フェンリル族の里⑯
仕事とプライベートが忙しくて更新が遅れました。
アイリスの笑みにオーク達が我を忘れたように立ちすくんでいた。
「ふふふ・・・、もうこの辺りで残っているのはあなた達くらいですよ。他の者は倒されたか逃げていきましたからね。どうします?諦めてとは言いましたが、このまま逃げていけば私達は無暗に殺しません。」
1体のオーク・キングと3体のオーク・ジェネラルがフラフラとアイリスの方に歩き出した。
オーク・キングがブツブツ呟いている。
「コ、コンナ女ハ見タ事ナイ・・・、我ノ嫁二・・・、我々の母二・・・」
オーク・ジェネラルの様子も変だ。
「クイーンカラフェンリル族ノ女ハ好キニシテイイト言ワレテイタガ、コノ女ヲ前二スルト・・・、今スグ食ベタイ・・・」
アイリスがクローディアを肩に乗せて呆れた顔でオーク達を見ていた。
「はぁ~、やっぱりパパの言った通りだね。オークは食欲と性欲しかないって・・・、魔獣扱いになるのも分かるわ。」
「でもね、さっきミドリが言っていたでしょう。未成年に手を出したらダメだってね。成人でもお互いに了解は必要だし、強引だと嫌われるよ。まぁ、言っても分からないでしょうから、大人しく私達の夕飯になりなさい。私とミドリで一生懸命パパの為に美味しい料理を作るからね。」
1体のオーク・ジェネラルが涎を垂らしながらアイリスに向かって走り出した。
「タ、タマラァアアアン!喰ワセロォオオオオオ!」
「美味しそうに見られるのは納得いかないけど・・・」
クローディアを頭上に掲げた。
「はぁああああああ!」
「一刀両断!唐竹割りぃいいいいいい!」
アイリスに走り寄っていたオーク・ジェネラルがあっさりと縦に割れ、残ったオーク達の足が止まった。
「さすがクローディア、とんでもない切れ味ね。何の抵抗も無く真っ二つになるなんて・・・」
【ふふふ・・・、これくらいで驚いてもらっても困るわよ。私の解放状態はもっと凄いんだからね。フローリアやマスターはこの状態が好みだったから解放してくれなかったけど、アイリスには解放形態の方が合うかもね?】
「そう?じゃあリクエストに応えて・・・」
「クローディア!神器解放!真の姿を見せよ!」【了解!】
クローディアが一瞬輝きバラバラになった。
アイリス手には普通の大きさの黄金の剣が握られている。そして、4本の黄金の剣が宙に浮いてアイリスの周りを回っていた。
「これは・・・」
【そう、これが私の開放状態よ。私がただ長くてゴツイだけの剣だと思ったら大間違いよ。元々は5本の剣が合体して通常の状態になっているの。こうして分離している状態なら遠隔は勿論、攻防一体の立体的な攻撃も可能なのよ。】
「凄いじゃない!早速試してみるね。」
「オールレンジ攻撃!剣よ行けぇえええええ!ダンシング・ブレードォオオオオオ!」
浮いていた4本の剣が一斉にオーク・ジェネラルに向かって飛んでいく。4本の剣が意思を持っているかのようにオーク・ジェネラルを切り刻んでいった。
あっという間に1体が細切れにされ、すぐに隣のオーク・ジェネラルにも剣が襲いかかり、同じようにあっという間に切り刻まれて絶命した。
「す、凄い・・・、まるで〇ュー〇〇プになった気分・・・、剣が私の思った通りに動いてくれる。」
【何、その言葉は?】
「これはね、パパが好きなマンガに出ていたんだ。地球の神から時々マンガを送ってきてもらって、みんなで読んでいるんだよ。とっても面白いからクローディアも読んでみる?ハマるよ。」
【喜んで!】
「クローディア、凄いよね。これで春菜ママが得意なオリジナル魔法のビット魔法みたいな事が出来るんだね。あの魔法には憧れていたんだ。最高に気に入ったよ!」
【ふふふ・・・、そこまで気に入られると私も嬉しいわ。】
オーク・ジェネラル2体を瞬殺した剣が、今度はオーク・キングの周りを回って牽制している。剣で作られた檻に入れられたかのようにオーク・キングは動けないでいた。
「ミドリ、これで心置きなくミドリの担当分を始末出来るよ。オーク・キングは1体でいいから、ミドリの前いるのは食べてもいいからね。」
