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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
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フェンリル族の里㉓

妄想の世界にトリップしていたクイーンが我に返った。

「はっ!私ったら・・・、ダメね、お兄ちゃんの事を考えるとつい我を忘れちゃうなんてね・・・」

そして、サクラの方を見る。

「サクラ・・・、恨みっこ無しの1対1の勝負よ。どちらがお兄ちゃんに相応しいか・・・」

サクラが頷く。


「その前に・・・」

クイーンの前の地面にに4つの大きな魔法陣が浮かぶ。

魔法陣が光り、中から大きなガチムチの筋肉の塊りのような魔物達の姿が現れる。


こ、これは!


クイーンがガーベラ達を見て微笑んだ。

「ふふふ・・・、これはこの魔獣の森の番人と言われている『オーガ・エンペラー』よ。私が倒して下僕に仕上げたわ。」

「あなた達に私とサクラの邪魔はさせない。この森最強の魔獣と遊んでいて頂戴ね。」


ガーベラ達が悔しそうにオーガ・エンペラー達を見ている。

「ちぇっ!私達を忘れてなかったか・・・、途中で横やりを入れて争奪戦の勝者の称号をかすめ取ろうと思っていたのに・・・」

ガーベラが呟くと、雪も冷華もうんうんと頷いている。

こいつら・・・、大人しいと思ったらこんな事を考えていたのか。油断も隙もない連中だな。

「それにしても、エンペラーが4体か・・・、今の消耗している私達にはキツイ相手ね。凍牙お兄ちゃんならあの子供の姿でも一瞬で輪切りにして、何体でも関係なく全滅させるだろうね。私達も1対1では負けないと思うけど、3対4か・・・、ちょっと不利かも?」



吹雪がワクワクした表情でエンペラー達を見ている。

「と、父ちゃん!俺も行っていいかな?俺が行けば4対4でガーベラ姉ちゃん達もバランスが取れるからな。」

「キングまでは戦ったけどエンペラーは初めてだし、なっ、なっ!父ちゃんお願いだ!」


吹雪もとうとう我慢の限界が来たか・・・


「よし!吹雪、行ってこい!楽しんできな。」


吹雪が猛ダッシュでガーベラ達のところに走って行った。あの嬉しそうな顔・・・、本当にアイツはバトルジャンキーだな。

「ガーベラ姉ちゃん!助っ人に来たよ!」

ガーベラが嬉しそうに微笑んだ。

「吹雪、ありがとう。助かるわ。これでもう大丈夫ね。」


4人がオーガ・エンペラー達と対峙した。

ガーベラがバットを構える。

雪がアルテミスを構えて狙いをつける。

冷華はアサルトライフルを脇に構えていつでも撃てるように準備している。

吹雪は両拳を顎の前に構え上体を揺らしている。

ガーベラが叫んだ!

