契約
俺は今城の中にある客間にいて、目の前にはご馳走が並んでいる。
なんでこんな状況なのかというと、先程現れた悪魔にあれよあれよと言う間もなく連れ去られたからである。
その悪魔はニコニコしながら俺の目の前に座っている。
「。。。質問しても?」
「ああその食べ物に毒は入ってない!自由に食べるといい!」
「いや、それはいいんだが。。あんたは?」
「私?私はサルエル。そんなことよりお前は何だ?何故ここに肉体を持った人間が?」
とにかく俺に興味があって仕方ないみたいだ。害意はないみたいだし、とりあえずこちらの話をしてみるか。
「俺は。。。名前がわからん。出身は。。。わからん。あっこの飯うまいな」
自分が何一つわかっていなかった。
「キキッ!そいつは転生しそこなった人間だぞ!俺がここに連れてきたんダ」
ちっこい悪魔が現れてまともに説明してくれた。助かる。
「おおジンか!つまり狭間の空間から引っ張ってきたのか?!それならば。。。」
サルエルの目が赤みを帯びた。その目は俺を見ていたが、見つめていたものは何か違う、もっと深いものだと感じた。
「なんと!お前個体として完成しているではないか!しかも魂は女神が祝福している!まあ多少だが」
は?完成?祝福?何を言っているか理解できない。
「すまん、もう少し詳しく説明してくれ。」
「転送さえされれば、お前は転生できるということだ。種族などのパラメーター振りと、転生許可が完了している。普通は転送されただけでは魂だけがさ迷うだけだ。
祝福というのは女神が加護を与えているということだ。お前は勇気の加護が与えられている。私に臆せず会話できているのはそのためだろう。」
びっくりした。じゃあ残すは女神からの状況説明だけってところでこの。。ジン?にかっさらわれたのかよ。惜しかったな。
あと加護は嬉しいけど"多少"だし、勇気もらっても無双できそうにないし。なんか惜しいな。
あれ?もしかして俺って惜しいの?
「なんだ残念そうな顔をして。お前はかなり面白い存在だぞ」
「キキッ!そうだぞ!俺が生きてる中でも5本の指に入ル」
「お前ら励ますつもりあるのか?。。。ああ、悪魔だったわ」
だんだん分かってきた気がする。こいつらは面白ければ何でもいいのだ。
「んで、俺はこれからどうなるの?」
「ふむ。提案なのだが、私がお前を転生させるというのはどうだ?」
は?
あまりの予想外に言葉がでない。
「やはり人間は人間同士一緒にしておくのがよい。その方が面白いからな。」
こいつ本気で言ってる。
「い、いいのか?その提案は魅力的なんだが」
「勿論いいとも!但し私と契約してもらおう。こんな面白いものを手放すつもりはないのでな。」
"契約"という響きに俺の心は警鐘を鳴らした。遊んでいた空気が静まり、目の前の男の一挙一動、一言一句に神経を尖らせる。
「そんなに警戒することもあるまい」
「いや、本能だ。んて契約の内容は?」
サルエルは口角を少しあげて話を続けた。
「求める契約は2つ。
ひとつは私がお前の旅に付き添うことを許容すること。なに本体が行くわけではない。使い魔をあとで送ろう。これの見返りとしてお前を転生させよう」
これは特に問題を感じなかった。
「もうひとつは特典のようなものだ。"魔法"を使えるようにしてやる。転生先で身を守るのに役立つだろう。憧れだろう?自由に魔法を使うのは」
"魔法"?確かに使ってみたいし、使えるのであれば楽に生活できるかもしてない。だが無償とは到底思えなかった。
「魔法の代償として何を要求する?」
不敵な笑みを隠そうともせずに言った。
「代償はお前の魂だ。」