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ヤンデレ女神に転生させられてしまった  作者: やすくん
第2章
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フェンリル族の里㉑

ガーベラの右手に黄金の神器が握られている。

それを両手に持ちブンブンと振り回している。感触を確かめているみたいだ。

「久しぶりに神器を使うからね。ちゃんとジャストミート出来るかな?失敗したら私達の負けだし、気合いが入るね。」

ガーベラが神器を構えて上空の隕石に視線を向けた。


しかし、ガーベラのあの神器は・・・


どこをどう見ても金色に輝く『野球のバット』だぞ・・・

義母さんが神器を作ったメンバーの1人だとクローディアから聞いているが、これは絶対にネタとして作ったとしか考えられん!

初めて見た時は思わず目が点になってしまったしな。でも、以前にガーベラがあのバットを握りしめてモンスターの殲滅をした時は、あまりの破壊力に驚いたよ。しかも、『ジェノサイド・モード!』とか言って形状変化した姿は、『釘バット』そのまんまだったし・・・

美少女が金色の釘バットを喜々とした表情で振り回して、モンスターを叩き潰しながら殲滅している光景はなぁ・・・、今、思い出してもあり得ない光景だよな。

あの光景はホラーに近いモノがあるかも・・・

神器よ・・・、なぜガーベラをマスターとして認めたのだ?その理由が知りたい・・・


隕石が迫って来るのを、ガーベラは待ち構えている。

野球のバッターと完全に同じポーズだ。隕石から目を離さない。

直径10mはあろう隕石がガーベラの目の前まで迫った時にガーベラが動いた。

スッと片足を上げる。一本足打法だ!上げた足を力強く地面に下ろし踏ん張り、腰から回転を始め一気に神器バットを振りぬいた。


カキィイイイイイイイン!


「ジャストミート!」

ガーベラが嬉しそうに叫んだ。

「このままクイーンまで飛んで行けぇええええええええ!」


落下の速度以上のスピードで隕石が真っすぐクイーン目がけて飛んで行く。

今まで余裕の態度だったクイーンもさすがに焦っていた。

「う、嘘ぉおおおおお!こんな方法でメテオの隕石を跳ね返すなんてぇえええ!」

隕石がクイーンのフィールドにぶつかったが、サクラの魔法のように消滅する事なく撥ね返されてどこかに飛んで行ってしまった。



その頃、フローリア達は・・・


「フローリア様、クイーンがメテオ・レインを使いましたけど、蒼太さんが事前に察知してほとんどの隕石を無効化しましたね。流石です。それに、ミドリさんの連携も素晴らしいですね。」

春菜が蒼太のトール・ハンマーの魔法を見て嬉しそうにしていたが、すぐに元気が無くなった。

「しかし、サクラは・・・、あのバカ娘が・・・、帰ってきたらお仕置きですね。」


マリーが嬉しそうに森の奥を見つめている。

「フローリア様から現地の映像をリアルタイムに見せてもらっているけど、ガーベラも頑張っているね。久々にあの神器を見たわ。ホント、あの小さい体の何処にあんなパワーがあるのかしら?」

「それに、隕石をフィールドにぶつけるのはいい手だね。あのフィールドは私のよりも数段下のレベルだから、私のフィールドよりもダメージ許容量が低いと分かったみたいね。」


しかし、マリーの額に汗が流れ始めた。

「ちょっと待った!今、クイーンのフィールドに撥ね返された隕石の方向は・・・?何かこっちのような気がする・・・」

森の奥から黒い大きな塊が飛び出し、こちらに向かって高速で飛んで来るのが見えてきた。

「ガーベラァアアアアア!このバカ娘がぁあああああ!跳ね返される方向もちゃんと計算して打ち返しなさぁあああああい!こっちへ直撃コースよ!」

「それともワザとなのかぁあああ!あの腹黒娘ならやりかねん!」


「仕方ないね。」

美冬がスクッと席を立ち、里の出口に向かって走り出し、あっという間に森の中に入っていった。

隕石がもの凄いスピードで里の近くまで飛んできたが、美冬が森の中から上空に飛び出し隕石を殴りつけた。

「超振動爆砕拳!」

隕石の動きがピタッと止まり、ボロボロと崩れ砂となって消え去った。


「ま、こんなものね。」

美冬が何食わぬ顔で戻って来た。マリーがホッとした表情で美冬を見ている。

「美冬、ありがとう。ガーベラも後でお仕置きね。」


リンカ達スキュラ族がお互いに目を合わせ青ざめていた。リンカがボソッと呟く。

「ホント、この人達を相手に戦いをしなくて良かった・・・、絶対に勝てないわ・・・」



俺は隕石を片付けた後、ミドリと一緒にアイリスの隣に戻って来た。

アイリスが感心したように俺を見ている。

「やっぱりパパはスゴイね。あれだけの隕石のほとんどを消してしまうなんて・・・、でも、本当は手を抜いていたんでしょう?サクラ達の為にね。」


「アイリスには敵わないな。全部俺がやってしまうとアイツらの為にならんからな。あくまでもあいつらとクイーンの戦いだ。やり過ぎのところだけ少し手を出すだけにしておくよ。」

