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夏色のキミと、冬色のボク  作者: トウミ
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第三話 雨あがりの星空

「雨か……」


カーテンを開けた時から分かっていたが、浩太は朝ごはんを食べながら、朝のニュース番組の天気予報を見て、再度確認した。


(今日はずっと雨なのか。この調子だと今日は星は見れないかもな……)


浩太はふと、莉那のことを思い浮かべる。


(彼女の見てる世界はどうなのかな? 天気も同じなのかな?)


「一応、バイトが終わったら公園に行ってみるか」


浩太はそう考え、大学へと出かけて行った。






「おかしい」


傘を差しながら、浩太はいつもと違う周りの様子に違和感を覚えていた。

雨が降っていることを考えても、浩太以外に人がいなかったのだ。


「これじゃあまるで……」


“自分だけの世界”じゃないか。そう思いはじめたが、浩太はやめた。


「そんなわけない」


そう自分に言い聞かせ、浩太は浩太は大学へと急いだ。

しかし……。


「そんな! なんで!? 誰か! 誰もいないのか!?」


大学に着いても同じだった。浩太以外の人がいない。

学生も、それに教員も。誰もいなかった。

夢かと思い浩太は頬を何度か抓ったが、地味な痛みが伝わり赤くなるばかり。


浩太はわけがわからず、自分の学部棟以外も大学施設全てを走って周る。

しかし、結果はどこも一緒だった。


冷たく降り注ぐ雨と、疲労感がいつも以上にリアルに感じていた。

それは、浩太に、浩太以外の人がいないという不可思議な状況が現実だと理解させるのに十分だった。


「みんなどこに……。本当に僕だけの世界になったのか? なんで? もうわけがわからない」


どうしたらいいのか、なにが起こっているのか、夢なら早く醒めて欲しい。そう思っていた浩太だったが、ふと、いつも一緒に星空を眺めていた少女の顔を思い出した。


「久野さん!」


雨が降る中、浩太は傘を放り出し、濡れるのもお構いなしに、公園へと走り出した。






「はぁ、はぁ、はぁ」


雨の中走ってきて、すっかり体も冷え切ってしまったが、浩太は疲れよりも恐怖の感情に襲われていた。


(ここまでも誰にも会わなかった。久野さんまでいなくなってたらどうしよう)


浩太は、公園の入口まで着き、ハッとした。

今はいつも大学に行ってる時間だ。この時間、昼間にこの公園に来たのは初めてだった。


(この時間に、久野さんがいるだろうか?)


一瞬不安になったが、ここまで来た今引き返すことはできない。そう思い、浩太はいつもの広場まで向かうことにした。


公園の入口から少し歩き、広場が見える場所まで来ると、浩太は恐る恐るいつものベンチの方を覗いた。

そこには、いつもと同じように、白いワンピース姿の莉那の姿があった。


浩太は、莉那がいたことによる嬉しさと、自分以外の人に会えたことによる安心感で、涙を浮かべながら彼女の方へと走りだした。


「久野さん!」


莉那は、急に名前を呼ばれ一瞬驚いたが、それが浩太のものだと気付くと、嬉しくなると同時に、少し悲しい表情を浮かべ、走ってくる彼を迎えた。


「浩太、どうしたの?」


「それが、みんないなくて! 何を言ってるかわからないと思うけど、久野さんに会うまで誰にも会えなくて、それで……」


浩太がそこまで話すと、莉那は浩太の口元に人差し指を当てる。


「そうか、浩太も気づいたんだね」


「えっ?」


「雨が上がるから見てて」


莉那にそう促され、浩太は不思議に思いながらも空を見上げた。

するとどうだろうか、先ほどまで降っていた雨がやみ、そこには……


「えっ! あれは、アンタレス!?」


「うん、夏の星空だよ、浩太」


そこには、夏の星空が広がっていたのだった。






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