みんなで楽しく食べる食事は最高の調味料①
長いキスの後、フローリアは少し離れて俺を見つめていた。
そして俺は
ペシッ!
「きゃ!い、痛いです・・・」
フローリアに軽くデコピンをかました。
「このバカタレ。悪乗りしすぎだ。」
「え!気付いていたのですか?」
「当たり前だ。お前があんなメタボ竜にいい様にされる訳ないだろ?お前の尋常でない異常な怖さは俺が良~~~~~く知っているし・・・」
「むぅ・・・、何か私の事をバカにしてません?」
「いやいや・・・、そんな事はないぞ。・・・多分。」
「むぅ・・・」
「それとなぁ・・・、お前が他の男に触られるのは見ていて嫌だからなぁ・・・」
「旦那様~~~!」
目を輝かせながらフローリアが抱き付いてきた。
やっぱりチョロい。
「私たち空気だよね・・・」
春菜たち4人は盛大なため息を吐いた。
これからの行動方針を決める為、みんなに集まってもらった。
「いきなりココに飛ばされてきた訳だが、ここはどこだろう?土地勘0の身だし、何処に向かうかも分からん・・・。近くに町があればその町を拠点にして邪神討伐に頑張れると思うのだが・・・、どう思う?」
4人がこそこそ何かを話していて、春菜さんが代表して意見を言ってくれる。
「我々ロイヤルガードも初めての世界なので右も左も分かりません。はっきり申し上げれば、この世界で『遭難』したのに間違いはありません。」
全員の視線がフローリアに集中する。
フローリアは大量の汗をかいていた。
「も、も、勿論!みなさんが快適に旅を行えるよう、わ、私はちゃんと考えてましたよ!」
かなり動揺してるな。やっぱり何も考えてなかったか・・・
さて、この駄女神はどう言い訳するか?
「そう、そう!旦那様のサーチ魔法を使えば万事解決です!最新バージョンにアップデートしてますから、敵の検索以外にも地理の把握もバッチリです。普通の人にはここまでの性能の魔法は授けませんが、ご主人様には特別に最高バージョンを授けました。必ず役に立ちますよ。」」
そうなんだ。駄女神は撤回してあげた方が良いかな?
使い心地を確認してみよう。
「サーチ」
おおぉ!視界の隅に地図が出たぞ。拡大、縮小も可能だ。縮尺も変更できる。
所々赤い点があるな。多分、モンスターだろう。
どの点もここから離れるように移動している。まぁ、あれだけの大虐殺があったから普通のモンスターなら逃げるか・・・
しばらく地図を検索していたら町を見つけた。
ここからだとかなり遠いなぁ・・・
歩きだと数日かかりそうだ。
「見つけたぞ。でもかなり遠いな・・・」
「でも・・・、その前に、ここ光景どうしよう?」
目の前におびただしいドラゴンの死体が転がっている・・・
そのままにしていくのもねぇ・・・
「旦那様、その点は大丈夫ですよ。サーチ魔法と同様に収納魔法も一級品を授けてますので。」
『収納魔法』
異世界チート能力の1つではないか。
この魔法が有るか無いかで旅の難易度がガラッと変わるイメージがある。
確かにこの魔法があると便利そうだし、素直に嬉しいよ。
ポンコツとか言ってゴメンな。
「収納量もその気になればこの星を丸ごと飲み込めるくらいですし、しかも!自動振り分け機能でリスト化して表示も可能ですし、モンスターの死骸を収納すれば自動的に素材に仕分けしてくれます。」
「しかも、ゴミも自動的に処分してくれますので、収納の中がいつの間にかゴミでいっぱいという事もありませんよ。」
「生きたモノは収納出来ませんがが、直接手を振れなくてもある程度の距離があれば認識するだけで収納する事も可能です。」
ドヤ顔で説明しているフローリアだった。
こういう事は普通は冒険に出る前に説明するものでは?
やっぱりポンコツかも?
