【第8話:冒険者はじめました】
「冒険者ギルドの場所、聞いておけば良かった……」
オレはまた衛兵さんのいる所まで戻って場所を聞くと、今度こそ本当に冒険者ギルドに向けて歩き出す。
改めてこの街を眺めてみると、全体的に石造りの家が多く、屋根だけ木を使っている家が多いようだ。
そばに森があるから木の家が多いのかと思っていたけど、何か理由があるのかな?
通りはそこそこ広くて区画も整理されており、意外と言っては失礼だが綺麗な街並みだった。
そしてこの世界では初めて見る人の数だ。
前世と比べたら近所の寂れた商店街ぐらいの人の数だろうけど、通りを歩く沢山の人がいる光景は何だか新鮮に見えた。
見るものすべてが新鮮に感じ、キョロキョロ辺りを見まわしては驚きまた歩く。
周りから見たらきっとオレは立派なおのぼりさんになっていただろう……。
40分ほど歩いた頃だろうか?
ようやく冒険者ギルドらしい大きな建物が見えてきた。
オレは西門から入ってきたのだが、どうやら南門の近くに建てられているようだ。
南門か東門を出てすぐに『深き森』が広がっているので、その方が利便性が高いのだろう。
冒険者ギルドは4階建ての大きな石造りの建物で、2階建てが多いこの街では遠くからでもすぐに気づくことができた。
ギルドの横には大きな厩舎があり、その裏手には結構広い鍛錬場が見える。
ランクアップ試験の時とかにも利用されるようだが、母さんが言うには使用されていなければ自由に使って良いそうだ。
今も実際いくつかのパーティーと思わしき人たちが、何かの訓練をしているのが見えた。
「いよいよかぁ。緊張するな」
オレはそう呟くと、緊張しながらも冒険者ギルドのドアを開く。
中に入ると、中央奥には受付のようなカウンターが、右手にはポーションなどの冒険に必要な雑貨類の購入と軽い飲み食いが出来そうなスペースが設けられていた。
今も何か軽い食事をしている人が何人か見えるが、思ったより人は少ないようだ。
オレはまずは冒険者登録するために、受付嬢らしきギルド職員がいるカウンターに向かう。
いくつかあるカウンターで空いている所に向かったのだが、よく見るとその受付嬢の胸には「見習い」と書かれたワッペンが見えた。
素知らぬふりしてベテランそうな受付嬢がいる隣の混んでいるカウンターに向かおうとしたのだが、じーっとこちらを見つめる見習い受付嬢と目が合ってしまった……。
仕方ないあきらめてここにしよう……。
「ようこそ冒険者ギルド、ドアラ支部へ! 今日はどのようなご用件でしゅか!」
噛んだ……。
同じぐらいの歳のかなりの美少女なのだが、その顔がみるみる赤くなっていく。
良し。無かった事にしておこう。
「えっと、とりあえず冒険者登録したいんですが」
オレがそう言うとあたふたとして何かマニュアルのようなものを取り出し、
「冒険者登録ですね! それではまずは紹介状か、街に入るときに渡されたゲストカードをお願いします」
と、今度は噛まずにスラスラと話す。
オレは街に入るときにも使った村長からの紹介状を渡すと、受け取って紹介状に押されている魔法印が本物であるか確認している。
魔法印とはインクの代わりに魔力によって押す印鑑のようなもので、特殊な道具を使う事で本物かどうかの確認ができる。
「お待たせしてしまってすみません! 『静かなる森』の村の方ですね。確認が出来ましたので、この用紙に記入をお願いします。代筆が必要なら私がお聞きしますので遠慮せずに言ってください!」
ようやく確認が終わったようで、冒険者登録の為の記入用紙を渡してくる。
オレは母さんから、冒険者として必要な知識や文字の読み書きは特訓の一環で叩き込まれたので、もちろん自分で記入する。
思い出して一瞬涙ぐみそうになったのは内緒だ。
オレは名前とメインで使う武器、サブで使う武器、魔法適性の有無などを記入して見習い受付嬢に用紙を渡す。
メイン武器は勿論『槍』、サブ武器はナイフしかもっていないので『ナイフ』、魔法適性は村で薬師のおばさんに詠唱魔法の適性を診てもらったのだが、残念ながら『なし』だった。
母さん曰く魔力はかなり多いらしいので勿体ないと何度も言われた。
「はい。記入は……問題ないですね。コウガさん、それでは最後に魔力紋を使ってギルドカードに登録しますので、こちらの道具の上に手をおいて、魔道具を使う時のように魔力を込めてみてください」
オレは「わかりました」とこたえると、道具の上に手をおいて魔力を込める。
すると、セットされていたギルドカードが薄っすらと光を帯びたのが見えた。
「良し。これでいけたかな? ……あ、これで大丈夫です!」
何かちょっと不安だがギルドカードが出来たようだ……。
「ありがとう。ギルドカードって、その場ですぐ発行されるんですね」
オレはギルドカードを受け取ると首からかける。
冒険者は常に見える位置にギルドカードを付けておく必要があると、オレは母さんから聞いていたので。
受付嬢が説明を忘れていたのを思い出し、「あっ」とか言ってる気がするがスルーしておく。
「えっと……これで冒険者登録は完了になります。あ! こちら 冒険者のルールなどがついた冊子になります。初心者講習を一度受ける必要がありますので、それまでに必ず目を通しておいてください。あ! 初心者講習って言うのは1と5の付く日に行っていますので都合のちゅく日に申し込んでください。あ! 依頼は初心者講習を受けた後でないと受けれませんので注意しゅてください。あ! 常時依頼も含めて講習の後でしか受けれません。あ! 普通の依頼は私たちギルド職員からの斡旋と言う形になります……えっと……これで説明全部かな……」
何かグダグダだけど、とりあえず明日が5の付く日なので申し込んでおく。
「じゃぁ、とりあえず明日さっそく初心者講習を受けたいので、申し込みをお願いします」
「わかりました! 明日の初心者講習に申し込んでおきます! 冒険者登録はギルド職員見習いの『カリン』が担当させて頂きました! これから頑張ってくだしゃいね!」
また顔を真っ赤にしているカリンさんに、思わず「お前も頑張れよ」と言いそうになったが、ぐっとこらえてお礼を言ってギルドを後にした。
「そう言えば、お薦めの宿聞こうと思ってたのに……」
何か最初からすっかりペースを乱されてしまった。
仕方ないのでもう一度冒険者ギルドに戻り、やはり空いていたカリンさんの所に向かう。
何か変な踊りをしていたけど、見なかった事にしてお手頃なお薦めの宿を教えて貰うのだった。
何か凄く疲れた。
でも、可愛い子だったのでちょっとドキドキしたのはそう言う年ごろなので許してほしい。
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カリンちゃん登場!(´-ω-`)
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