ミドリが嬉しそうだ。
「アイリス様、ありがとうございます。それでは、邪魔なジェネラルを先に倒して食材にしてから、じっくりとキングを食べさせてもらいますね。」
「それではジェネラルのみなさん、残念ですが食材になる時間になりました。恨むならこの場に駆り出されたクイーンを恨んで下さい。まぁ、そんな事を言っても意味は理解出来ていないでしょうが・・・」
「さあ、仕上げです!」
ミドリがニコニコしている。その表情が更にオーク達の恐怖を掻き立てる。
「乱れ突きぃいいい!」
一瞬の間にジェネラルとの間合いを詰め、無数の突きを繰り出した。
「ぐぎゃぁああああああ!」
ジェネラルがあっという間に穴だらけにされ仰向けに倒れた。
「これで血抜きも一緒に出来ますね。」
しかし、ミドリが不満そうな顔をしている。
「それにしても、槍って必殺技と呼べるものが少ないですよね。『〇〇突きぃいいい!』とか『〇〇払い! 』くらいしか言葉が無いじゃないですか。剣とかに比べると槍の扱いって地味ですよねぇ・・・、攻撃力やリーチなどは剣よりも遙かに優れているのに・・・」
「さぁ、私の担当分はキングが1体にジェネラルが残り3体ですね。行きますよ。」
ミドリが槍を横に払うと2体のオーク・ジェネラルが輪切りにされた。
「ジェネラルは残り1体。覚悟して下さいね。数少ない槍の必殺技でトドメを刺してあげますよ。」
槍を腰の位置に構え突きを繰り出した。
「無双三段!」
オーク・ジェネラルの心臓に突きを放ち、間髪入れずに肩から袈裟切りを行い、槍の切っ先がオーク・ジェネラルの股間まで抜けると、そのまま上に槍を切り上げた。
「最初の心臓の突きで終わっていましたが、突きからの打ち下ろしと切り上げ、この3つの動作で1つの技ですからね。実際に試すと過剰すぎる攻撃ですね。」
「それでは食材を異次元収納に収めて、キングの躍り食いをしますかね。覚悟はいいですか?」
ミドリが嬉しそうにオーク・キングに向かって微笑んでいる。
そして、巨大なエメラルド・ドラゴンの姿に戻った。オーク・キングは恐怖で硬直して動けない。
「それでは、いただきます。」
ドラゴン姿のミドリがオーク・キングを頭から丸呑みしてしまった。
「美味しいぃいいいいいいいいいい!」
しばらくしてから人の姿に戻ったが、すごく幸せそうな顔をしている。
アイリスがニヤニヤしながらミドリを見ている。
「ミドリって、やっぱりSなんだね。パパを虐めたらダメだよ。」
ミドリが真っ赤になってしまった。
「ア、アイリス様!私はご主人様にはそんな事はしません!私が虐める相手は、ご主人様に害を与える存在だけですよ!一気に殺さずジワジワと・・・、ふふふ・・・」
「やっぱりSだよ・・・」
「それと、ミドリ・・・、私達2人だけの時は普通に喋ろうよ。年上の人に敬語で話されると何か変な感じなんだよね。それと、ミドリもパパのお嫁さんになるから、お互い立場は一緒になるんだからね。」
「で、ですが・・・」
「ダメ!ミドリは私にとってはお姉さんなの!みんなの前ではメイドかもしれないけど、私の前では普通にしていて欲しいの。だから、2人っきりの時だけは姉妹みたいにして欲しい・・・、サクラには雪さんと冷華さんの2人のお姉さんが出来てしまったから、私もお姉さんが欲しい・・・、パパの子供達の中では私が1番お姉さんだから、お姉さんに憧れているの。」
「だから、ミドリが私のお姉さんになって欲しいの。」
ミドリがアイリスに微笑んだ。
「分かったわ、アイリス。これで良いかな?ふふふ・・・、何かちょっと照れくさいね。」
2人が見つめ合いながら微笑んでいた。
【あのぉ~、私は?見た目も実年齢も私が一番お姉さんだと思うけど・・・】
「う~ん・・・、クローディアはねぇ・・・、何かお姉さんには思えないんだよね。どちらかというと、歳の近いお友達って感じかな?見た目は凄いキレイなお姉さんなんだけど、少し残念な空気を纏っている感じなんだよね。でも、雪さんや冷華さんみたいにギャグキャラにされないだけマシかもね。」
