたいに吹き飛ばされてしまうのがオチだ。神器にはある程度の身体能力向上の加護が掛かるが、あれだけの力の向上はあり得ない。やはり、オリジナル神器の力は規格外か・・・

その力を引き出せる冷華の力が凄いのだろうな。


冷華がスッと左手を頭上に上げる。

「サテライトリンク起動!」


脳内にアナウンスが響く。

『サテライトシステムの操作権限を第2管理者ガーベラから、新たに登録された第3管理者冷華に移動します。』


な、何だと!何故だ!何で冷華がサテライトシステムを使える?こんなのあり得ない・・・


冷華がエンペラー見てニヤッと笑う。

「ふふふ・・・、この神器はデウス様が全てを込めて作られたものよ。この神器を使えば、デウス様が作られた全てのモノに干渉出来るの。私の能力を使えば使い方はすぐに分かるしね。」

「次元衛星砲は威力が強すぎるから使えないわね。だったら・・・」


上げていた左手をスッと下ろした。

「サテライトキャノン!収束モード!撃てぇえええええ!」

上空から1本の極太レーザーがエンペラー目がけて飛んできた。

気配を察してか、エンペラーが冷華の号令と同時に横に飛び退いたが、間に合わず、左腕が焼かれ消滅してしまう。

「グギャァアアアアアアア!」


エンペラーが悲鳴を上げる。しかし、すぐに冷華を睨みつけた。


冷華が感心したような表情でエンペラーを見ている。

「さすがこの森最強の魔獣ね。両腕を失っても全く闘志が衰えていないなんて凄いわ。クイーンに負けて下僕と化しても全く衰えていない。この闘志は私も見習わなくてはね。」

「そしてありがとう。私の慢心を粉々にしてくれて。あなたのおかげで私は強さというものが少し分かった気がする。散々ボロボロにされたけど、そのおかげで私は今の強さを手に入れる事が出来た。そして、神器を扱う者の心の大切さもね。」

神器を目の前に掲げて叫んだ。

「神器解放!身体強化レベル1!唯我独尊!お前の力を私に!」

その瞬間、冷華の銀髪の髪が金色に光輝いた。

「エンペラー!感謝を込めて、今から全力でお前を倒す!」

エンペラーがフッと笑った気がした・・・


「行くわよ!」

冷華が叫んだ瞬間、姿が消えた。

いや、消えたのではない!あまりのスピードで見えないだけだ。

一瞬にしてエンペラーの目の前に出現した。信じられないくらいの身体強化の加護か掛かっている。これがあの神器の解放した力なのか?

「スパイラル・インパクトォオオオ!」

神器をドリルのように回転させエンペラーの腹に打ち込む。


ズドン!


エンペラーの腹から背中まで大きな穴が開いた。吹雪の攻撃も耐えた筋肉の鎧も、今の冷華の攻撃の前では紙みたいなものだった。


「グォオオオオオオオオオ!」


エンペラーが苦悶の表情で叫んでいる。

そして、冷華が思いっきり跳躍した。エンペラーの頭上の遥か上空まで飛び上がって、神器を両手で握り振りかぶっていた。

「モード・アックス!」

そう叫んだ瞬間に神器の形状が変化する。

穂先に付いていた斧頭がみるみる大きくなり2つに分かれる。黄金に輝く両刃の巨大なグレートアックスに形状が変わった。


「これで最後よぉおおお!ファイナル・エンドォオオオオオオオオオ!」


冷華の斧がエンペラーの頭に突き刺さった。そのまま一気に振り下す。


ズドォオオオオオオーーーン!


エンペラーを縦に真っ二つにして、そのまま地面まで斧がめり込み、地面ごとエンペラーを粉々に吹き飛ばばす。大きなクレーターが出来たがエンペラーは肉片残らず消滅してしまった。

神器の姿が元のハルバードの形態に戻る。冷華の金色の髪も元の銀髪に戻った。

「あっ!思わず全力で打ち込んでしまった!食材がぁぁぁ・・・」

冷華がガックリと落ち込んでしまった。


「冷華ぁああああああああああ!」

雪が叫びながら冷華に飛びつき抱きついた。


その瞬間・・・

「うぎゃぁあああああああああ!ゆ、雪ぃいいい!触ったらダメぇえええええ!」

冷華が悲鳴を上げて悶えていた。


「れ、冷華!ゴメン!大丈夫・・・?」

雪が慌てて冷華を離し少し離れて、心配そうに冷華を見ている。

「だ、大丈夫・・・、これは神器解放の反動なのよ。信じられないくらいの身体強化の加護が掛かるけど、体が追い付いていかないもんだから、加護が切れた瞬間に全身が筋肉痛になってしまうの。これで最低のレベル1の強化なんて・・・、それ以上の強化なんてしてしまうと、体がバラバラに千切れるわ。もっともっと私も強くなって耐えられるようにならないとね。」