そして、クイーンに声をかける。

「クイーン、すまないな。少しお節介をしてしまって・・・」


クイーンがニコッと俺達に微笑んでくれた。

「構いませんよ。さすがにアレは私も大人げなかったと思いましたからね。それに、私の力ではあなた達3人には勝てませんから、手を出さないでいてくれるのは助かります。」


「俺達はそこまで強くないさ。」


「何を言っているのですか?あなた達3人は1人1人が私よりも遥かに強いのは間違いないですよ。そんな謙遜は私にとっては嫌味です。しばらく彼女達とのお付き合いを許して下さいね。こんな楽しい戦いは久しぶりです。まだまだ未熟ですが、あのサクラって子は楽しみですね。私のライバルになりそうですし・・・」

クイーンが呆然としているサクラを淋しそうに見ている。

「でも、立ち直れるかしら?」


「立ち直れるさ。俺の娘だからな。それにお前には残念だが、凍牙も一緒だからな。」


クイーンが一瞬キッと俺を睨んだが、すぐに元の表情に戻った。

「では、どう立ち直れるか楽しみに見ていますよ。」


俺の左手に握られていた吹雪が輝き元の姿に戻った。つまらなさそうに俺を見ている。

「父ちゃん、もう俺は必要ないのかな?この体でも暴れたかったなぁ・・・」


「吹雪、心配するな。まだ終わってないからな。まだ出番はあるかもしれんぞ。」

我が息子ながら、こいつもかなりのバトルジャンキーなんだよな・・・

最近は義父さんとも手合せするようになってきている。義父さんも「将来は楽しみだ!ワシの楽しみが増えそうだな!」と、すごくご満悦だったし・・・


クイーンが吹雪を見て驚いている。

「ま、まさか、他にも金色のフェンリル族がいるとは・・・、一体・・・」


「俺は凍牙の妹と結婚していてな、その子供で吹雪と言うんだよ。こいつも強いからな。」


「分かるわ・・・、お兄ちゃんと同じくらいの闘気を感じる・・・、どちらかといえばお父さんに近いかもね。ふふふ、仲良くしましょうね。」


「クイーン、思ったけど、今のお前は普通じゃないか?さっきまでの怒りも悲しみも感じないし、どちらかといえば嬉しそうな感じだぞ。さっきの凍牙の言葉ではないが、もう無駄な争いは止めたらどうだ?お互い何のメリットも無いぞ。」


クイーンが真面目な表情になる。

「いいえ、これは真剣な女の戦いです。お兄ちゃんがこの時代に生まれ変わって私の前に来てくれました。その時点で、もうフェンリル族に対しての恨みは無くなりましたよ。いいえ、無くなったというのは違いますね。興味が無くなったといった方が正しいかもしれないですね。お兄ちゃん以外はどうでもいいですからね。私と婚約者達、どちらがお兄ちゃんに相応しいか・・・、だから戦うのです。」

「そして、里ではみんな私に対して絶対服従でつまらなかった・・・、こうして真正面からぶつかってくれる存在が現れて嬉しいのですよ。特にサクラがね・・・」


「分かった。俺達は手を出さないよ。気の済むまで喧嘩しな。」

「出来れば、喧嘩が終わったらみんなと仲良くなって欲しいな・・・」


「ふふふ、それは喧嘩の内容によりますけどね・・・」



凍牙がサクラに駆け寄った。

「サクラ!一体どうしたんだ!いつものお前らしくないぞ!」

呆然としていたサクラだったが、凍牙の言葉で我に返ったみたいだ。しかし、その表情には怒りが出ていた。

「凍牙さん!私が1番ですよね。私がクイーンに負ける事はありませんよね!私は今まで誰にも負けた事はなかった・・・、お母さん達以外には・・・、私は強いはずだし、凍牙さんを想う気持ちも誰にも負けないはず・・・」


「サクラ・・・」


「こうなれば神器を最大に解放して特大の魔法を喰らわせれば、いくらあのフィールドでも・・・」


「すまん・・・」


パシィイイイイイイン!