【う~ん・・・、喜んで良いのか悲しむのか微妙だねぇ・・・、まぁ、ギャグ担当にされるよりマシか・・・】
ほのぼのとガールズトークをしている3人だが、剣に囲まれて動けないオーク・キングがブツブツ言っている。
「我ハ王ダ・・・・、王ガコンナ事ニナルノハ有リ得ナイ・・・」
「あ、キングの事を忘れてた・・・」
「俺ハ王ダァアアアアア!」
絶叫しながら剣を構えてアイリスに向かって行く。アイリスがため息をついた。
「あらら、困りましたね。それでは・・・」
浮いている4本のうち2本の剣がオーク・キングの両腕を後ろから切り飛ばした。
「グギャァアアアアア!」
オーク・キングは悲鳴を上げているが、すぐにアイリスを睨み口を大きく開け噛みつこうと突進してくる。
「クローディア、これは本当に容赦ない攻撃も可能ね。相手にとっては何処から剣が飛んでくるかも分からないし、集団戦でも無双出来るわ。さすが神器最強と言われているだけあるね。」
【ふふふ・・・、褒めて褒めて!】
「こらっ!調子に乗らない!さて、トドメといきますね。」
アイリスが握っていた剣を頭上に掲げた。
「解放解除!」
5本の剣が元に戻りいつもの大剣の状態になり上段に構える。
「それじゃ、フローリアママとパパの1番得意な技でトドメを刺してあげる。」
「はぁああああああああ!」
アイリスが一気に跳躍しオーク・キングの遥か頭上まで飛び上がった。そして流星のようなスピードで一直線にオーク・キングへ目がけて落ちていく。
「いっけぇえええええ!乾坤一擲!雲耀の太刀ぃいいいいいいい!」
上段から剣を一気に振り下し、オーク・キングが頭から真っ二つにされ、その勢いで地面まで大きく割ってしまった。
「あっ!ちょっとやり過ぎた・・・」
「アイリス~・・・」
ミドリが呆れ顔になっている。
【パパ、ゴメ~ン!クローディアの剣の衝撃波がパパのところまで飛んでいった!】
「えっ!アイリス、何だって!」
咄嗟に後ろを振り向くと・・・
凄い勢いで後ろの木々が舞い上がって衝撃波が迫っている。このままだと衝撃波に飲み込まれてしまう。
「マ、マジっすか・・・、ヤバイ!アイリスのバカタレがぁ~・・・」
霞が俺に語りかけてきた。
【マスター、私を解放して!解放した力ならクローディアの力を相殺出来るわ!】
「分かった!お前を信じる!」
足を止めて衝撃波の方向に向き、霞と吹雪を構える。
「神器解放!」
その瞬間、俺の周囲に無数の剣が現われ浮いていた。
【これは私の分身。全て実体を持った幻よ。これならあのデカ乳の威力を相殺出来るわ。】
「ありがたい!」
「でもなぁ、このまま真っすぐ前に打ち込んだら、今度はアイリス達の方に被害が出るな。よし!上から打ち込もう。出来るか?」
【大丈夫よ。この幻の剣はマスターの意志で自由に出現できるから、どの方向からでも打ち込めるわ。】
「分かった。吹雪、お前の力も借りるぞ。」
霞と吹雪を頭上でクロスさせ構える。
「行くぜぇえええ!乱れ咲け花吹雪!千本桜ぁあああ!」
クロスした剣を思いっきり広げた。周りにあった剣が消え、衝撃波の上に出現する。
数えきれない大量の剣が衝撃波の上に降り注ぎ衝撃波が消え去った。
「いやぁ・・・、何とか止めたけど威力があり過ぎだな。巨大なクレーターが出来てしまったよ・・・」
「さっきのサクラの攻撃もあるし、後でフローリアか春菜に森を元に戻してもらわないとな。このままだと俺の破壊神の名前が完全に定着してしまうなぁ・・・」
凍牙がニヤニヤしながら俺に近づいてくる。
「蒼太、お前の攻撃はブルー時代の頃からいつも過剰だからな。トール・ハンマーにしてもそうだし、そんなあだ名が付いても仕方ないさ。」
「そ、そうか・・・」
悲しい・・・
凍牙が真面目な顔になる。
「さぁ、クイーンはもう目の前だ。早くこの無駄な争いを終わらせなくてはな、みんな!」
サクラ達が一斉に頷いた。
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