「みんな!これからは殲滅戦よ!エンペラーなんて簡単に全滅させましょう!」


「「「おぅ!」」」

一斉に叫んで全員が動いた。


吹雪が一瞬にして1体のエンペラーに肉迫する。エンペラーは拳を振りかぶって吹雪を殴りつけた。

ダッキングでギリギリにエンペラーのパンチを躱し、懐に入り込む。

「体格差があろうが、このファントム・クラッシャーの前ではぁあああ!」

吹雪の左ストレートがエンペラーのボディに食い込んだ。

「ウガァアアアアア!」

しかし・・・

エンペラーが苦悶の表情になったが、すぐに怒りの表情になり吹雪を殴りつけた。

「げっ!あんまり効いていない!」

咄嗟に両腕でガードガードしたが、エンペラーに殴りつけられてそのまま吹き飛ばされてしまった。

猛烈な勢いで吹き飛ばされ、木に激突しそのまま木がへし折れ、何本もの木を折ってやっと止まった。

しかし、吹雪はスクッと立ち上がった。大したダメージを受けていないみたいだ。

「くそ~、ここまでウエイト差が響くとは・・・、それにアイツの筋肉の鎧は伊達でないな。ファントムの威力に耐えるなんて、さすがエンペラーだ!」

吹雪がニヤニヤ笑っている。

「楽しいぃいいい!こんな強敵だとは・・・、キングとは全く違う!血が騒ぐよ・・・」

「それなら!最近覚えたこの技でどうだぁあああ!」

吹雪が一気に飛び出しエンペラーに迫る。エンペラーはカウンターを狙って吹雪の顔面を殴りつけようと右拳を振り抜いた。

「カウンターのカウンターだ!超振動爆砕拳!」

エンペラーの拳に吹雪の右拳がぶち当たった。衝撃で拳を中心に地面がひび割れる。

今度は吹雪は吹き飛ばされなかった。お互いの右拳が激突したまま動きが止まっている。

吹雪がニヤッと笑った。

「俺の勝ちだよ。」

その瞬間、エンペラーの右拳から血が噴き出し、肘までが爆散し右腕が消滅した。

「ウギャァアアアアアアアアア!」

エンペラーが悲鳴を上げ後ろによろめいた時に、エンペラーの全身から大量の血が噴き出し、そのまま仰向けに倒れて動かなくなった。

吹雪がゆっくりと拳を下ろす。

「ふぅ・・・、まだまだ母ちゃんの域になっていないな・・・、母ちゃんなら一瞬でアイツの全身を爆散出来るのに・・・」

「もっと強くなるぞ!」


雪が呆れた表情で吹雪を見ている。

「さすが美冬の子ね。あの強さはフェンリル族のレベルを遙かに超えているわ。しかも、まだまだ強くなろうとしているなんてね。信じられないわ。」

そして真剣な表情に変わった。

「私も負けられないね。」

エンペラーがゆっくりとニタニタしながら雪に近づいている。

「私はあのエンペラーから弱いと思われているんでしょうね。だからあんな余裕の態度なのね。」

「でもね、このアルテミスを普通の弓と思ったら大間違いよ!私とアルテミスを舐めた事を、死をもって償いなさい!」

雪が弓を引き絞り矢を放った。

「いっけぇええええええ!朱雀よ!アイツを焼き払いなさぁあああああい!」

光の矢がみるみる大きくなり、巨大な炎の鳥の姿になった。

そのまま、エンペラーを飲み込み巨大な火柱になる。

「ギャァアアアアアアアアア!」

エンペラーが断末魔の声を上げた。炎が消えた後には何も残っていない。すべて焼き尽くされたのだろう。

雪がドヤ顔で弓を構えた。

「私を舐めるとこうなるからね。」


冷華が悲痛な表情で雪に叫んだ。

「雪ぃいいい!何て勿体ない事を!オーガ・エンペラーの肉はこの森の中では最高に美味しいと言われているんだからぁあああ!それなのに消し炭どころか消滅までさせちゃって・・・、あぁ・・・、勿体ない・・・」

そして、冷華が自分の担当のエンペラーを見て舌なめずりをしている。

「じゃぁ、このエンペラーはなるべく良い状態で食材にしないとね。ふふふ・・・」

「なぁ~んか、みんなサクサクとエンペラーを倒しているから、私も簡単に倒せそうかも?」

冷華がライフルを構えエンペラーに向かって走り出す。

エンペラーが一瞬にして冷華の前まで移動し、巨大な拳で冷華を殴りつけた。

「うぎゃぁあああああああああ!」

冷華が吹き飛ばされ、きりもみしながら雪の前に落ちてきた。ヨロヨロしながら何とか立ち上がる。

「な、何という強さ・・・、咄嗟にライフルを盾にしなければ死んでいたわ・・・、エンペラーが弱いんじゃない、私の周りが異常に強いだけなんだ・・・」

「それを自分も強いと勘違いしていた・・・」

「雪もいつの間にか私を軽く追い越して最強の一角になっているなんて・・・」

隣に転がっているライフルがグシャグシャになっていた。

「こうなったら遠距離から・・・」

マシンガンを取り出し、エンペラーに向けて打ち込んだ。


ズダダダダダダダダダダダダダッ!


「これならどうよ!」

弾を撃ち尽くし、ドヤ顔でエンペラーを見ている。

しかし、表情がすぐに驚愕に変わってしまった。

「えっ!そ、そんな・・・、効いていない・・・」

エンペラーの強靭な筋肉によって、全ての弾丸が跳ね返されていた。

「ちっ!ミサイルは弾切れ、荷電粒子砲はクルータイム中・・・、こうなったら・・・」

冷華は薙刀を取り出し、果敢にエンペラーに切りかかっていった。

「特攻よぉおおおおおおお!」

もの凄いスピードで走り薙刀をエンペラーの腹に突き立てた。

しかし・・・

「くっ!刺さらない・・・、何て筋肉なの・・・」

薙刀の刃がエンペラーの腹で止まっている。ほんの少し切っ先が皮膚に刺さっているだけで、全く刃が通っていない。

エンペラーがニタァ~と笑って冷華に右拳を打ち込んだ。

「ぎゃぁああああああああああ!」

咄嗟に薙刀を盾にして体を庇ったが、あっさりと折られてしまい、冷華の上半身ほどの大きさの拳が冷華を捉え、そのまま振り抜き遥か上空まで打ち出されてしまった。

打ち込まれた冷華は悲鳴を上げながら放物線を描き、地面を数回バウンドして転がってしまった。

ピクピク痙攣していたがピタッと止まり、ゆっくりと冷華が立ち上がった。

しかし・・・

左腕でガードした為か左腕があちこちと変な方向に曲がっていた。内蔵もやられてしまったのか口と鼻からも大量に血が出ている。瀕死の状態だ・・・


「冷華ぁあああああ!もう止めてぇえええええ!」

雪が叫びながらアルテミスを構えた。


しかし・・・

「雪・・・、これは私の戦いよ・・・、手を出さないで・・・」


「で、でも!」

雪の目から涙が流れている。


「フェンリル族は誇り高い種族・・・、決して諦めはしない。例え死ぬことがあっても、必ず相手を倒す・・・」

「雪・・・、私はあなたが羨ましかった・・・、今まで里で『弱い』と言い続けられていても決して諦める事はしなかった。そして、この戦いであなたは強さに目覚めた。もう弱いと言われていたあなたはいないわ。私は族長の娘としてみんなから期待されていたし、私自身も強いと思っていた。でも、それはデウス様からもらった武器のおかげだったのね・・・」