夏子の下僕となったドラゴンとまだ生き残っているドラゴン以外は、意識すると次々消えていった。
しばらく歩き回って全てのドラゴンを収納していったが、いっぱいといった感じも重さも感じなかった。
「よし!出発前に一つ取り決めをしよう。」
春菜さんが「どんな取り決めです?」
「別に大した事じゃないんだけど、お互いの呼び名をある程度統一した方が良いかと思ってな。」
「これから長い付き合いになるかもしれないしな。」
春菜さんが「そうですね。それは良いと思います。」
「俺はフローリアの事も呼び捨てにしているから、みんなの事を呼び捨てにしようかと思っているのだが・・・」
「まぁ、嫌なら今まで通りさん付けで呼ぶけど?」
「私は構いませんが、みんなと相談してきますね。
春菜さんが残りのメンバーのところに行き、何かゴニョゴニョと話している。
さっきの戦闘の時もそうだったが、春菜さんがみんなのまとめ役っぽいな。
「大丈夫です。では、そのように我々を呼んで下さい。」
みんな頷いて・・・
いやっ!千秋だけが血の涙を流している。
そんなに俺に呼び捨てに言われるのが嫌なのか・・・
空気を察知してか春菜が
「気にしなくて良いですよ。アレは一種の病気ですから、しばらくすれば慣れますから安心して下さい。」
フローリアが千秋のところに行き何かコソコソ話している。
千秋がニコニコしていた。
どうやら説得できたみたいだ。
どんな話をしていたか気になったが・・・
美冬は
「どうしてもなら仕方ない。許す。」
はぁ、この提案はちょっと失敗したかも・・・
でも、気を取り直して次の提案。
「では、皆さんは俺をどう呼びたい?」
「蒼太様かご主人様」
「蒼太殿」
「ゴミ!」 「うそ!」 「却下!」
「お兄ちゃん」 「?」 「?」
約2名、変な呼び方があったぞ・・・
美冬が「あれは言い間違い。ソータで。」
好きに呼ばせよう・・・
サラリーマン時代に職場で同じ様な事をして仲間意識を高めようとして失敗した事を思い出した・・・
気まずくなった雰囲気の中でフローリアがパンパンと手を叩き、
「まあまあ、町に行くには何日もかかりますし、今日はここで休んで明日から行動しましょうね。」
「大サービスで、旦那様の収納魔法には快適に泊まれるグッズを沢山入れてありますからゆっくりしましょう。」
「それでは旦那様、よろしくお願いしますね。」
そう言われて収納魔法のリストを表示して確認したが、あるリストを見て絶句した。
「フローリア・・・、マジでこんなもん入れたのか?」
「そうですよ。『いつでもどこでも旦那様と私のお泊りセット』、これ以上のモノはありません!早速使いましょう!」
フローリアが興奮していた。
他の4人も何だ何だといった顔で期待している。
「仕方ない・・・」
出てきたのは何と『家』!
しかも、2階建てで小さな庭まで付いているし・・・
その庭から多分リビングだろう部屋に窓から直接入れるようウッドデッキまで付いているし、そのウッドデッキの上にはバーベキューセットとベンチまで置いてあった。
正直、俺の生前住んでいた家よりも立派だった。
「どうですか?私たちの『愛の巣』は?」
「これならどこでも自由に愛し合えます!」
「家の周囲に張り巡らされた防御魔法も完璧ですし、魔物どころか蟻の1匹たりとも入り込む事は出来ないです!」
「各部屋の防音も完璧ですから、中でどんなに大声を出そうとも一切音漏れもありませんよ。」
フローリアが光が消えかけた目で春菜たちを見る。
「あなた達はコレで休んで下さいね。」
出てきたのは春菜たち人数分の三角テントと飯盒・・・
最近のフローリアは可愛らしかったのに、監禁部屋で見た危険なフローリアに近づいている!
ヤバイ!
何とかフローリアの目を覚まさないと!