「ヒール!」

冷華の全身が白い光に包まれた。

「どう?楽になったかな?」

ガーベラがニコニコしながら冷華達のところに近づいてきた。


「あっ!痛みが消えたわ。ありがとうね、ガーベラちゃん!」


「それにしても・・・、まさかオリジナル神器のマスターになるなんて・・・、お父さん以上にデウスおじちゃんに気に入られているんだね。もしかして愛人?」


冷華が真っ赤になった。

「ち、違うわぁあああああ!そんな関係じゃないわよ!私は凍牙以外には男に興味は無いからね!私と雪は初めてを凍牙に捧げるつもりなんだから!誰の男のモノにもならないわよ!」


「ちょ!ちょっと!冷華!大声で何を言っているのよぉおおお!」

雪も真っ赤になって叫んでいた。

冷華も自分が言ってしまった言葉を分かったみたいだ。2人揃って真っ赤になってモジモジしている。

ガーベラがクスクス笑っている。


冷華が不思議そうにガーベラを見ている。

「ガーベラちゃんといい、サクラちゃんといい、本当にあんた達は子供なの?言動が私達大人と一緒だし、もしかして?中身は大人、体は子供っていう訳じゃないでしょうね?」


「そんな訳ないよ。凍牙お兄ちゃんとは違うからね。私達子供達は小さい頃からお母さん達にスパルタでしごかれているから、普通の子供とはちょっと違うのは自覚しているわ。おじいちゃんを始め、お母さん達も偉い神や天使ばかりだからね。私達もしっかりしていなければと思っている訳よ。」


雪が悲しそうにガーベラに話す。

「ガーベラちゃん、辛くない?お母さん達の肩書は本当に凄いから、しっかりしないといけない気持ちは分かるけど、無理しなくて良いのよ。辛かったら私や冷華に甘えてもいいんだからね。」


その瞬間、ガーベラがヒシッと雪に抱きついた。

「へへへ・・・、雪お姉ちゃんは優しいね。こんなお姉ちゃんが出来て良かった。こうやっていると落ち着くなぁ・・・、ありがとう、雪お姉ちゃん。」

冷華が自分を指差し、「私は!私は!」とアピールしている。

ガーベラが不満そうな表情になった。

「え~、冷華お姉ちゃんはぁ・・・、雪お姉ちゃんと違って胸が小さいからねぇ・・・、だから、あんまり甘える気になれないなぁ~」

冷華の顔が真っ赤になる。

「こらぁあああ!こんな子供が胸の事なんて言うか!胸の大きさで女が決まる訳がないのよ!アンタの中にはおじさんがいるのかな?確かに、雪の胸はかなり大きいから完全に負けてるけど、私もそこまで小さくないわよ!普通よりもちょっとだけ小さいだけよ!私の体はスレンダーと言うのよ!」

はぁはぁと冷華が息をついていると、ガーベラが雪と同じように冷華に抱きついた。

「へへへ・・・、冷華お姉ちゃん、冗談だよ。ゴメンね・・・、こうやって冷華お姉ちゃんに抱きついていても落ち着くよ。それに良い匂いがするから、時々こうやって抱きつかせてね。」

冷華の顔がデレデレになった。

「ガーベラちゃん、可愛い・・・、時々でなくてもいいからね。いつでも私達に甘えてね。お姉ちゃん頑張るよ!」

ガーベラが満面の笑みで2人に微笑んだ。

「ありがとう!冷華お姉ちゃん、雪お姉ちゃん!こんなお姉さんが出来るなんて本当に幸せだよ。昨日、お母さんから凍牙お兄ちゃんに婚約者が増えたって聞いていたから、どんな人かな?って思っていたけど、やっぱり凍牙お兄ちゃんに相応しい人だったね。これからもよろしくね!」