「私の強さは里の中だけだった・・・、里の外から来た凍牙達にいいようにやられて、外の強さを思い知ったの。雪が強くなったのは決して神器のおかげでないわ。雪の心が強いから神器が応えてくれたのでしょうね。私も強くなりたかった・・・、雪みたいにみんなを守れるくらいに・・・」


「れ、冷華・・・」


「でも!私もタダでは死なないわよ!絶対にエンペラーを道連れにしてあげるわ!私の命を賭けてでも!」


エンペラーが冷華にトドメを刺そうとゆっくり近づいてくる。


『よく言った!見事な覚悟だ!』


何だ、この声は!一体どこから・・・

いや、違う・・・、これは声ではない。念話だ!

そう思った瞬間、冷華とエンペラーの間に巨大な雷が落ちた。

雷が落ちたところに黄金の槍が地面に刺さっている。

いや、アレは槍でない。一瞬、槍かと思ったが、槍の穂先に斧頭が付いている。コレはハルバードだ。

あの声といい、この目の前の武器といい、考えられるのはただ1つ、デウスか!


『ほほぅ、よく分かったな蒼太。冷華はちょっとした繋がりがあってな、死なすには惜しいと思った訳だよ。冷華のスキルは特殊でな、私以上にあの神器を使いこなせると思って託してみようと思う。12の神器の元であるオリジナル神器の唯我独尊を冷華ならな。』


『分かった。お前が認めるなら間違いはないだろう。でも、出てくるのが遅いぞ!おかげで冷華がもう少しで死ぬところだったぞ!』


『それは済まないと思っている。しかしな、冷華の覚悟を知りたかったのだよ。唯我独尊は全ての神器を陵駕する。だから、使い手は慎重に選ばなくてならん。今の冷華なら問題はないだろう。あの神器は私でも扱いきれない。冷華がどこまであの神器の力を引き出せるか楽しみにしているさ。』


デウスの念話が切れた。本当にアイツは何を考えているのかよく分からん・・・

冷華・・・、お前はデウスに認められた。意地を見せろよ・・・


神器が地面から抜け宙に浮いている。そのまま冷華の前まで移動した。

「こ、コレは神器・・・、何で私の前に・・・」

冷華が恐る恐る辛うじて動く右手で神器を掴もうとする。しかし、腕は動くが指がほとんど折れて上手く掴めない。何とか神器を掴んだ瞬間、冷華の体が白く輝く。

「体中が温かい・・・、この神器はデウス様の・・・」

輝きが収まると、大怪我で瀕死の状態だった冷華が元のキレイな状態に戻っていた。折れた腕も指も元通りに治っている。

「この神器は・・・、破壊と再生を司るのね。そして、今の私では全ての能力を使いこなせない・・・」

冷華が両手で神器を構え、エンペラーに向き直る。

「しかし!神器は私を選んでくれた!まだまだ未熟な私だけど、いつかは必ずあなたの真のパートナーになれるように努力するわ。よろしくね、唯我独尊!」


どうしてだ?冷華が何で神器の名前や能力の事が分かっている?もしかして、デウスの言っていた冷華の特殊なスキルの事か?

それにしても、あの大怪我を一瞬で治すなんて、とんでもない能力だ。それに、冷華の台詞だとまだまだ隠された能力があるみたいだな。

お前も神器使いになったんだ。これからは凍牙と一緒に頑張ってくれな。


雷で驚いていたエンペラーが正気に戻った。そして、冷華をジロッと睨む。

冷華に迫り右腕を振りかぶって殴りかかった。

「ガァアアアアア!」


ドカッ!


しかし、冷華はエンペラーの拳を神器の柄で受け止めた。さっきまでは軽々と吹き飛ばされていた冷華だったが、お互いに微動だにしない。

フッと冷華が力を抜くとエンペラーがバランスを崩しよろめいた。その隙を見逃さず、刃をエンペラーの腕に振り下ろした。


「グギャァアアアアアアア!」


エンペラーの右腕を肘から切り落とす。冷華があまりの切れ味に驚愕していた。

「な、何なのこの刃は・・・、何の抵抗も感じないまま切り落としてしまうなんて・・・」

エンペラーが切り落とされた腕を押さえて冷華を睨みつけている。

冷華も負けじとエンペラーを睨んでいた。


「さっきまでは散々とやってくれたからね。これからは私のお返しタイムよ。覚悟しなさいね!」

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