サクラが信じられない顔で頬を押さえながら凍牙を見ている。

「と、凍牙さん・・・、何で・・・?」


クイーンはうっとりとした目で凍牙を見ている。

「いいなぁ~、私もお兄ちゃんに叩かれたい・・・」

もしかして、クイーンはMなのか?多分、凍牙限定だと思うけど・・・


凍牙はサクラをキッと睨んだ。

「文句なら後でいくらでも聞いてやる!サクラ!お前はここに何をしに来た?自分の力を見せびらかす為か?自分の我が儘を言いに来ただけか?そんな気持ちでここにいるなら帰れぇえええ!誰も今のお前とは一緒に戦いたくない!お前が勝手な事をするのは構わないが、さっきのメテオはお前の勝手な行動で全員が死にかけたんだからな!」


「はっ!」

サクラの目が大きく開かれ、ポロポロと涙が流れてきた。

「と、凍牙さん・・・、わ、私は・・・、ごめんなさい・・・」


凍牙が優しく微笑んだ。

「サクラ、冷静になったか・・・」

「そうだ、俺達がここに来たのは、フェンリル族とスキュラ族の無意味な争いを止める為に、悲しみと憎しみに囚われたクイーンを助ける為だったんだろう?そうじゃないのか?それなのに、お前が嫉妬で混乱してどうする?」

「そして、お前の母さん達に色々と教えてもらっただろう?本当の強さとは何かっていうのをな。」


サクラがゆっくりと頷く。


クイーンは羨ましそうにサクラを見ていた。

「私もお兄ちゃんからあんな風に支えてもらいたいな。甘えるちょっと頼りない妹っていうのも悪くないかもね。」

「でもね、お兄ちゃん・・・、今の時代は叩いたら即アウトだよ。すぐにパワハラで訴えられるからね。次からはそんな事をしないように、ちゃんと言わないとね。」



凍牙がクイーンを見据える。

「よし!後は、あのミツキのフィールドを破るのが最優先だ!ガーベラ、どうすれば破れるんだ?」


「あのフィールドの表面は衝撃やエネルギーを空間を歪ませる事によって強制的に分散させて拡散・無効化するの。だから、広域・殲滅級の攻撃は分散されやすいから不向きよ。サクラの魔法が通用しなかったのはそのせいね。でも、表面の歪んだ空間を分散されずに突破しても、次の層にイージス級の強固さを誇るシールドが控えているから、そこを突破するのに手間取るうちに表面の湾曲空間に飲み込まれ、拡散されてしまうわ。やるなら分散されるスピード以上の攻撃力の高い攻撃を当てて湾曲空間を突破し、第2層のシールドの一点に攻撃を集中して一瞬にダメージ許容量を超えさせて破壊する方法しかないよ。」

ガーベラが解説をしている。6歳には見えない堂々さだよ。

「でも、あのフィールドはお母さんよりもレベルが低いね。さっき、里でお母さんが張ったフィールドはメテオの隕石を分解までして軽々防いでいたけど、クイーンのフィールドは私の隕石返しを分解させられず突破されて、第2層のシールドで何とか撥ね返したわ。だから、お母さんのよりもレベルが低いって訳よ。」

ガーベラが一旦話を止め、みんなを見渡した。

「そこに私達にもチャンスがあるの。」


雪と冷華がうんうんと頷いている。ガーベラの話を理解しているみたいだ。

しかし・・・、凍牙の頭からブスブスと白い煙が上がっている。どうやら、理解の限界を超えてしまって、頭がパンクしているようだな。あいつも基本的に脳筋キャラだからな・・・


ガーベラが心配そうに凍牙を覗き込んだ。

「凍牙お兄ちゃん、大丈夫・・・?」


凍牙が大量の冷や汗をかいて「だ、大丈夫だ・・・」と返事をしていた。ガーベラの視線が生温かい。


「それじゃ作戦を話すね。サクラ、大丈夫・・・?」

ガーベラがみんなを見渡したが、サクラのところで視線が止まった。


サクラが申し訳なさそうな表情をしていた。そして頭を下げた。

「みんなゴメン!私、どうかしてた・・・、汚名挽回のチャンスを私に頂戴!」


みんながサクラを生温かい目で黙って見ている。凍牙が沈黙に耐えられなくなりサクラに話し出した。

「サクラ・・・、汚名は『挽回』じゃなくて『返上』だぞ・・・、まだ頭が混乱しているのか?」


サクラが真っ赤になって俯いてしまった。

「勉強嫌いの凍牙さんに言葉を指摘された・・・、こんな屈辱は生まれて初めて・・・」


「おい、おい・・・、俺はそこまでアホじゃないぞ・・・、サクラ、俺の事をそこまで頭が悪いと思っていたのか?そこまでアホと思われている事が俺にとっては屈辱だよ・・・」

凍牙がしょんぼりしてしまった。その姿を見てみんながドッと笑う。

その光景をクイーンが羨ましそうに見ていた。

「ふふふ・・・、さすがお兄ちゃんね。いつも私達の中心になって賑やかにしていたのも同じね。今の私は里では1人ぼっち・・・、私もあんな風にみんなと一緒にいたいな・・・」

「でも、勝負は勝負・・・、手を抜く事はしないからね・・・」


「作戦はこれでいくね。」

ガーベラの言葉にみんなが頷いた。

「凍牙お兄ちゃんにかかっている加護も限界に近いから1回限りの勝負よ。絶対に失敗は出来ないからね。」

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