雪が思い出したようにガーベラに尋ねた。

「ガーベラちゃん、そういえば、あと1体のエンペラーはどうしたの?ガーベラちゃんと戦っていたのよね?」

ガーベラが後ろを振り向く。そこにいたのは・・・

顔面が原型を留めない程にボコボコにされ腫れ上がり、手足の全てが複雑にあちこちと折れ曲がって絶命しているエンペラーの姿があった。


雪と冷華がムンクの叫びみたいな状態になった。

「「ひえぇええええええ!」」

冷華が恐る恐るエンペラーに近づいた。

「完全に死んでいるわ。どうやったらここまで徹底的に破壊できるの?」

ガーベラが黄金のバットを冷華に見せる。

「これで思いっきりボコボコにしただけよ。思ったよりも弱かったね。」

冷華と雪が大量に冷や汗をかいている。冷華がボソッと呟いた。

「ガーベラちゃんって、素のままでも私達が足下に及ばないくらい強いんじゃないの?あんな可愛いのに・・・」


どうやら、サクラとクイーン以外の戦いが終わったみたいだな。

俺達はガーベラのところにやってきた。

「ガーベラ、ご苦労さん。」

ガーベラが嬉しそうに俺のところまで走ってきて抱きついた。

「お父さん!ありがとう!」


それにしても・・・

オーガ・エンペラーをこのメンバーで全滅とはな。まだまだ発展途上なのに凄いよ。

ミドリが俺の隣に来る。

「ご主人様、エンペラーの回収をしておきますね。今夜はオーク・キングにオーガ・エンペラーと、私達が腕によりをかけて料理しますね。楽しみにしていて下さい。」

そして、吹雪とガーベラが倒したエンペラーを異次元収納に収納した。

アイリスも嬉しそうだ。

「パパ、今夜のご飯は楽しみだね。どの食材も伝説級の食材だし、食べ過ぎて太らないようにしないとね。」


「アイリス、春菜達の胃袋にかかれば、これでも足りないかもしれないぞ。アイツらの胃袋は正真正銘ブラックホールだからな。いつもとんでもない量を食べているのに全く太らないし、スタイルも抜群だしな。ホント不思議だよ。」


冷華を見ると、神器を構えて何かをしようとしている。

「冷華、一体何をする気だ?」

冷華が俺に気付いたようで、慌てて神器を下ろした。

「いえ、蒼太様、ちょっと試したい事がありまして・・・、もう少し、この神器の力を使ってみたいと思っています。」


「分かったよ。冷華の思った通りにすれば良いさ。」


冷華が嬉しそうに頷いて再び神器を頭上に構えた。

「神器解放!レベル2!お前の再生の力を!」

神器が輝き、冷華が作ったクレーターの中心部分が光り始めた。

光が段々と人の形になっていく。しかし・・・、その大きさはかなり大きいぞ。エンペラーくらいの大きさだ。

「ゴフッ!」

冷華が血を吐いた。しかし、それでも構わず集中して光を見つめている。

光が収まった。

クレータの底にさっきまで冷華と戦っていたエンペラーが完全な姿で再生されていた。

冷華が血を吐きながらゼイゼイ言っている。

「上手くいったわ。今の私の実力じゃギリギリだったけど・・・」

「この戦いが終わったら、ガーベラちゃん達に負けないように特訓ね。この神器も私が強くなればもっと強くなれるし・・・」


雪が心配そうに冷華に近づく。

「冷華・・・、大丈夫?でも、何でエンペラーを甦らせたの?あれだけ冷華をボロボロにしたのに・・・」

「それにしても、本当にこの神器は規格外ね。戦いだけでなく、再生と蘇生まで出来るなんて・・・」


冷華も落ち着いたようだ。

「本当にこの神器は化け物よ。でもね、私は思うんだ。戦って滅ぼすだけが全てではないってね。こうやって戦いが終わった後にも何か出来るんじゃないかって・・・、答えは分からないけど、私はそう思う。」

「このエンペラーは確かに私を殺すつもりでボロボロにされたわ。でもね、おかげで私は目が覚めたの。今までの私は甘ったれていたって・・・、だから、これは私からエンペラーに対しての感謝の気持ちよ。私を強くしてくれた事に対してね。また戦ってお互いに強くなっていきたいからね。」


エンペラーが目を覚ました。顔を上げ冷華と視線を合わせた。

突然起き上がり、冷華の方へ大きくジャンプし、冷華の前に立った。

冷華が嬉しそうにエンペラーに話しかける。

「エンペラー、ちゃんと甦ったみたいね。さて、第2ラウンドかしら?」

そう言って神器を構えた。

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